ムスタファーに着いて、それはもう順調に事が進んだ。
サーベを救出したから、後は帰るだけだ。
「やけに警備が薄くなかった?」
「ああ。罠かと思ったが、そうではないらしい。」
「サーベ」
サーベに声をかけると、彼女は頭を下げる。
「不便をかけてしまい、申し訳ありません。」
「いいの、気にしないで。」
「サーベ、巻き込んですまない。」
「いいえ、私は貴方と議員に感謝しているんです。貴方達の為なら、喜んで戦います。エレノア、貴女もありがとう。」
それにしてもおかしい。警備があり得ないくらい薄かった。私達を狙ったものじゃないなら、誰を狙ったものだったんだろう。
「スカイウォーカー将軍、フェラス・オリンは一緒ではないのですね。」
「フェラスは別動隊にいるんだ。」
そこへ、反乱司令部から通信が入った。
コックピットで、プロジェクターを起動させる。
モスマを筆頭に、オーガナやパドメもいる。フェラスもいて、ジンやアンドーなども会議に参加していた。後ろには見たことがない奴もいる。
まずモスマが、私とアナキンに経緯を話した。
ジンの父親は帝国に従っていたけど、仕方なく手を貸していたらしい。そしてデス・スターの設計図の在処を、娘のジンに教えた後に死んだという。
設計図があるのは、スカリフ。
今回は、スカリフに反乱軍を派遣するかどうかの話し合いだった。
『スカイウォーカー将軍、貴方はどう判断しますか?』
「スカリフは警備が厚いだろう。行動するなら、戦力が集まってからだ。今のままじゃ、目的は達成できない。」
『クラウド、君はどう思う?』
「待っている時間はない。すぐに設計図を盗み出すべきだね。あ、私は協力できないけど。意見の1つとしてね。」
無責任と言われようと、私は協力できない。私はジェダイじゃないのだから。パドメの悲しげな目にも、首を横に振った。
『エレノア!』
「フェラス、今の戦略でスカリフに行くのは自殺行為だよ。」
『だが、希望があるだろ!』
「そこまでだ、2人共。評議会が決定する。モスマ議員、採決を。」
アナキンの促しに、モスマは評議会に採決を取る。
結果は、不一致。評議会の意見が一致しなければ、反乱軍を派遣できない。つまり、今回は諦めるしかないということだ。
ホログラムからフェラスや議員共が消える中、モスマはジンに謝る。
ジンもホログラムから消えた後、モスマは私に訝しげな視線を向ける。
『貴女は卑怯ですね。』
「何とでも言って。敵じゃないだけありがたく思ったら?」
「ネル、やめろ。」
『………スカイウォーカー将軍』
「何でしょう?」
『即刻帰還してください。』
モスマはそれだけ言って、通信を切断する。
サーベは、私とアナキンを不安そうに見ていた。
「ネル」
「何?」
「話は後だ。すぐに、っ!……どうした?」
私は持っていた酒瓶を落としてしまった。
唐突に、嫌な予感がした。何かにショックを受けたような、そんな気がした。こんなことは初めてだ。
「何か引っ掛かる。」
「何がだ?」
「ムスタファーに、私達の後釜は現れなかった。それなら、後釜はどこにいるの……?」
私は、ムスタファーに後釜が現れると思っていた。だけど、城にいたのはトルーパーと精鋭が少しだけだった。これが、どうにも腑に落ちない。
皇帝が、何もしないはずがない。
「懸念に終わったんだ。」
「そんなこと………っ!アニー!すぐにスカリフへ行って!」
「何を慌てている?」
「早く!!」
私の尋常じゃない焦り様に、アナキンは座標を入力し直す。
ムスタファーが手薄なわけが分かった。
「設計図は餌だよ。」
「餌?反乱軍を誘き出す罠か?」
「違う。確かに設計図はスカリフにあるとは思う。でも、狙いは反乱軍より私達。」
「僕達?なぜだ?」
「正確には、私達も餌。」
食物連鎖が、頭に浮かんだ。
小さな魚に中くらいの魚が食いついて、大きな魚が中くらいの魚に食らいつく。私とアナキンは中くらいの魚で、帝国の狙いは大きな魚だ。
帝国、皇帝が狙っているのは、私とアナキンが守り続けてきたものだ。
ついに知られてしまった。
「獲物が小魚に食いつく前に、早く行かなきゃ。」
「ネル、ちゃんと説明してくれ。」
「説明するよ。」
アナキンに最初から説明して、私達はお互い向き合って瞑想に入った。
私達が守り続けてきたものが、皇帝に奪われてしまう。
念には念を入れて、想定外に備えないと。
────────
一方その頃、スカリフに潜入したローグ・ワンの中に、フェラス・オリンの姿があった。
「ねぇオリン、彼女に言わなくて良かったの?」
「構うか。助けられるのに助けないあいつが悪い。」
そう吐き捨てるフェラスに、ジンは苦笑いする。
「帰れないかもしれないのに?」
「必ず帰る。お前達も連れ帰る。」
フェラスの目には、迷いがなかった。
エレノアの為、アナキンの為、銀河の為に、フェラスは帝国と戦うことを選んだ。その決意が揺らぐことはあり得ず、常に最善の選択を心掛けている。今回も最善の方法を考え、フェラスはローグ・ワンに同行した。
「行きましょう。」
ジンとアンドーを先頭に、ローグ・ワンは帝国のシャトルを降りていく。
そして、スカリフの戦いが始まった。
スカリフに悪夢が待ち受けているなど、誰も知る由もなかった。