少し遡って、美智留と別れたあと、恵は倫也の家へと歩いてた。手にはプロットを持っている。
「いくらなんでも、『恵から告白する。物語は終わる』って、これだけでエピローグに放り出されるとか、ひどいんじゃないかなー」
この時、美智留たちに起きたことを、『この恵』は知らない。自分の役割を果たすために思い悩みながら歩いていた。
倫也の家に着く。
「おじゃましまーす」
「おかえり、恵」
「ただいまのほうがいいのかな?」
「お疲れのほうがよかった?」
「わたしの家じゃないしねぇ」
「で、美智留の様子はどうだった?」
「よくわからなかった」
「心配だな」
「でもまぁ、解決方法はわかったから」
「そっか」
「ねぇ安芸くん、晩御飯一緒に食べよ」
「ああ。何か出前でもとろうか?」
「ううん。わたし作るよ、せっかくだし。何か食べたいものとかある?」
「なんでもいいよ」
「ああ、そのなんでもいいよって、腹立たしいからやめたほうがいいらしいよ?」
「腹立たしいの?らしいの?どっちなの?」
「んー。腹立たしいかな」
「だったら、もうちょい感情こめろよ」
「腹立たしいよ!安芸くん。せっかく何か作るっていってるんだから、なんでもいいはないんじゃないかな?」
「ごめん・・・じゃあ、何かさっぱりしたものを」
「夏だしね・・・どうしようかなぁ」
「簡単なものでいいからな」
「あー。簡単なものね・・・そういう言い方もさ・・・」
「加藤、なんか機嫌悪い?」
「別に・・・悪い・・・かな?」
「いや、いいんだけど、何か手伝える?」
「とりあえず、特にないから座ってるかお風呂でも洗ってきたら?」
「じゃあ、風呂掃除してくるよ」
倫也が風呂掃除をしている間、恵は野菜を切って料理の支度をする。
「風呂掃除おわった」
「こっちもだいたいできたよー。倫也くん、中華味とゴマダレどっちにする?」
「ああ、冷やし中華ね。加藤はどっちにするの?」
「んーゴマかな」
「じゃあ同じので」
「はい」
ゴマダレの袋を2つ渡す。
「いただきます」
「どうぞー」
「上手いよ加藤」
「面茹でて、野菜切ってのせただけだよ」
「いやいや、たかが冷やし中華、されど冷やし中華だ。下手なやつは下手だ」
「下手に作る方が難しくない?」
「俺もそう思ってた。でもまさか、ドロドロになるわ、生暖かいわ、野菜はぐったりしているわでひどいものもあるんだよ」
「ああ、なんとなく作った人がわかった」
「あいつ、カップ焼きそば以外料理できないんだよ」
「ふーん」
「カップ焼きそば上手いんだけどな」
「ふーん」
「・・・加藤、何か怒ってない?」
「ねぇ、ひとつ聞いていいかな?」
「はい」
「それって、最近の話だよね?」
「ああ、うん?」
「だって仲良かったのは10年以上前の子供ときだから、冷やし中華なんて作れないものね?」
「ああ・・・」
「それっていつのことなのかな?マーズに英梨々が言った頃ってまだ春先だよね?」
「そうだな」
「じゃあ、この夏に英梨々がきてたの?」
「・・・加藤!?」
「別に怒ってないよ?怒る理由もないし、私が怒る理由もないし」
「二度いった」
「大事なことだから二度言いました」
「いや、別に英梨々が仕事で少し時間あったから、こっちきて、キッチンを盛大に散らかして、カップ焼きそばに作り直して・・・」
「ふーん」
「あの・・・加藤さん・・・」
「なによー」
「別に秘密にしてたわけじゃないよ?」
「そうだよねー。サークル裏切った人と合って、ご飯作ってもらっても、別にわたしには関係ないもんねー」
「いや、そういうことじゃなくて・・・」
「安芸くんが、英梨々といちゃいちゃしようが、霞ヶ丘先輩とキスしようが、それは安芸くんの自由ですもんねー」
「・・・加藤、どうしてそれ知ってるの・・・?」
「何が?」
「霞ヶ丘先輩のこと」
「・・・安芸くん?」
「え?」
「ちょっと、詳し説明してもらってもいいかな?」
「何かの聞き間違えじゃないでしょうか?加藤さん」
「そうかもれませんわね。おほほほほっ?」
「目が笑ってないんですけどぉ!?」
「別に、わたしが怒るこじゃないしー。関係ないしー。だよね?安芸くん」
「・・・」
「ほら、サークルメンバーの一員として、副代表として、今後の演出とか?シナリオの修正の参考とか?役立つかもしれないし。知っておく権利がわたしにはあると思うんだけどなー」
「・・・」
「そんな、安っぽい安芸くんの土下座なんて別に見たくないんだけどなー」
ここで小一時間かけて倫也による説明がしどろもどろなされますが、ここでは割愛させていただきます。というか、まったく物語が進行しないので困っています・・・。
「ふーん」
「なっ、俺は悪くないだろ?」
「悪くないんだ?」
「と、思うのだけど・・・」
「悪くないのに謝るんだ?」
もう少し時間かかりそうなので、割愛(略
「あのね、倫也くん、わたしは今回の話で登場少ないでしょ」
「ああ・・・うん・・・そ・・・そうかな・・・」
「だからね、せめて最後ぐらい、倫也くんと一緒にご飯食べて、楽しく過ごしたいなって思ったんだよ」
「ごめん」
「なのに、どうして英梨々の話なんか始めるかなぁー?」
「そっち!?」
もう少し(割愛
「はぁ・・・(ため息)」
「加藤・・・冷蔵庫にぷりんはいってたから食べるか・」
「それ、わたしが買ったやつだよー」
「もってくる」
倫也冷蔵庫からプリンをふたつとスプーンをテーブルに運ぶ
「ほんとだ、どっちも『恵』て名前が書いてある」
「サークルのメンバーが使うから一応ね」
「やっぱ名前書かないと食べられたりするの?」
「もちろんだよ!だいたい2つあったら、わたしいなければ、氷堂さんと出海ちゃんで食べちゃうよ」
「そうなの!?」
「出海ちゃんはなんだかんだでお菓子買ってきたり、冷蔵庫のプリンやゼリーも補充したりしてくれるんだけどね」
「美智留か」
「氷堂さんは、なんか買ってくるものが豪快んだよねぇ」
「ああ、あいつなんか肉買ってくるよな」
「そうなんだよ!ありがたいんだけど」
「なんか加藤が料理上手いからっ買ってくるらしいぞ?」
「確かに肉の塊とかテンションあがるけれど」
「なら、帳尻あってていいんじゃないか?」
「そうなんだけど、やっぱりプリンは別だよー」
「別なんだ!?」
「食べ物の恨みは怖いよ?」
「俺、一人っ子だからそういうのわかんないんだよな」
「ああ、そうかもしれない」
「で、加藤。お前、なんでプリン2個目も食べようとしてるんだよ?」
「えっ、だってこれ、わたしのだよ?」
「いやいやいや、そうだけど、そうじゃないでしょ」
「だいたい、安芸くん。わたしのプリンでわたしの機嫌をとろうとするのは、なんだかなーだよ?」
「ごめんな加藤・・・でも、せめて、一個食って、一個冷蔵庫にしまっておけよ」
「食べない?」
「そこまで言われたら食べないよ」
「食べたい?」
「そりゃまぁ」
「ふーん」
「・・・なんだよ。ニヤニヤして」
「えっ、わたしニヤニヤしてる?おっかしいなぁ・・・」
「そんなにプリン二個食べたきゃ食べればいいだろ」
「ちがうよ。安芸くん」
「何が?」
「はい」
プリンののったスプーンを倫也の方へ差し出す恵。
「ちょっと、なにしてんだよ」
「・・・リテイク」
※ ※ ※
「ちがうよ。安芸くん」
「何が?」
「はい」
プリンののったスプーンを倫也の方へ差し出す恵。
「ちょ・・・ちょっと心の準備が・・・」
「・・・リテイク」
※ ※ ※
「ちがうよ。安芸くん」
「何が?」
「はい」
プリンののったスプーンを倫也の方へ差し出す恵。
「あーん・・・パクッ」
とした瞬間にスプーンを引っ込める恵。
「ちょっと、加藤!?ひどくない!?」
「いや、お約束も大事かなって」
「人間不信になるよ??」
「・・・リテイク」
※ ※ ※
「ちがうよ。安芸くん」
「何が?」
「はい」
スプーンを倫也の方へ差し出す恵。
「あーん、パクッ ・・・んぐっ!?」
「あっ、間違えた。ごめんね安芸くん」
「って、ピーマン喰わすなよ!」
「今のは英梨々の分だー」
「それ・・・まさか・・・」
「リテイク!」
※ ※ ※
「ちがうよ。安芸くん」
「何が?」
「はい」
スプーンを倫也の方へ差し出す恵。
「・・・」
「片目開けるのはよくないと思うなー」
「だって、これ、ピーマン丸々のってるじゃん!」
「あーん」
「・・・」
「霞ヶ丘先輩の分だー」
「・・・もぐもぐ(涙)」
「リテイク♪」
※ ※ ※
「ちがうよ。安芸くん」
「何が?」
「はい」
プリンののったスプーンを倫也の方へ差し出す恵。
「って、加藤!お前絶対楽しんでるだろ!」
「しーらない」
「ふふふっ。加藤、お前はまだわかってない。修正だな」
「なによー」
「これで、次本番な」
倫也が恵に台本メモを渡す。
「・・・えっー。これ、やるの・・・?」
「メインルートのイベントだからな」
「もう、しょうがないなぁ・・・リテイク・・・だよ」
※ ※ ※
「ちがうよ。安芸くん」
「何が?」
「お口あーんして?」
「こうか?」
プリンののったスプーンを倫也の方へ差し出す恵。
「パクッ・・・もぐもぐ」
「ねぇ安芸くん・・・もうひと口食べる?」
「・・・うん」
「ちょ・・・ちょっとまって」
「なんだよ加藤」
「さすがに、笑いが・・・」
「自分からふったイベントだろ」
「だってさぁ・・・あははははっ」
腹抱えて笑う加藤
「でもね、安芸くんのシナリオよりも、わたしの方がいいかも」
「ほうっ。このお口あーんイベントよりも強力なのがあると?」
「えっと、じゃあ、わたしのことは『恵』って呼んでくれるかな、・・・ともや・・くん」
「あっ・・・うん、わかったよ・・・か・・・めぐ・・み」
「リテイク」
※ ※ ※
「ちがうよ。安芸くん」
「何が?」
「目を瞑ってくれる?」
「こうか?」
「んー、もうちょい近くよってくれるかな?」
「ん?こう?」
「んー、もうちょい」
「こう・・・ん!?」
チュッ
「大好きだよ。倫也くん」
「恵!?」
・・・そして、BGMが美智留の作った『絶望の歌』に変わった。
(つづく)
加藤のキャラはこんな感じでいいんでしょうかね?