【完結】理想主義者(笑)の自由奔放記   作:夭嘉

96 / 159
帝国の逆襲(Ⅴ)
思いやりの形


ヤヴィンの戦いから3年後。

 

反乱軍は、惑星ホスのエコー基地にいた。ホスには知覚種族はいなくて、隠れるには良い星だった。帝国軍は反乱軍を血眼で探している。

 

デス・スターを破壊したことで、全力で潰しに来ているんだ。

 

 

「ママ!」

 

 

ルークと組手をした後、ステファニーがベイに駆け込んでくる。

 

その後ろから、パドメが娘を追いかけてきた。

 

 

「ステフ!ママの邪魔しちゃダメよ!」

「終わったから大丈夫だよ。おいで、ステフ。」

 

 

嬉しそうな顔をしたステファニーが、私の腕の中に飛び込んでくる。

 

 

「エレノア、僕は先に戻るよ。」

「分かった。」

「にぃに、きたない!」

 

 

そんな言葉、どこで覚えてくるのやら。

 

私の相手をしたルークはボロボロで、組手の激しさを物語っていた。

 

 

「ステフ、僕は大丈夫だよ。」

「うん!」

「ステフー、お部屋行こうねー。」

「やだぁ!にぃにあそぶ!」

 

 

ステファニーは、なぜかルークに懐いている。私とフェラスは当然の如く、次にルークに懐き、その次にパドメに懐いていた。アナキンは嫌われていないけど、苦手みたいだった。

 

そして一番懐かず、嫌われているのが……

 

 

「ステフ、ママを困らせんなよ。」

「イヤっ!ハンきらい!」

 

 

こっちが申し訳なくなるくらい、ハンが嫌われていた。

 

 

「おいエレノア、なんで俺が嫌われる?」

「知らない。何かしたんじゃないの?」

 

 

嫌われていると言っても、最近の話だ。ある日突然、なぜかハンに冷たくなり、無視もするようになった。ステファニーは理由もなく誰かを嫌うことはない。だとすれば、ハンが何かをすることくらいしか思い付かない。

 

 

「何もしてねぇぞ!」

「ふぅん?じゃあステファニーに聞いてみようか?」

「ああ、聞いてみろよ!本当だからな!」

 

 

ハンがあまりにも否定するから、ステファニーの視線に合わせて理由を聞いてみる。

 

 

「ステフ、ハンに嫌なことされた?」

「ううん、ちがう。」

「じゃあどうして?」

「………ハン…バイバイ……」

「え?」

「ハン、バイバイ……うえええぇぇんっ……!」

 

 

涙を零しながら言っていたステファニーは、言い終わると大泣きしてしまった。私の首にしがみつき、泣く理由が分かって娘の背中を摩ってあげた。

 

結局のところ、ハンが悪い。

 

後ろめたさなんて、感じなくていい。

 

ハンが出て行くことを知らないのは、“私とステフ”の2人だけ。パドメやルーク達は知っているみたいだった。

 

 

「ハン……」

「もう決めたことだ。」

「エレノア、」

「ルーク、しばらくは訓練は無しだから。」

「ネル!」

「アニー、私が怒る理由は分かるよね。」

 

 

私は泣きじゃくるステファニーを抱いて、ベイを出て行く。

 

アナキンはまだ良い。パドメも悪くない。でも、戦いから逃げようとしたハンは許せない。

 

オマケに、ハンは娘を泣かせた。

 

私はジェダイじゃないから、許せない。

 

 

「ママ……?」

「っ……」

「いたいいたい?」

「どこも痛くないよ。ごめんね、ステフ。」

 

 

娘の前で、嫌な顔をしてしまった。

 

出て行くなら、最初から出て行けば良かったんだ。そうすればステファニーも悲しまないし、私だって別れが惜しくならなかった。半端な気持ちで残ったハンが全部悪い。

 

 

「ママ、いいこ。」

 

 

涙と鼻水垂らしながらも、ステファニーは頬を触ってくる。

 

部屋に戻り、私は娘をベッドに寝かせる。

 

ハンがいなくなると分かって寂しかったのか、ステファニーは私の服を握ったままだった。泣き疲れてうとうとしながらも、娘は私が傍にいることを確認してくる。離れることはせず、私もステファニーの隣で横になった。

 

ステファニーを抱き締めながら、髪を撫でて寝かしつける。

 

 

「ママ…」

「どうしたの?」

「ハン、きらい……」

 

 

ステファニーはそう言って、眠ってしまった。眠っても服は離さず、規則正しい寝息が聴こえてくる。動けないから、私は娘と一緒に毛布を被った。

 

寝ているステファニーを見ていると、フェラスが静かに部屋へ入ってきた。

 

 

「出て行って。」

「黙っていて悪かった。お前とステフが悲しむと思ったんだ。」

「言わなきゃ悲しまないとでも?」

「いや、違うな……」

 

 

分かっているくせに、フェラスは認めようとしない。

 

だけど、それは私も同じだ。

 

 

「言わなかった理由、分かるよ。」

「エレノア、」

「ルークと戦っている時、何度も暗黒面に呑まれそうになった。最近、“主”の気配を感じる……」

 

 

すぐ隣にシディアス卿がいるような、そんな感覚になる。暗黒面で、何でもできるような気がしてくるんだ。暗黒卿の時だって、呑まれたことはないのに。

 

娘の為に、呑まれたくない。

 

 

「お前なら大丈夫だ。」

「そうとも言い切れない。」

「やめろ。」

「シスの師弟には、歪な絆がある。簡単には切れない。」

 

 

家族を失いたくない。私が呑まれたら、またフェラスを傷付ける。あの頃の私には戻りたくない。

 

 

「シスをやめたとしても、絆が切れるわけじゃない。」

「エレノアらしくないぞ。」

「分かってる。フェラス、私を信じて………」

 

 

ステファニーを追うように、私も眠りに落ちる。

 

夢の為なら、私は何でもする。フェラスとステファニーを守って、パドメとアナキンも守る。手を汚すのは、私だけでいい。

 

“主”の声が、とてつもなくうるさい。

 

もう戻りたくない。

 

────────

 

静かに退室したフェラスは、部屋の外で待っていたアナキンから目を逸らす。

 

 

「ルークはパトロールへ向かった。」

「そうか……」

「フェラス、自分を責めるな。ネルに言わなかったのは、様子がおかしいからだ。パドメと3人で話し合っただろ。」

 

 

エレノアに話されなかったのは、パドメとアナキン、フェラスの3人で決められたことだったからだ。パドメがエレノアの異変に気付き、話すべきじゃないと判断を下したのだ。

 

だが、結果は変わることはなかった。

 

 

「それが間違いだったんだ。エレノアに話すべきだった。あいつは、ステフを守ることに必死だ。追い詰めることになるだけだ。」

「ネルは心配ない。問題はお前だ。」

「俺……?」

「僕はヴィジョンを視た。“ダース・ルシル”の声を聴いたんだ。その足元には、お前が倒れていた。」

 

 

アナキンが視たのは、凄まじい憎悪を放つダース・ルシルと、“殺された”フェラスだった。倒れたフェラスの脇には、ステファニーが泣きながら父親を揺すっていた。

 

その光景に、アナキンは心臓を掴まれたような感覚に陥っていた。

 

 

「俺がエレノアに殺されると…?」

「僕が視たのは一瞬の光景だ。全て分かったわけじゃない。だが、選択を違えるのは分かる。ネルとステフの為に選択するんだ。」

「ああ。」

 

 

アナキンはフェラスの肩を叩き、反乱司令部へと戻っていく。フェラスは力無く歩き、親友に言われたヴィジョンに頭を抱える。

 

脅威は、誰も知らないところで蠢いていた。

 

誰もが、重要な選択を迫られている。

 

 

  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. よみあげ
  11. 閲覧設定

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。