亡霊は密かに忍び寄る
帝国樹立から15年後。
帝国の支配が衰えることはなく、銀河の圧政は強くなる一方だった。ジェダイの存在は薄れ、存在を知る者も少なくなっていった。
そんな中、各地の反乱分子は手を合わせて、反乱同盟軍となった。
だが、全ての反乱分子が加わったわけではない。
パルチザンを始め、“亡霊”と呼ばれた反乱分子もその一つだった。亡霊はコメル宙域に現れる反乱分子で、その正体は誰も知らない。また、亡霊はシンジケートや海賊とも関わりがあった。しかし、彼らもはっきりと正体は掴めなかった。
誰も正体が分からず、痕跡を残さず幽霊のように消える。
それが亡霊と呼ばれた反乱分子だった。
「何だと!?」
「本当よ。」
フェニックス・ホームのブリッジで、ケイナンとアソーカが深刻そうに会話する。
その亡霊が、反乱同盟軍に接触してきたのだ。
実体の分からない反乱分子とどう応対するか、ブリッジで話し合われることになり、サトーとアソーカが皆に意見を求めた。一番警戒したのはケイナンで、トレイビス上院議員の時のような反応をする。彼は亡霊が帝国の罠なのではないかと疑った。
「けど、仲間が増えるなら良いことよ。」
「そうかもしれないが………不安要素が多すぎる。」
ヘラの言葉にも頷かず、ケイナンは渋る。
もし罠なら、反乱軍を危険に曝す。ケイナンはその心配をしていた。それを口にすれば、ゼブも同意する。
だが、ケイナンのパダワンであるエズラが賛成した。
「会ってみようよ。何も分からないなら、逆も想定すればいいだけだろ?」
「簡単に言うな。」
「いいえ、それもいいかもしれないわ。」
「アソーカ!」
「良い可能性もあるなら、彼らと会うべきよ。」
ケイナンは渋々了承し、反乱軍は亡霊と合流することになった。面会はゴースト・チームとアソーカが任された。何かあっても、臨機応変に対応できるとされたからだ。
ゴーストがランデブーポイントに着くと、亡霊は既に到着していた。
亡霊は古いコルベットに乗っていて、船は多くの改造が施されていた。ゴーストとドッキングをして、ヘラ達はコルベットのドアが開くのを待つ。
やがて足音が聴こえ、ドアが開いた。
そこにいたのは15人程のマスクをした人達だった。
「初めまして、反乱軍の皆さん。」
前に出た亡霊の1人が、口を開く。
マスク越しの声は女性のもので、丁寧な口調だった。
「私達も反乱軍に加えていただけますか?」
「何が目的だ?」
ケイナンが質問に質問を返す。
「目的は、帝国を倒すことです。強いて言えば、力を貸してほしいのです。」
「その前に、全員マスクを外してくれない?」
ヘラの頼みに、亡霊の女性は了承する。
女性の指示で、亡霊の面々は次々とマスクを外す。その素顔に、ケイナン達は驚く。なぜなら、メンバーの半数以上がバトル・ドロイドだったからだ。
そして、アソーカは女性の素顔に一番驚いていた。
「パドメ!?」
「アソーカ、お久しぶりですね。」
「どういうことですか…?」
パドメは寂しげに微笑むと、コルベットの中へ案内する。亡霊の他のメンバーは席を外し、ケイナン達とパドメだけになった。休憩室の椅子に座り、ミスマッチのアルがお茶を運んでくる。
「ありがとう、アル。スリープモードに入っていいわ。」
「ラジャラジャ!」
ドロイドが休憩室を出て行くと、エズラがパドメに尋ねる。
「バトル・ドロイドに名前があるの?」
「私が付けたんじゃないわ。ネルが付けたの。」
「議員、そろそろ話を……」
「ええ、そうね。」
ヘラの懇願に、パドメは目を臥せる。
パドメはまず、帝国樹立の話をする。帝国の誕生、エレノアとアナキンの失踪、ドゥークー伯爵との再会、ミスマッチを加えて反乱活動の準備と、順番に話した。
その時、休憩室でホロニュースの中継が映し出される。
そこには、目の前にいるはずの“アミダラ議員”が映っていた。
「議員が2人!?」
サビーヌが驚愕する。
だが、パドメは実際に1人しか存在しない。
「彼女はサーベ。女王の任期の頃の護衛と影武者をしていました。サーベは私の頼みで、元老院にいます。それよりも、反乱軍にお願いしたいことがあるのです。」
「お願い?」
「ネルを探してほしいの。」
パドメはそう言って、頭を下げる。頼りになる助っ人を呼ぶから、力を貸して欲しいと言う。彼女は焦っているようで、そんなパドメに反乱軍は“亡霊”を受け入れることにした。
この時、反乱軍の誰もが悪夢を見るなど、知る由もなかった。
────────
帝国が誕生して15年が経った。
あれから、私は外縁部の惑星に定住した。数多くの事情を抱えての定住だった。私の意思じゃない。
私は綺麗な屋敷の一室で、紅茶を飲む。カップとソーサーを持ったままテラスへ出れば、空にはスターデストロイヤーが見える。不愉快極まりないが、この惑星は帝国が支配している。仕方のないことだ。
それでも、不愉快なのは変わらない。
「まさか……」
そう呟いて、冷めた紅茶が入ったカップを、ソーサーごとテラスの手摺に叩き付ける。
カップとソーサーはバラバラに割れ、赤い水が足元に流れてくる。紅茶が私の足に流れ着き、裸足の両足を汚した。片付ける者は誰もいなくて、私は破片をそのままにして部屋に戻る。
部屋の中は散乱して、照明や酒瓶、グラスなどが跡形もなく落ちている。
ここまで荒らしたのは、他の誰でもない私だ。
「どうして……?」
疑問ばかりが、思考を埋め尽くす。
問いに答える者はおらず、静寂が私を嘲笑う。
「限界だよ……」
もう時間がない。
良くないことが起こる前に、行動しなきゃいけない。
でも、この屋敷を出ることは許されない。これは私自身への罰でもあり、枷だ。一歩外へ出れば、あらゆるものに大惨事が降り掛かる。どうしたら良いのか分からない。
15年も考えたけど、未だに答えは出ない。
座ったソファーにしがみつき、何もできない悔しさに涙が出る。
ジェダイもシスも捨てた結果、残ったのは“エレノア・クラウド”という弱い人間だけだった。