あれから幾日か経ち、また古い知り合いと再会した。
ケイナン達が任務から戻ってきて、一緒に連れてきた人に、メンテナンス作業の手を止める。
「よぉエレノア!元気だったか?」
「ホンドー、半径2メートル以内に近付かないで。」
「何だよ、久しぶりの再会だろうが!」
ホンドー・オナカ、海賊で、私の元恋人だ。
ホンドーとは振られて以来、ずっと会っていなかった。私も私できっぱり忘れることにしたから、連絡を取ろうとすらしなかった。あの後1人か2人は好きになった人はいたけど、みんな死ぬか殺されるかでいなくなったから、私はずっとフリーだ。
「ねぇケイナン、なんでこの人がいるわけ?」
「会って困るような相手でもないだろ。」
「気分が悪い。」
その言葉に、ホンドーが笑みを浮かべて近付いてくる。
絶対わざとだよね?
「過去とはいえ、俺は元恋人だろう?随分冷てぇじゃないか。」
「振ったのはそっちだよ。」
近付いてくるホンドーに合わせて距離を取っていると、誰かが間に割って入った。
「用が済んだならさっさと帰れ。」
「フェラス、邪魔。」
「エレノアは男の扱いが酷ぇもんだな。」
「うるさい。フェラス、邪魔だって言ってるでしょ。ホンドーも早く帰って。」
そう返すと、ホンドーはフェラスを見据え、何か納得したように踵を返す。
「虫除けがいるみてぇだからな。邪魔者は退散するぜ。またな、ネル。」
「次はないから。」
ホンドーが帰っていき、ケイナンに恨みを込めて視線を送る。それから、親指で首を切る仕草をして見せた。次は許さんと言うサインを理解したのか、ケイナンは素直に謝ってきた。
そこへ、パドメが深刻な表情で〈リベレーター〉へ入ってくる。
「どうしたの?」
「皆さん、席を外していただけますか?オリン、貴方もです。」
「俺は邪魔者か。」
「ごめんなさい。」
ケイナン達が離れていき、パドメは本題に入る。
「アナキンと話したそうね。」
「……うん。」
「説得できなかったのね……」
「ごめん……」
アナキンと話したことは、パドメに話してあった。彼からの愛の言葉も伝えたけど、パドメの表情が明るくなることはなかった。それが、私の心を締め付けさせる。
アナキンを闇に留まらせているのは、この私のせいだ。
「私がアナキンを連れ戻すから…」
「ネル、アナキンのことは愛しているわ。けど、貴女のことも大切なの。無理はしないで。」
「分かってるよ。心配してくれてありがとう。」
パドメは私を抱き締め、私も彼女を抱き返す。
こうして抱き締め合うのは、いつぶりだろう?
記憶にないくらい、いろんな人達を拒んできた。強く拒んだ人程、いなくなってしまう。アナキンのように、パドメまで離れてほしくない。
「ちょっと良いか、お二人さん?」
「フェラス、空気読んでよ。」
「そんなこと言っている場合じゃねぇぞ。」
「何?」
「ティラナスが倒れた。」
亡霊のシャトルにいたティラナスが、突然倒れたという。
フェラスに続き、私とパドメはシャトルへと入る。久しぶりに会うミスマッチのドロイド達は、元気がなかった。
寝台に臥せったティラナスは、私の姿を見て身体を起こす。
「ティラナス、」
「老いぼれが一人倒れたくらいで、お前達は騒ぎすぎだ。」
「騒ぎすぎではありません。今や貴方は私達に欠かせない人です。」
「そう言えるのはお前だけだ、アミダラ。」
「違う。私だって、あんたに恩はある。」
ティラナスはクローン戦争の頃から、私の指導をしてくれたり、様々なことを計らってくれた。シディアス卿と違い、恩の方が多い。それに、私が〈インヴィジブル・ハンド〉で助けたのは、利用の為だけじゃない。
「お前に良心が残っていたとはな。」
「良心じゃない。借りを返しただけ。まだ返し終わってないんだから、勝手に消えないでよ。」
「ネル……?」
「やはり気付いていたか。」
「………最低。」
フェラスとパドメは、どういうことか理解していない。
「ネル、どういうことなの?」
「ティラナスは死ぬ。本人もその気だよ。」
「ええっ!?」
「死ぬ理由はなんだ?」
「神経系の病だ。治す気はない。無粋な真似はしてくれるな、潔く死なせろ。」
プライドの高いティラナスだ。私が病を治せるのは知っているはずだけど、そんな気は更々ないだろう。醜く足掻くことはせず、安らかに逝くつもりだ。
私が怒ると分かっているのに、あえて教えなかったんだ。
「“マスター・ドゥークー”、貴方の意思を尊重します。」
「闘病しないなんて、」
「パドメ、ティラナスはこれで満足してるんだよ。私達が止めることはできない。」
そう言うと、パドメはティラナスの手を取り、頭を下げる。
「ティラナス卿、貴方のしてくれたことは忘れません。感謝しています。」
「アミダラ、私は悪事の方が多い。礼を言うのは間違いだ。」
「いいえ、大事なのはそれを上回る善意です。貴方の善意は知っています。だから感謝すべきなのです。」
「やはりお前は甘い。」
「ええ、その通りです。」
パドメは立ち上がり、個室から出て行く。
フェラスはティラナスの脇に屈み、残念だと言って声をかける。それだけ呟き、フェラスも個室を出て行った。私は残り、寝台脇に正座する。
「最期まで付き合うよ。」
「馬鹿者が……お前と話すことなどない。」
「1つくらいあるでしょ?」
「………ないな。」
「少しは真面目に考えて!?」
とはいえ、本当に共通項がシスのことしかない。
だから、別の話を聞かせてもらった。
ティラナスが話して聞かせてくれたのは、私が憶えていない、イニシエイトの頃の私の話だった。人から聞くというのは恥ずかしいもので、ひたすらティラナスに小馬鹿にされた。ティラナスからすれば私は子供同然で、ヤンチャを話すように聞かされた。
完全なる子供扱いだけど、多少甘えていた私も私だ。
話は、ティラナスが飽きるまで続けた。
本当はティラナスを生かしたかったけど、選んだのはティラナス自身だ。
なぜか心が苦しい。
よくよく考えたら、ドゥークー伯爵は100歳違いという……