スカリフへ向かいながら、私は船にステルス加工を施す。一時的なものだけど、僅かな時間を稼げればいい。私の目的は、ほんの一瞬の隙なのだから。
「ハイパースペースを出るぞ。」
「サーベ、あんたは操縦をお願い。」
「了解しました。」
ステルス機能を起動させ、船はハイパースペースなら飛び出す。
スカリフの地上から、フォースの乱れを感じる。
「エンジンシステムは全部切って。感知される。合図で係留クランプのスイッチを入れて。」
「分かりました。」
「ネル、どうする気だ?」
「艦隊が来る前にシールドを潰す。」
口端を上げて言えば、アナキンも笑みを見せる。
アナキンといると、ジェダイ時代を思い出す。
「係留クランプを!」
私の合図で、船はシールド・ゲートのステーションの側面に張り付く。
エアロックを開け、私はステーションに踏み込む。アナキンが付いてこようとするけど、船に留まるようにお願いした。ここから先は、私一人の方が良い。
それに、見られたくないこともある。
「アナキン、10分で戻る。不時着の用意をしておいて。」
「着陸の間違いだろ?」
「違う、不時着。あ、これも違うか。墜落の用意ね。」
「正気か!?」
「至って正気だよ。大丈夫。ちゃんと考えてあるから。」
エアロックを閉め、私は静かに通路のパネルを開く。エリアマップから武器庫を見つけて、密かに武器庫へと侵入する。武器庫から遠隔操作できるグレネードを探し出し、バッグパックいっぱいに詰め込む。
「よし。」
武器庫を出て、私はトルーパーに見つからないようにステーション中を走り回った。途中途中では、グレネードを天井に投げ付けていく。
人間は慣れた場所ほど、天井を見なくなる。況してや、侵入者にしか警戒しないトルーパー達が気付くはずがない。気付いたとしても、その時には既に手遅れだ。
「おい!動くな!」
トルーパーが私を見つけ、ブラスターを向けてくる。私はわざとらしくトルーパーから逃げ、追い付けるようで追い付けない距離で走る。トルーパーは天井の爆弾を素通りして、私を捕らえようと追ってきた。
ほら、私に気を取られてグレネードに気付かない。
「クソ!見失った!」
トルーパーは私を見つけられず、警報を出す。
だけど残念、もう遅い。
「フォース・ドレインを使いたかったな。勿体ないことした。」
スイッチを入れて、仕掛けたグレネードを起動させた。
私は船に駆け込み、エアロックを閉じて声を張り上げる。
「行って!!」
船はゲートを離れ、ステーションが爆撃されたことでシールドは消失した。
私の作戦通り、船は爆破の勢いで地上へ落ちていく。
船はギリギリのところでエンジンを点火させ、デス・トルーパーが展開しているスカリフの沿岸に不時着した。船が撃たれるけど、私とアナキンがハッチから飛び出て反撃する。
船を攻撃していたデス・トルーパーは倒し、私達はジンとアンドーを探す。
「ジンは?」
「タワーへ向かいました!」
ジンとアンドー、ドロイドがタワーへ向かったと、ローグ・ワンの1人が教えてくれた。
「エレノア!!」
その声に振り向くと、フェラスに抱き締められた。剥がそうとするけど、アナキンの目が抵抗を許してくれなかった。アニーの視線が逃げるなと言っていて、少し怖い。
しばらくしてフェラスが離れると、ホッとしたような顔をされた。
「考えを改めてくれたのか?」
「それもあるけど………理由は奴ら。」
アナキンとフェラスの後ろに、鋭い視線を送る。
そこには3人の尋問官がいた。
「エレノア・クラウド、アナキン・スカイウォーカー、フェラス・オリン………お前達を捕らえる。」
「餌がのこのこと現れたか。」
「間抜けな奴らだ。」
散々な言われ様に、アナキンとフェラスは眉間に皺を寄せる。
奴らの相手は、私達だ。
「ローグ・ワン、奴らは私達が止める。先へ進んで。」
「しかし、」
「早く行かないと、ここでフォース・ドレインを使うよ。」
『行きます!!』
ローグ・ワンが先へ行き、私達は睨み合う。
「エレノア、餌とはどういうことだ?」
「あんたベーシック分からないわけ?餌は餌だよ。私達を手伝う為に、“子供達”が来る。奴らはそれを狙ってるの。」
奴らの狙い、獲物は私とアナキンが守り続けてきた子供達だ。アナキンはヴェイダーを演じていた間、ハーヴェスター計画をコントロールした。ハーヴェスター計画の標的になった者が、尋問官になるんだ。だからこそ、アナキンの手に負えていた。
だけど、奴らは違う。
「奴ら、何かおかしい。」
「ああ。」
フェラスが気付いたように、アナキンも異変に気付く。
「彼らはシスの操り人形だよ。」
「どういうことだ?」
「文字通りの意味だよ。3人共、死んだも同然。助からない。」
「助からないだと……?」
「忠誠心の強い人間を、無理矢理フォース感応者に作り変えてる。許容できない肉体に強引にミディ=クロリアンを増やせば、生き続けることは難しくなる。」
だから、使い捨ての人形だ。
私達を殺す為の人形だ。殺せるなら、瞬間的でも使えればいい。私も使い捨てられた僕だから、皇帝の考えは分かる。
私達が大人しく捕まるわけがないから、殺すしかない。
「皇帝は一線を越えたのか……!」
「フェラス、今に始まったことじゃない。」
「エレノア……」
「絶対に油断しないで。」
「ああ。」
「分かっている。」
アナキンがガタイの良い尋問官を相手に、フェラスはラサットの尋問官を相手にする。私はトワイレックの尋問官を相手に、赤いライトセーバーを起動させる。アナキン達や尋問官達もライトセーバーを構え、重い空気が流れた。
「お前は俺に勝てない。」
「私はあんた達のデメリットを知ってる。」
「何だと……?」
アナキンとフェラスは、隣で尋問官と戦いを始めた。
私は、トワイレックの尋問官と話をする。
「強引にフォース感応者を作れば、何かを失う。フォースの意志じゃないからね。つまり、フォースは私達と共にある。」
「っ!!!」
私は一気に踏み込むと、ライトセーバーの持ち手を下げる。尋問官は回転式のライトセーバーを振り上げ、私の首を狙う。実力も場数も私の方が上だ。尋問官の動きは予期できる。
「ぐっ……!クソ……!」
身体を捻って尋問官のライトセーバーを躱した後、下から相手の心臓を一突きした。一瞬の出来事だった。トワイレックの尋問官は膝をつき、私の足元に倒れる。
「フェラス!」
アナキンの声に振り向くと、ラサットの尋問官がフェラスをフォース・チョークしていた。私はシスの言葉を吐き、フォース・ドレインを使った。尋問官はフェラスを投げ離し、足掻き出す。
「息が……!」
「エレノア!よせ!!」
フェラスの制止に、私は躊躇った。
その瞬間、アナキンを相手にしていた尋問官が、ラサットの尋問官の首を切り落とした。
「弱者は不要だ。」
「仲間を……!?」
「そいつは仲間じゃない。我々は皇帝陛下の道具だ。」
「待て!!」
「アニー!深追いはダメ!!」
「分かった……」
尋問官はそう言って、逃げていく。
奴は逃げたんじゃない。“獲物”が来たんだ。子供達の1人が、艦隊と一緒にいる。
“あの子”を守らなきゃ。
「ネル、脱出だ。」
頷くと、私達は迎えに来た亡霊の船に駆け込む。ミスマッチが追ってくるトルーパーを撃ち倒し、亡霊の船はスカリフの地上から離れた。
戦いは終わっていない。
ジン達が設計図を艦隊に送信すれば、反乱同盟軍にチャンスが生まれる。
スカリフの地平線に目を向けると、死の月が浮かんでいた。