来た道を逆走する形でロボットアーミーの基地へと辿り着いたロック達。
けたたましいサイレンの音が鳴り響く中、一般市民が近づかぬ様に誘導を行っていた兵士らはロックの姿を見るなり安堵したように息を吐く。
「じょ・・・状況は?」
「既に連絡があったとは思いますが収容していたキング二号機が基地内で暴走していまして。ワイリーに何とかする様に言ったのですが・・・」
「博士の停止命令を受け付けないと」
兵士の一人がロックの問いに答える中、グレゴリオが『成程』と頷く。
ワイリー軍団の一員であり暴走しているラルゴと同じくキングの後継機でもある彼に向けられるのは当然の事ながら不信の念が籠った目だ。
そんな視線を知ってか知らずか彼は薄笑みを浮かべながらロックと顔を見合わせる。
「さてどうするか・・・なんて聞くまでも無いか」
「何とかしてラルゴを止めないと」
グレゴリオの言葉を受けロックが爆発が起こる基地の中枢部に向かって走り出す。
彼らに遅れる様にパイレーツマン達がその場に駆け付けるのだが、詳しく事情を把握していない兵士らは反射的に銃を向ける。
「お・・・お前達は」
「あ、彼らは一応味方だよ。今の所はだけど・・・」
グレゴリオの指摘に兵士らは舌打ちをし銃口を下げる。
「賢明で何より。今は無駄な事をしている暇は無いしね」
嫌味ったらしく言い放つ少年に『命令さえあれば何時でもスクラップにしてやる』と言わんばかりの顔になる兵士らはさておきである。
先頭を行くロックに続く形で基地内へと入った一行が見たのは。
ズドオオオオオオォォォォォォッッッ!!
ロックの行く手を阻む様に巨大な氷壁が眼前に立ち塞がる。
出現した氷壁は凄まじい勢いでロック達へと迫りくる。
「この攻撃は・・・」
見覚えのある攻撃に驚くロックが困惑気に声を上げる。
タイミング良く跳躍し氷壁を回避したロックが見たのは冷凍庫を模したボディを持つ一体のロボット。
そのロボットはキング軍団の一員であるコールドマンその人にしか見えないのだが。
「おや~これは~なんでしょう?」
ロックの『後ろ』からやって来たコールドマンが己と瓜二つのロボットに間延びした声を上げる。
「私の~兄弟ですかね~?」
「んな訳あるかいアホか~!!」
首を傾げるコールドマンにパイレーツマンが突っ込みを入れつつ、彼は周囲に放り投げられた爆弾に舌打ちをする。
周囲でリモートマインの爆風が生じる中、パイレーツマンそっくりのロボットが無言のまま姿を現す。
彼らだけではない。
グランドマン、ダイナモマン、バーナーマンにマジックマンといずれもキング軍団の幹部であった高性能ロボットに瓜二つの面々が行く手を遮る。
「言うまでも無くラルゴの力だね」
グレゴリオが混乱気味の面々に説明する。
その一言でロック以外のキング軍団であったパイレーツマンらは状況を理解する。
「王さんの再生能力を応用してワシらのコピーを二代目の王さんが生み出した・・・って事やな?」
「キング本人は決してしようとしなかった事だけど、君達への思い入れが無いラルゴなら資材を使って戦力になる駒を生み出しても不思議じゃない」
ロイヤルリビルディング・・・ワイリーが開発した三次元立体コピーシステムの技術を応用した物であり、ロボット王キングがこの力を使い次々とロボット兵器を生み出し世界中の都市部に甚大な被害をもたらした事は人々の記憶にも新しい。
ロボットの素体となる資源とデータさえあれば理論上無尽蔵の軍隊を生み出す事が出来る。
ただ人類やロック達にとって幸いと言えたのはキング自身が同胞であるロボット達を駒として扱う事を嫌った為、生み出されるロボット達は個々の意思が無い大型ロボット兵器などに限定されていた事だ。
もしも彼が勝利の為に手段を選ばなかったら、今頃連邦政府はロボット王の前に膝を屈していたかも知れない。
そしてそのもしもの光景が眼前に広がる。
「・・・・・・」
無言のまま身構える己のコピーにパイレーツマンの顔に不快の念が浮かぶ。
対してバンデッドマンは嬉々としていたが。
「むかつく顔だから躊躇無く撃ち抜けそうだな」
「一緒の顔してそれ言うか?」
銃を手に笑うバンデッドマンにパイレーツマンが突っ込むのはさておきだ。
「ラルゴを止めない事には彼らは幾らでも造り出される。彼らの相手は私達が引き受けるとしよう」
グレゴリオがパイレーツマンらと共にコピーされたキング軍団の前に立ち塞がる。
「ロックマンさ~ん。どうぞお先に~」
コールドマンにも促されロックは一瞬迷うような顔をするもすぐに頷くや一同にその場を任せ先を急ぐ。
パキパキパキパキッッ!!
駆けだすロックにコピーコールドマンが冷気を発しようとするがそれはコールドマンのアイスウォールによって阻まれる。
彼の一撃は飛び出そうとしたコピーバーナーマンも巻き込む。
「経験値が足りてない感じですかね~。本物のバーナーだったらすぐに突っ込みませんよ~。彼、ああ見えて結構周りを見てますからね~」
無機質な動きを見せるコピー達を嘲る様にコールドマンはすぐさにモクモクモを展開する。
パイレーツマンやバンデッドマンも互いに悪口を言い合いながら動くもその息はぴったりだ。
対してコピー達の動きは極めて鈍い。
スペックなどは本物と同じでも場数の違いからから、単純な動きで反撃をする事しか出来ない。
「さ・・・偽者にはご退場願おうかな」
片腕をバスターに変えたグレゴリオは酷薄な笑みを浮かべそう言うのであった。
コピーキング軍団をグレゴリオ達に任せ先を行くロックの前に幾つかのロボット兵器が立ち塞がったが、それで足を止めるロックではない。
途中で態勢を立て直したロボットアーミー達も複製された軍団に反撃を始め、ロックは彼らの協力を得る形で先へと進む。
「おお~よく来てくれた。いやはや大変な事になったのう」
数人のスナイパージョーに守られながら、駆けつけたロックに手を振るのはワイリーその人。
ロックの到着に喜ぶような顔をするがどこか他人事な言動の彼にロックは渋い顔になるしかない。
「ラ・・・ラルゴは?」
「ん・・・奴なら」
そう言ってワイリーが指差す方向に目を向けると爆発音が響き渡る。
立ち上る煙の中から巨大な斧を手にしたラルゴが姿を現す。
キングよりも一回りは巨大なボディを持つ彼と対峙するのはロボットアーミーの司令官オクターヴだ。
レイピアを手に溜息を吐くオクターヴはチラリとワイリーと次いでロックへ目を向ける。
「お帰りなさいロックさん。まあ状況は見ての通りですよ」
何時もと変わらぬ笑みを顔に張り付けながらオクターヴはまたしても溜息を吐く。
彼の体には幾つかの傷がついており、恐らくラルゴを相手に出来た傷である事が分かる。
ロボットアーミーの司令官としてキング事件の頃より付き合いのある彼だが、ロックの記憶が正しければ彼が実際に戦闘行為に及ぶのは恐らくこれが初めてではないのだろうか。
「ふうむ・・・ワイリー博士や周囲の施設を守りながら戦うのは骨が折れますね」
チラリと横目で見据えられ当のワイリーは不敵に笑う。
「ワシの身なんぞ気にしとるとラルゴに足を掬われるぞい」
オクターヴに遠慮するなと言いつつもワイリーは内心でほくそ笑む。
突然のラルゴの暴走に面食らったのは事実であり、少なくともこの一件は彼の与り知らぬ所ではある。
いずれにせよ政府軍の切り札として製作されたオクターヴの性能を間近で見られるのであれば、この程度の危険など寧ろお釣りが出るぐらいの価値はあると言うのがワイリーの認識だ。
「・・・・・・」
ジロリとラルゴの方がロックを見据える。
プシュウウウウウウッッッ!!
全身より蒸気を噴き出すその姿は他の暴走ロボットのそれと何ら変わりがない。
理由は不明ながら世界各地で起こっているロボットを暴走させるプログラムの影響を受けているのは間違いない。
「ブースターナックル!!」
元々寡黙と言える彼だったがぼそりとそう呟くや突き出した片腕を射出してくる。
直線的な軌道で飛ぶロケットパンチをスライディングで回避するロック。
それとは対照的にワイリーを守るべく楯を構えていたスナイパージョー達が、自身らに向かってくる腕に悲鳴を上げるがもう遅い。
文字通り蹴散らされたスナイパージョー達が勢い良く吹き飛ばされる中、ワイリーだけはその隙間から逃げる様にして難を逃れる。
「ひどいです~博士~!!」
「博士が居れば攻撃されないって言ったじゃないですか~!!」
地面に転がるスナイパージョー達が口々にワイリーに文句を口にする。
「ワシごとジョー達を攻撃しおった。ロックマンを攻撃するついでに巻き込んだ?いやいや・・・そうであったらそもそもそんな攻撃はしてこない筈じゃ」
他の者達と違いラルゴは己の意思で人類に反旗を翻したキングのデータを流用している事やロイヤルリビルディングの力を持つ事から、ワイリー軍団に反旗を翻さぬ様に一定の思考制御が施されている。
特にワイリー個人に対しては直接的な危害が加えられない様にしてある筈だった。
「むむむ・・・暴走を引き起こすロボットエンザプログラムがプロテクトを書き換えたか。はたまたキングに由来するデータからその手のプロテクトが・・・」
ぶつぶつと己の推論を口にするワイリーの周囲でスナイパージョーらが『嘘つき~』と呻くのはさておきである。
「これ以上の破壊活動は許さない!!」
「マキシマム・・・ボンバー!!」
己に肉薄するロックにラルゴは巨大な斧を振り下ろす。
斧が叩きつけられた地面を中心に衝撃波が発生しロックの体は後方に吹き飛ばされるが、その直前に放たれたチャージショットが顔面に叩き込まれる。
僅かに仰け反るラルゴの頭上で稲光と黒雲が生じる。
ピカアアアァァァァァ!!
黒雲より生じた稲妻はラルゴ目掛けて真っすぐに落ちる。
電撃による攻撃を行ったオクターヴは並のロボットであれば、一撃で戦闘不能に追い込んだであろう己の攻撃を受けても僅かに煙を吐くのみで耐えきるラルゴに溜息を吐く。
「やれやれ・・・電撃対策が済んでいるのは分かっていましたが」
肩を竦めるオクターヴ。
複雑な機構をボディに搭載した事で電撃が弱点となったキングと違い、その後継機であるラルゴには当然の事ながら対策がなされているのは先のクロックメンとの戦いでも証明済みである。
予め分かってはいた中で敢えて一撃を加えたのは、ラルゴの耐久性を確認する意味もあったのか。
ゴロゴロゴロゴロッッ!!
頭上に突如出現した雷雲は次第に渦を生じさせ上空で局地的な嵐を引き起こし始める。
「いずれにせよ・・・一撃で倒せないのであれば倒れるまで放つまでの事です」
オクターヴから感じ取れるエネルギーが徐々に高まっていく。
胸部から僅かに光を放つオクターヴの姿にワイリーが眉を動かす。
「あの光は・・・」
サポートメカなどを用いずに単体で天候すらも操ろうとするオクターヴの力と彼が放つ光からワイリーは一つの答えに辿り着く。
(超エネルギー元素か・・・あれを搭載したロボットを連邦政府が開発しておるとか言う話を聞いていたが)
半ば自身の専売特許となっていると自負すらある分野だが、超エネルギー元素の存在自体は今となっては古くから知られていたものであり、ワイリー自身それを搭載したロボットや兵器を使って何度も世界征服を企んでいる。
それ故に連邦政府も同じ事を考えるのは自明の理と言えよう。
まさか既にロボットに搭載するまでに追い付いて来ようとは思ってはいなかったのだが。
バチンッッッ!!
火花を散らしながらオクターヴが地面を蹴る。
その動きは半ば瞬間移動に近い。
「・・・!!」
目を見開くラルゴの背に電撃を纏ったレイピアが突き刺さる。
斧を振るい切っ先を弾き飛ばすラルゴだが、その隙を縫う様にロックが動く。
「ウェストマシンガン!!」
バンデッドマンから譲り受けた特殊武器を用い無数の弾丸をラルゴに叩き込むロック。
カンカンカンカンッッ!!
重厚な装甲を誇るラルゴには殆ど弾かれるがその間、動きが封じ込まれる。
「サンダークラップ!!」
ピシャアアアアァァァンッッ!!
片手を翻したオクターヴの動きに連動する様にラルゴに稲妻が直撃する。
「・・・むう!!」
僅かにくぐもった声を上げラルゴが片膝を衝く。
ロック達二人の攻撃を受けながらも損傷したボディは徐々にだが修復されていく。
「・・・・・・!!」
ラルゴの動きが止まったのも一瞬であり、すぐさに立ち上がる彼の姿にロックは内心で焦りを覚える。
(このまま持久戦に持ち込まれたら僕らが不利だ。オクターヴさんもあれだけの力を行使して長時間戦えるとは思えない)
連戦に次ぐ連戦もあり万全の状態では無かったと言えば言い訳になるが、その事を認識するや疲労を覚える。
蒸気を吐き出すラルゴにロックとオクターヴが互いに視線を向けあった時であった。
キュラキュラキュラ!!
コンクリート製の壁を破壊しながら馬型サポートメカ『スタリオー』が姿を現す。
彼がその背で牽引するのはプリドゥエンと呼ばれるキングタンクを発展改良した巨大戦車だ。
ズドドドドドドドドドッッッ!!
プリドゥエンの車体から無数の弾丸が放たれロックとオクターヴは弾かれた様に回避する。
「やれやれ・・・そう言えばあれの存在を失念していましたよ!!」
ザンッッ!!
レイピアを振るい発生する衝撃波でもって放たれた弾丸を弾き返すオクターヴ。
「ストームブリンガー!!」
「ラルゴブラスター!!」
オクターヴの放つ巨大な風の刃とラルゴの胸部から放たれるビームが真正面からぶつかり合う。
互いの身をその余波で吹き飛ばす両者。
先程の様に援護に回ろうとするロックだが、その動きはプリドゥエンの放つ弾幕によって遮られる。
「拙い・・・このままじゃ」
ただでさえ不利な状況下でプリドゥエンが現れた事で状況は徐々に敵の有利に傾いていく。
一旦退こうにも相手がそれを許してはくれないだろう。
であればグレゴリオやパイレーツマンらが駆け付けるのを待つべきか。
如何に彼らと言えど複製されたキングナンバーズが相手なのである。
無傷で切り抜けられるとは到底思えない。
それにこの場で逃げれば人間であるワイリーがどうなるか。
チラリと後ろを見ると物影から様子を窺うワイリーの姿が見える。
さっさと逃げて欲しいものだが、今それを口にする余裕は無い。
「あははははは!!いい気味ね」
そんなロックらを嘲笑う様に頭上から声が響く。
倒壊したコンテナの残骸に音も無く着地するのは黒衣のローブを身に纏った一人の少女。
ツインテールを揺らしながら己らを見下ろす視線は、ロックが良く知る少女とは全く異なる印象を与える。
「・・・フィーネちゃん」
「はぁ~い。ロックお兄ちゃん~お久しぶり」
その名を呼ばれファントムマンことフィーネは残忍に微笑む。
彼女がその場に現れた事で、ロックは何故ラルゴが突然暴走を始めた理由を察する。
密かにロボットアーミーの基地に潜入した彼女は身柄を拘束されていたラルゴに、世界中のロボットが暴走したプログラムを仕込んだのだ。
黒衣より漏れ出る闇を纏う彼女の姿は時折不明瞭に見え、エネルギー感知器からも反応が無い時もある。
彼女の隠密能力を考えれば一連の仕業も説明がつく。
「ロボットアーミーの警備もザルね。身柄を拘束されたこの木偶の坊とお供の馬にロボットエンザウィルスを仕込むのは簡単だったわ」
聞いてもいないのに己の行いを得意げに話すフィーネ。
その姿通りどこか幼稚にも見える言動だが、彼女が現れた事で状況はますます不利となる。
「フィーネちゃん。これ以上馬鹿な真似は止めるんだ。こんな事をしてパンク達が・・・」
「うるさいわね。あんな鬱陶しくて出来損ないのロボット達の事なんてどうでも良いのよ」
パンク達の事を口に出し説得を試みようとするロックだが、それが通じる相手ではない。
「そんな事より自分の身を心配したら~?木偶の坊は手土産にするとしてお兄ちゃんもついでに破壊すれば一石二鳥の大手柄なんだから。あの御方の敵である貴方を倒せば・・・うざい他の連中も見返せる!!」
ニヤリと己の破壊を宣言するフィーネにロックは歯噛みするしかない。
自身らの前でしていた純粋な少女の姿は演技であったと、ファントムマンとしての正体がばれた際に彼女は言った。
今こうして行っている所業も考えればそう考える事も出来るが、ロック個人はあの時の彼女が全て嘘だったとは思えなかった。
何より普段険しい面持ちだったパンク達が、彼女を見守る優しい視線に彼らの一面を窺い知る事が出来て嬉しかったのだ。
彼らが自身同様に心あるロボットなのだと知る事が出来たと言うのに。
「フィーネちゃん。ラルゴ達を元に戻すんだ。そして君もすぐに戦いを止めるんだ」
「さっきからうるさいわね・・・そんな事を」
『聞く訳が無い』と続けようとしたフィーネだが、真っ直ぐと己を見据えるロックにフィーネは大きく舌打ちをする。
怒るでも無くただ淡々と見据えられた彼女は不快感を感じる。
そして何時の間にかロック達の背後に立っていた生みの親の姿にフィーネの苛立ちは募る。
「フィーネよ。問うまでも無いがこのワシを裏切るのだな?」
倒れ伏していたスナイパージョー達が慌ててワイリーを下げようとするも、それも間に合わずワイリーは数歩前に出る。
「あ、当たり前よ博士。粗悪な欠陥ボディにしておいて何を言うの?貴方よりもあの御方は私を評価してくれた。所詮は実験機に過ぎない私にこんな力まで与えてくれたんだから」
「評価・・・のう」
ピクリピクリと眉を動かすワイリーに問われフィーネが胸を張る様に答える。
「それは本当にかのう?確かにお主に反逆されぬ様にボディの性能は意図的に低く設定はしたが・・・果たしてお前さんがあの御方と慕う者は本当にお主を見てくれているのか?」
彼女を虚勢を打ち砕く様に鋭い視線を向けつつワイリーは指の先を突き付ける。
「お主の価値はボディに搭載されている学習進化プログラムのみ。そやつの目的も大方それじゃろう・・・でもって恐らくその解析は既に完了。そう言う訳で奴にとってお主はもう用済みじゃあ~。正体がばれてしまったからワイリー軍団内のスパイとしても動けんしの~」
「ななな・・・そんな事無い!!私には悪のエネルギーを用いた力がある!!」
ワイリーの言葉は図星だったのか大きな瞳を揺れ動かしフィーネが叫ぶ。
「ラ・ムーンの従者達やソローらに比べれば大した事無いじゃろう。その手の力で言えばあちらさんの方が遥かに上だと思うがの~」
「今はそうでもいずれ・・・」
「いずれって何時じゃ?お主の成長を待つよりもそのプログラムを流用して基礎の性能からしてもっと強いロボットを製作すれば良いだけの話じゃ・・・『ワシなら』そうするぞい」
反論する少女に畳みかける様に言葉を投げかけるワイリー。
最初の威勢はどこへやらしどろもどろとなる彼女にワイリーが口の端を歪める。
「うるさい!!うるさ~い!!ロックマンも博士も纏めて倒してやる!!」
癇癪を起した様に飛び跳ねる彼女は腕を振り上げラルゴに合図を送ろうとするが。
・・・スッッ!!
己の首元に刃を突き付けられフィーネは腕を振り上げたまま動けなくなる。
ズズズズズズズズズズッッ!!
彼女の足元より上半身だけ姿を現すのは刃を手にしたシャドーマンだ。
「本来であれば今ので首を刎ねていた。博士の温情に感謝せよ」
感情の籠らない瞳を向けフィーネに降伏を促すシャドーマン。
「だーっはっはっは!!そこのロックマンの言葉ではないが謝るなら今の内だと言っておこう。大人しく降伏するのであれば、反省部屋送りで済ませてやるわ」
ワイリーとの口論に夢中になるあまり周囲への警戒を怠った自身に苛立つフィーネ。
歯を軋ませるフィーネの首元に刃の先が僅かに食い込みオイルが滴る。
「さてどうする?決めるのはお主自身じゃ」
もしもこのまま無理に動こうとすればシャドーマンは容赦無く己を処分するであろう。
如何に悪のエネルギーを身に纏おうとも首を刎ねられて無事で済む筈が無い。
だからと言っても今更大人しく降伏するなど彼女のプライドが許さない。
支配下に置いているラルゴに命令を出し、一矢報いるべきと判断したその時だった。
ボボボボボボボボボッッッ!!
突如として頭上に生じる太陽の如き光に一同は視界を奪われる。
それと同時にシャドーマン目掛けて光弾が放たれ、シャドーマンは反射的にその場を離れる。
「サガシタゾ・・・フィーネ」
球体状のボディから人型のボディへと変形しフィーネの傍に舞い降りるのは彼女の仲間であるアポロゴースト。
「今回ばかりは感謝するわ」
冷や汗を拭いながら礼を口にするフィーネ。
「アンタまで加わったらもうこっちの勝ちは確実。覚悟なさい!!」
「イヤ・・・テッタイダ」
援軍の登場に意気揚々となるフィーネだが、対してアポロゴーストは首を振り彼女の言を否定する。
「ムヨウナコウドウヲオコスナ・・・テッタイセヨ」
無機質な言葉で退く様に言われフィーネが頬を膨らます。
「こ、こんなチャンスを逃す訳には」
「テッタイスル。チカラヅクデモツレカエル・・・」
アポロゴーストの有無を言わさぬ口調に視線を逸らした彼女は苛立ちを抑える事無く大きく鼻を鳴らす。
「とりあえずこの木偶の坊と馬は貰っていくからね!!覚えていなさい!!」
最後は舌を出しながらラルゴら共々姿を消すフィーネにロックは唖然とするしかない。
「・・・・・・」
溜息でも吐いたのだろうか。
僅かな間を生じさせたアポロゴーストもその場から居なくなる。
「ええと・・・」
困惑気にオクターヴと顔を見合わすロック。
そんな彼らの後ろからパイレーツマンらが漸く駆けつける。
思わぬ形であったが収束した事態に一同が安堵する中、ワイリーがピクリピクリと眉を動かす。
「『ワシ』ならそうする・・・『ワシ』なら・・・?」
反芻する様に己がフィーネに投げかけた言葉を口にするワイリー。
最後に『まさかの』と苦笑を浮かべるのだがその事に気づく者は居なかった。
何時もの後書きです。
さらっと読み飛ばして頂いて結構です。
〇ラルゴ及びコピーキング軍団について
これについてはキングも同様だが、彼の真価は彼自身の性能よりもロイヤルリビルディングによるロボットの複製及び修復能力にある。
資材さえあれば理論上無尽蔵にロボット兵器を生み出す事が可能。
チートに近いこの技術の出所はワイリーが生み出した三次元立体コピーシステムからの為、ワイリーも再現をするのに時間は掛からなかった様だ。
キング事件の際にキングはこの力を使いロボット兵器を生み出す事で世界各地の都市部を攻撃したのだが、彼自身やろうと思えばキングナンバーズの面々のコピーを生み出す事も可能であったがそれを行う事は無かった(アストロマンは除く)。
これに関してはキングが仲間を道具扱いするのを嫌った事と人類を滅ぼす事への僅かな迷いが見られた所も影響している。
それに比べ暴走したラルゴからすれば別に愛着も無いので、今回のコピー軍団登場となった。
ただコピーのお約束か再現できるのはボディだけであり、思考回路も含めて技量面では若干お粗末なものとなっている。
その為、本人らに勝てる事は無かった。
原型となるキングの一件もあってラルゴには二重三重の暴走防止用のプログラム等が備えられていたのだが、今回それが働く事は無かった。
キングと違い彼が寡黙なのも一定の思考制御が働いている為でワイリーに向かって直接的な攻撃は出来ない等、ワイリーにしてはやりすぎなまでの制限が施されている。
・・・筈がやはりと言うか今回は上手く機能しなかった。
キングと違いボディが大型化した事で若干の機動性の低下は見られるも上記能力などを用いた圧倒的なタフネスさもあり、あのまま戦いを続けていればラルゴの勝ちであった可能性は高い。
ワイリーからすればそれはそれでOKだったらしい。
〇オクターヴについて
リブート前の作品において立場の割に一度も戦闘を行った事が無かった人物だけに今回ラルゴとぶつかる事となった。
両肩及び両足に仕込んだレールガンに似た機構を使う事で瞬間移動を思わせる機動性を持つ。
作中でも明らかになっているが、連邦政府によって開発された超エネルギー元素搭載型のロボットの数少ない成功例と言うのが彼の正体。
天候を操れるのも彼のボディに気象コントロールセンターの制御装置が小型化されて搭載されている為である。
キング事件前にロールアウトしていたのだが、立場上前線に出る事は無く終戦を迎えている。
これは手の内を明かす事でワイリーに対策をされてしまう事を恐れた連邦政府の思惑もあった。
理論上無限大のエネルギーを持つ彼ではあるが、ボディそのものがその出力に耐えられるのかと聞かれれば否定する他無く、最大出力で稼働出来るのはもって数分が限界であり、それ以上の活動は自壊の危険性すらある。
そんな事情と彼自身が慎重な性格もあって、なかなか本来の性能を発揮するのには恵まれない。
後の作品と言う事にはなるがこの時代におけるイプシロンやスカーフェイスの様な存在と考えて頂ければ分かりやすいか。
〇フィーネについて
今回は良い所が全くない。以下は彼女の失態を書き連ねる。
やはりと言うか主に命令を無視し勝手に動いている。
正体がばれてから三下悪役ムーブが目立つ彼女だが、この辺も含めてお子様と言える。
ラルゴの影に文字通り隠れていれば良いのであってそもそもわざわざ姿を現す必要も無い。
同じ様にやる必要のないワイリーとのレスバに負けて冷静さを失っている時点でもうどうしようもない。
自分の実力を手柄を他人に見せつけたい、目立ちたいと言う承認欲求の強さは製作者のワイリー譲りと言うか色々と能力と噛み合ってないのは言うまでも無く。
ファントムマンとして仮面をかぶっていた方が有能であったと言えよう。
因みにシャドーマンがその気であれば彼女を仕留める事も出来た訳でますます何の為に登場したのか分からない事は付け加えておく。
ラルゴの暴走は彼女が彼にロボットエンザウィルスを直接感染させた事によるのだが・・・。
いずれにせよアポロゴーストが助けに来なければ危なかった。
今回の後書きは以上です。
読んでくださってありがとうございます。