事が済んで、入った時と同じようにフェラスを引き摺ってシャトルを降りた。
放心状態のフェラスに、ティラナスは呆れたように私を見る。
前回とは違い、さすがに二度目は廃人にはならなかった。それでも屈辱的だったのは確かで、フェラスの憎しみは強いままだった。後ろ手に手錠をしていても、抵抗しようとしているのがその証だ。
せっかく怪我を治療してあげたのに、なんで喜んでくれないんだろう。
「暴れても無駄だよ。」
「この……!っ!何をしやがる!?」
「うるさいから麻酔刺しただけ。」
フェラスが眠って、私は彼の胸元からコード・シリンダーを取り上げる。“ヴェイダー卿”に直接通信するには、尋問官のコード・シリンダーが必要だ。
「ティラナス、“これ”見張ってて。」
「物扱いするな。」
「物だもん。」
「何を言っても無駄か。」
「別に良いじゃん!」
「早く行け。」
これはYESということだろう。
コード・シリンダーを持って、セカンド・ブラザーのシャトルに侵入する。見張りのトルーパーは切り伏せ、コックピットの制御パネルを操作した。通信機にアクセスして、私はコード・シリンダーを差し込む。
通信はすぐに繋がり、プロジェクターがチカチカと光った。
映像越しだけど、何年かぶりの再会だ。
『報告が遅い。』
「Hiアナキン♡」
ホログラムのヴェイダーが映り、私は笑顔で本名を呼ぶ。
マスクを着けていても、彼の憤りを感じる。
「マスクを外したら?」
コックピットのベンチに座り、彼に面と向かって話をするように促す。
マスクを無言で外し、アナキン・スカイウォーカーの顔が露わになった。お互い素顔で話せる状況になり、私はドアを閉め、誰も入れないようにロックする。ティラナスに繋がるコム・リンクも切り、外界を完全にシャットアウトした。
そして、私は口を開く。
「フェラスを焚き付けた?」
『お前が取り決めを破ったからだ。』
「取り決めはあんたと結んだものじゃない。私は皇帝と結んだの。余計なことをしないで。私が何も知らないと思ったら大間違いだよ。」
私の反論に、ヴェイダーは怒りに表情を歪ませる。
『“セカンド・ブラザー”はどこだ?』
「私のシャトルで爆睡してるよ。」
『まだ諦めていないのか?』
「諦めない。あんたが心変わりするまではね。」
『“君”と“パドメ”の為に、シスになったんだ。心は変わらない。敵になるなら、容赦しない。』
「………パドメに全部話した。」
ヴェイダーの表情が変わった。
15年前は、私とアナキンだけの話だった。だけど、もう私達だけの問題じゃない。そんな小さな問題じゃなくなったんだ。
「アソーカにも話した。」
『それがどういう意味か分かっているのか?』
“アナキン”の怒りが伝わってくる。
「分かってる。」
『君はパドメとアソーカを巻き込んだんだ!』
「違う。2人は最初から関わってる。この15年間、パドメが何もしなかったと思う?パドメは私とあんたをずっと探してた。分かるでしょう?パドメは生半可な覚悟を持ってない。アソーカもね。」
亡霊を組織してまで、パドメは私を探した。私を探せば、アナキンも見つかると思っていたから。その為に、パドメは何度も危険を冒している。
危険から遠ざける為に離れたのに、パドメは自ら危険に飛び込んでいた。
もう二度と、危ない真似はしてほしくない。
「アニー、取り決めを破ったのは悪かった。でもこのまま放置してたら、私達は後悔する。だから、これ以上闇に堕ちないで。」
『………できない。』
「どうして!?あんたは暗黒面に、」
『シスをやめろって言いたいんだろう?』
「だったら……」
『僕だって何もしてこなかったわけじゃない。』
言いたいことは山程あるのに、何も出なかった。
『君が僕の為に動いていたのは知っている。昔の君みたいに親友を拒む程、落ちぶれちゃいない。君の為に、僕も手を尽くしたんだ。』
「知っている……?」
『黙っていられるはずがないだろう。』
話が違う。アナキンは何もしないと約束したのに。これじゃあ私の努力が無駄になる。
『“セカンド・ブラザー”に聞くといい。彼も協力者だ。』
「は……?」
『まだ戻れない。パドメに愛していると伝えてくれ。』
「え、知って、」
ヴェイダーはそれだけ言って、通信を切断する。
アナキンは、パドメとサーベが入れ替わっていると知らないはずだ。いや、気付かない方がおかしい。知らないふりをしているのか。
ややこしいことになった。
ともあれ、フェラスが協力者?私を殺そうとしてきた男が?殺意を向けてきたあの男が、味方とは思えない。
昔はアナキンの嘘を見抜けたのに、今は彼の心が分からない。
「意味分かんない……」
コム・リンクでティラナスに連絡をして、尋問官のシャトルに爆弾をセットする。
セカンド・ブラザーが死んだと思わせなければ、また追手が増える。無駄だと思うけど、フェラスを諦めさせるには丁度良い。
シャトルに戻り、ティラナスとフェラスの待つ個室へと入る。
フェラスは目を覚ましていて、ようやく大人しくなっていた。
「ティラナス、席を外して。」
「殺しは、」
「分かってる。殺さない。」
約束すると、ティラナスは黙って出て行く。
フェラスと2人になり、私は反対側に座る。項垂れるフェラスに声をかけると、彼は顔を上げた。
「あんたがアナキンの協力者ってどういうこと?」
「俺に聞くな。」
「協力者なら教えてよ。」
「シスの奇才が聞いて呆れるな。」
「奇才?」
「なぜ皇帝はお前を疎んでいる?」
その答えは、私と皇帝しか知らない。
単純に答えるなら、私は皇帝の脅威だからだ。シディアス卿を凌ぐシスの秘術を持っているせいで、危険視されている。皇帝に奇才と呼ばれたのは、完全なる皮肉だ。
奇才と呼ばれるのは、シディアス卿に疎まれている証拠だ。
「私はね、ヴェイダーの前座だったの。」
「知っていてシスになったのか?」
「夢の為に、“主”の望みを知っていながら弟子になった。夢を叶えたくて、シスの秘術を習得して、開発した。自分とシスの為に。」
「俺はこんな馬鹿に振り回されていたのか……」
「へぇ、死にたいんだ?」
慌てて口を閉じるフェラスに、私まで馬鹿らしくなってしまう。
「教えてやってもいい。ただし、条件がある。」
「何?」
「今度は合意でやらせろ。」
一瞬何を言っているのか分からなかった。フェラスの口から出た“合意”という言葉に、彼が真面目な性格だったことを思い出す。だけど、私は楽しみたいタイプだからお断りだ。
「あはははっ!嫌に決まってんじゃん!」
「変わらねぇだろ!」
「愛の有無で変わるし、あんたなんかタイプじゃないから!」
「本当にクズだな!」
「ありがとう♡」
「褒めてねぇ!!」
自分の性格が悪いのは、生まれた時から知ってる。
だって、育てたのはクソオーダーだもん。
「というか、私が嫌いなんじゃないの?」
「黙れ。条件を変える。」
「どんな条件?」
フェラスから違う条件を出されて、私は爆笑する。疑惑から確信に変わり、フェラスの魂胆に気付いた。どうして2度目のお仕置きで壊れなかったのか、やっと納得できた。
乗ってやるのも一興だ。
フェラスの手錠を外して、私の足元に跪かせる。立ち上がった彼の目は、ジェダイのものだった。フェラス・オリンは、とんだ策士だ。
次の段階に進む時が来た。
夢まで、もう少しだ。
あ、その前に、相手を見つけなきゃ。
合意は大事(寝言)