マスターとジャー・ジャー、パドメがワトーのガラクタ屋に入っていき、私はその隙に市場へ紛れる。
マスターが気付くことはなく、私は一人市場を満喫する。
思う存分楽しむぞぉー!!
「すみません、これください!」
「あいよ。」
ブルーミルクを買い、私は飲みながら屋台を離れる。
そこへ、黒いフードを被った人影が目に入る。薄ら寒いフォースを感じて、つい目で追ってしまう。得体の知れない気配に、背筋が凍った。
只者ではないのは確かだ。
脳裏にある可能性が過ぎるけど、間違いかもしれない。ジェダイなら怖れるべきかもしれないけど、私は期待の方が大きかった。その期待を掻き消して、気のせいだったと思うようにした。
「あり得ないよね………」
気にしないようにして、別の屋台でフルーツを買う。
「一つください!」
フルーツを受け取ると、さっきの嫌な気配を感じた。少し怖ろしくなって、私は人目を避けるように裏路地へ逸れる。安堵して、フルーツを食べようと気を抜く。
その瞬間、赤いライトセーバーが襲ってきて、咄嗟にライトセーバーで応戦する。
気を抜いていたせいでしっかり防御できず、力に押し負けて片膝をついてしまう。体勢が崩れたところを蹴飛ばされ、うつ伏せになった私の首に赤い刃を添えられる。
襲撃者の目を、真っ直ぐ見上げた。
「これがジェダイか。弱い。」
「………」
殺されそうだというのに、私は襲撃者に見惚れてしまった。赤いザブラクの男の、圧倒的な強さに憧れを抱いた。同じフォース感応者なのに、ジェダイにはない強さを持っている。
私には、その強さが羨ましかった。
「何を見ている?」
「殺す前に教えて。その強さの秘密を。」
そのお願いに、彼は私の考えに気付いたみたいだった。
「おかしな奴だな。俺はお前を殺そうとしている。それなのに、なぜ俺を怖れない?」
「私が怖いのは、夢が叶わないことだけ。」
「夢だと……?」
立ち上がって、彼に私の願望を話した。
私の夢は、愛する人と結婚すること。ジェダイをやめるには、強くなってマスターに認めさせなきゃいけない。弱いままだと、私は心が不安定だと判断されるかもしれない。
抵抗しないと分かったのか、男はライトセーバーを収める。
「チンケな夢の為に強くなりたいのか?」
「うん。その為に、ジェダイをやめる必要がある。叶わないなら、死んでもいい。その力があれば、マスターより強くなることも不可能じゃない。」
そう答えると、彼は笑い出す。
ジェダイらしからぬ答えだ。ジェダイはジェダイをやめるだなんて言わない。ジェダイは掟に忠誠を誓って、ジェダイとして生きることを誓う。
だけど、私は違う。
私の最終目標は結婚だ。
「面白い。良いだろう、正体を教えてやる。俺はシスの暗黒卿、ダース・モール。」
「シスっ!?滅んだはずじゃ……」
シスは1000年前に滅んだはずだ。仲間内で殺し合い、共倒れしたと聞いた。ジェダイ・オーダーは、シスの復活に気付けなかった。
いや、生き長らえていたことに気付かなかったんだ。
「だが、こうしてお前の前にいる。」
「ダース・モール……」
「お前の名は?」
「エレノア・クラウド」
「そうか。エレノア、あのジェダイに報告するか?」
「………しない。」
「ほぅ?」
ここで報告したら、私の夢は叶わない。
シスはまた倒され、私はジェダイのままだ。ジェダイでいたら、私は結婚できない。愛情は、掟で禁じられている。掟を破るなら、ジェダイをやめるしかない。
それに、ルールは破る為にある。
「報告したら、貴方から何も聞けなくなる。」
「やはり頭のおかしい小娘だな。」
「暗黒面の力を教えて。」
「是と言いたいところだが……」
「何をすればいいの?」
「覚悟を見せてもらおう。あの若いジェダイなら簡単だろう。奴を殺せ。」
モール卿には全てお見通しらしい。
若いジェダイとは、オビ=ワンのことだ。彼がパダワンだということも、彼は知っている。モール卿はオビ=ワンを殺せと言っているんだ。
オビ=ワンを殺せば、暗黒面を学べる。
楽なことなのに、私は一歩手前で踏み止まっていた。一線を越えてしまったら、後戻りできなくなる。人を殺したことのない私には、とても大きな壁だ。
登りやすい壁でも、理性という向かい風が私を阻んでいる。
「できない……」
「何……?」
「殺す必要なんてないでしょ。」
出てきた答えが、その言葉だった。殺すこと以外で、逃げ道を探していた。誰かを殺さなくても、暗黒面に繋がる道はあるはずだ。
「臆病者め。仲間を殺せぬのならば、暗黒面の力は程遠いぞ。」
「遠くても構わない。」
モール卿がそう言うと、私は呼吸ができなくなる。彼は私に手を向けて、首を絞めるような手振りをしている。モール卿から、禍々しいフォースを感じた。
これは、シスの技だ。
暗黒面の力を直に感じて、血の気が引いた。
「臆病者に用はない。次に会った時は殺す。臆したことを後悔するがいい。」
乱暴に離され、私は咳き込む。
ダース・モールは振り向きもせず去っていった。私はただ呆然となるしかなかった。シスと遭遇したのに、生きていることが奇跡だと身を以って知った。
これが恐怖だと、ようやく分かった。
シスの暗黒卿は怖ろしい。