Rockman 偽りの野望   作:グルルre

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vol26 突入

(今度失敗すればもう後が無い)

といちいち確認するまでも無い事を脳裏に思い浮かべながらフィーネは誰も居ない施設の倉庫で壁にもたれる。

主にはたかれた頬の痛みはほぼ消えかかっているが、その事を思い出す度に痛み以上の屈辱感がその身を焦がす。

(表の方でソローが政府軍と戦っている・・・けどそっちに出て行って政府軍の雑魚を倒しても大した手柄にならない)

幸いな事にラルゴのコントロール権は己が握ったままであり、彼の力を利用すれば超高性能ロボットが相手でも簡単に勝つ事が可能だろう。

(ここはやはりロックマン或いはそれに匹敵する敵を倒さないと・・・表でソローが政府軍を足止めをしているけど、その間に他の連中がこの施設に潜入しようとするなら・・・)

あれやこれやと思考を巡らせながらフィーネが音も無く歩いていた時だった。

 

「・・・私だ」

 

不意に倉庫内で響く声にフィーネはビクリと肩を震わせるが即座に自分に対しての声ではない事を察する。

闇を纏い完全に気配を消した彼女はゆっくりと声の主の姿を確認しようとする。

(ヴォイド・・・?)

物影で背を向ける形で端末を手にするのは漆黒のアーマーに身を包んだ一人のロボット。

同じ主に仕え一応はロボットであると言うのは知っているのだが、彼について分かっている事は殆ど何もない。

普段から感情らしい感情も見せず、ただただ無機質に動いている不気味な存在と言うのがフィーネが抱いた彼への感想だ。

ラ・ムーンの従者やソローなどの様な宇宙ロボ達の方がまだ感情などを見せる分、言い得て妙だが人間味があると言えよう。

<申し訳・・・シュ・・・ァが脱走し・・・た>

「あの小娘・・・『アレの代用品』がか」

端末から響く声は極めて不明瞭で殆ど聞き取れない。

辛うじて分かるのは相手の声が少女らしい物であると言う事か。

出来れば近くに行って聞きたいがこれ以上近づけばヴォイドに勘づかれる為、フィーネは闇に潜みながら耳を立てる他無い。

「既に追手は差し向けているのだな?であれば良いが・・・。狩人共に・・・ケインや忌々しい愚妹共にあの小娘をくれてやる訳にはいかん」

<はい・・・既に・・・カウンター・・・>

「奴らだけでは手に負えん可能性もある。投入出来る戦力を全て出しておけとアルバートに伝えておけ」

(アルバート・・・?)

聞き覚えのある単語に目を見開くフィーネ。

<了解・・・た>

「まあ良い・・・それで連絡は以上か?」

<・・・はい>

「分かった。私もこちらでの目的を果たせればすぐにそちらに戻る。それまで時間稼ぎをしろ」

ヴォイドはそう言い放ち端末の通信を切ると小さく溜息を吐く。

彼にしては珍しく感情が籠った反応だ。

そのまま倉庫内から立ち去るヴォイドを見送った後、フィーネは額を流れる冷や汗を拭いながら先程のやり取りを反芻する。

(ヴォイド・・・あいつ一体何者なのよ?)

彼の思惑について様々な可能性を脳裏に描くのだが答えは出ない。

いずれにせよ彼に目を光らせねばとフィーネは歯を軋ませる。

 

 

 

「ガーッハッハッハッハ!!」

政府軍の戦車を利き腕ではない左腕で軽々と持ち上げるやそれを別の戦車へと放り投げるソロー。

デューオとの戦いで負傷し本来の力を出せない状態にも関わらず、ソローの力は圧倒的であった。

「ダイブミサイル!!」

「リングブーメラン!!」

ダイブマンとリングマンの攻撃を受け止めながらソローは軽く腕を振り上げ宙に向かって拳を突き出す。

 

ズドンッッ!!

 

拳圧だけでその場に拳の穴を開けるソロー。

「ガトリングジャブだぜぇ!!」

 

ズドドドドドドドドドドドッッ!!

 

彼からすれば文字通りのジャブなのだろうが、一撃一撃が必殺の威力を誇る無数の拳がダイブマンらに向かって飛んで来る。

「下がっていろ!!」

陸上では動きが鈍るダイブマンの前に割って入る様にスカルマンが飛び出す。

スカルバリアーによる障壁でソローの拳を相殺するスカルマンだが、その威力まで完全に止める事は出来ずに吹き飛ばされる。

「スカルマンッッ!!大丈夫か!?」

倒れ伏す己に駆け寄るダイブマンの手を振り払う様にスカルマンが立ち上がる。

「・・・問題ない」

何時もの様に淡々と口を開くスカルマンにソローが僅かに目を見開く。

「あぁ・・・?なんか似ていると思ったらお前ぇボーンダインじゃねえのか?」

ソローの言葉にスカルマンが僅かに苛立った様な空気を発する。

「・・・黙れ!!」

手にした銃の引き金を引こうとするスカルマン。

だがそれよりも前にソローが彼の眼前に肉薄する。

咄嗟にダイブマンが割って入ろうとするがそれにソローは見向きもしない。

軽く腕を振るいダイブマンを弾き飛ばした彼は空いた腕をスカルマンの目の前で広げた。

「そうか・・・お前さんがボーンダインの『本体』かぁ?ガーッハッハッハッハ!!だったら・・・」

 

ザンッッ!!

 

伸ばされた腕にナイフを突き立てるスカルマン。

それに構わず腕を伸ばそうとするソローだったが、左右から飛んで来たリングブーメランに両足の動きを封じ込まれる。

「あぁ?」

舌打ち交じりに振り返ったソローの顔面にダストマンのダストシュートが強かに決まる。

僅かに仰け反ったソローから距離を離すスカルマン。

並のロボットであれば今の一撃で戦闘不能になっている筈なのだが、ソローは頭部に引っ掛かった瓦礫を周囲に飛ばす様に顔を真横に振るうのみ。

「やってくれる・・・だがそれでこそ面白ぇ!!」

攻撃を受けつつも苛立ちよりも先に喜びの感情を露わにしながらソローは己の身を拘束するリングブーメランを踏み砕く。

「この星の連中は本当に面白ぇよな。数値上のスペックで言えば俺様が戦ったデューオやルーラーズよりも弱いっていうのにどうしてこうも粘るん・・・」

豪快に笑いながらソローが周囲の面々を見渡す中、不意に彼の真横に巨大な影が覆う。

「・・・フンッッ!!」

真横から不意打ち気味に放たれた剛腕を片腕でガードするソロー。

笑みを浮かべたのも一瞬で彼の全身に無数の弾丸が叩き込まれる。

巨大なガトリング砲を手にしたダカーポの攻撃を受けソローの全身が僅かに削り取られる。

「お前さん・・・なかなかの怪力じゃねえか。しかも俺様のボディに傷を付けたって事は」

己の攻撃をまともに受けながらも痛打にならないソローに顔を険しくさせるダカーポ。

ソローの方は数歩程の距離を取りながら、ダカーポの体内に埋め込まれた存在を即座に見抜く。

「オクターブ司令官同様に我々三軍の長には超エネルギー元素が搭載されている。私の攻撃であればお前の障壁を無力化出来ると思ったのだが」

「悪いが同じ力でも質が違うんだよ。そうかそうか・・・そりゃあこの星の連中もブツさえ手に入れば同じ事を考えるわなぁ」

ますます笑みを深くするソローのボディに刻まれた傷が徐々にだが塞がっていく。

未だ地球にとって未知のエネルギーと言える超エネルギー元素、あのワイリーですらも完全な実用化に至っておらず、現状では極めて一部のロボットにあくまでも補助的な内燃機関として内蔵されているだけに等しい。

その力をフルスペックで使いこなすソローに既存のロボットが苦戦するのは無理もない。

とは言え今のソローはデューオとの戦いで利き腕を失っており、決して万全と言える状態では無い。

にも拘わらず圧倒的な力で蹂躙されているが等しい状況と言うのが現実だ。

「いいねぇ・・・面白くなってきた」

とソローが言うのだが相対する者達からすれば全く以って面白くも無い。

「さあて・・・まずは一発」

左腕にエネルギーを高めていくソロー。

一瞬だが彼に吸い込まれるかの様な感覚を覚えたが次に感じるのは圧倒的な殺気。

否、正確には死と言う運命が目の前にあると言う認識か。

「ジェノサイダージャガーノート!!

 

ズドオオオオォォォォォォォォッッッ!!

 

都市一つを軽々と消し去る巨大な拳の一撃がスカルマン達目掛けて放たれる。

利き腕でないから万全ではないと言うのが嘘の様な出力を持つエネルギーの奔流が溢れ出る。

「ス・・・スカルバリアー!!」

「お前達行くぞ!!」

スカルマンが前に出たのと同時にダークマン達もバリアーを展開し放たれた一撃を相殺せんとする。

ダカーポが何かを叫んだように思われたがそれよりも前に視界が閃光に包まれる。

「く・・・くそ」

どれだけ気を失っていたかは分からないが全身の感覚を失いながらも起き上がったリングマンが見たのは、瓦礫へと変じたビル群。

そしてまる屍の如く周囲に倒れ伏すドクロ型ロボット達の姿だった。

「スケルトンジョー・・・そうかスカルマンの予備端末でもあるジョー達にもバリアーを使わせたのか」

何重にも張り巡らされたバリアーに守られた事で自分達がまだ生きている事を理解するリングマン。

確認する様に周囲を見るリングマンだが、状況は極めて絶望的だ。

障壁を展開したダークマン達もスケルトンジョー達と同様にバラバラになって倒れ伏しており、ロボットアーミーのダカーポも大破こそ免れたが瓦礫に埋もれる形でピクリとも動かない。

自分以外のダストマンやダイブマンも同上であり、たった一撃で自身らは壊滅に近い損害を被った事になる。

「ガーッハッハッハッハ!!本調子じゃねえとは言えちょいとやり過ぎたか」

倒れ伏したスカルマンに視線を落としながら笑い声を響かせるソロー。

その姿に憤りは憶えど、リングマンですらすぐさに挑む事に躊躇を覚えてしまう。

文字通り相手と格が違うのを思い知らされたからだ。

あれだけの一撃を放ちながらソローは平然としており、殆ど消耗していない様にすら見える。

 

ダンダンッッ!!

 

心が折れかかったリングマンに鼻を鳴らすソローだったがその頭部に銃弾が叩き込まれる。

ソローの一撃から皆を守りながら尚も立ち上がったスカルマンが手にした銃から銃弾を次々と放つ。

「何をしているリング!!」

滅多にない感情の籠った声でスカルマンが叫ぶ。

「相手の強さに恐れを抱く暇があれば打開策を考えろ。ここで奴を倒さねえといずれお嬢様や博士達に害が及ぶ!!」

叱咤するような声にハッとなりながらリングマンはリングブーメランを手にする。

「スカルマン、済まない。危うく敵に呑まれそうになった」

申し訳なさそうに頭を下げるリングマンだが、次に顔を上げた時にはその顔には闘志が戻っていた。

「守りに入ったら負けちまう。次は俺らから行くぜ。最悪刺し違えてでもあいつの動きだけは止めねえとな」

ダイブマンがわざとらしく笑みを作りながら身構える。

彼に言われるまでも無く格上の敵を前に動きを止めればそのまま押し切られる。

相手の強さに呑まれそうになった彼らは決意を新たにする。

そんな彼らを満足げに見据えソローが腰を落とした時だった。

 

ボコボコボコボコッッッ!!

 

聞きなれぬ音と共にソローの周囲で無数の液体が気泡を立てて噴き上がる。

「あぁん・・・?」

目を見開くソローを余所に液体は周囲の瓦礫などを吸収し球体状の巨人へと変貌する。

「・・・ジャンクデビルとでも言おうか」

施設の正門よりゆっくりとした歩みで姿を現すのはアルゴス。

以前と違い成人男性と殆ど変わらぬ背丈となった彼は頭部に張り付いた無数の目でそれぞれの面々を見据える。

「苦戦はしていないだろうがお前一人に任せてもおけぬ。それに敵の援軍も来た様だ」

チラリとスカルマン達の後方から感じ取れる無数のエネルギー反応。

北米大陸に居たロックマン達・・・アルゴスから見れば敵の本隊と言うべき者達。

 

バチバチバチバチバチッッ!!

 

遥か後方から放たれる一筋の雷にソローが拳を突き出そうとしたが、その前にアルゴスがジャンクデビルの巨体を操り遮る。

一見すると他愛の無い攻撃に見えたそれはジャンクデビルの体を突き破り巨大な瓦礫の巨人は後方に転がる形でバランスを崩す事となる。

まともに直撃を受ければソローでも手傷を負ったのは言うまでも無い。

「お前さんに他人を助ける気概があるとは驚きだ」

守られた形となったソローがアルゴスに茶化す様に言う。

「勘違いするな。今この状況でお前に退いてもらっては困るからに過ぎん」

相変わらず淡々としているアルゴスだが、互いに行動を共にしている事もあってか僅かなりにも通じる所はある。

「それに因縁ある相手ともいえるしな」

アルゴスは先程の雷を放ったラ・トールを無数の目で見据える。

彼やエンカーに、よくよく見ればルーラーズのマースなど自身らの障壁に対する対抗策を身に付けた者達を中心にした面々が続々と集結しつつあるのが分かる。

「雑魚共の相手は我が引き受ける・・・で良いか?」

「そうしてくれると助かるぜぇ」

アルゴスの言葉にソローが豪快に笑った時だった。

 

ゴオオォォォォォォッッッ!!

 

彼らの頭上を轟音を立てながら巨大な亀型ロボット、ガメライザーが通り過ぎる。

ガメライザーはそのまま勢い良く施設の壁に突っ込んでしまう。

「・・・ええい」

苛立ったような声を上げるアルゴスだが、彼らの方でそれを追撃できる余裕は無い。

アルゴスは己の身を切り離し無数の瓦礫の巨人を生み出すや迫りくる敵を迎え撃つのであった。

 

 

 

「今だ今だ!!突っ込め突っ込め!!」

「あまり派手に暴れるなよ!!」

ガメライザー内の格納庫から勢いよく飛び出したクラッシュマンにウッドマンが注意するような声を出す。

彼らの侵入に施設内に設置されたセキュリティは即座に反応を示し、けたたましいアラーム音と共に警備ロボット達が次々と稼働し始める。

そんな彼らに対しクラッシュマンが嬉々として攻撃を仕掛ける中、ウッドマンがガメライザーを守るべくリーフシールドを展開する。

 

ズゥゥゥンッッ!!

 

「よっこいせ!!」

そんな声と共にガメライザーの中からゆっくりと姿を現すのはワイリー軍団内でもかなりの巨体を持つハードマンだ。

鋼鉄製のボディを持つ彼は狭い格納庫に押し込められていた事もあり、全身の調子を確かめる様にその場で伸びをするのだが。

「ハード、お前は早くそこを退け!!」

「んな事言ってもよ~う」

後ろでつっかえる形となったジェミニマンにどやされるもハードマンの方は非常にマイペースだ。

ジェミニマンに続いてエレキマンやロックも格納庫から顔を出す。

ガメライザーに搭乗し突入部隊となった面々は無事に内部へ入った事を確認しつつ、当初の予定に沿う形で動き出す。

「ここは俺達とガメライザーに任せろ」

「お前らは施設の重要区画を確保しろ・・・っと!!」

ウッドマンがリーフシールドを前方に放ち無数のガードロボットを巻き込む中、ハードマンがその巨体を前面に出し入り口の一つを塞いでしまう。

エレキマンとジェミニマンに目配せをしロックは彼らをその場に残す形で施設内の中枢部を目指す。

内部に搭載したロボット達が全員出撃した事でガメライザーも動き出し、ウッドマン達と共に敵の目を釘付けにする為に派手に暴れ出す。

「破壊破壊!!壁が邪魔ならぶっ飛ばす!!」

クラッシュマンが己の武器を施設内の壁に突き刺しながら、最短ルートを進む。

「博士にも無駄な破壊はするなって言われたの忘れるなよ」

「分かってるって~」

「いや絶対分かってねえだろ」

ジェミニマンに注意を受けるクラッシュマン。

彼が己の行いに反省の意など全く示していないのは言うまでも無い。

普段は物静かな性格のクラッシュマンだが、一度戦いとなれば途端に好戦的となるらしい。

ロック達はその普段の姿を見た事が無いので彼への印象は今の破壊狂な姿となってしまうのだが。

 

ウィィィィィンッッ!!

 

ロック達に反応する様に周囲の壁がせり上がり壁のパーツが小型ロボットの姿に変わる。

「ピコピコくんか!?」

エレキマンが身構えるも。

「そんなの無視だぁぁぁ!!」

その前にクラッシュマンが壁その物を破壊し先への道を確保してしまう。

「え・・・ええ」

ロックが困惑したような声を上げるも先を進んでしまうクラッシュマンを放っても置けず、哀れピコピコくん達は素通りされてしまう。

「まあいちいち律儀に戦ってやる義理はねえよな」

苦笑いを浮かべながらジェミニマンはロック達に言う。

今の事態を考えれば彼の言葉は尤もでありロックやエレキマンも同意せざる得ない。

そう思った矢先、施設全体が再び大きく揺れる。

別方面から潜入した仲間達だろうか。

グランドマンやガッツマンなどが中央コンピューター施設の地下の下水施設から潜入を試みており、恐らく彼らも無事に入る事が出来たのだろう。

「フォルテ達が派手に暴れてやがるな」

本来であればロック達と共に突入部隊に入る予定だったが、ロックの同行が気に食わないと駄々をこねたフォルテは地下からの潜入の方に回されている。

結果論であるがそちらの方が時間を食う訳で、その辺も含めフラストレーションを高めてしまったのだろう。

暫くして施設の電源施設の一つへと到達したロック達は予め渡されていたセキュリティコードを入力し、一室の中へ入る。

「中の機器は絶対に壊すなよ」

ジェミニマンに念を押され唸るクラッシュマンはさておき、エレキマンが端末にアクセスをし施設の状態を調べ始める。

「ロック、予定通り俺はここでお前をサポートするが。本当にお前一人で大丈夫なのか?」

「うん。まあ僕一人で中枢部を突破出来るとは流石に思っていないけど。敵が僕に気を取られればその分、他の皆が動きやすくなるから」

施設内の電源を確保しつつ、ロックを先行させて敵の注意を引きロボットアーミー達を含めた他の面々の施設突入を手引きする。

と言うのが彼ら突入部隊の目的であり、フォルテが同行した潜入部隊も同じ目的の下で動いている。

「いいなあ~俺も一緒に行きてえ」

「近づく敵が居たらぶっ飛ばしても良いからな。それで我慢しろ」

ぼやくクラッシュマンにジェミニマンが宥める様に口を開き、彼らに見送られる形でロックはその場を後にする。

施設中枢部への道を進むロックを阻まんと作動する防衛システムなのだが、その多くはワイリー軍団などが使用した物の流用でありロックの歩みを止める程の障害では無かった。

別方面で他の仲間達が突入しているのもあってか思いの外、敵の抵抗が弱いと言う感触さえ抱いてしまうロックであったが。

 

ゾクリ・・・。

 

閉じられた障壁の向こうで感じ取れる僅かばかりの殺気にロックは一瞬だが足を止める。

<やはりこの程度の障害では君の足は止められないか・・・まあ入りたまえ>

障壁の上部に設けられたスピーカーからどこかで聞いたような声が響く。

罠である事も考えられたがここで躊躇する訳にも行かない。

障壁を開き一室に足を踏み入れるロックを待ち構えていたのは一人のロボット。

「どうも・・・こうして会うのは初めてだね。人類の英雄と名高き君を出迎えられて光栄だ」

ニコニコと一見すると屈託の無い笑みを浮かべながら話すロボット。

彼の見た目は世界中の警察で採用されている警官ロボットのそれであった。

「君は・・・ただの警官ロボットじゃないね」

どこにでも居そうなロボットの外見でありながら、彼が放つ空気はそれを異にする極めて矛盾に満ちた物。

今にもその殻を破って何かが飛び出てきそうなひやりとした物を背に感じてしまう。

「君の読み通りだ。残念ながらこれは仮のボディだ。この施設を占拠したのは私の本体を解放する為で今、それを行っている最中でね。まーもう暫く待ってくれると非常に有り難いんだよ。次いで言うとあの小娘がヘマをしなければ私の本体を解放したついでに欧州全域に核ミサイルなりの大量破壊兵器をばらまけたんだが・・・上手く行かないもんだねぇ」

困った様に両手を広げながら彼は心底邪悪な笑みを浮かべたものだった。

まるで冗談の様に言ってはいるがその目は笑っていないし、恐らくは本気だったのだろう。

「それはそうと私の仲間にならないか?ソローやラ・ムーンの従者達も仲間に引き入れているんだが、実力があり過ぎてどうも上手く動いてくれなくてね。挙句に無能な働き者としか言いようの無い小娘に足を掬われる始末だ。あれよりかは君の方が遥かに役に立つと私は見て・・・」

「お断りだよ。ようやく復興が始まったこの欧州を火の海にしようと考える奴の仲間になんかなるつもりは無い」

「はぁ~やっぱりか。非常に~残念だっ!!」

思わせぶりな言葉を口にしつつ、彼は片腕のリボルバーを思わせるバスターを掲げる。

「あ~そうそう。申し遅れていたよ、今の私の名前はフェイク・・・そうフェイクマンだ。まあ一応の名と言う事でここは勘弁願いたいね」

あからさまな偽名を口にしつつ深々と一礼をしたフェイクマンはゆっくりと顔を上げる。

顔を上げた彼の姿が掻き消える。

瞬間移動を思わせる速度で動くフェイクマンはロックの背後を一瞬で取ると、得物であるリボルバーバスターの銃弾を全てロックの背へと叩き込む。

本来であればこの一瞬で決着はついていたであろうが、予め予期していたかのようにリーフシールドを展開したロックが迫りくる弾丸を悉く防ぎ切る。

振り返り際にロックがリーフシールドを投げ放ってきたのを跳躍し回避したフェイクマンは、バスターの弾倉に新しい銃弾を装填し薄笑みを浮かべる。

「まあ私もこの程度で終わるとは思っていない」

不気味な気配をそのボディから醸し出しながら、フェイクマンはロックに見せつける様にバスターの先を向ける。

「時間は一杯ある。我が宿敵よ・・・存分に楽しんでいってくれたまえ」




何時もの後書きです。
さらっと読み飛ばして頂いて結構です。

〇ヴォイドについて
リブート前のを見た方には今更ではあるがヴォイドの方も色々と大変である。
あちらの方では彼女が組織を脱走したのでてんやわんやの様だ。
彼は彼女が盗み聞きしている事は把握しているが、知られても脅威にならないと判断しているのであしからず。
アレではなく具体名を出そうとも考えたが流石にネタバレかと思い自重した。

〇ソロー戦について
デューオと双璧となる本家シリーズ最強格の人物なので強い。
前回の後書きでも言及したが、ダカーポ含めた三軍の長は超エネルギー元素で動いている超高性能ロボットに値する存在だその彼らでも彼に手傷を与えられる程度と言う扱いである。
ラ・トールを始めとする面々が駆け付けた事で漸くまともに戦える様になるが、ソローがこうして動けている以上そろそろ彼の方も復活する予定。

〇突入組について
作中であった通りなので細かくは割愛だが個人的にハードマンなどを描けて楽しかった。
軍団随一の巨体だが若干マイペースと言うのが彼の欠点。
ウッドマン共々防衛メカの引き付け役と言うのが今回の彼らの役割である。

〇フェイクマンについて
元ネタは本家9のDLCボス。
普通のボスとは違うけどスペボスと言う程はな所もあったので今回のキャラ付けに。
見た目は警官ロボだが中身は彼であり、リモートボディと言う事になる。
ヴォイドと同様にリブート前のを知っている人にすると正体はバレバレだったり。
いずれにせよその正体も今使っているボディも含め名前同様のフェイクであるのは間違いない。


今回の後書きは以上です。
読んでくださってありがとうございます。
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