〈リベレーター〉を離れ、私はティラナスを伴い小さなシャトルで惑星フェルーシアへ向かった。
フェラスは私を追っている。反乱軍にいては、すぐに見つかってしまう。反乱軍から離す為に、私はあえて単独行動をした。
そして、ティラナスを連れてシャトルで離れたというわけだ。
なぜティラナスが同行しているかと言えば、私の意思じゃない。“マスター・ドゥークー”が訓練を付けると言い出し、無理矢理付いてきたのだった。何せ経験不足のままナイトに昇格したから、訓練が必要だと言われた。
教えてやるからジェダイの技を身に付けろ、と。
シスの訓練なら腐るほどやったし、必要ないと言ったんだけど、ティラナスは許してくれなかった。
あれ?ティラナスが下僕のはずなのに……
「ねぇ、これやる意味あるの?」
「お前の忍耐を付ける為だ。」
かれこれ2時間逆立ちしてる。
ティラナス曰く、私は我慢こそするけど、辛抱が足りないと言われた。
「フォースに集中しろ。」
「この……クソジジイ。」
「聴こえているぞ、未熟者め。」
フォースに意識を集中して、瞑想状態に近付ける。
光明面のみのフォースは久しぶりな為、かなり難しかった。どうしても暗黒面に手を出そうとしてしまい、ティラナスの訓練は困難を極めた。意思的もそうだけど、暗黒面から離れるのは更に困難だ。
暗黒面の方が心地良いから。
ジェダイとしての感覚を取り戻した瞬間、私は盛大に転んだ。
「見えたものに動揺するな、愚か者。」
「いや、だって、」
「言い訳は結構。ジェダイは常に冷静であれ。フィストーにそう教わらなかったのか?」
「………」
「その様子では、師の教えをまともに聞いていなかったようだな。よくも大口を叩けたものだ。」
“マスター・ドゥークー”のこういうところが嫌いだ。
言い返せないから、余計に腹立つ。
「だが、暗黒卿としての素質は充分にあった。」
「充分に?最高の暗黒卿じゃないわけ?しかも過去形?」
「未熟者のお前は、ジェダイとしては不相応ということだ。力に固執してばかりでは、セカンド・ブラザーに勝てんぞ。」
セカンド・ブラザーであるフェラスに勝つには、ジェダイの技も必要だとティラナスは言う。
そもそも私、ジェダイじゃないんだけど。
「準備しろ。」
「うん。」
アラートが鳴り、シャトルはハイパースペースからフェルーシアの軌道へと出る。舵を握り、私はシャトルを森の中に着陸させた。フェルーシアの生き物達は機械音を避けるように、森の奥へ逃げていく。
ハッチを下ろして、私は森へと踏み込む。
その直後、停泊するのを待っていたかのように、帝国のシャトルが頭上を通り過ぎていく。
「ティラナス」
「なんだ?」
「私1人で行く。船を見てて。」
ティラナスは頷き、私は帝国のシャトルが降りた方を見る。
恐らく、フェラスも1人だ。私が1人で来ると思っている。彼の望みは、私を殺すことのみ。欲は暗黒面、“セカンド・ブラザー”の糧となる。
フェラスの下へ向かおうとすると、ティラナスは私を呼び止めた。
「決して手心を加えるな。」
「フェラスを殺しかねないよ、良いの?殺せばジェダイとは言えないけど?」
「心に留めるか無視するか、決めるのはお前次第だ。だが無視すれば、これが最後の助言になるだろう。」
「………分かった。」
ティラナスの言葉が理解できなかったけど、楽に戦う気はない。
森を進み、セカンド・ブラザーが待つ川辺へと向かう。フェルーシアの綺麗な川の畔に、豊かな自然に合わないシャトルが着陸していた。
美しい景色を台無しにするように、フェラスはハッチを降りて、小さな花を踏み潰す。
そして、彼はマスクを外し、ライトセーバーを起動させる。
「久しぶり。」
「致命傷を負ったはずだ。」
「まぁね。でも、私は生きてる。元シスの暗黒卿の私には、シスの秘術なんてお手の物だから。」
私も赤いライトセーバーを起動させ、満面の笑みを見せる。
「今度こそお前を殺す。お前を殺せば、俺は皇帝陛下に認めてもらえるんだ。」
フェラスのその姿は、ルシル卿だった頃の自分を見ているかのようだった。
主の為、友達だった人を殺そうとして、力を付けようとした。ところが、それは主にとって脅威でしかなく、私は切り捨てられた。手に負えない獣は、処分するしかない。
目の前のフェラスも、かつての自分と同じだ。
「あんた、本当に馬鹿だね。」
「何だと……?」
「シディアス卿が喜ぶと思う?」
「何が言いたい?」
「確かにシディアス卿は、あんたを見込んでた。けどね、主人より強欲な下僕なんて必要ないの。使い捨てられるのがオチだよ。」
そう言うと、フェラスは怒り狂って切りかかってくる。
動きを読み、私は冷静にライトセーバーで防ぐ。フェラスは力で圧してくるけど、口角を上げてこちらが圧し返した。反撃されるとは思わなかったのか、フェラスは隙ができる。
だけど、私はあえてスルーして足払いをかけた。
転んだフェラスは、慌てて距離を取る。
「暗黒面に堕ちたところで、たかが知れてるね。」
「貴様…!」
「怒りに支配されるようじゃ、シスの暗黒卿にはなれないし、足元にも及ばないよ。」
遊ばれていると気付いたフェラスは、私にライトセーバーを投げてくる。
起動したままのライトセーバーが飛んできて、私はテレキネシスを使って受け止める。回転式ライトセーバーは目前で止まり、フォースで刃を収める。そのままライトセーバーで切り壊して、フェラスをフォース・プッシュした。
これで全力とか、拍子抜けだ。
前回は私の油断から刺されたけど、今回は私の方がコンディションが良い。
「やる気ある?」
「っ……」
「違うか。勝てないと気付いたんだよね?降参するなら今だよ。」
コンディション良好の私に、怖いものはない。冷静さも身に付けた。怖いのは、皇帝だけだ。
私の夢が壊されるんじゃないかと思うと、とても怖い。
「誰が降伏なんかするか!」
「せっかく平和的解決しようと思ったのに。じゃあ、片方が死ぬしかないね。」
ジェダイの時に使っていたヒルトを取り出して、青いライトセーバーと赤いライトセーバーの2本でフェラスの肩を貫く。彼は仰向けのまま動けず、痛みに呻く。
腰のベルトに仕込んだナイフを取り出し、フェラスに馬乗りになって振り上げる。
「楽しかったよ。」
恐怖に染まったフェラスの顔を見て、つい暗黒面に手を出しそうになる。
躊躇いなく振り下ろせば、障害は1つ消える。悪人である私は、こうすることでしか夢を叶えられない。善人ならもっと違った方法があるだろうけど、私は善人じゃない。
そして、ナイフを振り下ろす。
「っ!?」
フェラスの胸に刺さる直前、私の手は自由が利かなくなった。
「遊ぶなと言ったはずだ。」
「ティラナス!邪魔しないでよ!」
私を邪魔したのは、船を見ているはずのティラナスだった。
「私が教えたことを忘れたか?」
「ジェダイの技を知っても、私はジェダイじゃないんだから無理だから!」
「其奴を殺せば、お前も同等に成り下がるぞ。奴らとお前は違う。」
「手心を加えるなって言ったのはあんたじゃん!」
「殺せとは言っていない。昔と同じ間違いを犯すな。」
無言でフェラスを見下ろし、手から力を抜く。
「分かった。殺しはやめる。その代わり、私がやりたいようにやるから。」
ようやく解放され、ナイフを収めて2本のヒルトを回収する。わざと脚を踏み付けて、私はフェラスから退いた。彼は二度もトドメを刺さなかった私に、激しい怒りを募らせる。
「何なんだよお前達!なぜ殺さない!?」
「フェラス・オリン、お前なぞダース・ルシルの足元にすら及ばん。」
「ふざけるな!お前を殺さなければ、俺がヴェイダー卿に処分されるんだ!」
任務どころか、フェラスは自分の為に独断で私を追ってきた。殺せないとなれば、それなりの処罰を受けることになる。独断行動に関しては、フェラスの自業自得だ。
溜め息を吐き、私は起き上がれないフェラスの襟首を掴む。
「何をする!?離せ!!」
「ティラナスー、私が出てくるまでシャトルに入ってこないでよ。」
私のやろうとしていることが分かったのか、ティラナスは軽蔑の視線を向けてくる。フェラスは、私とティラナスの視線で嫌な予感を感じたらしい。襟首を掴む手から、必死に逃げようと足掻く。
「今回はしっかり責任を取れ。お前の尻拭いは御免だ。」
「もちろん♪」
「呆れた奴め。」
フェラスを引き摺って、シャトルの個室に連れていく。負傷していようが、私には関係ない。私に敵意を向ける間は、私のオモチャだ。
オモチャに選択肢はない。
どっちが上か、身体に叩き込んでやる。