<逃げられると思ったら大間違いよアンタ!!>
己の企みを防がれるや恥も外聞も無くその場より逃げ出したデュラハンマンの前に立ち塞がったのは、彼の主でもあるプライド=カンパネラその人であった。
当然の事ながら彼女の周囲にはアイアンナイツやワイリー軍団に所属するスナイパージョー達なども居る。
如何にデュラハンマンが高性能ロボットと言えどこの数を相手取るには、些か不利と言えよう。
<アンタも騎士なら最後は騎士らしく戦いなさい!!>
ターボマンのボディに備え付けられた拡声器を手にデュラハンマンへと言い放つプライド。
そんな彼女に歯噛みしつつもそれにすら背を向けようとする彼だったが。
「ここまでだデュラハン」
逃げようとする背後をナイトマンに阻まれる。
もはや逃げ場などどこにも無い状況下で彼は血走った目を宿敵へ向ける他無い。
<さあやってしまいなさい!!ナイトマン!!>
半ば煽る様に大音量で叫ぶ姫に苦笑いを浮かべるしか無いのだが、ナイトマンは片腕の鉄球を静かに構える。
「ぬぬぬぬ・・・くそ!!いつもいつも・・・」
巨大な斧を片手にその顔を歪ませるデュラハンマン。
<ナイトマン頑張れ~応援してるわよ~>
プライドが声援を送ると同時に周囲の面々も似たような声を上げた時だった。
「・・・プライド!!」
静かに響くその声は、拡声器を手に声援を送っていたプライドの声すらも遮った。
戦いを始めようとしたナイトマンらもその声がする方向に目を向ける。
「これは・・・!!」
「公王・・・陛下!!」
ナイトマンとデュラハンマンは、現れた壮年の男性を見るなりその場に片膝を衝く。
公国に属するアイアンナイツもそれに続き、ターボマンやパッショナーも周囲の様子にとりあえずその場で畏まる。
「お父様!!」
プライドの言葉を聞くまでも無くその身なりを見れば男性が彼女の父、即ちカンパネラ公国の公王テオドール=カンパネラその人であるのは言うまでもないだろう。
「王族が仕える者の一方ばかりを贔屓にするのはあまり褒められたものではない」
静かな声でプライドの行為を窘める公王。
如何に相手が裏切りを働こうとも一応は臣下である事は変わりはない。
己の軽率な行動に気づきプライドは気まずそうに視線を落とす。
「今の今までナイトマンを贔屓にしておいてよく言う!!」
その姿を見た事もあって思わず臣下の礼をしてしまったが、立ち上がるなりデュラハンマンはその指を突き付け己の不満を口にする。
「ロボット選手権の時もそうだった。先のキング事件の際も然り!!いつもいつもナイトマンばかりが選ばれそして称賛される!!吾輩も同じだけの実力を持ちそして公王、貴方や公国に変わらぬ忠誠を捧げる騎士なのだぞ。だと言うのに貴方や愚かな民衆は・・・所詮、吾輩達はただの便利な道具に過ぎないのか」
王に対し指を突き付けながら声を荒げるなど極めて不敬なのだが、公王の方はその言葉を遮る事無く黙って聞いていた。
ひとしきり続く罵詈雑言に目を逸らす事無く聞いていたテオドールは、僅かに目を伏せる様にその頭を下げる。
「へ・・・陛下」
思わぬ相手の行動に糾弾していたデュラハンマンの方が狼狽を覚える。
「済まなかった・・・今の今までお前の抱いていたその苦しみに気づく事が出来なかった」
ゆっくりとデュラハンマンに歩み寄りつつ再度その頭を下げる公王。
「この様な事を起こす前にその話を私にしていてくれれば良かったのだが。いやこれは臣下の苦悩すらも気づかぬ我が身の不徳か・・・」
「そ・・・その様な」
ナイトマンを倒す為に人質にし命さえ奪おうとした相手だが、それでも長年仕えた主である。
その彼に今までの行為の謝罪をされ、慌ててその場に跪く。
「ロボット選手権の際、ナイトマンはMr.Xを名乗るワイリーによって洗脳され結果として我が国の威信は地に落ちた。それを挽回すべく各国の平和維持活動へ積極的に参加してくれた事は忘れていない」
「あれは単純にナイトマンが失脚したので、ただ吾輩に出番が回ってきただけの事・・・」
「だがお前の活躍で我が国の信用を取り戻せたのも事実。そして先のキング事件の際には連邦政府の求めに応じ各地の戦線に赴くナイトマンに代わり、我々を守るべくこの公国に留まってくれた」
「華々しく戦場で戦うナイトマンを尻目に吾輩は留守番ばかりと不満しか無かったですぞ!!」
握り締めた拳が地面に叩きつけられる。
「吾輩は悔しくて堪らなかった!!先も言ったがナイトマンばかりが評価され民衆の受けも良い。誰も彼も吾輩を評価してくれないと思っていた」
「世間はお前を卑怯者と罵ると聞いてはいるが、その忠誠心は変わらぬと私は思っている。そしてその性格が故に先のキング事件の際にも我が国の守りにと殆どの局面を除き我らの手元に置いたのだが」
『それが却ってお前の不満を増長させてしまった』と恥じる様に公王は面を伏せる。
「ナイトマンは確かにその性格も騎士らしい極めて実直なものだ。だが勇猛さを誇るあまり退くべき所で退く事を知らぬ一面がある。対してお前はどの様な相手であろうとも勝てぬと判断すれば退く事を考える」
己の欠点を口にされ二人の騎士が複雑な顔をする。
「だからこそなのだデュラハンマンよ。お前なら例え恥を選んででも、プライドら他の王族と共に逃げて守ってくれると私は思ったのだ」
「わ・・・吾輩の欠点すらも把握しそこまで」
人類とロボットの平和共存を理念に掲げるカンパネラ公国は、その理念故に先のキング事件の際にキング軍団の徹底的な攻撃に晒された。
一時は王族の都落ちさえ危ぶまれたが、デュラハンマン率いる公国軍がナイトマンらが戻ってくるまでの時間稼ぎをした結果、辛うじてキング軍団を撃退する事に成功している。
それらは敵の攻撃よりも妨害や進軍遅延を目的に軍勢を動かしたデュラハンマンの功績なのだが、やはりと言うか世間は直接キング軍団を退かせたナイトマンらに称賛を向けてしまう。
「確かに民はお前よりもナイトマンを評価しよう。だがお前を傍で見ている私はお前を評価し信頼している・・・それでは駄目か?」
「そ・・・それは」
じっと公王に見据えられデュラハンマンは目を合わせられぬとばかりに顔を背ける。
「公王の御心を察する事も出来ずこの様な事を仕出かしてしまい我が身の愚かさを恥じるばかりであります」
「ふむ・・・私も王として貴殿を罰せざる得ないあろう」
残念そうに溜息を吐く公王はナイトマンとデュラハンマンを交互に見つめ小さく頷く。
「いずれにせよ・・・だ。このままでは両名共にスッキリはしないだろう。故にここに王の名のもとに両者の決闘を命じる」
「「・・・ハ?」」
「有耶無耶のまま終わらせれば後々にまた同じ様な事が起こらないとも限らない。真っ向から拳を交える事で互いに分かり合える事もあろう」
目を点にする二人の騎士を前に公王は屈託無く笑うのであった。
今の今まで威厳ある佇まいであった彼が急に素と言える面を垣間見せた事でターボマンら部外者は悟る。
『間違い無く彼はプライドの父親だ』と。
「二人共・・・不満か?」
「いえ・・・その様な」
「陛下の御前で雌雄を決するのであれば、例え敗北を喫しようとも本望であります」
公王の言葉に二人の騎士が答える。
互いに目を合わせる両者の顔に浮かぶのは、歓喜すら含んだ笑みだ。
「では・・・ルールは我が国の決闘の習いに基づくとする」
公王の言葉を受けターボマンやアイアンナイツにプライドも下がり、ナイトマンとデュラハンマンだけがその場に残される。
即席の決闘場と化した王宮の中庭で両者が身構える。
巨大な鉄球に楯を構えるナイトマン。
対するデュラハンマンは断頭斧を思わせる斧を頭上で振り回す。
「思うに貴様とこうして戦うのは初めてだったな」
「確かに・・・まあ私的な理由で決闘をする訳にもいかんだからな」
余興の様な形で刃を交える事はあれど同じ主に仕えている事もあり、真っ向から争う事はついぞ無かった二人。
公王の許可を得た事もあるが、二人の騎士は似たような想いで互いに見据えた。
ブオォンッッ!!
まずに動いたのはナイトマンであった。
ほぼ予備動作無しに放たれるナイトクラッシャーがデュラハンマンに迫る。
飛び道具としてはリーチが短いとされるナイトクラッシャーだが、試合形式の一対一の戦いであれば先手を取れる。
並のロボットであれば一撃で粉砕されるであろう鉄球を前にデュラハンマンは僅かに腰を落とし・・・。
ガキンッッ!!
空いた腕でナイトクラッシャーを弾いたデュラハンマン。
そしてそのまま断頭斧を持ちナイトマンへと迫る。
「ナイトマン殿の一撃を弾くとは!!」
パッショナーが驚嘆する。
もしも自分であれば回避を選択しただろうが、デュラハンマンは防御すらせずに片腕で軽々と弾いて見せた。
その姿を見るにデュラハンマンが今の今までその実力を正しく評価されてこなかった事が察せられる。
「貴様のナイトクラッシャーは一度放つと二度目を放つのに時間かかる。その前に吾輩の一撃を叩き込んでくれる!!」
斧を振り上げナイトマンに肉薄するデュラハンマン。
手にした断頭斧を一撃をもってすればナイトマンですらただでは済まない。
グオンッッ!!
背後で響くその音にデュラハンマンは即座に反応を示す。
首を真後ろに振り向かせた彼が見たのは、ブースターを吹かし軌道を大きく変えたナイトクラッシャーの姿。
「・・・チィッッ!!」
反射的に断頭斧を振るい背を狙ったナイトクラッシャーが弾かれる。
と同時にナイトマンが楯を突き出してくるがそれは空いた腕でもって防ぐ。
ギリギリギリッッ!!
互いの腕と楯が鍔迫り合いを起こし火花が散る。
「味な真似を・・・だが少し安心したぞ。公国の楯となるべき者が」
「何時までも同じ欠点を残し続けるなど愚の骨頂だからな」
デュラハンマンの言葉を受けナイトマンが微笑む。
単純な装甲の厚さで言えば世界最高峰と言えるナイトマンだが、その堅牢さ故に欠点も多い。
長年彼と競い合ってきたデュラハンマンはその欠点を衝く形で動くのだが、ギリギリの所で切り崩せない。
とは言えその辺りは半ば想定済みであり、不思議と苛立ちは感じなかった。
「では吾輩もそろそろ本気で行くぞ」
ブチッッ!!
己の頭部の角を掴むや強引に頭部を引き抜くデュラハンマン。
思わぬ光景に目を見開く一同。
普通に考えて自爆以外の何物でもないが当然ながらそんな訳が無い。
ブォォンッッ!!
ナイトマン目掛けて放り投げられるデュラハンマンの頭部。
サイドステップで距離を取るナイトマンだが、デュラハンマンの顔が向きを変え巨大な火炎を吐き出す。
と同時に断頭斧を持った腕を含む両腕がロケットパンチの要領で射出される。
放たれた火炎を楯で防ぐナイトマンの背に断頭斧が迫る。
ガキンッッ!!
楯を振るう形で断頭斧を弾くナイトマンだが、その脇にもう一つの腕が突き刺さる。
続けざまに放っていた火炎が背を焦がすが持ち前の装甲で辛うじて耐えきる。
「吾輩のオールレンジ攻撃を鈍重な貴様が防ぎ切れると思うなよ!!」
各所から炎を噴出しながら宙に浮かぶ頭部がナイトマンを嘲る。
よくよく見れば両腕だけでなく胴体部や両足も宙に浮かんでおり、都合六つのパーツに分かれたデュラハンマンがナイトマンを取り囲む事となる。
「てっきり首だけが飛ぶと思ったであります」
「ワハハハハハ!!今時首だけを飛ばして何になる!?」
パッショナーの言葉にデュラハンマンが高らかに笑う。
分離機能を持つロボットが全く居ないと言う訳ではないのだが、デュラハンマンのモチーフからして首が外れるのは想定内としても全身が分離し独立して動くなど誰が予想出来ようか。
シュバババババババッッ!!
鎧の各所より炎を噴出しながらナイトマンの周囲を旋回するパーツ達。
相手に包囲された絶体絶命の状況ではあるがナイトマンは狼狽しない。
「早く攻撃を仕掛けたらどうだ?」
逆に薄笑みを浮かべ言葉を投げかける彼にデュラハンマンは小さく舌打ちした。
「ではお望み通りに!!」
旋回する両足がナイトマンの足を掠めとる様に左右から迫る。
ただ両足が回転して突っ込んでくるだけなのだが、強固な金属の塊がぶつかれば並のロボットであればそれだけで致命傷になりかねない。
ヒョイ・・・。
左右から迫った両足を前にナイトマンが取った選択はその場で軽く飛ぶ事であった。
楯を使っての防御なり何らかの手段で両足を弾くと踏んでいたデュラハンマンは、一瞬だがその行動に狼狽する。
自身の下に位置した旋回する両足を視界の隅に捕らえナイトマンは自らの足を突き出す。
グシャアアアアァァァ!!
僅かに跳躍したナイトマンは己の全体重を両足に掛け相手の両足を文字通り踏み砕く。
「ぬおっっ!!」
声を上げるデュラハンマンにナイトマンが大きく鉄球を振りかぶる。
ブオォォンッッ!!
一瞬の隙を突いて放たれる一撃に回避の余裕などある筈も無い。
一撃必殺のナイトクラッシャーがデュラハンマンの頭部へと直撃する。
この場に居る者の殆どがこれで終わりだと思ったその時。
ガキンッッ!!
一同の耳に入るのは甲高い金属音。
そして目にするのは放たれた一撃を受けながらもそれを弾くデュラハンマンの頭部であった。
「馬鹿め!!吾輩の頭部は貴様の楯同様に最も強固な造りとなっておるのだ!!流石に無傷ではないが一撃で破壊出来ると思うな!!」
僅かに陥没した頭部からオイルを吐き出しながらもデュラハンマンは、特に問題が無い形で宙に浮かび続ける。
ザンッッ!!
ナイトクラッシャーを繰り出した隙を衝き、デュラハンマンの断頭斧がナイトマンの顔を薙ぐ。
こちらも一撃で首を刎ねるには至らなかったが、ナイトマンの顔に痛々しい裂傷を刻ませる事となる。
「ナイトマンッッ!!」
プライドが悲鳴に近い声を上げるがナイトマンはそちらを見る事無く、旋回する様に上半身を回転させる。
手にした楯ごと腕が振り回されデュラハンマンの両腕が金属音と共に弾かれる。
「・・・ヘルフレイム!!」
回転する胴体部を前面に押し出しデュラハンマンの頭部が巨大な火炎を吐き出す。
自身の装甲を溶かす勢いで迫る火炎を前にナイトマンは腰を落としつつ片腕を振るう。
ブンッッ!!
目には目をとばかりにデュラハンマンの火炎を前にナイトマンも鉄球を投げたと誰もが思った。
と言うかナイトマンにはそれ以外に打つ手は無い筈だった。
仮に閉じこもる様に楯で防御した所でその隙を衝かれる。
他のロボットであれば回避も選択肢だが、鈍重な彼にそんな選択肢は無い。
鉄球の代わりに宙を舞ったのはナイトマンの守りの要である楯だ。
放たれた楯はデュラハンマンの火炎を掻き分け一直線にその頭部へと吸い込まれる。
頭部に鈍い衝撃が走ると同時にデュラハンマンの視界が楯によって覆い隠される。
分離したパーツはレーダーによって位置を判別しているので、操作が出来なくなると言う事は無いが視界が奪われた事で僅かにその動きに乱れが出来る。
バキィィィィッッ!!
鉄球を備えたままの腕が振るわれ断頭斧を持った腕が叩き潰される。
「ナイトォォォクラッシャアアァァァ!!」
叩き潰した勢いでナイトマンがデュラハンマンのボディに鉄球を放つ。
ボギャアァァァ!!
僅かな動きの乱れを逃さず放たれた一撃はデュラハンマンのボディを大きく陥没させ、地面へと叩きつけていた。
ドガガアアァァァァァンッッ!!
ボディを浮遊させる為に引火性の高い燃料を積んで居たのもあったのか、デュラハンマンのボディは爆発し炎上する。
「ぬううううっっっっ!!」
頭部を回転させ突き刺さった楯を弾くデュラハンマンが残った片腕を悔し気に握り締める。
血走った目で宿敵を睨み据えていた彼だったが、徐々に頭部から噴き出す炎が小さくなり始める。
「おやこれは・・・」
驚くパッショナーの隣でターボマンが渋い顔となる。
「成程~あれだけ重量のあるボディを浮かせてるんだ。俺と一緒で燃費が悪いと」
ターボマンの指摘通り本来飛行用ではないボディを強引に浮かせているに等しいデュラハンマンの各種パーツの浮遊時間は極めて短い。
射出した後は一旦ボディへ戻す事で再度燃料の補充は可能だが、先程の一撃でボディは破壊されてしまった。
燃料切れを起こしかけたデュラハンマンは歯噛みする。
「このまま・・・このままで終わるつもりは無いぞ!!」
ブオオオォォォォォッッ!!
デュラハンマンの声に応えるかの様に頭部から噴き出す炎が一瞬大きくなる。
「吾輩にも意地があるのだあぁぁぁぁ!!」
頭部だけの状態でナイトマン目掛けて突っ込むデュラハンマン。
文字通りの特攻だが彼の意気込みも虚しくナイトマンの所で辿り着く前に燃料が尽きる。
カランカランッッッ!!
ナイトマンの眼前で地面へと転がる頭部。
それを見下ろすナイトマンの顔は何の感情も表していなかった。
「勝負あり!!この勝負、ナイトマンの勝ちとする!!」
公王の言葉に周囲の面々が沸き立つ。
「結局、貴様には勝てないか。一騎打ちを挑んでも尚・・・」
悔し気に顔を歪ませるデュラハンマン。
「さあ吾輩を殺せ。このまま生き恥を晒すぐらいなら死んだ方がマシだ」
そもそも自分は反逆者なのだとナイトマンに止めを刺す様に懇願する彼だが、僅かに息を吐きナイトマンはゆっくりと首を振る。
「お前との決闘には応じたが殺し合いに応じた覚えはない」
地面に落ちた楯を拾いながらナイトマンは言う。
「それにだ・・・私の知るデュラハンマンならばここで潔く死ぬよりも次の復讐の機会を待つ方を選択すると思ったのだが」
「むむむ・・・吾輩を馬鹿に。だが確かに次の機会があるのであれば今回の轍は踏まん。今度は補助動力も各パーツに搭載し稼働時間の短さへの対策をして・・・」
敗北を認め死を覚悟した彼だったが、ライバルに指摘されるや次なる戦いの時への考えが及んでしまう。
「今回の一件は完全に不問にする訳にはいかぬ・・・が裁定の方は私に任せて頂きたい」
跪くナイトマンと足元のデュラハンマンの双方を見据えテオドールが微笑む。
プライドも何か言いたげではあったが表立って口する事は無い。
今回の一件を引き起こしたデュラハンマンには重い処分が下されるだろうが、彼自身もその処分を素直に受け入れるだろう。
何より己が公王に信頼されていた事は分かったのである。
周囲からの評判は地に堕ちようとも、公王個人からの信に比べれば彼にとってはどうでも良い事だ。
いずれにせよこれにて一件落着と誰も思った時だった。
「・・・む?」
今更の様にナイトマンは己の携帯端末に何件もの連絡が入っている事に気づく。
それはカンパネラ公国の国境警備隊からの物から始まり、次第に公国の正規軍からの物へと変じていた。
「未確認のロボットがこちらに・・・?」
デュラハンマンが引き起こした一件の為にすっかり放置する形となったのだが、いずれの報告もカンパネラ公国の国境を越えた謎のロボットがこちらへ真っ直ぐに向かっているという物であった。
「な・・・公国軍の一個師団が戦闘不能だと!?」
途上移動を続けるロボットに公国軍が進撃を阻止せんと攻撃を仕掛けたらしいのだが、反撃に遭い敢え無く戦闘不能に近い損害を受けたとの報告を目にしナイトマンが驚きの声を上げる。
「陛下に姫達はすぐに・・・」
只ならぬ事が思いも寄らぬ危機が迫っている事を察したナイトマンが公王達に避難を促しかけた時だった。
ズウウウウウウゥゥゥゥゥゥンンッッッ!!
王宮全体に生じる僅かな振動。
地震を思わせるそれは徐々にだが確実に大きくなっていく。
何かが近づきつつあるのを察するには十分なまでの揺れにナイトマンに限らずワイリー軍団の面々に表情を引き締める。
ゴロゴロゴロゴロゴロゴロゴロッッッ!!
再び地面が揺れたと思った瞬間であった。
「カンパネラアアアアアアァァァァァァーーーーーーーッッッッ!!」
もはやそれは叫び声と言うよりかは爆発などの際に生じる衝撃波に近かった。
地の底より響くかの様な轟音は確かにこの国の名を響かせていた。
王宮から大通りへと飛び出したナイトマンが見たのは、鉄の鎧を着こんだ巨人としか思えぬ存在。
天に逆立つ一対の角を震わせながらラ・ムーンの従者たるコロサッスは装甲の隙間より血走った目を周囲へと向ける。
「どこだ・・・どこに隠れた?血の代価を贖う時が来たぞ・・・カンパネラよ」
何時もの後書きです。
さらっと読み飛ばして頂いて結構です。
〇公王について
リブート前では年老いてると言う設定以外は一度も登場しなかったが今回は壮年と比較的若返っての登場となった。
実質的に今回が初登場であり一見すると厳格な国家元首だが、プライド同様にどこかフランクな部分もある。
彼も彼で若い頃はお忍びで旅をしたりと周囲の者をヒヤヒヤさせていたらしい。
人類とロボットの融和を掲げている良識ある人物だが、その理念故にキング軍団の苛烈な攻撃に国土を晒してしまった事には負い目がある。
〇デュラハンマンの国内の扱いについて
彼自身はその待遇に不満を抱いていたが、実際は思い違いである公王個人は彼の事をナイトマン同様に高く評価していた。
とは言えその事を直接伝えるのは公王の立場上あまりよろしくなかった事で大きなすれ違いを生む事に。
この点はやや公王自身にも配慮が足らなかったと言えよう。
〇デュラハンマンについて
首無し騎士モチーフと言う事もあり頭部を浮遊させることができるばかりか両手、両足から胴体部まで浮かせられる。
アストロマンに代表される様な反重力システムで浮いているのではなく、ボディの各所に仕込まれた燃料に引火してブースターを吹かすと言う強引な力技で浮遊している。
結果として極めて燃費が悪くなっておりナイトマンが掛かって来る様に挑発したのはその為。
ナイトマンと違いオールレンジ攻撃を行う事で手数では有利だが、ターボマン同様に戦闘継続時間は短いのが難。
ボディ内に燃料を備蓄しており、分離したパーツを胴体につなげる事で燃料を補給する事は可能だが、燃料を備蓄した事が仇となり堅牢なはずのボディが衝撃に弱くなっているのも弱点である。
因みに頭部はかなり強固に造られており、下手な攻撃では傷一つ付けられないが精密な電子頭脳を積んで居るのでその辺りも弱点と言えば弱点と言える。
性格などはリブート前と変わらずであったが、リブート前はナイトマンを圧倒したりとその実力を見せつけたが今回は結果も含めややマイルドな仕様となった。
〇ナイトクラッシャーについて
ロボット選手権に出場した際から改良を加えられており現在のナイトクラッシャーは鉄球内部にブースターを仕込んでおり、それを利用する事で軌道を変化させたり単純に威力を増加させるなどの応用が可能となっている。
どちらにせよ一撃必殺の威力を誇るナイトクラッシャーがここまで改良されているのは、キング事件などの影響も大いにあると言える。
〇最後のコロサッスについて
オリ8ボスが終わった所でガルバダリオに続いての登場。
ラ・ムーンの従者の一人。カンパネラ公国と因縁があるようだ。
今回の後書きは以上です。
読んでくださってありがとうございます。