ロザルから戻った後、私はフェラスと2人で別行動をした。
目的は、帝国軍の輸送ルートのデータ奪取だ。データを盗む任務は簡単に終わり、何事もなくシャトルへと戻る。あとは新しい基地である、アトロンのチョッパー基地に帰るだけ。
因みに、フェラスはただの話し相手兼操縦士だ。1人じゃ楽しくないし。オモチャに選択肢はない。
「おい、少しは手伝え。」
「聞こえなーい。」
その帰り道の途中、配線が熱で断線して立ち往生してしまった。何もないセクターで立ち往生なんて運が悪い。しかも下僕と2人きり。
不機嫌MAXな私は、修理をフェラスに丸投げして、ベンチで寛ぐ。
「俺はただのオマケだぞ。」
「なーに言ってんの?居心地の悪いチョッパー基地から連れ出してあげたのに、お礼もないわけ?」
「こっちの方が居心地悪いんだよ。」
「何か言った?」
「もういい。」
フェラスは修理に戻り、レンチを握る。
「早くしないと帝国軍に見つかるよー。」
「いい加減黙れ。」
「退屈なんだもん。」
私の煽りに、フェラスは修理の手を止めて近付いてくる。
逆襲かと思えば、フェラスはベンチに足をかけた。
「何?」
「退屈なら、俺が忘れさせてやろうか?」
「フェラス、どこかに脳を置いてきた?」
「何を言っている?」
「だって、憎しみを感じない。」
ロザルでティラナスが死んでから、フェラスの憎しみを感じなくなった。
憎しみと怒りを秘めたフェラスは、とても魅力的だった。それが今は、ただのジェダイに戻ってしまった。理由が分からないし、何よりつまらない。
「さぁな。なんでだろうな。」
焦らすようにはぐらかされ、フェラスは私に馬乗りになる。そして、私に触れようとして手を伸ばす。頬に手が触れられた瞬間、私は低い声で吐き出す。
「………さっさと作業して。」
苛立ちを抑えて、冷たく命令する。
「なんだ、つまんねぇな。」
「………」
「っ!?」
フェラスをフォース・プッシュして、強引に退かした。吹っ飛んだフェラスは、工具箱をひっくり返して倒れる。私はベンチから起き上がり、倒れた彼の前に立つ。
「調子に乗らないで。あんたは私の下僕なんだから。」
「下僕、なぁ。」
「これに懲りたら、二度と私に触れないで。次は殺す。」
コックピットを出ていき、私は個室に引き篭もった。
1時間後にはフェラスが船を直し、気付けばシャトルはチョッパー基地に戻っていた。
個室で瞑想していると、パドメが私を訪ねてきた。瞑想をやめて部屋に招き入れ、私は壁に寄り掛かる。パドメも隣に座り、放心する私を心配する。
「ネル、どうしたの?」
「フェラスがよく分からない。」
「オリンが?」
「私を恨んでるはずなのに、今は何も感じない。」
「良いことでしょう?」
「もっと悪い気がする。」
私もフェラスも、アソーカでさえも、ティラナスの死で変わった。どんな風に変わったのかは分からない。でも良い変化も、悪い変化も、両方あるような気がする。
「ねぇネル、貴女はマラコアに行かない方がいいわ。」
「どうして?」
「嫌な予感がするの。貴女まで失いたくないわ。」
「必ず戻るよ。信じて、パドメ。」
そう言うと、パドメは私を抱き締める。
私だって、嫌な予感がする。マラコアは暗黒面が強い。元暗黒卿の私に、どんな影響があるか分からない。
パドメは離れると、私の手を取る。
私の手の中には、木彫りのネックレスがあった。
「これ………受け取れない。」
「いいえ、持っていて。」
その木彫りのネックレスは、ジェダイになる前のアナキンがパドメにプレゼントしたものだ。
パドメは、それを私に渡してこようとしている。
「ダメ。アナキンを愛しているなら、パドメが持つべきなの。アナキンを信じ続けて。」
「なら約束して。必ず帰ってくるって。」
「約束する。“2人”の親友の為に、必ず帰る。」
パドメと約束して、私はシャトルを降りる。
アソーカが帰ってきていることを感じて、彼女の下へ向かう。
「アソーカ」
声をかけるけど、アソーカは振り向いてくれない。
「エレノア、アナキンは戻ってくれるかしら……?」
「………戻るよ。私が戻ったんだから。」
そう答えると、アソーカはやっと振り向く。
「そうね…」
「アソーカ……」
「もし皇帝を倒したら、貴女はどうするの?」
考えたこともなかった。
その先のことは、何も考えていない。私は皇帝に復讐することを目標に生きてきた。今は生きる目的は違うけど、明るい未来でどう生きるのか、想像ができない。
「そうだなぁ……今は考えてないというか、何も考えたくない。」
「どうしたの?」
「いろいろ混乱してて……」
アナキンのこともそうだけど、フェラスのことがよく分からない。
今までは手に取るように分かったのに、今は彼が何を思っているのか分からないんだ。
「オモチャが急にオモチャじゃなくなったら、どう思う?」
「何を言っているの?」
「やっぱ何でもない。」
何のことか知ったら、たぶん怒られる。だって、本気で意味不明という顔をしていたから。もう黙っておこう。口は災いの元だ。
「エレノア様ー!」
アソーカを先に行かせて、私はエピの呼び止めに留まる。
「あらエピ、どうしたの?」
「マラコアに行くって、本気ですか!?」
エピの言葉にミスマッチを見ると、みんな私を見ていた。
「大丈夫だって!」
「でも、昔言ってたじゃないですか。マラコアにはシスの秘密があるって。エレノア様に影響があったら……」
「心配しないで。パドメにも約束してるし、必ず戻るから。あんた達の主人は私だからね?忘れないでよ?」
「ラジャラジャ!」
エピのボディを撫でると、塗装が剥げていることに気付いた。
15年も放置すれば、どんな塗料もそうなるか。
「エピ、帰ったらまた塗装してあげる。あ、でもハンルは嫌だよね…トゥーカだし………」
「イイエ、自分ハ問題アリマセン。ドウゾ塗リ直シテクダサイ。」
「本当に?」
「モチロンデス。我々ハ貴女ノドロイドナノデスカラ。」
「ありがとう……必ず帰るよ。」
ミスマッチにも約束をして、私はアソーカとエズラのいるファントムに向かった。
影響は、私も危惧している。何もないことを祈るしかない。これ以上パドメを悲しませたくもない。
私は、私だ。
私はエレノア・クラウド。
ダース・ルシルじゃない。