翌日。
頭痛に堪えながら、部屋から出る。
パドメはオーガナ議員達との会合の為、不在だ。私は1人リビングでグラスを傾ける。氷をグラスに落とし、頬杖をしながらブランデーを注いだ。
そこへ、チャイムが鳴った。
セキュリティ・システムを確認すると、訪ねてきたのはオビ=ワンだった。
「議員ならいないよ。」
「議員じゃない。お前に用がある。」
ロックを解除して、ボトルを持ったままドアを開ける。
久しぶりに対面したオビ=ワンは、私を見て顔を顰めた。
「酒臭いぞ。一体どれだけ飲んだんだ?」
「そんなの数えるわけないでしょ。」
「また飲むのか!?」
「ちょっと!なんで捨てるの!?」
ボトルを奪い取ったオビ=ワンは、そのままキッチンへ向かい、ダストシュートへと放り込んだ。
酒を捨てた彼の胸倉を掴み、全力で揺さぶる。
「私の憩いだったのに!」
「飲み過ぎだ!評議会が身体を治すと約束しただろ!悪化させてどうする!?」
「わざとだよ!!」
「ネル……」
「………」
私の言葉に、オビ=ワンは口を噤む。
ボトルを捨てられたら、身体の痛みを誤魔化せなくなる。アルコールは痛みを麻痺させてくれていた。冷めた時が地獄だけど、楽になりたかったから、酒をやめなかった。
アルコールの過剰摂取で頭も痛くなるけど、そんなのは些細な問題だ。
パドメの護衛さえできればいい。
「ネル、なぜジェダイを遠ざける?」
「なぜ?言わなきゃ分からない?あんたも評議会のメンバーでしょ?今のジェダイがどんな状態なのか分からないわけ?」
「そういう問題じゃないだろう。結局お前はどっち付かずだ。評議会はこのままにできないぞ。」
「絶対にジェダイには付かない。」
オビ=ワンを追い出して溜め息を吐き、ブランケットを放り投げシャワー室へと向かう。
シャワーを浴びながら、私はずっと考え続けた。
シディアス卿の1歩先、いや、3歩先まで進まなければ、何も変わらない。その為には、パドメのことも欺かなければならない。今になって、孤独は不利だと学んだ。
協力者が必要だ。
「ネル、どうしたの?」
身支度をしていると、パドメが会合から戻ってきた。
「少し出掛ける。警備は万全だから安心して。」
「ネル」
「ん?」
「気を付けて。」
「ありがとう。」
懐にライトセーバーだけを隠し持って、パドメのアパートメントを出る。
エレベーターに降りようとすると、オーガナ議員と鉢合わせた。
敵だったこともあり、議員の表情は曇った。それに加えて、私がパドメの側にいることも良く思っていないだろう。何もできないオーガナ議員だけど、彼の気持ちがはっきり伝わってくる。
「久しぶりだな。」
「………どうも。」
通り過ぎようとすると、呼び止められた。
「何?」
「もし怪しい動きがあれば、容赦なく捕らえる。覚悟したまえ。」
「勝手にして。」
振り返らずにそう吐き捨てて、エントランスを出て行く。
知り合いがいないことを確認して、私はコム・リンクをエピに繋げる。
エピは護衛部隊から外れて、先日逃がしたドゥークー伯爵と一緒にいる。エピにドゥークーの手を治療させ、義手を着けさせた。“マスター・ドゥークー”にも働いてもらう。
周波数が安定して、ホログラムにエピが映った。
『はーい、こちらエピでーす。』
「エピ、ドゥークーの腕は?」
『治療も完了しました!それで、何用でしょう?』
「ドゥークーに代わって。」
ホログラムからエピが消えて、ドゥークーが映る。
『なんだ?』
「ほんと太々しい奴。お礼くらい言ったら?」
『お前自身の為にしたことだろう。礼を言う筋合いはない。』
「よくお分かりで。」
『何をさせるつもりだ?』
「シディアス卿を倒す為に、行動する。」
私の言葉に、ドゥークーは眉間に皺を寄せる。
私とドゥークーにとって、シディアス卿は尊大な師だった。その師を倒すとなれば、簡単にはいかない。状況的にも、精神的にも。
シディアス卿は私達にとって、高すぎる壁だ。
『シディアス卿を甘く見るな。お前が私を逃がしたことで、予期されている。我々が繋がっていることなど、お見通しだ。』
「そんなの承知済みだよ。だから、考えがある。」
私の考えを、ドゥークーに明かした。
この話を知っているのは、私とドゥークー、エピだけだ。誰にも言えない。誰かに知られてはならない。
『クラウド、主の目的はなんだ?』
「………新しい弟子。」
『誰なのか見当は付いているのか?』
私は黙って頷く。
私が光明面に誘われるように、暗黒面に誘われる者がいる。誘惑の種は、何年も前に植え付けられていた。そう、私が未来から送られる前からだ。
「準備ができ次第、また連絡する。ご高齢のあんたは待機してて。」
『生意気な小娘め。』
「やだ照れちゃう♡」
『さっさと行け!』
ちょっとふざけただけなのに。
ドゥークーに通信を切断されて、私はジェダイ聖堂へ向かった。
入れ違うように、オビ=ワンの旗艦が地上を離れていくのが見えた。その辺のジェダイに聞いたら、ウータパウで分離派の幹部共が潜伏しているらしい。かなりの確率で、グリーヴァスもいるだろう。
「スカイウォーカーは?」
テンプル・ガードに、アナキンの居場所を問う。
「聖堂にいる。」
「どこ?」
「自分で探せ。我々は敵ではないが、味方でもない。」
「あっそ。」
テンプル・ガードの態度は、オーガナ議員と同じで当たり前の反応だ。ジェダイだけでなく、議員の側近を殺したこともあった。懺悔する気はないから、何とも思わないけど、一々面倒臭い。
「スカイウォーカー!」
アナキンを見つけ、私は声を張り上げて呼び止める。
「君から声をかけてくるなんて、珍しいな。」
前回アナキンの懇願を突っぱねたから、彼は私に嫌悪の感情を見せる。
「あんたの頼みを断ったのはごめん。でも、私にも決め事があるの。」
「決め事?人を救うことに、決め事なんか必要ないだろ。」
「分かってる。でも、今は全部忘れてほしい。私情も、事情も、全部。」
ジェダイやシス、敵や味方、何も関係なく、アナキン・スカイウォーカーとエレノア・クラウドとして。
「アニー、話がある。2人だけで。」
アナキンは、了承してくれた。私とアナキンは聖堂の格納庫へ入り、向き合う。昔馴染みの、友達として。
全ては、パドメの為に。
お待たせしました!
引っ越し終わったので頑張ります!!