プラットフォームのゲートの上から、ブラスター・ライフルのスコープを覗く。
フェラスが睨んできて、殺意を感じた。
私への強い憎しみを感じていたけど、それが誰からのものなのか分からなかった。私を恨む奴なんて、ゴマンといる。一々特定する気はない。
興味も面白味もなかったけど、プラットフォームに来てフェラスがいると知った瞬間、巡り合わせたこの偶然に狂喜した。
偶然ではなく必然かもしれない。
そう考えたら、楽しくなってしまった。
「クラウド、遠くから射撃なんてお前らしくない。」
「ラストネームだなんて、ジェダイ時代のように名前で呼んだら?」
「俺もお前もジェダイじゃない。それに、ジェダイは滅んだ。御託はいい。さっさと降りてこい。お友達が待っているぞ。」
下を見れば、ケイレブやアソーカ、パドメもいる。
パドメは私を見つめていて、心配しているのが分かった。不安な感情が伝わってくる。パドメの視線に目は向けず、私はフェラスの目を見据えた。
フェラスの虹彩は、金色に染まっている。
暗黒面に深く身を置く証だ。
「エレノア、降りてくればフェラスの思惑に嵌るわ。」
「それはどうかな?」
フェラスの望み通りゲートの上から飛び降り、アソーカ達を素通りして歩み寄る。
残ったトルーパーは私に銃口を向けたまま、警戒を続けた。
「フェラス………馬鹿な男。」
「何だ……っ!!」
フェラスの前で立ち止まり、笑みを見せる。そこで、フェラスは違和感に気付く。それは反乱軍やパドメも同じで、喫驚した。
「あぁ、気付いたんだ。」
「肉体が衰えていないのはなぜだ?」
そう、私の肉体は15年間老けていない。
シスの秘術にも、禁忌がある。私はその禁忌に手を出した。そうしなければフォース・ドレインの代償で、生きた肉体が蝕まれる。結果、私の肉体は衰えることはなく、フォース・ドレインも使える。
ただし、他者の生命エネルギーがなければ成り立たない。奪った生命エネルギーが絶えれば、死ぬことになる。元の年齢の身体にリセットするには、暗黒面から離れるしかない。
だけど、私は離れる気はない。
「シスの禁忌を使っただけ。私にはまだやることがある。」
「くだらない夢以外に、何がある?」
「皇帝への復讐。」
帝国軍の誰もが騒然となる。
私は昔、主に尽くした。自分の為に。自分の為とはいえ、主に言われるがまま手を尽くした。それなのに私は脅威だと言われて、死刑宣告された。
長年言い聞かせてきたけど、いつしか恨みは抑えられなくなった。
「シスが滅びれば、私の夢も叶う。」
「戯れ言を。お前も道連れだぞ。」
「構わないね。」
「俺達シスに敵対するのか?」
「“俺達”?あはははっ!!」
「何がおかしい!?」
フェラスの言葉に、思わず爆笑してしまう。
笑わずにはいられない。フェラスの考え方も、言葉も間違っている。暗黒面にいるからシスなんじゃない。
「あんたはシスじゃない。シス卿はこの世で“2人”。ダース・シディアスと、ダース・ヴェイダーだけ。ちっぽけな復讐心で、シスになれると思わないで。」
そう馬鹿にすれば、フェラスはライトセーバーを起動して切りかかってくる。
私は防ぎつつ、元同期に警告する。
「やめておきなよ。痛い目に遭うよ。」
「嘗めるのも大概に、っ!!あああっ!?」
フェラスの右腕を切り落とし、奪ったライトセーバーと自分のライトセーバーで首に刃を添える。2本の赤い刃は、ちょっとでも動かせば首を落とせる。それを察したのか、フェラスは動けなかった。
「俺を殺せるなら殺してみろ。お前に俺は殺せない。」
「私が殺せない?馬鹿馬鹿しい。」
「殺しちゃダメだ!!」
ケイレブの隣にいる少年が叫ぶ。
少年はまだパダワンだ。暗黒面を怖れている。暗黒面の恐怖を知っているから、止めようとしてくる。だけど、私は既に暗黒面にいる。
「シスをやめたから殺せないと思ってるんだろうけど………違う。私はシディアス卿から人を殺す試練を受けた。いざ殺すってなった時、躊躇わないように。どういうことか分かる?」
「やめ、」
「いつだってあんたを殺せる。私に殺せないのは友達だけ。」
「ネル!ダメ!!」
フェラスを殺そうとした瞬間、パドメがブラスターを撃つ。私は左手の甲を撃たれ、フェラスのライトセーバーを落としてしまった。その隙を突かれて、私は下腹部を貫かれる。
プラズマの熱と、下腹部の激痛に背中から倒れる。
「エレノア!!」
アソーカの悲鳴に、ようやく全員が動き出す。
必死に気力を保ち、アソーカとフェラスの駆け引きを見上げる。
「っ…クソ……」
罵言を吐いて、転がっているブラスターに手を伸ばす。痛みに耐えながら、私は立ち上がる。ブラスターで帝国軍のシャトルのエンジン部分を撃ち、爆破する。
刹那、仕掛けておいた爆弾が連鎖反応で爆破して、辺りは炎上した。
この混乱に紛れ、アソーカ達はプラットフォームから脱出を試みる。
「エレノア!しっかり!」
「うるさい……」
ケイレブの仲間に肩を抱えられて、私もプラットフォームから脱出する。
隠されていた改造貨物船に乗り込み、私は休憩室のベンチに座らされた。
呼吸を整えて、シスの秘術を使う。本当はあまり使いたくなかったけど、放置すれば死ぬ。15年もまともな戦いをしていなかったから、勘が鈍っている。
「ネル!ごめんなさい…!」
マスクを脱ぎ捨てたパドメが、休憩室に駆け込んでくる。
「すぐに治療を、」
「大丈夫……」
傷口が緑の炎で燃えて、次第に塞がっていく。完全に塞がると、炎は消えた。溜め息を吐くと、一気に倦怠感が襲ってきた。
「ごめん、ちょっと疲れた。」
背もたれに寝そべったまま、私は意識を手放した。
フェラスの怒りは強い。憎しみも。あっちもすぐには戦えないから、お互い様だ。
遊んだら殺しておくべきだった。
後始末が面倒だ。