誰もが、モールの登場に驚いている。
だけど、尋問官3人の関心は私にあった。
なぜなら、私の心の奥底から暗黒面のフォースが溢れているから。ダーク・サイダーから見れば、私は矛盾しているだろう。
「これは驚いたね。ダース・ルシルに会えるとは光栄だ。」
「私はシスじゃない。」
「どの口が言う?そんなに怒りを滾らせて、今更己を否定するのか?」
「だから抑えているんだよ。」
「馬鹿な女だ!」
小柄な尋問官が切りかかってきて、私は身を捻って相手の脇腹を切り返す。
尋問官は呻きながらも、私の反撃を嘲笑う。
「一時撤退よ!」
女尋問官がそう言うと、3人共ライトセーバーを回転させ飛んで逃げていく。
一旦落ち着き、アソーカとケイナンはモールに視線を向ける。2人は当然ながら、モールに敵意を露わにする。エズラは理由が分からず、私に意味を問う。
「どういうこと?」
「モールは私と同じ、元暗黒卿なの。」
「えっ!?」
「心配するな。言ったはずだ、俺はエレノアの抑止力だとな。それより、急いだ方がいいぞ。奴らはまた戻ってくる。」
「ほら、行くよ。」
ケイナンとアソーカは警戒しつつも、モールの同行を認める。フェラスは何も言わず、モールを見張るように視線を向けていた。
私達はリフトの下へ行き、誰と行くかでモールと揉めた。
「エレノア、お前は1人だ。」
「は?なんで?」
「俺が気付いていないとでも思っているのか?随分甘く見られたものだな。」
「勝手に言って。もういいよ。1人で上がるから。」
壁に手を触れて、私はリフトを下ろす。
「じゃあ、次のテラスでね。」
「エレノア」
「何?アソーカ?」
上がろうとすると、アソーカが呼び止めてきた。その表情は何とも言えないもので、心が締め付けられるようだった。私の何がそんな表情をさせたのか、さっぱり分からない。
「………いいえ、何でもないわ。気を付けて。」
「うん。モール、変な真似はしないでよね。」
「安心しろ、お前の敵にはならない。」
「あっそ。」
「待て。」
「ちょっと、降りてくれる?」
フェラスが、私の立つリフトに踏み込んでくる。
「断る。今のお前は1人にできねぇからな。」
「はぁ?下僕が偉そうに言わないで。」
「なら俺の手を借りないことを祈れ。」
「言われなくても、あり得ないから。」
怒りを抑えつつ、私はフェラスに背を向ける。
また壁に手を触れて、私はリフトを上げる。リフトは私達を運び、テラスへと到着する。テラスへ降りると、リフトはまた下に下りていった。
私達は階段を登り、次のリフトを探す。
マラコアに来てから、私は心の奥でずっと暗黒面の力を感じていた。もう1人の、闇の私が負の感情を燻らせている。
それに、マラコアはすごく心地良いんだ。
「っ!!」
後から上がってきたエズラとモールが、下で女尋問官とぶつかっているのを見つけた。
女尋問官はモールの一手でフォース・チョークされている。
「エズラ!今だやれ!!」
モールの怒声が聞こえ、私はライトセーバーを起動する。テラスから跳び降り、私が赤い刃で女尋問官の首を切り落とした。着地するのと同時に、モールが嫌そうな顔をする。
どちらかと言えば、邪魔されて嫌そうな顔だけど。
フェラスにアソーカ達の様子を見に行かせて、私はライトセーバーを収める。
「余計なことをしやがって!」
「何が余計なわけ?」
「やめてよ2人共!エレノアもどうしちゃったんだよ!尋問官を殺すなんて!」
「じゃあ誰があの尋問官を殺すの?」
「それは……」
「手を汚す人は1人で良いんだよ。」
エズラが辛そうな顔をするけど、やらなければこっちがやられるんだ。仕方がない。それに、私はその訓練を受けている。
そう、人を殺す為の訓練を。
「ケイナン達を助けないと!」
「俺が上に、」
「私が上に行く。あんたはケイナン達に加勢して。エズラ、一緒に上へ。」
「エレノア、お前を行かせると思うか?」
「あんたの魂胆は知ってる。寺院の秘密は渡さないから。行こう、エズラ。」
私はエズラを連れて、寺院の本殿を目指す。
階段を登りながら、エズラは私に話しかける。様子を伺うように、なぜか慎重に話しかけていた。何もないのに、エズラは私に怯えていた。
「ホロクロンをあそこに。」
「分かった。」
本殿に着き、エズラがオベリスクにホロクロンを置く。
その瞬間、ホロクロンが開いた。
「《そこにいるのは誰だ?》」
ホロクロンから声が聞こえて、私とエズラは顔を見合わせる。
「エズラ・ブリッジャー」
「《もう一人は誰だ?》」
「エレノア・クラウド」
「《違う。真の名を言え。》」
真の名とは、一体何のことだろう?
エズラも理解しておらず、疑問符を浮かべる。
「私は他の誰でもない。エレノア・クラウドだよ。」
「《否。与えられた、もう1つの名があるはずだ。》」
「………ダース・ルシル」
「《ルシル卿、お前の望みはなんだ?》」
「私は………」
“主”に切られ、私はシスじゃなくなった。現存するシスは、シディアスとヴェイダーだけだ。この世に、たった2人だけ。
シスの名を、捨てたも同然だ。
「エレノア!急がないと!」
「分かってる。」
「知識を得られるって聞いた。何があるんだ?」
「《その通りだ。知識とは何か、知っているのか?》」
「教えてくれ!」
「《知識とは“力”だ。》」
ホロクロンは突然閃光を放ち、稲妻は寺院の天井を貫く。
寺院の底から、禍々しい力を感じる。恐らく、その力が寺院の秘密だ。シスの知識は、ジェダイの知識と違って、とても生々しい。
その力が解き放たれれば、誰も止められないだろう。
「《ずっと待っていた。》」
「何が起きているんだ!?」
「《生命を滅ぼす力が甦ったのだ。》」
「何だって!?そんなのいらないよ!」
「《では、お前はどうだ、ダース・ルシル?》」
ホロクロンに問われ、私はオベリスクに手を伸ばす。
ヴェイダーやモールに渡すくらいなら、私が使う。この力で、皇帝を滅ぼすんだ。パドメやアナキンを、皇帝の邪悪な手から守りたい。
生命を滅ぼす、この強大な力が欲しい。
私なら、使い熟せる。
「エレノア!ダメだ!」
「《さぁダース・ルシル、その手に力を!》」
誘惑に負けて、私はシス・ホロクロンに触れようとする。
この力があれば、皇帝を殺せる。邪魔者も倒し、私は誰よりも強くなれる。アナキンでさえ、相手にはならないだろう。
「っ!!」
その時、身体の自由が利かなくなり、私は必死に抵抗する。
「ネル、君にその力は渡さない。」
「この……!」
聴こえた声に、私は強引にテレキネシスを解除する。
マスクをした男、ダース・ヴェイダーが私を止めていた。
「ヴェイダー卿、会えて嬉しいよ。」
「子供の前で、間違いを犯すのか?」
「間違い?皇帝を倒す力を得るだけでしょ。間違いじゃない。」
「今の君に何を言っても無駄なようだ。」
ヴェイダーは赤いライトセーバーを起動し、真っ直ぐ私に向かってくる。
なぜか、今は負ける気がしない。暗黒面が、ダース・ヴェイダーを殺せと言っている。暗黒面に従ってヴェイダーを倒せば、私は強くなれる。
邪魔するなら、“アナキン”を殺す気で戦うしかない。
どうしてか分からないけど、今はとても気分が良い。