目が覚めてまず思ったことは、お腹が空いたということ。
15年ぶりに戦えば、誰だってお腹空くよね。
「ちょっと!どこに行くの!?」
傷は完治したし、停泊している船から降りようとしたら、マンダロリアンの女の子に止められた。
ここはガレル、船はいくらでもある。
「どこって、出ていくんだけど?」
「何の為に貴女を助けに行ったと思ってんのよ!?」
「知ってるよ。」
「なら…」
「じゃあ、パドメを呼んできて。」
逃げると思われたのか、彼女は私を訝しげに見る。
「ちゃんとここで待ってるから。あ、あと何かご飯くれない?」
「何この人……」
まぁ、普通の反応だよね。
マンダロリアンの子が出て行き、私は休憩室のベンチに座る。
パドメを呼んできてもらってるけど、そう長居はできない。私には帝国との取り決めがある。無効だと言い張ったけど、皇帝はそう思っていない。
長居すればするほど、パドメを危険に曝している。
「ネル!」
ようやく訪れたパドメは、私を抱き締める。
「無事で良かったわ。今までどこにいたの?」
「それは言えない。というか、なんで部外者がいるわけ?」
パドメの後ろには、ケイレブ達がいる。
呼んできてって頼んだのはパドメだけなのに。アソーカまでいる。面倒なことになった。
「部外者ではないわ。みんな貴女の為に、」
「知ってるってば。ケイレブとアソーカ、あんた達の差し金?」
「差し金と言うな。他にジェダイはいないんだ。」
「嫌なら嫌って言えば?あんた達に歓迎されないのは分かってるから。」
「歓迎されない?どうして?」
少年の問いに、ケイレブとアソーカが言いにくそうに口を閉じる。
少年だけでなく、トワイレックの女性やマンダロリアンの女の子、ラサットは知らないだろう。私がどれだけ残酷なことをしたのか。パドメだって、全部は知らないはずだ。
「あぁ、話してないんだ?」
「そんなにやばいことか?」
「あ、ラサットはクローン戦争に入ってなかったね。」
「ああ。」
「ケイナン…?」
少年の問い掛けに、ケイレブは重い口を開く。
「エレノアは昔、シスの暗黒卿だったんだ。」
「ジェダイの宿敵!?」
「そうそう、ライロスの侵略にも手を貸したんだ。」
「自分で言うな。」
トワイレックと少年の目が変わった。
「ネル、」
「私の悪意を黙ったまま加える気だったの?」
「それは……」
「てことで!船を降りるね!」
「ネル!!」
ハッチへ向かおうとすれば、パドメが止めてくる。
腕を掴もうとする彼女の手を叩き落とし、目でもパドメを拒んだ。今回はみんな無事だったから良かったものの、次はそう簡単にはいかない。フェラスも追ってくるだろう。
「今回は私一人で傷を引き受けたけど、」
「引き受けた?どういうこと?」
「本当なら、ケイレブがフェラスに殺されていた。だから私が刺されたの。これ以上私に関わらない方がいい。」
今度こそ休憩室を出ようとすれば、アソーカが立ち塞がった。
「エレノア、帝国との取り決めって何なの?」
「そんなもの結んでないって。」
「いいえ。傍受した通信ではっきりと聞いたわ。ルシル卿との取り決めを破れば、ヴェイダー卿に処分される、と。答えて、エレノア。」
帝国め、軽々しく通信するなよ。
取り決めは帝国というより、皇帝と結んだものだ。私が大人しくしていれば、皇帝は約束を守る。たったそれだけのことだ。
「答えられない。」
「そんなことあるはずないわ。」
「取り決めなんてしてない。だから答えられない。」
「どうしても言えないなら、他の人に聞くわ。」
「へぇ、誰に?」
呆気らんと言うと、アソーカはとある人の名前を告げる。
「ティラナス。貴女がよく知る人よ。」
「卑怯って言葉知ってる?」
「卑怯は貴女よ。過去を1人で背負おうとしている。」
「過去は過去。割り切ってるだけ。あんた達には重すぎる。」
アソーカの思惑は分かる。私を反乱軍に加えることで、アナキンを探そうとしている。だけど、アナキンは皇帝の隣にいる。見つかるわけがない。
代わりになったアナキンは、今も私を拒み続けている。
パドメがこの事実を知れば、彼女は悲しむ。子供達にも、二度と会えなくなる。パドメは何も知らない方がいい。
「アソーカ、あんたが聖堂を去った日に、私に聞いたよね?なぜシスになったのかって。今答えるよ。シスになったのは、ジェダイを滅ぼす為。これで満足した?」
そう吐き捨てればアソーカではなくて、パドメが涙を流す。
「ネル……お願いよ………」
「パドメ、私は消えたアナキンの為に行動してるの。許してなんて言わない。だから私を追ってこないで。」
「貴女の人生も考えて!ネルには夢があるでしょう?」
「その為に、皇帝という障害を排除しようとしてるの。私やパドメ、アナキンの未来の為にね。」
別れの言葉を告げ、私はハッチを降りる。
ところが、ハッチの向こうには“ティラナス”がいた。
ティラナス、それはシスの名で、ドゥークー伯爵のことだ。私もドゥークーも暗黒卿ではないから、お互いを“ティラナス”と“ルシル”と、ダースを付けずに呼び合っている。
ティラナスは私の道具として扱っているけど、彼の方が経験が豊富だ。お得意の口舌で、諌めてくる時がある。元ジェダイ・マスターの言うことは的を得ていて、言い返せないことが多い。その点では、ティラナスのことが嫌いだった。
「そこを退いて。」
「愚か者め。一度手を出したお前が悪い。」
「何もせず見てろって言うの!?」
「その通りだ。取り決めを破ったのはお前だ。皇帝が許すと思うか?」
「うるさい!あんたは黙って私に従えばいい!」
「確かに私はお前の道具だ。だが、お前のように落ちぶれてはいない。腹を括れ、ルシル。」
ムカついてティラナスを押し退け、ハッチを駆け降りる。
契約は破棄された。フェラスを送り込んだのも、皇帝だろう。私が反乱軍といれば、フェラスが来る。いや、それ以上の尋問官も来るだろう。
次の行動は決まっている。
戦いに備えなくては。