ファントムがハイパースペースに入っている間、アソーカはレックスとホロ通信をしていた。ケイナンが操縦して、エズラもコックピットにいた。私とフェラスは3人から離れて、無言でハッチに寄り掛かる。
会話は何もなく、私達は端と端に寄って座っていた。
そこで、フェラスが沈黙を破る。
「なぁ」
「何?」
「マラコアには何がある?」
フェラスの問いに、アソーカ達も私に視線を向ける。
「シス寺院がある。」
「ジェダイの言い伝えでは、禁断の地としか言われていない。」
「ええ。」
「シス寺院に、シスを倒す方法があるの?」
「私が聞いた話だと、シスの秘宝があるって。」
私が暗黒卿だった頃、シディアス卿と暗黒面の強い星へ何度か赴いた。モラバンドを始め、様々な星へ行った。その内の1つが、マラコアだ。
マラコアには一度だけ訪れたけど、その時は何があるのか詳しく聞かなかった。
寺院があるとは聞いたけど、ジェダイ寺院のシス版だと思っている。
「お前はファントムにいた方が良いんじゃねぇのか?」
「やめてよ。皇帝を倒したいのは私も同じだから。待ってる気はないよ。」
ハイパースペースを抜けて、私達はマラコアに降り立つ。
オールド・タングの刻まれた塔が、あちこちにある。
「何?他にも人が?」
チョッパーが、近くに船があると警告する。つまり、誰かがいる。探ってみたけど、尋問官ではなさそうだ。
「船はどこだ?」
ケイナンの問いに、チョッパーは分からないと返す。チョッパーにはファントムで待機させ、私達は塔の1つに近付く。
「これ、シスの古代文字ね。」
「読めるか?」
「全部は無理よ。エレノア、貴女なら読めるんじゃない?」
「余裕だね。ちょっと失礼。」
碑の中から、道標になりそうな言葉を探す。オールド・タングを呟きながら、私は視線だけ動かし続けた。指で差し動かして、順番に確認していく。
「エズラ!ダメ!」
アソーカが叫ぶけど、エズラは塔に触れてしまう。
その瞬間、私達の足元が崩れて真っ逆様に落ちる。衝撃に耐えようとするけど、落下の衝撃は一向に訪れなかった。気が付くと、私はフェラスを下敷きにしていた。
いや、フェラスがわざとクッションになったんだ。
「どういうつもり!?」
フェラスを突き飛ばし、怒声を浴びせる。
私の怒鳴り声に、ケイナン達は唖然となっていた。
「助けただけだろ。」
「私に触るなって言ったよね!?」
「咄嗟に手が出たんだ。」
「落ち着け、エレノア。」
「もういい、殺してやる。」
「待て待て!殺しはダメだ!」
フェラスに迫ろうとする私を、ケイナンが慌てて止める。
エズラは寺院を見て、寒気がすると言う。
「あれがシス寺院?」
「そう。」
その時、エズラが何かに気付く。
「危ない!」
エズラの声に、私は回転するライトセーバーを弾き、新たに現れた尋問官の首をフォースで捕まえる。
気道を絞めようとすると、アソーカが静かに宥めてくる。
「エレノア、尋問官を離して。」
「………」
「エレノア」
「………分かった。」
尋問官を岩に突き飛ばし、倒れたところをケイナンとアソーカが手錠をかける。
安心したのも束の間、私とエズラは足元が沈んで更に下に落ちてしまった。見上げた先には、ケイナンとアソーカが心配そうに私達を見ていた。フェラスを置いてきてしまったのが心配だ。
フェラスが裏切らなければいいけど……
「エズラ!エレノアをしっかり見てて!」
「いや逆でしょ!!」
「任せて!」
「エズラまでやめてくれる!?」
ここからでは、上には行けない。下層から寺院まで歩くしかない。前回来た時はこんなに疲れることはなかったのになぁ。
「エズラ、どうしたの?」
「エレノア、なんか怖いよ。」
「そう?」
「分からないの?ずっとイライラしてるだろ。」
そんなことはない……はず。
私はいつも通りだ。何もおかしいことはない。そう、何もおかしくはない。
「それは昔の姿に戻ろうとしている証拠だ。」
「誰だ!?」
低い声に、私とエズラは暗闇の中を見つめる。
現れたのは、フードを被った男だった。フードの中から覗く金色の瞳が、私を鋭く射抜く。そして男はフードを下ろし、ようやく素顔が露わになった。
その素顔に、私は声を上げる。
「モール!」
「えっと……エレノアの知り合い?」
「元恋人だ。」
「1時間限りのね。」
「それって恋人とは言えないんじゃ……」
「そんなことはどうでもいいの!モール、あの尋問官が追っているのはあんた?」
「そうだ。」
モールはエズラを見て、訝しげな顔をする。
「誰だそいつは?」
「彼はエズラ。某ジェダイのパダワンだよ。」
「ほぅ……」
「それで、あんたはなんでここにいるわけ?」
シス寺院に元シスの暗黒卿、答えは分かりきっている。恐らく、モールもシディアス卿に対抗しようとこのマラコアへ来ている。だけど、野心塗れのモールにシスの秘宝は渡せない。
「俺はある男の依頼で、お前の抑止力として来たんだ。」
「………」
「自分でも分かっているだろう、ダース・ルシル。」
「エレノアはもう暗黒卿じゃないんだよ!」
「本当にそう思うか?あの寺院に入れば、嫌でも分かる。さぁ中に入ろうか、エレノア。」
寺院を目の前に、私の鼓動が早くなる。
扉を開ける為に、私は怒りを利用した。暗黒面の力を使い、中の扉を開けていく。その様子に、エズラは不安そうに私を見ていた。
エズラの中にも、暗黒面が渦巻いている。
モールはそれを見抜き、エズラに最後の扉を開けさせた。扉がゆっくり開き、私は目の前の子供が暗黒面の力を使ったことに、胸が苦しかった。暗黒面は、こんな小さな子供が使うべきものじゃない。
寺院の奥に進むと、祭壇なような場所に赤いホロクロンがあった。
あれこそ、モールが望むものだ。
「エズラ、」
「ダメ。私が取る。」
手を伸ばし、暗黒面の力で強引にホロクロンを引き寄せる。手に取った赤いホロクロンは、シス・ホロクロンだった。強い暗黒面のフォースを感じる。
「行くよ。エズラ?」
「やっぱりエレノアが怖いよ。」
「待ってよ。私はあんた達と敵対はしない。ほら、シス・ホロクロンはあんたが持っていればいいから。」
「ごめん……」
シス・ホロクロンをエズラに預け、私達は外へ向かう。
“嫌でも分かる。”
モールの言う通りだ。私は暗黒面に呼ばれている。戻ってこいと、ずっと囁いている。
「扉が閉まってる!!」
「エズラ、そこ退いて。」
エズラの持つシス・ホロクロンを壁に嵌め、最後の重い扉を開ける。
すると外には、ケイナン達が尋問官3人を相手していた。
「エズラ!!」
「シャドー…」
シャドーとは、モールのことだろう。
モールは楽しそうには笑い、この混乱を面白がっていた。
私も赤いライトセーバーを起動させ、尋問官の前に躍り出る。
今こそ、私の素性をはっきりさせるんだ。