Rockman 偽りの野望   作:グルルre

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vol1 序幕

AD.20XX年・・・人と心ある機械が共存する世界において。

「ハハハハハ!!ちょ・・・ちょ!!冗談きついッスよ・・・マジで受けるんスけど」

<うるさいわね!!さっきから笑い過ぎよ!!>

端末越しの通信に腹を抱えて笑い出す一人の青年。

三ヶ月ほど前にあった誘拐騒動で知り合った少女、カンパネラ公国の姫であるプライド=カンパネラから通信を受け取ったバラード。

あれ以降も時折会話をしていたのだが、その日は若干重い空気を漂わせていたので、バラードもプライドが言わんとしている事をすぐさに察した。

彼女が周囲の目を掻い潜り失踪騒動を引き起こしたのは、他ならぬ婚約者の存在でありどうやら今日はその人物との初めての対面日であったらしいのだが。

「まさかお前の婚約者が・・・ヒヒッッ」

まだ笑いが収まらないのかしゃっくりまで出始めるバラード。

対してプライドは顔を真っ赤にさせ頬を膨らませるのであった。

それこそ婚約者がロクでもない男であったのなら、ワイリー軍団総出で彼女を拉致しに行くつもりだっただけに結果は拍子抜けと言わざるを得ない。

端末越しに送られてくる記念撮影と思しき画像にはプライドと婚約者が並んでいるのが見て取れる。

見て取れるのだが・・・。

<なによ~もう!!期待じゃないけど万が一の事があったらと思って準備していた私が馬鹿みたいじゃないの!!>

頬を膨らませ叫ぶプライド。

その声を聞きつつ画像を見たバラードがまたしても笑う。

画像に映されているのは若干困惑気な顔のプライドと彼女より頭一つ分は小さいであろう少年の姿。

若干目つきが年の割に鋭い印象を与えるが、それでもロックの外見年齢と一緒ぐらいであろうか。

そう・・・プライドの前に婚約者として現れたのは自分よりも年下の少年だったのだからプライドが逆の意味で怒り出すのも無理は無い。

「てか写真とか手に入らなかったんスか・・・?」

<何枚か見た事はあったんだけど、あの子ったらいつも父親と一緒に撮った写真ばかりだったからそっちの方だとばっかり・・・>

理由は不明だが婚約相手の少年は父親と一緒に撮った写真ばかりを送って来たらしく、プライドは彼の父を婚約者と勘違いしてしまったらしい。

半ば政略結婚な趣はあれど一国の姫を恋愛感情も無し子持ちの男性に送る事などあり得ないのだが、状況が状況だけにプライドは覚悟を決める他無かったらしい。

「それで・・・お前的にそいつはどうなんッスか?」

バラードの問いにプライドは若干迷ったような顔をする。

<なんて言うか無表情で不愛想だけど、相手なりに私の気を引こうとしてくれてる・・・と思うわね>

あちら側で視線を泳がせるプライド。

まあ最悪の事態は避けられただけに彼女も悪感情を抱いては居ない様子だ。

と言うか相手は子供なのだしベッドに押し倒される事はまずに無い。

プライドがその気になれば逆に押し倒す事も可能だろう。

十代半ばでややお転婆な所もあるプライドとは良い感じになれるのではとバラードは思う。

「まあまた何かあったら連絡しろッス」

<分かってるわよ。アンタ達も無理するんじゃないわよ>

そう言いつつ通信を切るバラードとプライド。

苦笑をしつつ彼が端末の電源を落とそうとした時、端末よりアラームが鳴り響く。

「・・・ん」

『速報』と銘打たれたテロップと共に映し出されるのはどこかの都市部で爆発が起こっている映像だ。

<大変です。現在謎のロボットが都市部で暴走を始めています!!周辺の市民の皆さんは避難を・・・>

「・・・ん?まだ事件ッスか?」

予定には聞いていない事もあってすぐさに自身らの仕業ではない事を悟りつつ、バラードが端末越しに映像を見ようとした時であった。

 

ジリリリリリリリリリリリッッッ!!

 

突如として基地内に鳴り響く警報音にバラードが慌てて周囲を見渡す。

<緊急事態だ。直ちに待機中のナンバーズは集合せよ!!>

基地の留守を任されているエアーマンの声が響き渡る。

「次から次へとなんなんスか・・・」

バラードは肩を竦ませながらゆっくりと集合場所へと向かうのであった。

 

 

一方である。

 

ドゴオオオオォォォォォォンッッ!!

 

軽く放たれた拳圧はビルの壁面を大きく抉り取る。

時間にして僅かに十数分で街の中心部は既に壊滅状態であった。

「ガーッハッハッハッハッハ!!」

握り締めた拳を突き出しながら豪快な笑い声を響かせるのは悪のロボットことソローだ。

彼は突如として一筋の流星の如く、都市の中心部に舞い降りるや周囲の建築物をその拳で次々と破壊していた。

突然の事にパニックとなる市民達を他所に彼は停まっていたバスを軽々と放り投げる。

「ロボットポリスは何をしているんだ!?」

混乱した市民の一人がそんな事を叫ぶが最初に到着したロボットポリスは一瞬の内に破壊されてしまっている。

続々と自身を取り囲む様に現れるロボットポリスの一団に目を向けるソローだが、それ以上彼は動こうとはしなかった。

寧ろ遠巻きに己を包囲しようとする敵に大きく鼻を鳴らすソロー。

「雑魚共が幾ら集まっても一緒だぞ?弱い奴を相手にするなんぞ俺様の性に合わないが・・・旦那の為だ」

市民の避難も終了したのか徐々に喧騒も小さくなっていき、それとは逆に戦闘用ロボットや戦車などを始めとする兵器の駆動音が辺りに響き渡り始める。

既に南米などで一暴れしている事もあってか、自身を止める為に政府軍なりロボットアーミーが出動して来たのだろう。

「さあて・・・どちらにせよ少しは楽しませて」

今の今まで廃墟となった街の中心部より動こうとしなかったソローだが、敵の戦力がある程度整ったと判断しその巨大な足を前に一歩踏み込ませた時だった。

 

・・・カッッ!!

 

頭上に太陽とは別の光が輝いたと認識した瞬間、ソローはその顔に満面の笑みを浮かべていた。

「来たな・・・デューオ!!」

エネルギー反応でそれを感じるよりも早く姿を現したそれは勢いそのままにソローに拳を叩きつけてくる。

 

ガキィィィィィッッ!!

 

まともに食らえばクレーターの一つは地面に生じるであろう衝撃を伴った拳を巨大な腕で受け止めるソロー。

自身の一撃を受け止められたにも拘わらずデューオは眉一つ動かさず、ソローから距離を取ると両腕を上げ身構える。

「適当な所で破壊活動をすればすぐに来てくれると思ったぜ・・・久しぶりにお前と殴り合いたかった所だったんでな」

「ソロー・・・これ以上の悪事は許さん」

喉を震わせるソローに対しデューオの態度は冷淡と言えよう。

「お前とは思いっきり戦いたいが・・・ここだとギャラリーが多すぎて邪魔だと思わないかぁ?」

ソローは自身らを取り囲むロボットポリスや政府軍の面々を指差す。

目に見えている彼ら以外にも周囲の瓦礫の中には助けを待つ者や逃げ遅れた者も多数いるかも知れない。

一瞬だがその事に迷いの表情を見せるデューオにソローは肩を震わせる。

「ちょいと場所変えだ。ついてきな!!」

「・・・待て!!」

黒い流星に姿を変えるソローに慌ててデューオがその後を追う。

まるでこの星に来た時の再現とばかりに空中で何度もぶつかり合う二つの存在にロボットポリスや政府軍の面々は、それを見送る他無かったのであった。

 

 

<こちらCPSのプラムです!!突如として街で破壊活動をしたロボット・・・当局の調査によると異星のロボであるソローと呼ばれる存在はもう一体の謎のロボットと共に街を去った後、ここグランドキャニオンで激闘を繰り広げていま・・・キャッッ!!>

端末の向こう側でリポーターの少女型ロボットが遠目に映るソローとデューオの激突を中継するのだが、十数キロは離れているにも拘わらず衝撃の余波が中継スタッフを襲っていた。

<プラムさん。現場の状況はどうなっていますか?>

<分かりません~と言うかさっきから岩や瓦礫が飛んで来たりして凄く危ないです~>

アナウンサーがプラムに質問をするがそれどころではない様子だ。

 

ドガアアァァァァァンッッ!!

 

グランドキャニオンの山が軽々と抉られそれが宙を舞う光景にプラムがその場で硬直する。

<うう・・・もう帰りた~い!!>

<危ないです!!退避~退避~>

砕かれた山の斜面の一部が雨の様に降り注いだところで中継は止まってしまう。

<プラムさ~ん。プラムさ~ん?>

番組のアナウンサーが何度か問いかけるが反応が返って来る事は無かった。

<コホン・・・え~中継が戻り次第繋ぎますね~。それで例の謎のロボットは南米にも現れたと言う事で、先の式典を襲撃したロボットとも関係が・・・>

困惑気になりつつも番組を進行せねばとアナウンサーが専門家と称する出席者に意見を求める。

「・・・博士」

何時もと変わらぬ朝を迎えた筈のライト博士やロック達であったが、報道されるニュースに険しい顔とならざるを得ない。

「暴れているのはソロー。そしてそれを止めにデューオが現れたか・・・」

自身も端末を操作し知り合いに連絡を取りながらライト博士が唸る。

「ソローを止める為に今から僕も現場に向かいます」

「うむ、そうしてくれるか。私は連邦政府と連絡を取り今後の対策に・・・」

如何にデューオが強くても相手はそれと同等の力を持つソローなのだ。

不覚を取る可能性もあるだけにロックは彼の加勢に向かおうとするのだが。

 

ピピピピピピッッ!!

 

不意にライト博士の持つ端末に着信が入り、ライト博士はそれを手にする。

<どうもお久しぶりです。そちらにロック君は居ますか?>

ライト博士に会釈をするのは将校の姿をした青年型ロボット。

ロボットアーミーの司令官オクターヴだ。

「ああ・・・彼ならここに居るが。今からソローを止めるべく出動させようとしていた所だ」

<間に合いましたか・・・いやはや申し訳ありませんがロック君に依頼したい事がありましてね>

「依頼?ロボットアーミーである貴方達が・・・我々のロックに?」

オクターヴの言葉に首を傾げるライト博士。

<ええ・・・ソローに関しては我々や政府軍に任せてください。現在、周辺の都市から市民を避難させていますし当面は大丈夫と判断しておりますので。それよりも重要な事がありましてね>

にこやかな笑みを浮かべるオクターヴ。

<ともあれロック君は我々と行動を共にして頂きたい。既に連邦政府大統領の許可も頂いていますので・・・よろしくお願いします>

詳しい内容を話そうとしない相手の態度に疑念を抱くライト博士だが、大統領の許可まで取ってあると言われればそれを断る事は出来ない。

通信を終えオクターヴが指定した座標までラッシュジェットで向かおうとするロックをライト博士は一人見送る他、無かったのだが。

 

ピンポーン。

 

研究所の玄関で響くインターホンの音にライト博士は顔を上げる。

「誰ダスか?」

ライト博士よりも早くライトットが応対に出ようとするのだが、彼が玄関の扉を開けるなりその場に足を踏み入れるのは警官の姿をしたロボットだ。

「お・・・お巡りさん?ロボットポリスが何の用ダスか?」

「いやあ少し仕事と言うか私用でね。トーマス=ライトなる人物は居るかね?」

見た目とは裏腹にフランクな口調で話し出すロボット。

「私がライトだが・・・」

「・・・ほう」

玄関に姿を現したライト博士にロボットは僅かに目を細めた。

まるで値踏みをする様な視線にライトットは困惑気にロボットの顔を見る。

街中でよく見かける警官型ロボットではあるが、彼の纏う空気はそれとは明らかに異質な物だ。

「こうして会えて光栄だよ。私のデータ・・・記憶通りの人物とお見受けした」

喉を震わせるロボットにライト博士の瞳が揺らぐ。

「今はこの様な姿で会う無礼を許して欲しい。今日の所はあくまでも挨拶に来たまで・・・いずれ機会があればお互いの歯車も噛み合うだろう」

「歯車~お巡りさんは何言ってんダスか?」

「ダス夫君・・・ちょっとうるさいよ?死にたくなければ黙り給え」

自身の言葉に茶々を入れるライトットにロボットは僅かに殺気を滲ませた。

たったそれだけでライトットの全身を動けなくさせつつ、ロボットは無機質な顔に恐らく満面の笑みを浮かべたのが空気から察せられる。

「お前は・・・いや君は」

「所詮は植え付けられた物でしか無いが、私はお前の事を友だと思っているよ。では・・・何が起こるかは分らんから身の回りの用心は怠らないように気を付けたまえ」

愕然とするライト博士にそう言い放つとゆっくりと背を向けるロボット。

「だ・・・誰だったんダスか?」

ロボットの殺気から解放され胸を撫で下ろすライトットがライト博士に問うが答えは帰って来ない。

ただ難しい顔をしたまま黙り込むライト博士にライトットは訳が分からず首を傾げるのであった。

 

 

 

そして騒動は続く。

「デューオとソローがの・・・上手い事いって相討ちにでもなってくれれば幸いじゃが。まあそうはいかんじゃろ」

太平洋上にある基地兼研究所にてワイリーはシャドーマンよりもたらされた情報に眉をピクリピクリと動かしながら言う。

既に次の世界征服計画の要であるキング二号機にもう一体の後継機のロールアウトがほぼ完了した段階となって、ある意味でロックマン以上の計画の妨害者と言えるソローらの存在はワイリー軍団にとって懸念材料であるのだが。

当のワイリーはソローらの存在を歯牙に掛けていない様子さえ窺える。

絶大な力を持つロボット、自らの意思で動く大量破壊兵器も同然の彼らを相手にしても何とかなると思っているのだろうか。

或いは既にワイリーは彼らへの対抗策なりを考えているかもしれないのだが、主の性格を考えるにその確率は半々だろう。

自身が杞憂を感じても意味が無い事と判断しシャドーマンがワイリーの足元で息を潜めた時であった。

 

ジリリリリリリリリッッ!!

 

不意に基地内のアラームが鳴り響く。

「なんじゃ?」

面倒臭げに端末に目を向けるワイリー。

<た・・・大変です!!所属不明のロボット達がこの基地に攻撃を攻めてきています>

「所属不明・・・政府軍か?」

<わ・・・わかりません~>

警備に当たっていたスナイパージョーの一人が悲鳴を上げる中、ワイリーは防衛に当たる面々に指示を出しつつ、暫し腕を組みながら唸る。

「我々の目を欺き政府軍がこの基地に攻撃を仕掛けられるとは思いませぬが・・・」

「じゃろうな・・・そもそもここは島全体を立体映像で偽装しておるから、上空から発見する事は不可能じゃ。政府軍の阿呆共に見つかる程のヘマはしておらん」

シャドーマンの言葉にワイリーが頷く。

最近の例で言えばソローと共にこの星に飛来したデューオの一件などが良い例だが、ワイリーは太平洋上を初め世界各地に密かに秘密工場や研究所などを多数保有している。

当然の事ながらそれらの基地は立体映像などを使ってカモフラージュする事で至近距離まで近づかねば分らない様になっているし、そもそも政府軍なりの組織が軍勢を率いこの島に襲撃を仕掛けるのであれば襲撃前にワイリーの方が先に見つけている筈である。

であるのにいきなり島に上陸しこちらに攻撃を仕掛けてきた。

その事実からワイリーは政府軍の可能性を真っ先に除外する。

であれば件のソロー達の一派かと考えたがそうであれば今頃、圧倒的な力を持つ奴らはここに辿り着いていたであろうと判断しこれも除外。

「キング軍団の残党か?いや奴らの幹部共は方々に散っておるから組織化など無理じゃ・・・であれば」

可能性がありそうな面々を思い浮かべつつ、ワイリーの顔に笑みが浮かぶ。

「だーっはっはっはっは!!いずれが相手であろうとも丁度良いわ。ロールアウトしたこやつの性能をテストするには良い機会じゃろう」

カプセルの中に眠るロボットを横目にワイリーは小気味良さそうに笑うのであった。




何時もの後書きです。
さらっと読み飛ばして頂いて結構です。

〇今回のプロローグについて。
序幕と言う割には実質一話分の長さになったのでそのまま一話にした。
リブート前のは世界征服計画の前段階でフィーネが手伝いをしているというシーンからの始まりだったのだが、既に彼女が正体を現しているので変更となった。

〇プライドの婚約者について
政略結婚という事で権力目当てな年上の男かと思ったら大外れだったと言うまさかのショタコンなオチであった。
婚約者の少年はロシア系の有力者の息子でプロト編に出たエフレーモフ夫妻の親戚らしい。
見た目的にはエグゼに登場したライカを幼くした姿と思っていただければ幸いである。

〇ソローと報道スタッフについて
いきなりの破壊活動となったが、作中にある通りソローの目的はデューオを誘き出せた時点で殆ど達成している。
バトチェに登場したプラムちゃんなどが登場したが、なんだかんだでついていない描写となった。

〇ライト研究所での一幕について
ロボットアーミーからの依頼を受けたロックを見送った後に顔を出した警官ロボは本家9のDLCボスと言えば分かりやすいか。
彼にとっては今回は文字通りの顔見せなので特に何もせずに帰っていった。

〇ワイリーについて
次の世界征服計画の為にキングの後継機の最終チェックも兼ねて秘密工場で作業を行っていた。
彼自身は何の根拠があるのかソローに対してそこまで問題視はしていない様子。
フォルテを始め、彼らに対する数少ない対抗策を持っていると言うのも大いにあると思われる。


今回の後書きは以上です。
読んでくださってありがとうございます。
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