深い深い闇の中で己は生み出された。
我らは虚空の闇より舞い降りし神の代弁者。
知的生命体が抱く特定のモノへの恐怖こそが我らの核。
我らに死の概念は無い。
我らに終わりなど無い。
ただただ破壊しこの星に生まれし知的生命体から恐怖と絶望を吸い上げる事が我らの使命。
それだけの使命であった筈なのだが。
活動時間が長引くにつれて生じる自我もあって、コロサッスらにも変化が生じてくる。
ただ殺し破壊するだけでは、効率よく負の感情を集める事が出来ないと感じた時辺りからか。
既に活動を始めて数百年近くが経過していたが、獲物を求めて彷徨う自身に対しニンゲン達は当初ほどの恐怖を抱かなくなっている事に気づく。
恐怖が畏敬へと変化し遂にはラ・ムーンに代わる形で信仰の対象にすらなり始める。
自身がニンゲン達の住まう場に攻め込んだにも拘わらず、逃げもせず崇めようとする姿にコロサッスは何かがおかしくなって来ている事に気づいた。
動揺を隠し切れずに彼が同じ存在である者達にこの事を報告するのだが、それらは周知の事実であった。
普通に殺戮を繰り返した所でニンゲン達は自身らの存在に慣れてしまう。
この時、ガルバダリオは分身であるガード達を使って広範囲に渡って破壊活動をする傍ら、意味も無い生贄を要求するなどやり口を変え始めており、アルラウネに至っては毒性を持つ動植物を生み出し自身は表に出ぬ形での活動にシフトし始めていた。
「お前はまだそんな単純な事をしてんのか?動きばかりか頭の遅い奴だな~」
甲高い声で己を嘲笑うガルバダリオに苛立つも事実である事は認めざるを得ない。
癪に障るがガルバダリオに倣いまずは己の分身を生み出す事から始め、手始めとばかりにガード達を周辺へと放つ。
当初こそ正体不明の金属の化け物に襲われ恐怖を与える事は出来たが何時までも同じ手が何度も通じる筈も無い。
恐らくと言うか見た目の類似点などから己が放った尖兵だと気づいたのだろう。
またしても模倣になるが生贄とやらを求めるかと考えるも、コロサッスからすれば金銀財宝など何の興味も無い。
財宝などに興味が無い点はガルバダリオも同様だろうが、彼曰く『積み上がったそれらが自分への恐怖を表す指標となる』らしい。
いずれにせよ己は彼らの様に要領よく動く事は出来ないと感じた時だった。
ブツッッ!!
そんな音が脳裏に木霊しコロサッスは目を見開く。
今日も周辺に潜むであろうニンゲン達を襲う様に命令していたガード達の一部から反応が途絶えたのだ。
己の分身であり絶対的な存在ではないが少なくともニンゲン達に負ける筈など無い。
にも拘わらず反応が消えたと言う事は倒されたのだ。
脆弱なニンゲン達が如何なる方法を使ったのかは知らぬが己の分身を破った。
正直な所、屈辱よりも胸が高鳴るのを感じた。
一矢報いた者を一目見たい。
この時、コロサッスの頭からは己の使命などすっかりと忘れ去られており彼は文字通り一目散に相手が居るであろう場所へと向かっていた。
戦場において彼が見たのは己が破壊活動の際に周囲に遺棄した武器やその欠片を素体にした物を身に着ける者達。
コロサッスからすれば文字通り捨て置くだけのゴミを拾い集め、それらを利用する形で彼らはガード達を倒したのか。
あちらもあちらで予期していたのか驚く事も無く思い思いの武器を手に立ち向かってくる。
僅かばかりとは言え己の装甲に傷を付ける攻撃を受けながらコロサッスは心地良さを感じていた。
立ち向かってきた者達の何人かを肉塊へと変えながら前へと進むコロサッスの足元が大きく沈む。
予め仕掛けていた落とし穴に沈んだ所で頭上より無数の矢が飛んで来る。
その矢じりの先に取り付けられているのは、当然の事ながらコロサッスが戦場に放り捨てた金属である。
鋼鉄の体に次々と突き刺さる矢に僅かに呻き声を上げたのを痛打と見たのか。
この一団を率いる者がコロサッスを見下ろす様に崖の上に姿を現す。
「我こそはカンパネラ!!貴様に国を追われ親兄弟を殺された恨みっっ!!今ここで晴らしてくれる!!」
凛とした声でそう話すのは驚くべき事にニンゲンのオンナと言う存在だった。
殆どのオンナは強くも無いとコロサッスは認識しており、彼自身もオトコに比べれば積極的に襲う気にはならず敢えて見逃す事もあったぐらいだ。
だがその認識もすぐに変わる。
全身を鎧に身を包んだ女性が数メートルはあろう崖から飛び降り地面に着地する。
全く隙が無い動きを見てコロサッスは『この女は強い』と悟る。
地面に降り立ち何やら恨みつらみを口にする相手の文言にはコロサッスからすれば、全く以って関心が行かぬ話だ正直どうでも良い。
いずれにせよコロサッスは歓喜した。
この世に生み出され始めてまともに戦える事への喜びを感じていたのだ。
「スティィィィルッッッ!!」
気合の一声と共にコロサッスが鉄球を放り投げる。
(ロボットとやらにカンパネラの末裔・・・それに灰にするモノだとか言う存在。いずれも我が相手に不足なしだ!!)
放り投げられた鉄球を転がる様に避けるプライドはさておき、二体の竜が左右を取り囲むように動く。
「その動きはさっきも見たぞ!!」
左右から放たれる光弾や蹴りなどの連打を目聡く見切りコロサッスは両腕を振り回す。
大地を震わす剛腕でもって小規模な竜巻に似た衝撃波を発生させた一撃は黒竜王と白竜王を弾き飛ばすだけの威力を誇る。
その合間を縫う様にクイックマンがブーメランを手に動くのが分かる。
ダルセニョーに跨ったパッショナーも別方向から迫って来る。
「そして貴様らの攻撃も効かぬ!!」
顔面に叩き込まれるクイックブーメランに平然とするコロサッス。
後方に放り投げた鉄球を引き戻している時間は無いと判断したのか彼は即座に虚空に手を翳す。
パキパキパキパキッッ!!
僅かな間と共に生み出されたのは一対の巨大な斧であった。
両腕に握られた魔斧と言うべき代物が振り下ろされ周囲の建物ごとクイックマンとパッショナーを吹き飛ばす。
「鉄球しか使えぬと思ったか?だとすれば舐められた物よ。ありとあらゆる金属を自在に扱う事こそが我が力の本懐なのだ」
己の体の一部から武器を生み出すコロサッスは誇る様に言う。
ビュオオオオォォォォッッッ!!
瓦礫に埋もれたクイックマンらを一瞥すらせずにコロサッスは遠くから飛んで来る鉄球に目を向ける。
当然と言うか飛んで来たのはコロサッスのではない。
プライドが放ったキングダムクラッシャーの一撃は先程、コロサッスの角を破壊したのが嘘の様に軽々と受け止められる。
投げ放った一撃が決まらず目を白黒させる暇も無い。
グイッッ!!
逆に鉄球の鎖を引っ張られ危うくバランスを崩されそうになる。
「どうした?カンパネラの末裔よ。その力で私を追い出すのではなかったか?」
「いきなりの戦いなんだからちょっとは準備の時間ぐらいっっ!!」
鼻を鳴らす様に言うコロサッスにプライドは鎖を己の下に戻そうとしながら叫ぶ。
王族として多少の護身術は学んではいたが、今の様に戦うなどほんの数時間前まで想像も出来なかった。
グイイイッッッ!!
半ば綱引きの様になり鎖を引っ張りあう両者だが、膂力の上でコロサッスの勝てる筈が無い。
あっと言う間に引き寄せられプライドは一回転する形でコロサッスの眼前に尻餅をつく事となる。
「・・・ヒッッ!!」
眼前で見る文字通りの化け物の姿にプライドは息を呑む。
そんな自身に相手が容赦する筈など無い。
無造作に振り上げられる巨大な斧。
(ビビっちゃ駄目。ビビっちゃ駄目。ええとコイツはなんて言った・・・この力はコイツの力の一端でこれを使ってご先祖様は)
それは時間にして刹那の一瞬。
滅多に使わぬ勢いで頭の中の情報を整理しプライドは反射的に掌を向ける。
(さっきのコイツの一撃は手加減。だからなんか知らないけど受け止められた。次のは本気だからこのままじゃ受け止められない・・・このままじゃ)
この場の窮地の打開策を考えんとコロサッスが手にする斧を見据えプライドは目を見開く。
「目には目を・・・斧には斧っっ!!」
掌から小ぶりな斧を生み出しそれを力の限り振るいあげるプライド。
それは相手の斧と真っ向からぶつかり合うのだが当然と言うか力負けして衝撃と共に地面に叩きつけられる。
本来であればそれだけでプライドの体など一瞬でバラバラになりただの肉塊となっていただろう。
「・・・ケホッ」
埃が舞う中でそんな咳を出せると言う事はまだ死んでいない。
その場で飛び跳ねる様にして起き上がったプライドはコロサッスから数歩離れ、間合いを取る。
密着したままの状況では膂力に勝るコロサッスには勝てないと判断したからだ。
確認する様に自身の体を見るプライドだが、純白の鎧に覆われた体には顔も含め殆ど傷は無い。
「僅かな手合いで上達したな。認めてやるぞカンパネラの末裔よ。貴様には戦いの才能がある」
今まで心に無い称賛の言葉を投げかけられた事は数多あれど、これ程まで褒められて嬉しくない言葉は正直初めてだ。
「王族とかそんなのよりも普通の女の子になりたかったんだけど・・・」
「諦めろ。カンパネラの末裔に生まれた時点で凡庸な道などあり得んのだ」
苦笑いを浮かべるプライドにコロサッスも笑みで返す。
パキパキパキパキパキパキッッ!!
手にした斧を先程の様に鉄球に変えそれを構えるプライド。
対してコロサッスは両手の斧を握り締める。
圧倒的な闘気と殺気が向けられるが不思議と恐怖は感じない。
(もしかしなくても・・・これって行ける!?)
当初こそ圧倒的な力の差を見せつけたコロサッスだが、彼と同じ力を手にしたからなのか彼との差が縮まってきている様に思えた。
ドクンッッ!!
内より湧き上がる熱を帯びた何か。
それはふとした拍子に力を得てしまった者であれば誰もが抱く他者への優越感。
(この力を上手く使えばカンパネラ公国を今以上に発展・・・)
ガキンッッ!!
とそこまで考えた所でコロサッスの魔斧と鉄球がぶつかり合う。
その余波で地面が大きく抉られるのを見てプライドは頭を振るう。
「手に入れた力に酔いそうになるなんて三流も良い所ね・・・」
今更の様に溢れ出る冷や汗を掻きながらプライドが自嘲する。
力に呑まれれば目の前の怪物と同じ存在になってしまう。
それはプライドの王族としての誇りが許さない。
「ようし・・・バッチコーイ!!」
啖呵を切る様に鉄球を振り回すプライド。
「押忍!!自分も姫に続くであります!!」
彼女に並び立つ様に槍と楯を手にしたパッショナーが声を上げる。
一瞬だけ目配せする様に視線を合わせる二人に言葉は無い。
同時に動き出す両者を見据えコロサッスが斧を構える。
「むぅぅんっっ!!」
ズンッッ!!
コロサッスが片足を地面に突き付ける。
ただそれだけで地面が裂け同時に衝撃波が走る。
跳躍して避けるプライドと違いパッショナーは楯を構えたまま突っ込む。
バチイイィィィッッッ!!
「・・・ぬうっ!!」
牽制に近い攻撃とは言え己の一撃を受け止めそのまま歩みを止めないパッショナーにコロサッスが目を見開く。
「自分のイージスの楯はロボット王キングのそれを参考に造られた鉄壁の楯!!その程度の攻撃なぞ目でもないであります!!」
ビームバリアーを展開する楯を手にパッショナーが迫る。
「小癪なっっ!!」
ブォォォォンッッ!!
振り下ろされた魔斧をイージスの楯は受け止める。
大きく亀裂を発するも己の一撃を受け止められた事にコロサッスは衝撃を覚える。
粉々に砕け散る楯を捨て置き槍を振るいながらパッショナーが懐に飛び込んで来る。
「今こそ奥の手の~マキシマムパワーであります!!」
ピカアアァァァァァ!!
怪しく光るコキュートスランス。
「その光は!!」
我々と同じ物と驚く間もなく穂先が片目に突き刺さる。
グシャアアアァァァァ!!
傷口からコロサッスが鮮血の様に金属の粒子を撒き散らしながら仰け反る。
パキパキパキッッ!!
コキュートスランスから発せられる冷気にコロサッスの頭部が凍結しかける。
尤も痛覚は無いのかコロサッスに冷気による影響は見られない。
「おのれぇぇぇぇぇ!!」
空いた腕を強引に振るいパッショナーを吹き飛ばし突き刺さった槍を引き抜く彼が見たのは鉄球を振るいながら迫るプライド。
己に一矢報いた槍をプライドへと投げるがそれはあっさりと避けられる。
再び跳躍したプライドにコロサッスは手にした斧を投擲する。
空中で方向転換が出来ないのを見ての攻撃であり、プライド自身『しまった』と思うも既に遅い。
もしもこの時、彼女の間に割って入る存在が無ければたちまち致命傷となっていただろう。
ガキンッッ!!
甲高い金属音と共に放たれた斧が空中で止まったかと思えば逆にコロサッスの方へと向かっていく。
「ワハハハハハハ!!高慢ちきで心底気に入らぬ小娘なれど・・・我が主は主!!このデュラハンマンが居る限り指一つ触れさせぬぞおおぉぉぉ!!」
頭頂部に突き刺さった斧をそのままに首だけの状態でデュラハンマンはコロサッスに不敵な笑みを浮かべる。
「ヘルフレイムッッ!!」
至近距離で放たれた炎に僅かに目を細めるコロサッス。
一撃を防がれた事は忌々しいがデュラハンマンの一撃は本来であれば、ターボマンのバーニングホイール同様に何の痛手も与えられない筈であった。
だがコキュートスランスに埋め込まれた超エネルギー元素による冷気を受けた状態で、超高温に晒されたコロサッスの頭部は急激な金属疲労を引き起こす。
バキッッ!!
亀裂が走る己の頭部。
それを見て得意げに笑うデュラハンマンであったが彼の笑みごとその頭部をコロサッスの手が瞬時に握り締める。
握り締められた指の隙間から鮮血の様にオイルが溢れる。
「デュラハンマン!!」
その光景にプライドが悲鳴の様な声を上げるも彼女の動きは止まらない。
ここで動きを止めてはデュラハンマンが何の為に己の身を犠牲にしたのか分からない。
シュンッッ!!
瓦礫に埋もれたと思われていたクイックマンも動いていた。
実際、斧の衝撃波に吹き飛ばされていた彼だったがタイムストッパーを使用し割って入ったフラッシュマンに物影へと退避させられており、コロサッスの隙を衝く事に成功する。
「貴様の攻撃など・・・」
デュラハンマンとは違いクイックマンに自身へのダメージを与える手段は無いと言おうとしたコロサッスだったが、彼が手にする物体を見て思わず呻く。
クイックマンが手にするは三日月状の物体。
それは先にプライドが破壊した己の頭部の角だったからだ。
ズシャアアアアアアァァァァァ!!
己の体の一部は当然の事ながら障壁を『神の楯』を無力化しコロサッスの胸部に深々と突き刺さる。
「がああぁぁぁぁぁ!!」
苦悶の様な声を上げるコロサッスに追い打ちとばかりに二体の竜人が両足に拳を叩きつける。
膝が折れ思わずその場に跪く彼は見た。
先程致命傷を与えた筈のロボット、ナイトマンとか言った者と共に鉄球を手にするプライドの姿を。
「行きますぞ姫ッッ!!」
「ええ・・・この一撃に全てを賭けて~!!」
ナイトマンの声とプライドの声が合わさる。
「「キングダムクラッシャアアアァァァァ!!」」
ズガアアアアアァァァァァンンッッ!!
放たれた鉄球の一撃はただでさえ亀裂が走っていたコロサッスの頭部を粉々に砕いていた。
「ぬううううううっっっっ!!」
喉の奥から振り絞る様な声を響かせるコロサッス。
兜の様な金属の塊の中にあった物にプライドらは言葉を失う。
粉々に破壊された頭部の中にあったのは、人間なりロボットなりの物ではなかった。
炎の様に不気味に蠢く闇。
それが頭部があった場所で大きく揺れる。
「カンパネラ・・・これがお前らの言う力を合わせると言う事かあああぁぁぁぁ!?」
噴き出す闇から垣間見える目をプライドへと向けコロサッスが叫ぶ。
もはやどこから声が出ているのかも分からない状態ではあるが、頭部を失い胸部には己の角が突き刺さり挙句に両足を砕かれた状態でも彼は動きを止めない。
「フハハハハハ・・・面白い面白い!!まだ・・・終わっていないぞおぉぉぉ!!」
ゴロゴロゴロゴロッッ!!
歓喜の声を響かせるコロサッスの頭上で黒い雲が集まり始める。
今まで雲一つさえなかったと言うのに、コロサッスが呼び寄せたとしか思えぬ雷雲から稲妻が一直線にコロサッスに放たれる。
バチバチバチバチバチバチッッ!!
稲光と共にコロサッスの残された全身が光り輝き始める。
「漸く本気で心置きなく戦える!!ダイモニオンッッッ!!これがこのコロサッスの本気(ハイパーモード)だ・・・ッッ!!」
全身を発光させたコロサッスが満面の笑みを浮かべ斧を拾おうとした時だった。
彼の視界に影が飛び込む。
「な・・・にぃっっ!!」
と驚く間も無く突然戦場に現れた二体の影によってコロサッスの巨体は高々と舞い上がりその場から急速に遠ざかって行ってしまう。
「・・・え?」
十数秒ほど経ってからコロサッスの巨体が小さくなるのを見てプライドはそんな間の抜けた声を上げていた。
敵の底知れぬ力に戦々恐々とした彼女だったが、突然の敵の離脱に目を白黒させる他無い。
いずれにせよ脅威は去ったと認識した瞬間、体が鉛の様に重くなる。
同時に身を包む鎧が元の宝玉に戻るのを見るや彼女はその場に座り込んでいた。
明日辺りに全身筋肉痛なのは間違いないだろう。
それどころか痣も幾つか出来ているに違いない。
「もう駄目。これ以上は動けない」
今にも泣きそうな顔で言うプライドにナイトマンやクイックマンらが呆れた様な顔をするのが見える。
彼女は溜息を吐きつつも地面に転がるデュラハンマンの残骸に目を向ける。
「デュラハンマン・・・アンタ、恰好つけてんじゃないわよ」
舌打ち交じりに憎たらしかった彼に言葉が投げかけられる。
些細な思いのすれ違いから騎士に主に対する反逆を行った彼だったが、同時にそれは主に己を見て貰いたかったが故の想いからなのだろう。
「今ならアンタの気持ちも分かるわ。アンタは最高の騎士だった・・・」
「ワハハハハハハハッッ!!見たか吾輩の活躍を!!」
背後から響いてくるその声にプライドは目元の涙を拭いながら振り返る。
哀悼の意を示していたナイトマンも驚きながら、ランサードに抱えられたデュラハンマンの胴体部を見る。
ナイトマンとの決闘の際に大破し爆発炎上した胴体部だが、見た所その中枢部は無事な様で何やら駆動音が響き渡る。
「このデュラハン。頭部とは別に胴体部に並列化された電子頭脳を内蔵しておりましてな。頭の一つや二つ破壊されても何の問題も無く活動可能ですぞ。頭部からの映像が途切れたのでランサード達に急ぎこの応急処置をした胴体部を運ばせ・・・」
「・・・折角の余韻を完全にぶち壊してくれたわね」
どこまでも卑怯で強かな騎士にプライドは呆れた様に溜息を吐くしかなかった。
そんな面々から気づかれぬ形でその場から離れる黒竜王と白竜王。
音も無く立ち去ろうとする二人の周りを人間の頭部程の大きさの昆虫が舞う。
「「・・・・・・」」
昆虫の動きを目で追いながら竜人達は一瞬だけ考える様に目を向けあう。
「お前達の王に伝えよ」
「猶予は一刻も無いと」
二人の言葉を受けてか昆虫は円を描く様に宙を舞うとそのまま飛び去って行く。
「尤も・・・まだ望みはあるのだがな」
黒竜王はチラリと彼らが居る方向に目を向け呟く。
・・・一方。
「貴様ぁぁぁ!!」
雲よりも高く遥か上空となった場でコロサッスが声を荒げる。
そんな彼の両肩を掴み高速で飛行するのはガルバダリオの従者バロムとラムダだ。
「ガルバダリオの差し金か!?今すぐ降ろせ!!奴の従者の分際で私にとっての楽しみの邪魔をするなああぁぁぁぁ!!」
両腕を動かし暴れ始めるコロサッスによってバランスが崩れ彼らは真横に急回転する。
「お怒りをお静めください」
「今ここで貴方を失う訳にはいかないのです!!」
二人がコロサッスを宥める様に口を開くがそれで収まる筈は無い。
「貴方を回収せよ。これはラ・ムーン様のご命令なのです」
バロムの言葉にコロサッスが暴れるのを止める。
「戦いの機会はこれから幾らでもあります。いずれにせよ・・・我々にとって貴方は重要な戦力なのですから」
「むう・・・」
ラムダの言葉に唸り声を上げるコロサッス。
「良いだろう・・・ラ・ムーン様の命令とあれば致し方ない。だが次は許さぬからな」
頭部のあった場より闇を噴出しながらコロサッスはそう言ったきり何も言わなくなる。
矛先を下ろした主と同じ存在に内心で安堵しながら二人の従者は己らが潜む場へと彼と共に向かうのであった。
何時もの後書きです。
さらっと読み飛ばして頂いて結構です。
〇冒頭の独白について
当たり前だが当時の人類にコロサッスが倒せる筈は無く蹂躙されるがままだったのだが、次第に彼の存在に慣れてしまった人類からは本来の目的である恐怖や絶望と言った負の感情を吸い上げる事が徐々に出来なくなってしまった。
その為、手を変え品を変えての試行錯誤が続くのだがコロサッスも含め彼らからすると人類を含めた知的生命体の感情をいまいち理解出来ていないのがそもそも原因だったりする。
コロサッスがカンパネラを最終的に己の従者としたのは、同じ人間に力を与える事で少しでも効率よく上記の負の感情を吸い上げる為である。
初代カンパネラ自身、当初は一族の仇とコロサッスを狙っていたが最終的に不思議な縁の様な物が芽生え、何らかの情を抱く様になったのだが最終的に仲違いしたのは言うまでも無い。
コロサッス自身も己が遺棄した体の一部を加工されるとは思ってもいなかったらしい。
〇コロサッス戦について
パッショナーが持つコキュートスランスには超エネルギー元素と同質のエネルギーを蓄えた結晶が内部に入っており、その力を解放する事で障壁を突破する事が可能となっていた。
但しその負荷は凄まじく超高性能ロボットに値するパッショナーでも常時そのエネルギーを解放する事は不可能で下手をすると暴発し、自爆してしまう危険性を伴っている。
パッショナー自身のボディにはその類のエネルギーは一切搭載されていないのであしからず。
コロサッス自身が口にしていたが彼の能力の真価は己のボディから金属製の武器などを生み出す事。
効率よく建物を破壊する為に鉄球を手にしていたが、斧や槍などガード達同様にありとあらゆる武器を作り出す事が可能。
因みにコロサッスの体内には負の感情を具現化したような闇が入っており、それが人型を模って金属のボディを構成している。
いずれにせよ人間の様な生命体やロボットの様な機械とは一線を画す存在と言える。
これはガルバダリオを含めた他の面々も同じくである。
頭部などを破壊されたがこれでも致命傷にならず、遂に奥の手(ハイパーモード)を発動するもラ・ムーンの意を受けたバロム達によって戦いは終結した。
〇デュラハンマンについて
やっぱり死ななかった。ボディに隠されていた並列化された電子頭脳がある為、彼はプライドを助ける為に文字通り体を張った。
そうでなければ彼が険を冒そうとはしなかった事だけは事実として付け加えておく。
〇昆虫について
黒竜王達だけではなく彼らも既に動き出し始めている。
現在は偵察目的に虫達を派遣し分析を行っている所である。
これにて一応ながらオリ8ボス編終了となります。
次回からはゲームで言う所のスぺボス編に当たるのかなとか思ってます。
とりあえず頑張りますハイ(汗
今回の後書きは以上です。
読んでくださってありがとうございます。