船を降りて、人の多い市場に紛れ込む。
帝国軍も反乱軍も、私を見つけるのは困難だ。イサラミリがいないからフォース感応者には見つかるけど、普通の人には見つけることはできない。アソーカやケイレブが来る前に、姿を消さなければならない。
「待って!」
誰かに手を掴まれ、私は市場の隅っこで立ち止まる。その先には、AT-STがパトロールで通っていった。今大通りへ出れば、帝国軍が追ってくる。
手を引いたのは、ケイレブの弟子である少年だった。
子供だと思って嘗めていた。
「ありがとう……」
「いいよ。大丈夫?」
「……うん。」
市場の隅で、そのまま座り込む。今はまだ動かない方がいい。パドメ達も、すぐには来ないだろう。
「しばらくしたら、仲間のところに帰りなよ。」
「何言ってんだよ!俺が止めなきゃ、あんたは大通りに出てたんだぞ!」
「私は対処できるからいいの。」
「そういう問題じゃないだろ!」
「ちょっと声量下げて。」
少年は辺りを見渡し、口を噤む。
だけど、話は続いた。
「ねぇ、なんで1人になりたいの?」
「そうすれば、誰も巻き込まずに済むから。」
「何に?」
「私の自分勝手に。」
相手は何も知らない子供だ。大人のことなんて、ほとんど分かってない。目の前の少年だけじゃない。パドメの子供も同じ。
「あんた、名前は?」
「エズラ・ブリッジャー。」
「あぁ、あんたがエズラか。」
「え?」
「あの放送、私も聞いたよ。」
少年、エズラは放送を流した。
帝国に上院議員暗殺の嫌疑をでっち上げられ、声明を流した。ロザルに向けて、立ち上がれとも言った。その放送で、銀河の希望が芽吹き始めている。
「俺が何も知らない子供だと思ってたの?」
「違うみたいだね。」
「違うさ。俺は帝国が嫌いだ。大切な家族を奪われて、ずっと1人で生きてきた。」
「私には分からない。」
「あんたにだって、大切な人がいるだろ?」
その時、エズラのコム・リンクに通信が入る。
相手はケイレブだった。
『エズラ、無事か?』
「ああ、大丈夫だ。エレノアも一緒だよ。」
『本当か!?連れてきてくれ!飛ぶなら今しかない!』
「了解!」
エズラは通信を切ると、私の手を掴む。
「待って!」
「グズグズしてたら出られなくなるだろ!」
「そうじゃなくて!………私のこと、嫌じゃないの?ケイレブが言ってたでしょ?私、良い人じゃないんだよ。」
「最初は怖かったよ。でも、俺は直接関わりがあるわけじゃないから。ヘラは少し怒ってたけど。少し話せば、ヘラも分かってくれるさ。」
それでも動かない私に、エズラは手を引く。引っ張られ、勢いで一歩踏み出してしまう。そのまま手を引かれ、私は歩かざるを得なかった。
エズラの歩くスピードが上がり、気付けば走っていた。
子供だからか、エズラは複雑なことを考えていなかった。アソーカの気持ちを変えたのも、分かる気がする。子供の純粋さを嘗めてはいけない。
でも、エズラは子供だ。
「やっぱ子供だね。」
「子供扱いするなよ!」
「側から見れば、大人を急かす子供だよ?」
「だから子供扱いするなよ!」
遠回りして、ケイレブ達がいるプラットフォームに戻ってきた。
戻って早々、格納庫でパドメが謝ってくる。
「ごめんなさい。」
「パドメのせいじゃない。私が蒔いた種だから……」
「それでも、貴女を追いかけすぎたのよ。何も知らずに、ネルを追い詰めていたわ。ごめんなさい。」
「私こそ……ごめん。パドメには全部話すよ。アナキンのことも。パドメも無関係じゃないよね。」
パドメの為と思って、秘密を守ってきた。でも、それは今日までだ。パドメにも知る権利がある。
ゴーストと呼ばれる船はガレルを離れて、エズラ達はコックピットへ入る。パドメに付き添っていたアソーカは残っていたけど、彼女の視線に静かに首を振った。
「パドメと2人にしてくれる?」
「分かったわ。」
アソーカもコックピットへ行き、パドメと2人になる。
「パドメ、ショックだろうけど、落ち着いて聞いてほしい。」
「どういうこと……?」
パドメに、私とアナキンだけの秘密を話した。
私がムスタファーでアナキンに連れられて行った後、何があったのか。なぜ私だけ戻ってきたのか。どうしてイサラミリを渡したのか。
そして、アナキンはどこにいるのか。
全部、パドメに教えた。パドメは、黙って聞いてくれていた。口を挟まず、静かに耳を傾けてくれている。
話している間、罪悪感から何度も泣きそうになってしまった。
私は、本当に愚かだ。
「ネル、話してくれてありがとう。」
話し終わった後、パドメは私を抱き締める。
「私の為に………ごめんなさい。」
「謝るのは私だよ。大事なことを隠して、遠ざけてきた。15年の溝がこれで埋まるとは思ってないけど、パドメが大切なのは変わらない。それだけは信じて。」
「私だって貴女が大切だわ。」
私の話を聞いて、パドメはどこか安心したような表情をする。
パドメには、ずっと心配をかけていたんだ。
「ねぇ、ネル。アナキンのこと、アソーカに話すべきだわ。」
「でも……」
「アソーカはアナキンのパダワンなのよ。アナキンのことは、アソーカにも話すべきだわ。貴女から話さないなら、私から話すわ。」
私がアソーカに話さないのは、理由があった。
それはアナキンの望みでもあり、アソーカの為でもある。アナキンのことを知れば、アソーカは自ら危険に飛び込む。そんな馬鹿な真似をしたら、私もアナキンも堪えられない。
「アソーカには私が話す。少し時間を頂戴。考えさせてほしい。」
「ええ。」
「ありがとう。」
「ネル」
梯子を登ろうとする私を、パドメが呼び止める。
「もういなくならないで。」
「残るよ。パドメと………アナキンの為に。」
「約束よ。」
「うん、約束する。」
パドメに話したものの、どうすれば良かったのか分からない。
アナキンも私も、他に方法が思い付かなかった。パドメと子供を守るには、こうするしかない。何度も自分に言い聞かせているけど、何一つ解決しない。
答えが見つからなくて苦しい。