どれだけ時間が経ったのか、何かが変わった。
檻の中で、私は悲鳴を聴いた。
何が起きたのか、すぐに分かった。
シディアス卿が計画した、ジェダイの粛清だ。始めにウィンドゥ達の悲鳴が聴こえ、私はジェダイ抹殺命令を予期した。オーダー66が発令され、多くのジェダイがクローン・トルーパーに殺された。
檻に入れられた私に、できることは何もない。できるとすれば、黙って殺されることだけ。恐らく私も粛清対象だろう。ジェダイだけでなく、シスの計画を知る私も殺される。
クローンがここに来るのも、時間の問題だ。
だけど、私がここを脱出する術はない。
「やり残したことがあるのに……」
こんなところで死ぬわけにはいかない。
それに、アナキンが暗黒面に堕ちたのを感じた。
シディアス卿は欲しいものを手に入れ、野望を叶えた。野望を叶えた次の行動は決まっている。支配の障害である、邪魔者を消すこと。
生き残ったジェダイは、シディアス卿が死ぬまで追われることになる。
「──────!」
「──────。」
檻の外にいる、クローンの会話が聴こえる。
良い予感はしない。外のクローンも、バイオ・チップが働いている。例外はない。“最高議長”の命令に従うだろう。
「っ……」
クローンが来る前に、手足をカフを外そうと足掻く。暴れる度に電流が流れ、体力が少しずつ減っていく。それでも諦めず、私は磁気フィールドから逃げようと必死になる。
暗黒面に手を伸ばしても、磁気フィールドから逃れることはできなかった。
「………」
オビ=ワンに謝らなきゃ。
最後に謝罪がしたかったな。あの人には迷惑しかかけてない。私がバカなふりをしたままでいれば、こんなことにならなかったのに。
こうして拘留されているのは、自業自得だ。
殺されるのも、自業自得。
「ごめんなさい……」
人知れず、小さく呟く。
その謝罪が、オビ=ワンに届くことはない。
「嘘を吐いてごめんなさい……」
届かないと分かっているけど、心から謝った。
そこへ、クローン・トルーパー2人が檻に入ってくる。彼らはブラスターを構え、頷き合う。そして、2人は私にブラスターを向ける。
「ふ…ふふっ」
思わず笑ってしまった。
自分勝手な行動で、拘留されたんだ。自分が悪いのに、私はシディアス卿のせいにしていた。殺されるのも、私が悪いから。
そう思ったら、笑わずにはいられなかった。
「気でも狂ったか?」
「構うものか。殺せ。」
「ああ。」
ブラスターの安全装置が外され、ついにトリガーが引かれる。
私は目を閉じて、報いを受け入れることにした。これは、然るべき罰だ。私が犯した罪は消えることはない。
さよなら、オビ=ワン。
だけど、いくら経っても痛みは来なかった。恐る恐る目を開けると、バトル・ドロイドが後ろからトルーパーを撃ち殺していた。私は訳が分からず、唖然とドロイド達を見下ろす。
「エピ……?」
「エレノア様!無事で良かったです!」
「なんで……」
計画では、まずバトル・ドロイドの機能を停止させられるはずだ。なんで動いているのか、分からない。自分が生きていることすら、不思議でならない。
「早く出ましょう!フレイ!装置を壊せ!」
「ラジャラジャ!」
磁気発生装置が壊され、私は解放される。
座り込む私に、エピは急かしてくる。だけど立つ気力がなくて、放心したままだった。エピの指示で私はグレイに背負われ、私達は檻から逃げ出す。
お気に入りのドロイド達に救われて、私は無意識の内に泣いていた。
「人間は泣き虫が多いなぁ。」
「だよなぁ。」
「人間、泣イテバカリノ生キ物。」
「フレイうるさい……」
泣きながらフレイに文句を言って、グレイに運ばれていく。
「………パドメの護衛は?」
「アミダラ議員は、クローン・トルーパーがいるので問題ありません。」
「そう……」
外へ出て、ミスマッチがジャックしていたシャトルに乗り込み、船はコルサントを離れる。グレイに個室まで運ばれて、寝台に横になった。ベイが持ってきたホットミルクを飲み、次第に眠気が襲ってくる。
誰にも頼れないし、頼る気はない。
私は逃げるしかない。
「エピ」
「ハイ?」
「そこにいて。」
「ラジャラジャ!」
エピを残し、他のドロイドは個室から追い出す。
今は1人になりたくない。ドロイドでも、話し相手が欲しかった。誰かいないと、精神が狂いそうだ。
その時、シャトルにアラートが鳴り響く。
「何?」
「コルベットです!」
「誰の?」
「あれは……オルデランの船です!」
シャトルはトラクター・ビームに捕らえられ、格納庫に収容されていく。
疲れ切った身体を無理矢理起こし、コックピットへ走る。後ろからエピが付き従い、コックピットに駆け込んだ。ハンルとディンの操縦を横目に、私は爆弾を用意する。
オルデランの議員、オーガナが敵に回るなら受けて立つ。
ただの人間なんて、どうとでもなる。
「エレノア様!」
シャトルのハッチが破られ、オルデラン人が突入してくる。その先頭には、死んだと思っていたオビ=ワンがいた。まさか生きているとは思わなくて、構えたブラスターを下げてしまう。
次の瞬間、私はフォース・プッシュされて床に叩き付けられる。
それから、オビ=ワンが私の胸倉を掴み上げ、壁に押し付ける。
「お前の仕業か!?」
「半分不正解で、半分正解。まぁ、もうどうでもいい。私も抹消対象だしね。」
「ネル……?」
私の様子がおかしいことに気付いた彼は、襟を掴む手をそっと離す。
その場に座り込む私に、オビ=ワンは溜め息を吐く。武器は取り上げられ、私とミスマッチは隊員にブリッジまで連れていかれる。ブリッジにはヨーダがいて、他のジェダイは粛清で死んだのだと知った。
これが、私が望んだことだ。
望み通り、ジェダイは滅んだ。
「エレノア、良きドロイド達じゃのう。」
「………」
「クローン達が裏切った理由を知っておろう?」
「………命令が下っただけ。」
「命令?」
「最高議長からの、ジェダイ粛清命令。これで満足?」
嘲笑いながらも、私の頬には涙が流れていた。
これが望んだ結果だ。ジェダイなんか滅びればいい。そう願って、夢を叶えようとした。
だけど、これは私の理想じゃない。
「ネル、ドロイドを停止させろ。話はそれからだ。」
「ミスマッチ………機能停止。」
ミスマッチはみんな電源が落ちて、機能停止させる。
個室に連れていかれ、私は部屋の隅で膝を抱えて蹲った。オビ=ワンとヨーダはずっと話をしていて、アナキンの所在も不明だった。
アナキンが間違いを犯していないか心配だ。