──────2年後。
世界の狭間の世界で、エズラ・ブリッジャーが1つの扉の前に立った。
その向こうに写ったのは、抱き合うアソーカとエレノアだった。2人はマラコアにいて、正に死の直前を写している。エズラは崩壊するマラコアのシス寺院を見て、咄嗟に両手を伸ばした。
エズラは2人の肩を掴み、勢いよく引く。
次の瞬間、エズラの前にエレノアとアソーカが倒れ込んだ。
「ここは……?」
エズラが起き上がった後、アソーカが起き上がり、辺りを見渡す。
「エズラ!?それに髪が……ケイナンは?」
「ここは寺院の中で……その…いろいろあったんだ。」
その時、アソーカの友達である、コンヴォアのモライが2人を呼ぶ。
モライが飛ぶ場所ではエレノアが倒れていて、まだ目を覚ましていなかった。
「エレノア!!」
アソーカとエズラが駆け寄り、2人はエレノアに必死に呼びかける。エレノアは何とか目を覚まし、頭を抱えて起き上がった。アソーカはエレノアの無事に、安心して胸を撫で下ろす。
ところが、エズラが異変に気付く。
「エレノア?大丈夫?」
「あんた誰?」
「え…?俺だよ、エズラだよ!」
「エレノア、憶えてないの?」
「何のこと?私、ここで何をしてるの?」
エレノアは、アソーカとエズラを憶えておらず、首を傾げる。
エレノアは、記憶を失っていた。
「アソーカ、どうしてエレノアの記憶がないんだ?」
「恐らくだけど……シス寺院の超兵器を消す為に、力を取り込んだせいよ。その反動だと思うわ。エレノアはシスの秘術を使うから……」
「どうしよう……」
「ごめんなさい。」
「アソーカのせいじゃない。」
エレノアはアソーカの言う通り、シス寺院の力を取り込んでいた。シスの秘術を使って自身に取り込み、超兵器を無力化しようとしたのだ。エレノアの目論見は上手くいったが、代わりにその反動を受けてしまったのだった。
結果、エレノアは記憶を失った。
エズラのことは愚か、アソーカのことすら憶えていない。
「もしかしたら……!」
「エズラ!待って!」
アソーカはエレノアを連れて、エズラを追いかける。
エズラが立ち止まった扉の向こう側には、ケイナン・ジャラスが写っていた。エズラは手を伸ばすが、それをエレノアが止める。アソーカは驚き、記憶がないのに止めた理由をエレノアに問う。
「どうして止めたの?」
「よく分からないけど、私が未来に来たなら、彼を助けるのは良くないと思う。」
記憶のないエレノアは、残酷にそう告げる。
エレノアは自身が未来から送られたことも憶えていないが、フォース感応力が働いて止めたのだった。
「エズラ、エレノアの言う通りよ。ケイナンは命を懸けて貴方達を助けた。ケイナンを助ければ、貴方達が死ぬわ。」
エズラは悲しげな表情で、扉に背を向ける。
本人もよく分かっているが、簡単に治まる感情でもなかった。
アソーカはエズラとエレノアを連れて、扉から離れる。
「この空間に長くはいられないわ。開けたはいいけど、閉じ方は分かるの?」
「サビーヌなら分かると思う。アソーカも協力してよ!」
「私は一緒に行けないわ。」
アソーカの視線は、エレノアに向いていた。
エレノアはモライと戯れていて、エズラ達のことに気を留めてなかった。
『では、余が行こう。』
嗄れた声が響き、扉に黒いマントを着たダース・シディアスが写る。
エレノアはそれを見て、強い恐怖を抱く。何も憶えていないにも関わらず、シディアスに対して恐怖を感じていた。尋常でない様子に、エズラも気持ちを焦らせる。
シディアスはシスの言葉を吐き、青い炎で襲ってくる。
「走って!!」
アソーカは声を張り上げ、エズラはエレノアの手を引いて逃げる。
そこでエレノアは急に立ち止まり、咄嗟に手を伸ばして青い炎を防ぐ。炎が収まった頃、エレノアは肩で息をしていた。アソーカが駆け寄って背中を摩る間もなく、シディアスは炎を操る。
「立って!!」
エズラの声に、エレノアは慌てて立ち上がる。
『ネル、其方の力は余のものだ。』
「あんたなんか知らない!!」
エズラに手を引かれ、エレノアは必死に走る。
しかし、エズラは青い炎に捕まって足を引き摺られていく。アソーカはライトセーバーで青い炎を断ち切り、エレノアがエズラを助け起こす。3人は息を吐く間もなく、迫り来る青い炎から逃げ走る。
「戻ったら俺を探して!」
「ええ!エレノアをお願い!」
「任せて!」
アソーカはエズラとは違う道を走った。いつか会えることを信じて、アソーカはエレノアの記憶が戻ることを祈る。
エレノアはエズラに腕を引かれたまま、狭間の世界から外へ飛び出す。
「エレノア!?」
「おい!どういうこった!?」
「そんなことは良いんだよ!早くエレノアを乗せて!」
「行くわよ!」
「待って!扉を閉じなきゃ!」
エレノアは扉を見上げて、何かを考え込む。
エズラはサビーヌの指示で、モーティスの神々の肖像画に触れる。フォースを使って扉を閉じ、寺院の崩壊が始まった。
エズラ達は脱出し、寺院は完全に崩壊した。
ロザルを脱出した後も、エレノアの記憶が戻ることはなかった。
────────
ヤヴィン4に戻ったゴーストチームは、エレノアを司令部に連れていく。
エレノアはすぐに医療センターで診察され、医療ドロイドが何度も検査をする。だが何度検査をしても、何も異常はなく、エレノアは健康体そのものだった。
出迎えたパドメは、エレノアの現状に酷く悲しんだ。
「エレノアって私のこと?」
「ええ…そうよ……」
パドメの後ろからアナキンが出てきて、彼はエレノアの前に屈み込む。
マラコアの寺院から脱出した後、アナキンはパドメの下へ戻り、反乱軍に加わっていた。フェラスは今まで通りアナキンに協力して、帝国と戦っていた。
エレノアはアナキンのことすら憶えていなかった。
「君には辛い選択をさせたのは僕だ。すまない。」
「何の話?」
「今はまだ分からなくていい。ゆっくり休んでくれ。」
パドメ達が部屋を出て行き、フェラスは1人診察室に残る。
暇を持て余すエレノアに、フェラスは優しく声をかけた。
「エレノア、お前が記憶を思い出してくれないと、俺が戻ってきた意味がないだろ……」
「あの……ごめん。申し訳ないんだけど、さっぱり分からなくて………」
「ああ、分かっている。心配なんだ。」
「あんた優しいんだね。前の私って、どんな人間だったの?」
フェラスはその問いに、言葉を詰まらせた。エレノアは、お世辞にも良い人間とは言えなかった。彼はその事実を教えるべきか悩む。
出した結論は、話すことだった。
「お前は自分本位で、邪魔者は容赦なく切り捨てていた。」
「何それ!?最低な人間じゃん!」
「記憶を思い出せば、そうは思わなくなるだろう。それには理由があるんだ。」
「へぇ。」
「それに、お前は俺の気持ちを知ろうともしなかった。」
フェラスは寂しそうな声で話す。
どこか張り合いを失ったフェラスは、まるで抜け殻のようだった。
フェラスも出て行き、彼はパドメとアナキンの下へ向かう。
「アナキン」
「フェラス、大丈夫か?」
「大丈夫、と言いたいが、大丈夫じゃねぇな…」
「エレノアのことだが、分かったことがある。」
アナキンとパドメは、フェラスにデータパッドを見せる。そこには人型のシルエットが映され、あらゆる数字が表示されていた。パドメはその内の1つを指差す。
「検査をしたところ、エレノアの身体にあるミディ=クロリアンが休眠状態になっているんです。」
「つまり何かきっかけさえあれば、エレノアは記憶を取り戻せるんだ。」
「本当か!?」
「ああ。だが、簡単にはいかない。記憶を奪ったのがフォースの意志だとしたら、難しいかもしれない。」
結局、アナキン達に解決する方法はないに等しかった。
しかし、エレノアは狭間の世界でシスの炎を止めている。エズラからそれを聞いたアナキンは、希望を捨てることはなかった。アナキンだけが希望を持ち続けていた。
そんなアナキンを、パドメとフェラスも信じた。
状況は何も変わらず、フェラスはロザルの奪還作戦に参加して、時は残酷に進んでいく。
エレノアは何も知らないまま、フェラスを見送った。