Rockman 偽りの野望   作:グルルre

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vol17 首無し騎士の挑戦(前編)

欧州カンパネラ公国の王宮内の敷地にて。

「姫・・・どこに行かれるのですか?」

比較的ラフなパンツにワンピースと言う服装に加え、明らかに変装用の帽子と色眼鏡を身に着けた少女は、ナイトマンにそう声を掛けられビクリとその背を震わせる。

「ええと・・・ちょっと庭園でお茶でもしようかなと」

「ほうほう。ですが何時もの庭園はここと真逆の位置でありますが」

ニコニコと笑みを浮かべ後ずさるプライドにナイトマンも表面上は笑みを浮かべていた。

彼女の後ろには茂みを挟む形で王宮の敷地から抜け出せる文字通りの抜け穴がある。

どう言う経緯で彼女がここを知ったのかはさておき、王宮をひいては公王達を守る立場にあるナイトマンからすれば極めて由々しき存在だ。

「王宮内に残されていた抜け道がここにもあるとは・・・いやはやこの私も正直驚きましたな」

この手の抜け道を発見するのはこれで五つ目である。

当たり前だが王宮内には至る所にある監視カメラや赤外線センサーなどで出入りする者を見張っているし、最近ではナイトマンを始めとする警備ロボや監視用のドローンまで配備されている。

にも拘わらず目の前のじゃじゃ馬姫は幾度と無く王宮から抜け出している。

それ故にナイトマンは王宮内を虱潰しに調査したのだが、その過程で見つかるのが外へと繋がる抜け道の数々。

念の為、その存在を公王夫妻に確認したところ当の公王も若い頃にお忍びの為に使っていたものもあるらしい事が判明しナイトマンは頭を抱えるしかなかった。

言うなれば、これらの抜け道は歴代の公王やその関係者によって作られ今に至るまで残されていた一種の遺産と言う事となる。

ナイトマンからすれば見つけ次第使用不可能にするしかないとんだ負の遺産なのだが。

「さて・・・今日は婚約者殿が王宮に来られる日です。だと言うのに姫が不在なのは・・・」

とナイトマンが話をする間も無くプライドの姿が掻き消える。

その場でしゃがみ足元の抜け穴に飛び込んだのだが、彼女の動きはあまりにも見事でありナイトマンも一瞬だがその姿を見失ってしまう。

「・・・姫っっ!!」

思わず声を上げたナイトマンは両足で踏ん張るやその場で大きく跳躍する。

一見すると鈍重そうな見た目のナイトマンだが、ロボットである彼は人間よりも遥かに高い跳躍力を持つ。

まあ確かに他の高性能ロボットに比べれば、スピードは劣っていると言えるのだが。

いずれにせよである。

 

ズンッッ!!

 

「ちょ・・・ちょっと!!」

抜け穴から顔出した所でナイトマンが降りてきた事もあり、プライドはあっさりとその腕を掴まれ御用となってしまう。

「・・・いけません」

怒るでもなく半ば呆れの色が強い声のまま、己に声を掛けるナイトマンを前にプライドは抵抗する事無く諦めた様に肩を落とす。

「今日は婚約者殿が来られる日なのですぞ。そんな日に王宮を抜け出すなど」

ナイトマンの言葉にプライドは『う~』と小さく呻く。

何時ぞやの失踪事件の理由の一つであった婚約者の正体が自身よりも幼い少年である事が判明したプライド。

それからも何度か非公式にではあるが、デートと言うよりかはちょっとしたお茶会で面会を重ね続け今日は彼の方が公式にここカンパネラ公国を訪れる日なのである。

と言っても彼の方は未成年なので名目上は彼の父親の公務の付き添いなのだが。

「あの子に何か美味しいお菓子でもあげようかな~って思ったのよ。毎回あの子なり私の気を惹こうとしてくれるし」

手にした端末に幾つかの洋菓子店のチラシを表示しながらプライドは、今回王宮を抜け出そうとした理由を話す。

親同士が勝手に決めた政略結婚の趣はあれど、プライドと少年の関係はそこまで悪いものではない。

ナイトマン自身も護衛と言う立場で何度か言葉を交わしているが、若干無表情で年齢の割には大人びた所はあれどそこまで悪くはないのではと思う所もある。

確かにプライドの言う通り、面会の度に彼の方は何らかの贈り物を渡してくるイメージが強い。

婚約者の少年の顔を思い浮かべるナイトマンを前にプライドがその手を合わせる。

「お願い!!いつも貰ってばかりで悪いからあの子に私からも個人的にお返しがしたいの」

「だからと言って姫のお忍びを見逃す訳には。またあの時の様に良からぬ事を考える輩が出ないとも限りません。婚約者殿への贈り物であれば我々が代行して買ってきますので」

何とか見逃してもらおうと懇願するプライドにナイトマンは心揺らぐ所はあれど、あくまでも彼女に仕える者として毅然とした態度を取るのだが。

「誰かに買って来てもらうなんて嫌よ。私が選んで買わなきゃ意味が無いもの」

プライドがその頬を膨らませるがナイトマンの方は首を左右に振る。

いずれにせよ彼女を王宮内に連れ戻さなくてはとナイトマンが心を鬼にした時である。

「あっ・・・そうだ。だったら」

とその手を叩き合わせ急に笑みとなるプライドにナイトマンは嫌な予感と言う物を感じていた。

その後の事はいちいち説明するまでも無い。

ナイトマンが護衛する形なら買い物も良いのではと提案するプライド。

当然の事ながら最初は断ったナイトマンだが、敬愛する少女の切なる願いを断れる程に彼も非情にはなれず彼女の望み通りに護衛をしつつ買い物に付き合う事となる。

「返しと言っても多すぎなのでは」

「いいのよ。とにかくナイトマンが居てくれて助かったわ」

両手に洋菓子などが入った袋を手にナイトマンが首を捻るがプライドの方は己の望みが叶い、終始ご満悦の様子であった。

買い物を終え帰路に就くナイトマンが大きく溜息を吐いた時だった。

「ナイトマン殿!!」

己の姿を見るなり騎士の姿をしたロボット達が血相を変えて駆け寄ってくる。

姫のお忍びに勝手に同行していた事で騒ぎになっていたのか。

「すまない。実は姫のお忍びに護衛として付き合っていてな。無断で持ち場を離れた事への処分は・・・」

「あ、姫のお忍びは何時もの事なんで大丈夫です」

部下達に申し訳無さそうに詫びるナイトマンだが、彼らの方は姫が抜け出した事は特段問題視していないようだ。

互いに『ね~』と言うアイコンタクトを取るプライドと部下にナイトマンが頭を抱えそうになるがそれはさておき。

「大変です。デュラハンマンが・・・」

「む?デュラハンがどうしたのだ?」

同じカンパネラ公国に仕える人物の名前が出た事もありナイトマンが目を見開く。

「デュラハンマンが突然暴走して陛下達を人質に王宮に立て籠もっているんですよ!!」

「な・・・なんだと!?」

驚くナイトマン。

プライドの方は言葉を失った様子で騒然となる王宮を見上げていた。

「いずれにせよ姫だけでも無事なのは幸いです。公王達や来賓の方々の一部も中に閉じ込められていますので」

「来賓って・・・じゃあ弟やあの子達も!?」

「す・・・少なくとも王宮から脱出していないのは確かです」

アイアンナイツの一人がプライドに詰め寄られ口籠りながら状況を説明する。

「ぬう・・・とにかくまずは相手の出方を見る事としよう。まずは姫を安全な場所に移動させてそれと周辺に居る市民にも避難を促さねば」

「はっ・・・現在市内の警察と公国軍が避難誘導に動いています」

ナイトマンの指示を出すまでも無く既に彼の部下達はやるべき事を済ませていたようである。

ややあって王宮から少し離れた場所に仮設の拠点を築くとナイトマンは部下達と共にまずは事態を引き起こしたデュラハンマンとコンタクトを取ろうとするのだが。

「あ奴め・・・こちらから呼び掛けているのに応答は無しか」

「はっ・・・普通だったらメディアを通しての主張なりするんでしょうけど」

部下の一人が通信端末を操作しながら相手方に呼び掛けるが返答は全く無い。

普通人質に取って立て籠もるものなら何らかの宣言なり条件を突き付けてくる筈なのだが、デュラハンマンは一切その様な事をしない。

相手方の不気味なまでの沈黙に息苦しさすら覚える。

目の前の事態に並行する様に世界中でロボット達が暴走したと言う事件が発生したと言う情報がナイトマン達の耳に入る。

(デュラハンマンも他の事件同様に何らかの理由で暴走しているのか・・・?)

脳裏に相手の顔を思い浮かべナイトマンは思案する。

同じ公国出身の戦闘用ロボットである彼だが、実力こそ拮抗しながらも世間的な人気は常にナイトマンよりも下と言う評価に甘んじている。

性格も尊大かつ横柄な物で世界ロボット選手権の際にもカンパネラ公国の代表として選ばれなかった。

キング事件の際には同じ公国に仕える騎士として共にキング軍団に立ち向かったのだが、やはりと言うかメディアなどはナイトマンの方ばかりを持ち上げていた所すらある。

とまあナイトマンですら、相手との差を感じ取れたのだから虐げられた側の彼が感じた怒りなり憎しみは想像以上のものがあるだろう。

(もしかしなくても相手の目的は公王陛下達ではなく私個人への復讐なのか・・・?)

一つの推論にナイトマンが小さく唸った時であった。

<ワハハハハハハ!!ナイトマン!!吾輩の声が聞こえるか!?>

突如として通信機越しに響く聞き覚えのある声。

「ぬう・・・」

声だけだが相手の下卑た笑みを想像しナイトマンの顔が歪む。

<今こそ公国一の騎士が誰なのかを決める時が来た。吾輩は王宮の広間にて貴様を待つっっ!!そこで正々堂々と勝負だ>

相手からの要求を半ば最初から察していたのかナイトマンは内心で溜息を吐く。

「いいだろう。私は逃げも隠れもしない・・・貴様の気が済むまで戦ってやろう。だがその前に人質を解放・・・」

「アンタ、いい加減にしなさいよ!!ナイトマンの人気に嫉妬してこんなバカな事を起こすだなんて、そういう所がアンタの人気が無い理由なのよ!!」

冷静に人質の解放を促すナイトマンだったが、プライドの方は黙っていなかった。

「あの・・・あんまり相手を刺激しては」

アイアンナイツの一人が思わずプライドの肩を掴む。

<これはこれは姫はそちらに居たのですな。いやはや王宮内で姫を探していたのでナイトマンに連絡を入れるのが遅れましたよ>

大きく肩を揺らすプライドに向こう側のデュラハンマンは嘲笑う様に言う。

<いずれにせよ・・・お前が来るのを待っているとしよう。いいか一人で来るのだぞ。でなければ人質の命は保証せんぞ~ワハハハハハ!!>

その言葉を最後にデュラハンマンからの通信は途切れる事となる。

舌打ちをしつつナイトマンは壁に立てかけてあった楯を手にするやプライドの方に目を向ける。

叫んだ事もあり若干紅潮した顔の彼女だったが、己が冷静さを失っていた事を悟るや恥ずかしそうに視線を下に落とす。

「姫・・・陛下や他の人質が心配なのは分かります。ですが姫はこの公国の代表の一人なのです。先程の様にみだりに声を上げるようなみっともない真似はお控えください」

「ええ・・・ごめんなさい」

諭すように己に話すナイトマンに彼女は素直に頭を下げたものだった。

以前の彼女であればこうも簡単に己の非を認める事は無かっただろう。

何時ぞやの一件で彼女も成長した。

その事に満足したナイトマンは彼女に一礼をしつつ外へ出るのだが。

 

パカラパカラパカラッッ!!

 

車の駆動音などとは明らかに違う音がナイトマンの耳へと入る。

その音は馬の蹄の音に似てはいたがやはりそれとも違う。

言うなればそれはかつて共に世界ロボット選手権の際に共に出場した人物の足音に近い。

「ナイトマン殿~!!お久しぶりであります!!」

馬型ロボットの背に跨り颯爽とその場に姿を現すロボットは、はっきりと通ると言うか寧ろ喧しいと言える音量で叫ぶ。

そんな彼にナイトマンは一瞬溜息を吐きそうになるも、すぐに笑みを浮かべるのであった。

 

 

 

ややあってナイトマンは相手の要求通り単身で王宮内へと足を踏み入れる。

人質になった者以外は既に避難しており、王宮内は不気味なまでの沈黙が流れている。

(人が居ないだけでこれ程までに印象が変わるとはな・・・)

内心でそう思いながらナイトマンはデュラハンマンが待つ広間へと足を進める。

 

ジッジッジッジッジッッ!!

 

広間へと入るなり電流の走る槍を持った騎士型ロボがナイトマンを取り囲む。

デュラハンマン配下のランサード達だ。

「やはりと言うか正々堂々戦う気は皆無か?」

 

ガシャンッッ!!

 

『黙れ』と言わんばかりにナイトマンの眼前で電磁ランスが合わせられる。

元より人質を取られている事もありここで彼らと戦う訳にはいかない。

そのまま連行される形で彼は広間の奥への進むのだが。

 

ズンッッ!!

 

広間の中央部に進んだ所でランサード達に左右から槍を突き付けられる。

それを確認したかのようなタイミングで姿を現すのは、ナイトマンよりも大柄な姿をした騎士型ロボット。

片手に巨大な斧を持つその姿はさながら処刑人にも見える。

「ワハハハハハ!!ノコノコ一人でやってくるとは!!飛んで火にいる夏の虫とはこの事よ」

公国に仕える騎士でありながらこれだけの事をしでかし、更に悪びれる様子も見せない彼にナイトマンは憤りを覚える。

「よし・・・やれ!!」

片腕を振るいランサード達に合図を送るデュラハンマン。

電磁ランスを向けられた瞬間、ナイトマンが後ろへと飛び退く。

「おおっと抵抗はするなよ?もしも抵抗すれば人質の身の安全は保証しない」

もしもナイトマンであれば口が裂けても言える様な台詞ではない言葉を平然と言い放つデュラハンマン。

騎士の風上にも置けぬ男の姿にナイトマンは静かに怒りを覚える。

「相変わらず姑息な奴だな」

無駄とは思いつつナイトマンは確認する様に問うのだが、あちらの笑みはますます深くなる。

「折角人質に取ったのだ。有用なものは最大限活用せねばな」

わざとらしく首を傾げとぼけた調子で言い放つデュラハンマン。

「貴様・・・どこまで腐った?」

「何をしても評価されぬのだ。性根から腐りきるだろうさ」

吐き出すように言葉を口にするナイトマンにデュラハンマンの視線が細まる。

「吾輩は強い。貴様よりも遥かに・・・だが公王を始め他の者達はそれを認めようとはしない」

 

ブンッッ!!

 

苛立ったような声と共に振るわれる斧。

「吾輩を認めぬ者に忠義を尽くす義理など無い!!国民共も同じくっっ守る義務さえない!!故に吾輩は貴様の首を手土産にワイリー軍団に合流するのだ」

「デュラハンッッ!!」

「ワハハハハハ!!吾輩は勝つ為に手段は選ばぬ。さて大人しくその首をっっ」

左右をランサードに囲まれた不利な状況に加え公王達を人質に取られたナイトマンは思う様に動けまい。

駄目押しとばかりに周囲に伏せてあった警備用メカまで作動させたデュラハンマンは、己の勝利を確信した。

ライバルであり宿敵でもあるナイトマンを陥れ、内心でその光景に酔いしれさえする彼だったのだが。

 

ペペラペペラペ~!!チャンジャラジャラ~ジャ~ン!!

 

不意に外で鳴り響くクラクション音にデュラハンマンの気が逸れる。

続いてスピーカー越しに響く大音量の騒音。

<皆様~ご迷惑をお掛けしております。こちらシシマル運送業者~貴方の大切なモノを空の果てから海の底まで何時でもどこでもお運び致します。安心安全のシシマル運送を宜しくお願いします>

「な・・・なんだ!!と言うか喧しいぞ!!」

普段であれば周辺住民からの苦情待った無しの大音量で何やら宣伝をし始める運動業者。

と言うかここは公王の住まう王宮周辺であり、間違い無く問題になる行為である。

<届け先が紛争地域?安心してください世界最強のロボットが業務の邪魔をする者達を蹴散らしながらお運び致します。治安が悪い?同じく返り討ちにしながらお届けします。皆様、安心安全をモットーにするシシマル・・・>

「あ~!!うるさい!!」

場の空気を破壊する運送業者の宣伝にデュラハンマンが叫ぶが、スピーカーの音に勝てる訳も無く。

尚も大音量で宣伝が続く中、広間のガラス窓を割りながら一つの影が場に割り込んでくる。

馬型サポートメカに乗った騎士型のロボットだ。

「シャアアァァァァ!!失礼するであります!!」

外で響く爆音に負けじと叫び声を上げながら乱入してくるのはダルセニョーに跨ったパッショナーだ。

 

バキッッ!!

 

本来であれば即座に反応出来ていたであろうが、スピーカーからの爆音もあってガラスが割れる音が殆ど聞こえず、突然乱入してきたパッショナーに対するデュラハンマンを含めた面々の初動は大きく遅れてしまう。

パッショナーが手にした槍を振るい警備用メカがあっさりと凍り付かされ機能停止に陥る。

続けざまに自身を挟み込むランサードを交互に見つめたナイトマンは、手にした鉄球を振るい彼らを難なく弾き飛ばす。

壁にめり込む形で動かなくなるランサードには、目もくれずナイトマンは鋭い視線をデュラハンマンへと向ける。

「な・・・貴様は確かワイリー軍団の。ど、どう言う事だ?吾輩は貴様らに協力する立場なのだぞ」

パッショナーの姿に狼狽を隠せないデュラハンマン。

「自分はワイリー博士から暴走するロボットのせいで計画が狂ってるから止めてこいと命令を受けたでありますよ?」

「な・・・?ええい・・・謀ったなナイトマン!!」

「お前が言うか」

パッショナーを伏せていたナイトマンにデュラハンマンが指を突き付けるが、ナイトマンの方は逆に白々しい目を返すのみだ。

そもそもデュラハンマンが正々堂々勝負を仕掛けていれば、パッショナーの出番は無かった訳で今の窮地は彼自身の原因がある。

「こうなれば人質の安全は保証出来んぞ。まずはあの高慢ちきな姫の婚約者の小僧を始末・・・」

 

ブオオオオオオオォォォォォォォォンンッッ!!

 

手にした端末に向かって恐らく人質の監視の為に配置していたであろう部下達に人質の始末が命じられる。

が先程の運送業者とは違い別のドリフト音が外で響き渡り、デュラハンマンの声は殆どかき消される。

「あ~!!さっきからなんだ!!」

苛立ちもありパッショナーが割って入ってきた窓から外へと目を向けるデュラハンマン。

そこで彼が見たのは王宮の敷地内でエンジン音を響かせ走りまくる車の姿をしたロボットであった。

 

ペペラペ~!!ペペラペ~!!

 

<皆様安心安全の・・・>

よくよく見れば王宮の塀の向こうにシシマイの顔をした珍妙な姿をしたトラックの姿も目に見える。

言うまでも無いがワイリー軍団が保有する巨大輸送トラック、シシトラックとターボマンである。

<世界征服計画ってのは各人が連携して当たらなきゃいけなくてな。あんまり勝手な行動されると困るんだわ~!!>

ターボマンは挑発する様にクラクションを鳴らしながら内蔵するスピーカーの大音量でそう言い放つ。

<デュラハンマン様~>

その時になって端末から声が響く。

「どう言う訳か分からんがワイリー軍団に裏切られた。こうなれば公王陛下も含め人質を全員・・・」

<いや~それは無理な話ですな~>

人質の殺害を指示する自身に部下の反応は極めて不遜な物であった。

「な・・・何を言って」

<流石にキング軍団と違ってうちの軍団ってそこまではしないって言うか。後々の事を考えると色々とな・・・>

「貴様・・・我が配下では」

<ご名答~っと。残念だが人質は既に解放済みって訳よ>

端末の向こうでヘラヘラと笑うロボットの姿が見える。

ターボマン同様にワイリー軍団の一人であるフラッシュマンだ。

一連の騒音で気が逸れたのを見計らい彼が監視役を襲ったのだろう。

<無駄話はするな・・・時間の無駄だ>

彼の後ろにはもう一人のロボット、クイックマンの姿も見える。

軍団一のスピードを誇ると言われる彼と時間停止能力を持つフラッシュマンに隙を衝かれれば、並の者では反応すら出来なかっただろう。

<デュラハンマンだったな・・・お前も腹を括れ>

端末越しにクイックマンにそう言い放たれデュラハンマンは手にした端末を地面に叩きつけた。

「ぐぬぬぬぬっっ!!」

全身をワナワナと震わせながら彼が取った行動はある意味で想定内と言うべきものか。

あっさりと宿敵達に背を向けるその行動にパッショナーは思わず呆気に取られる。

「に・・・逃げたであります!!」

その背に屈辱の言葉を投げかけられようと睨み返したりと言った様子を見せないのが、彼を彼たらしめる姿と言えようか。

「己が勝てる見込みがなくなればその場から退く・・・奴はそういう男だ」

前々から彼の性格を熟知しているナイトマンは憤るでも無く、相手が逃げた外へ視線を向ける。

「だがこのまま放っておく訳にもいかん。奴を追い詰め何としても・・・」

と言いかけた矢先に外から大音量で声が響く。

 

<逃げられると思ったら大間違いよアンタ!!>

 

「ひ・・・姫!?」

自らの主の声にはナイトマンも思わず狼狽する。

デュラハンマンが不利となればその場より逃げたのと同様に彼女がこの状況で大人しく自身らの帰りを待っているかと聞かれれば、答えはNOだ。

ここに来て彼女を置いてきた事を内心で後悔するが、後の祭りである。

彼女は御伽噺にある様な勇者の帰りを待つ様な姫ではない。

寧ろその勇者に付いて行くか自分から魔王なりなんなりを倒しに行くだろう。

元より追撃するつもりであったが、ナイトマンはその声に急かされる様にパッショナーと共に外へと飛び出すのであった。




何時もの後書きです。
さらっと読み飛ばして頂いて結構です。

〇プライド及び抜け穴について
作中にある通り王宮周辺には大小さまざまな抜け穴がある。
中には小さな子供でしか通る事が出来ない物もあるようだ。
歴代の公王やその関係者が構築した脱出路であり、ナイトマンが発見したのはほんの一部である。
これを使えば王宮内に潜入できる訳で侵入者に利用されそうだが、作っている側が内部の人間と言う事もあり運良く利用されずに今に至っている。
ナイトマンらの頭痛の種であるのは言うまでもない。
彼配下のアイアンナイツはナイトマンと違い姫が王宮を抜け出しているのは、半ば黙認していたりと警備面で不安がある。

〇プライドの婚約者について
現在の所、台詞等は全く無いが一応のモデルはプライド同様にロックマンエグゼに登場するライカ。
二人のこの辺の関係はアニメ版を元にしている。
元ネタよりも若干幼くなっているプライドよりもライカの方は更に幼くなっているが、性格的なのは変わらないのであしからず。

〇デュラハンマンについて
オリボスのトリを務める事になった人。リブート前でも強敵な扱いだったが性格面の問題もあり人気はナイトマンに比べると今一つ。
とにかく効率優先、勝利の為なら何でもするし不利になれば即座にその場から退くと言うナイトマンとは真逆なキャラを強調させてみた。
世界中のロボット暴走事件に乗じナイトマンを倒し、公王夫妻の身柄を手土産にワイリー軍団に合流するつもりだったが当てが外れた。
上記の勝利の為なら何でもする性格は、ライバルであるナイトマンには熟知されておりあっさりと見破られ対策をされてしまった。

〇ワイリー軍団について
他の場所でもそうだがワイリーにより命令が出たので暴走事件を止めに動き出している。
パッショナーは欧州支部に異動となっており、そこでクイックマンやターボマン等のスピード狂の面々と意気投合していた様である。
ナイトマンがデュラハンマンの挑戦を受ける為に外へと飛び出した際にパッショナーがダルセニョーに乗って登場とするシーンが当初予定されていたが、話が長くなりそうなので省く形に。
丁度よくクイックマンやフラッシュマンなど人質救出の為に動かせそうな人員が居たのも作者的には幸いだった。

〇シシマル運送業者について
シシトラック数台を所有するターボマンが運営する運送会社。所属は欧州支部。
どこぞの宣伝カーの如く連呼していたが、依頼を受ければ例え紛争地域だろうがなんだろうが陸路である限りそこへ荷物を届けるのをモットーとしており、彼らの前を遮ればどうなるかは言うまでもないだろう。
キング事件の際に紛争地への物資運搬を始めた事から、政府非公認の運送業者(無許可)としてターボマンらが立ち上げた。
作中半年前に反政府テロ組織が占拠した街の病院に医療品を届けようとした際に運送の邪魔をした事もあって、輸送ついでの片手間で街を占拠するテロ組織を壊滅させたりと連邦政府市民からの受けは非常によくまたワイリー軍団の大きなしのぎにもなっている。
基本的な活動拠点は欧州だが、依頼を受ければテングマンが指揮するエアガッパーなども利用し大抵の所には運びに行けるらしい。

〇ターボマンについて
軍団内のスピード狂。ボディの各所にスピーカーを内蔵し更に有線式の拡声器(パトカーなどについてるそれ)も搭載しており、今回の最後の方でプライドがそれを利用して叫んだ。
爆音でブイブイ言わすのが生きがい。
ガソリンで動く為に燃費が非常に悪く、以前エンストを起こしてレッカー移動させられた事がある。
クイックマン達が迎えに行ったそうだ。

〇クイックマンについて
メガミックス版の様にクールな印象だが、こっちの世界ではそれに加えやっぱりスピード狂。
普段はクールだが一度火がつくと止まらない。とにかく止まらない。今回はまだそこまで燃えなかったが明後日の方向に走り出す事もある。
フラッシュマンとは意外にもその関係は良好。でも武装の相性は非常に悪い。


今回の後書きは以上です。
読んでくださってありがとうございます。
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