行きたくないと考える間もなく、アソーカが合流して、ジェダイ寺院へ向かうことになった。
不満顔の私に、ケイナンは進む以外の選択肢をくれなかった。
「来るんじゃなかった……」
「行くと決めただろ。」
「そうだけど、いざ目の前にすると足が竦む。」
目の前には、大きな岩が見える。何となく、寺院だと分かった。だけど、入るのはまだ怖い。
ルシル卿だった頃に他の寺院に踏み込んだけど、あの時はなぜ怖れなかったのか分からない。
「どうやって入るの?」
「フォースを使って扉を開けるんだ。」
そう言って、ケイナンとエズラは円の中に立つ。
だけど、私はその円に立てない。
「私はできないわ。」
「どうして?」
「ジェダイじゃないからよ。」
「私も無理。」
「貴方達で開けて。」
ケイナンはともかく、エズラは納得していないみたいだった。
アソーカはジェダイとして名乗れるけど、私は違う。それに私はジェダイよりも、シスとしてのキャリアの方が長い。キャリアと呼んでいいのか定かじゃないけど。
ケイナン達が扉を開き、エズラを先頭にジェダイ寺院に踏み込む。
私が一歩入った途端、背中に悪寒が走る。
「エレノア、大丈夫?」
「まだ平気…」
やっぱり来てはいけなかった。私だけ歓迎されていない。寺院から拒絶されている。
「マスター・ヨーダとどう話したの?」
ケイナンとエズラがヨーダと話したと聞いて、アソーカは私を呼び寺院へと訪れたのだった。
ここへ来た目的は、ケイナン達がシスを倒す方法を知る為だ。そして私は、自分でも理解できない自分の問いを解く為に来た。解決できるなら、嫌悪的存在も利用するんだ。
本当にヨーダが現れれば、の話だけどね。
「実は、向こうから話しかけてきたんだ。」
「じゃあ、瞑想から始めましょう。」
4人で輪になって正座して、目を閉じる。
心を無にして、フォースに集中する。まず変化があったのは、ケイナンだった。扉が見えるらしいけど、私達には何も見えない。
これはケイナンへの導きだ。
「俺だけの道らしい。」
「気を付けて。」
「お前みたいな無茶はしないさ。」
エズラに手を振り、ケイナンは扉の向こうへ消える。
「消えた!」
「寺院では何でも起こるから。」
「あー、次は私みたい。」
この扉も2人には見えないみたいで、私専用の扉だと思われる。
これ、入らなかったらどうなるんだろう。
「帰りたい……」
「ダメよ。」
「悪いことは起きないって!」
「私にとっては悪いことなんだよ……行ってくる。」
仕方なく立って、扉に向かって歩く。恐怖で鼓動が速くなり、深呼吸する。息を深く吸い、目一杯長く吐き出した。
扉を潜ると、私はどこかのアリーナへと出た。
このアリーナには見覚えがある。惑星ジオノーシスにあったものだ。私とオビ=ワン、アナキンとパドメが処刑されようとした場所で、今でもはっきり憶えている。
ここは、私の第二の人生が始まった場所だ。
「エレノア」
視線を観客席から下げると、ノートランのジェダイがいた。
衝動的に逃げようとして扉を見ると、消滅していた。逃げ道を奪われたようだ。私はアリーナに閉じ込めれたんだ。
「逃げられないぞ。」
「あんたは死んだはず……」
「そうだ。」
私の元マスター、キット・フィストーが笑みを浮かべる。
フィストーはシディアス卿に敗れて死んだ。最後に奴と話したのは、私が磁気フィールドで拘束されている時だ。嫌な記憶を思い出してしまった。
「人は死ぬとフォースと一体化する。そう教わっただろう。」
「それが何?」
「ジェダイ寺院はフォースが強い場所だ。私が現れてもおかしくはない。」
どうしてなのか、嫌な予感がする。
「お前がジェダイ寺院に来るのを待っていた。」
「だから来たくなかったのに……」
「知っている。だが、お前は学ぶ必要がある。」
「学ぶ?何を、っ!!」
フィストーは間髪入れず、ライトセーバーで切り掛かってくる。咄嗟に防ぎ、私は赤いライトセーバーで押し返してフィストーを蹴り上げる。奴は受け身を取り、ライトセーバーを構え直した。
「暗黒面の“脆さ”だ。」
「脆い?暗黒面は力強くて、」
「確かに強いが、それだけだ。お前は強い自分を認めてもらいたかったんだろう?それで良いと思っているなら、私を倒してみろ。」
「分かった。証明してやる。」
赤いライトセーバーを構え、私はヒルトを強く握り締める。フィストーも笑みを消し、いつものフォームでヒルトを握る。互いに睨み合い、隙を窺う。
何かが弾けたように、私達はライトセーバーを振り被る。
プラズマの刃が交わり、私達はアリーナの砂を舞い上げながらぶつけ合う。
終わる気配のない戦いに、私は怒りを増幅させて、フィストーの後ろから渾身の一太刀を叩き込んだ。
「嘘………」
勝ったと確信したと思ったら、私の腹をプラズマの刃が貫いていた。
「なんで………?」
フィストーはライトセーバーの向きを反転させていた。初歩的な型にやられるなんてあり得ない。しかも、シディアス卿に瞬殺されたジェダイに負けた。
膝をついて、何度もフィストーに問う。
「なんで……?“マスター”、こんなに強かったっけ……?」
暗黒面に踏み込んで、強くなったのに。
「エレノア・クラウド、お前は暗黒面に手を伸ばして何を手に入れた?」
「強い力。不可能を可能にする、魅力的な力が手に入った。」
ライトセーバーが抜かれて、私は重力に従って仰向けに倒れる。
「では、質問を変えよう。なぜ負けたと思う?」
「分からない……」
「お前は力に固執したんだ。怒りと憎しみを力にして、過信した。何度も教えたはずだ、暗黒面は破滅の元だと。」
フィストーは屈み込み、私の頭を撫でる。
その手を振り払いたいのに、身体が動かなかった。
「私はお前を認めていなかったわけじゃない。強さが全てではないんだ。」
「じゃあなんで認めてくれなかったの?ありのままの私はなんでダメだったの?どうして?」
ようやく腕が動くようになり、私はフィストーの手を叩き払う。
偽った私なんて、私じゃない。ありのままの、飾らない私じゃなければ意味がない。私は私なのに。
「まだ分からないか。エレノア、いつからそう考えた?パダワンになってからか?いつからだ?」
「聞かなくても分かるでしょ!あんたはマスターなんだから!」
言われなくても分かっている。
そう仕向けられていたんだ。結婚を願う私を、ありのままの自分だと思い込んでいた。いや、そう刷り込まれたんだ。
パルパティーン最高議長に相談した時、私はあの男の甘い言葉を信じた。
でも、それは言い訳だ。選んだのは私なのだから。
「スカイウォーカーを救いたいのは分かる。だが、お前はまだ勘違いをしている。」
「これ以上何を後悔しろって言うの……」
「お前がスカイウォーカーを救うのではない。スカイウォーカーがお前を救おうとしているんだ。」
「………それは間違いだよ。」
「訂正しよう。お前もスカイウォーカーも、間違った道を選んだ。だからこそ、お前は復讐心を捨てなければならない。復讐心を捨てなければ、皇帝には勝てない。」
フィストーが私の腹に手を当て、傷を治す。プラズマの刃が貫いた傷は塞がり、私の身体は動くようになる。落としたヒルトを渡され、私は無言で受け取った。
「マスター、私は……」
「“ネル”、お前は私の弟子だ。今までも、これからも。」
段々と意識が薄れ、フィストーの声も遠くなる。
「フォースと共にあらんことを。」
その言葉を最後に、私の意識は途絶えた。
最初は怖がっていたはずなのに、今は怖くなかった。
気が付くと、私はファントムにいた。ケイナンの話によれば、私は倒れていたらしい。尋問官が追ってきたから慌てて来てみれば、気絶した私を見つけたという。
私以外にも、ちゃんと収穫はあった。
エズラはヨーダに“マラコア”へ行けと言われたそうだ。
マラコアもいう惑星に、私やアソーカ、ケイナンの表情は曇る。なぜなら、マラコアはジェダイ禁断の地だから。シスだった私すら、避けていた星だ。
あの星は、シスにとって汚点なんだ。
嫌な予感しかしない。