Rockman 偽りの野望   作:グルルre

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vol28 機械王の秘密

「キャハハハ~迷惑かけてごめんなさい」

「全く貴女と言う方は・・・」

ロボットエンザのワクチンプログラム投与されすっかり元の調子となった少女に奇術師を思わせる格好のロボットが溜息を吐く。

キング軍団に所属するマジックマンの弟子であるマジシャンウーマンは、ワイリー軍団の同行を探る意味合いもあって師の意向で次の世界征服計画への参加を決めていたのだが世界中で暴走したロボット達と同じくウィルスが仕込まれた画像を見た事からロボットエンザに感染し暴走。

暴走の末にオーバーヒートを起こしそのままロボットアーミーの基地施設に収容される事となったのだが。

「彼女を無事に返してくれた事に関しては礼を言っておきましょう」

やや憮然としつつもシルクハットを取り一礼をするマジックマンにオクターヴも軽く頭を下げる。

暴走した件もそうだが、キング軍団の関係者となれば問答無用で処分されても文句は言えないだけにある程度の温情はあったと言えよう。

当然これはマジックマンの主と連邦政府との裏取引があったからなのだが。

「既にパイレーツとコールドがそちらに合流していると聞く。ワイリー軍団と共に行動をしていたグランドや社会復帰していたダイナモとも作戦前に連絡が付いた」

「そうですか。いずれにせよ貴方達が力を貸してくれるのであれば心強い」

常に顔に張り付けた笑みを向けて来るオクターヴ。

対して淡々と口を開くのはロボット王キングだ。

己が表に出ては却って混乱が生じるだけと判断した彼はロボット暴走事件の際には身を隠していたのだが、一連の事件が一旦収束したのを見計らってマジシャンウーマンの回収がてらロボットアーミーとの接触を図っていた。

「勘違いしてもらっては困る。決して私は連邦政府や人間達に味方した訳ではない。ソローやラ・ムーンと言った連中が好き勝手やる事を見過ごせないだけだ」

キングの言葉にオクターヴは『分かっていますよ』と笑みのまま返す。

状況次第ではそれぞれが属する組織の命運を背負い激突していたかも知れない両者の間に、張り詰めた空気が流れるのも無理は無い。

「幸いと言うべきでしょうか敵の戦力は単体では強大ではありますが、軍団規模の数は揃えていないと見ています。まあそういった戦力は必要ないと言う事の裏返しかも知れませんか」

「ワイリー軍団の方には私を基にした後継機達が何体かいると聞く。楽な相手ではないだろうが決して倒せない相手ではないだろう」

オクターヴに指摘されるまでも無く今回の一件を起こした者達の戦力は強大ではあるが、その戦力もそれぞれの個人に依存する所がありかつて世界規模で戦乱を起こしたキング軍団に比べればまだ小規模の存在と言える。

当然何時もの世界征服計画の時には世界中の主要都市なり施設を占拠し作戦を進めるワイリー軍団に比べてもだ。

既にロックやフォルテを始めとする世界の強豪ロボット達が現地に向かっている。

その事を考えればキングの言葉通りに楽勝とまではいかないものの決して勝てない相手ではないと言える。

「それはそうとキング陛下」

「貴様に陛下と呼ばれる筋合いは無い」

指を立て話題を変えようとするオクターヴにキングは憮然と返す。

自身に馴染もうとしない彼に苦笑いを浮かべる。

「やれやれ・・・ついこの間、貴方そっくりの後継機に酷い目に遭わされましたからね」

ロボットエンザに感染し暴走したラルゴと戦った事を暗に示しつつ、オクターヴはまだ体が痛むとばかりに胸元を何度か叩くのだが。

「あの時、本気すら出していないと私は見たが・・・」

「おや?もしかしなくても何らかの形で見ていました?いやはや私もあまり手の内を見せる訳にもいきませんでして。なんせワイリー博士があの場に居ましたから」

薄笑みを浮かべながら首をわざとらしく傾げるオクターヴ。

キング事件の際に最後まで戦いの場に出る事が無かったオクターヴ。

連邦政府からしても最終兵器とも言うべき彼の性能をみだりに外に見せる訳にはいかず、公衆の面前で彼が戦ったのはあの時のラルゴとの戦いが初めてだった。

「フン、貴様個人の都合はどうでも良い。だが妙な事がある・・・」

キングが顎に手を置きながら視線を宙に向ける。

「私の後継機であるラルゴだが、何故奴が暴走したかだ」

「暴走はロボットエンザウィルスによるものでは?ワイリー博士もそう言っていた筈ですが・・・」

「知らない振りをするな・・・貴様も気づいている筈だ。ロボットエンザはワイリーが以前から製作していたのだぞ。それへの対策を自らのロボットにしていない筈が無いだろう」

キングの言葉に目を見開くマジックマン。

他の兵士達も同様にキングに振り返る。

「私が人類抹殺を掲げキング軍団を結成した際の事を覚えているな」

「は・・・計画実行前のワイリー軍団の基地を奪い彼らの基地を本拠地とましたが」

キング事件の際にワイリー軍団が保有する技術情報が世界中に拡散した事は、記憶に新しい出来事である。

「その時、接収したワイリー軍団のデータベースにはロボットエンザウィルスのデータも確かにあったのを記憶している。あの時、ロボットだけで構成された我々にそれが使用されれば一溜りも無かった。だから私自身やお前達キングナンバーズにはそれへのワクチンプログラムは適用させてあったのだ」

「あれ?じゃあアタシは~?」

「ミュゼット、お前はあの時キング軍団に入っていなかっただろう」

「あ、そうだった~☆」

キングの説明に首を傾げるマジシャンウーマンだったが、すぐさに当時未所属である事を返され舌を出す。

「と言う事は私や他の皆も・・・」

「感染の危険性はほぼ無い。私が断言しよう」

困惑するマジックマンを余所にオクターヴは僅かに唸る。

「であればラルゴはどうして暴走を・・・?」

「そ、そうです。ワイリーはかつて貴方を洗脳しロックマンを襲わせたではありませんか」

洗脳と言う言葉を聞きキングはあの時の事を思い出したのか苦笑いを浮かべる。

キング事件の終盤、キングパレスにおける戦いにおいてブルースの助力もあっての結果ではあるがロックとフォルテの二人を前にキングは敗北。

キング自身決して口にはしないが人類を滅ぼす事への僅かな迷いをロックらに指摘され、大きく心揺らいだ時であった。

ロックらとは別ルートでキングパレスに潜入していたワイリーは元々己の基地であったキングパレスを掌握するや、洗脳装置なる物を使いキング自身を己の手駒としロックを襲わせた事は記憶に新しい。

「ワイリーは洗脳と言ったがあれは洗脳ではない。所謂初期化だ」

傍目から見て洗脳にしか見えない出来事であったが、キング曰く初期化だと面々に告げる。

本来はフォルテをも超えるワイリーナンバーズとして製作されたキング。

彼の本来の制作目的は言うまでも無く打倒ロックマンであり、ワイリーによる世界征服計画の達成である。

初期化された事でキングは隠されていたジェットキングロボに搭乗、そのままロックに襲い掛かるのだがワイリーの非道な行いに激高したフォルテがロックの援護に回った事で辛くも勝利を収める事となる。

「私としてもあれは所謂想定外であった。あらゆるウィルス、ハッキング対策はしたつもりだったのだがまさか初期化されるとは己が所詮はロボットである事を痛感せざる得ないな」

苦々しく笑うキング。

彼は周囲を見渡す様に首を振り改めてこう告げるのであった。

「いずれにせよ私の後継機にその手のウィルスは効かない。私の見立てが正しければラルゴは正常だ・・・」

 

 

「図に・・・図に乗るなぁぁぁ!!」

全身より闇色の棘を放つフィーネ。

逃げ場の無い360度に向かって放たれる攻撃ではあるが、ロックとフォルテはその場に転がるプリドゥエンの車体の影に隠れる事で難を逃れる。

「やりなさいラルゴ!!」

続けざまに命令を出すフィーネに無言のまま従うラルゴ。

巨大な斧を手に自身らに迫るラルゴだが、指示の雑さもあるのかその動きは若干の鈍さを感じさせる。

 

ガキンッッ!!

 

フォルテに向かって振り下ろされた斧は紙一重で回避される。

「どこぞの口笛野郎みたいに真っ二つにされてたまるかってんだ」

「それ本人に聞かれたら怒られるよ」

フォルテの軽口にロックが呆れた様な顔で指摘する。

彼らのどこか余裕のある態度に苛立ちを覚えるフィーネ。

先のロボットアーミーの基地においてロックはオクターヴと言う実力者との共闘もありながら、ラルゴ相手にあれだけ苦戦を強いられていたではないか。

あの時と違いプリドゥエンは使い物にならなくなったが、それでもフォルテの性能はオクターヴに比べれば大した事は無い筈と彼女は結論付ける。

にも拘わらずフォルテの助力を得たロックの動きはあの時とは全く以って違う。

 

ドゴンッッ!!

 

ロックの放つハイパーロックバスターがラルゴの腹部に直撃する。

続けざまにフォルテが放った強烈な蹴りがラルゴの顎先に命中し、ラルゴの巨体は盛大な音を立てて仰向けに倒れてしまう。

「ダ・・・ダーククラッカー!!」

掌で生み出された闇色の鉱石を放つフィーネだが、壁に当たれば小型化拡散する攻撃も殆どが回避されてしまう。

「フリーズにもうちょっとこの手の技の使い方を教えてもらいな」

鼻で笑うフォルテに少女の顔が真っ赤になる。

悪のエネルギーを手にした恩恵なのかは分からないが、闇を纏う事でそれらを武器に変化させる能力を持つ彼女のそれは戦闘行為ではなく隠密や諜報に用いられて真価を発揮する物と言えよう。

ロックからすればファントムマンと名乗って己の正体を隠していた時の方が、自身の感情を露わにしていなかった分、底が見えず手強い印象であった。

対して今の彼女は己の殺気を隠そうとせずに果てはフォルテの挑発にも簡単に乗ってしまうぐらいに冷静さを失っている。

如何に学習進化プログラムを搭載しているとは言えど、ここまで感情を昂らせてしまっては勝てる戦いも勝てない物である。

倒れているラルゴをそのままにロックとフォルテが光弾を放つ。

フィーネの方は弾道を目聡く見極めるや闇と同化する事で攻撃をやり過ごす。

そのまま闇を纏いながらロックに対し肉薄するフィーネ。

片腕から闇色の刃を伸ばすフィーネがロックの眼前で微笑むのだが。

 

グイッッ!!

 

不意にフィーネの体の動きが止まり逆に後ろに仰け反る。

何時の間にか後ろに居たフォルテにローブのフード部分を引っ張られたのだ。

「俺かロックマンのどっちかに突っ込んで来ると思ったぜ」

ニヤリと笑うフォルテに歯噛みする暇など無い。

予め打ち合わせでもしていたかのようにロックの動きに迷いはない。

咄嗟に障壁を厚くするがそれでも己の胴体に決まるロックアッパーの勢いをある程度抑えるだけで精一杯であった。

「うくくっ・・・だけどその動きは覚えたわよ」

呻きながらも空中で受け身を取るフィーネは即座に反撃を繰り出す。

闇に紛れながらロックに肉薄し振るわれる刃が僅かに彼の胸元に傷をつける。

(動きが早くなった・・・)

決して顔には出さぬがロック達の方も余裕がある訳ではない。

キングの後継機として次なる計画の中核を成すだけのスペックを持ったラルゴと徐々にだが自らの性能を高めていくフィーネの二人が相手なのだ。

緒戦においてプリドゥエンを無力化していなければ、防戦一方に追い込まれていたであろう。

そんな中、むくりと起き上がるラルゴのボディの傷が徐々にだが再生を始める。

「キングの野郎と一緒か。嫌な思い出しか残っていねえ」

かつての激闘を脳裏に描いたのか渋い顔となるフォルテに苦笑するロック。

「あん時どうやってあいつ倒したっけな?」

「あんまり僕も覚えていないや」

互いに軽口を叩き合う二人にフィーネの眉間に皺が寄る。

「やりなさいラルゴ!!」

「マキシマムボンバー!!」

フィーネの命令を受けラルゴが巨大な斧を叩きつけて来る。

まともに当たれば即戦闘不能となりかねない一撃だが、ロックとフォルテの二人には掠りもしない。

その辺りはフィーネも織り込み済みであり、二人の側面を取る形で闇に紛れて動く。

「木偶の坊の攻撃が当たらないのは想定内。だけどこの攻撃は避けられないでしょ!!」

両の手にエネルギーを高めながらフィーネが笑う。

「ファントムブラスタァァァ!!」

両手から同時に放たれる巨大な光弾にロックらが目を見開く。

ラルゴの攻撃を回避する為に跳躍していた二人には回避も防御も不可能。

仮にこの一撃で仕留められなくても致命傷に近いダメージを負わせられるとフィーネが勝利を確信した時だった。

 

「「ミラーバスター!!」」

 

異口同音に二人が叫んだ言葉にフィーネが息を呑む。

己の光弾を受け止めるでもなく逆に吸収した両者。

ミラーバスターの使い手であるエンカーがそうである様に、光弾を吸収した反動でその身を傷つける二人であったがそれに構う事無く振り返るようにラルゴにバスターの先を向けていた。

 

ズドオオオォォォォッッ!!

 

フィーネの光弾を吸収して更に巨大になった光弾はラルゴの両足を粉砕する。

「・・・・・・!?」

呻く様な声を発し前のめりにバランスを崩すラルゴ。

「・・・ラルゴっっ!?」

慌てて駆け寄るフィーネだが、両足を失ったラルゴはすぐには動けない。

如何にロイヤルリビルディングによる再生能力を以てしても、損傷した箇所を完璧に再生するのは不可能だ。

いやそもそも。

「おらあぁぁぁ!!」

粉砕された片足の先を掻っ攫う様に手にしたフォルテはそれを部屋の隅に放り投げる。

「これですぐには再生出来ねえだろ!!」

ニヤリと笑みを向けるフォルテ。

フィーネの光弾を吸収した際の反動もあって息も荒いが、彼の闘志は消えてはいない。

「・・・」

フォルテに放り投げられた片足の再生は当然の事ながら止まってしまい、辛うじて繋がったもう片方の足も本来の強度を保てず歩行する事すらままならないであろう。

「もうラルゴは動けない。君の負けだフィーネちゃん」

「は・・・言ってくれるわねロックお兄ちゃん。こんな木偶の坊に頼らなくても・・・私はアンタ達に勝てる!!」

己に降伏を促すロックにフィーネは鼻で笑いながら先程は両手で放った光弾を片手で撃とうとする。

自身最大の一撃と言う所か先程、二人にそれぞれ放った物に比べ遥かに巨大な光弾がロックに向けて放たれる。

別々に放った光弾の時点でそうであったが、まともに食らえば致命傷は間違いない。

先と同じ様にエンカーのミラーバスターで受け止めようとすれば、今度こそ過負荷でロックのボディは自壊してしまうだろう。

「・・・チッ」

フォルテが割って入ろうとするが、一瞬だけ振り返ってきたロックの目を見て動きが止まる。

フィーネの放った光弾を前にロックの目には一種の決意の様な物が浮かんでいたからだ。

「ハイパーロックバスターだぁぁぁぁ!!」

 

バシュウウウッッッ!!

 

フィーネの放った巨大な光弾に比べれば遥かに小さな光弾が放たれる。

「あはははははっ!!所詮は元家庭用の間に合わせな戦闘用ロボット。学習進化プラグラムに悪のエネルギーを得たこの私に勝てる訳が・・・」

己の力に酔いしれ勝ち誇る少女の顔が数秒もせぬ内に凍り付く。

彼女が放った光弾は何時まで経ってもロックの身を包み込む事が出来ないのだ。

それはつまりギリギリの所でロックがフィーネの一撃を受け止めている事となる。

「無駄な足掻きを・・・そんなことをしても」

「無駄だって言うんだったらそっくりそのまま返してあげるよフィーネちゃん。確かに君の力は凄い。本来だったら家庭用だった僕と同じくらいのスペックなのに、ボディを改造せずにそこまで力を引き出せるなんて・・・」

光弾を出し続けるロックの足が一歩、前へと進む。

「でもあの時、ワイリーが言った様に今の君じゃ僕には勝てない。そんな偽りの力に振り回されている様じゃね・・・」

皮肉気に笑うロックの言葉を聞いたフォルテの顔が僅かに渋くなる。

ソローが持ち込んだ悪のエネルギーを用いロックに戦いを挑んだフォルテも彼に敗れた際に、その力を偽りの物であると指摘されていたからだ。

「何を・・・私はそこのフォルテよりもこの力を使いこなしているわ。こうしてフルパワーで放ち続けても力は・・・」

 

ドクンッッ!!

 

力に取り込まれ暴走してしまったフォルテとの違いを口にするフィーネであったが、その彼女の体内で何かが脈動する。

「・・・え?」

困惑する間など無い。

息が詰まる様な圧迫感を感じたのと同時に体に力が入らなくなる。

と同時に己が放った光弾が徐々に押し返される。

「ど・・・どういう?」

自身のファントムブラスターは本来であればロックバスターに押し返される様な威力ではない。

にも拘わらず押し負ける想定外の光景に彼女は動力炉の出力を全開にするが、彼女の意思とは真逆に光弾の出力は落ち始める。

驚愕する彼女の眼前まで光弾は迫って来る。

(これ以上は・・・)

悔しいが負けを認める他無いと己の身を闇と同化させ一旦、その場より離脱しようとするフィーネであったが。

 

ガシッ。

 

「・・・え?」

不意に己の体を巨大な手が掴みフィーネは間の抜けた声を発する他無かった。

己の後ろに居たラルゴが逃げようとする己を拘束したのだ。

何をしたのかと問う間など無い。

ロックの光弾の衝撃に視界が包まれる前に彼女が見たのは薄笑みを浮かべるラルゴの顔だった。

 

「あああああああぁぁぁっっっ!!」

 

甲高い声を上げながらラルゴの巨体諸共後方の壁に叩きつけられるフィーネ。

身に纏ったローブをズタボロにしながら倒れ伏すその姿にロックは反射的に視線を逸らす。

「てめえは俺よりもこの力を扱えてるって言ったが、逆を言えばそれに完全に依存してるってこった」

フォルテが鼻を鳴らしながらフィーネに言う。

闇を具現化して戦うなどその能力の応用と言う点ではフォルテよりも器用と言えようが、元の戦闘能力に劣る事もあり長時間の力の行使は動力炉に多大な負荷をかける。

急激な出力低下はそれが原因だと暗に示すフォルテは倒れ伏すフィーネに近づき油断なく見下ろす。

もしも彼女がファントムマンとしての仮面を被り、隠密行動を取り続ければこの欠点は露わにならなかったであろう。

「く・・・くそおおぉぉぉぉ!!」

鬼気迫る顔で立ち上がろうとするフィーネにフォルテが呆れた様に溜息を吐く。

腐ってもワイリーナンバーズかこう言う時の顔はフォルテとそこまで変わらない。

「この木偶の坊、最初から私を嵌めていたわね!!」

自身に重傷を負わせたロック本人よりも最後の最後でしっぺ返しを食らわせてきたラルゴに少女の矛先は向く。

笑みを浮かべたまま殆ど胴体部のみとなったラルゴであったのだが。

 

ボロッッ!!

 

笑みを浮かべた頭部が糸の切れた人形の様に床へと転がり、フィーネやフォルテも反射的に数歩後ろに下がる。

「こ・・・これは」

「中身がねえ・・・?」

頭部に続き首の根元を露わにする形で倒れ伏すラルゴにロックとフォルテも目を丸くする。

何が起こったのか理解は出来ないが、いずれにせよ今の今までラルゴと思っていたのは伽藍洞の鎧であり、その中にある筈のロボットの姿はどこにも無かった事になる。

「どいつもこいつも!!私を私を・・・馬鹿にしてぇぇぇ!!許さないっっ!!許さないん・・・だから!!」

全身に付いた傷をそのままに見た目相応の癇癪を起こすフィーネの言葉は嗚咽交じりの物となっていた。

泣き伏す彼女にロックとフォルテもどうすべきかと確認する様に顔を向けあった時であった。

「やはり・・・と言うか小娘如きでは相手にもならなかったか。それはさておき・・・ラルゴの中身は一体どこに居ったのやら」

今の今まで気配さえも感じさせず、突然その場に一人のロボットが姿を現す。

漆黒のアーマーとマントで身を包んだロボットは足音一つ立てずにラルゴの胴体部を見て溜息を吐く。

「ヴォ・・・ヴォイド!!」

「てめえはあの時の!?」

フィーネとそれに続きフォルテがそれぞれ声を上げるも、ヴォイドと呼ばれたロボットは大した反応を示さない。

「全ては定められたもの・・・漸く会えたなロックマンよ」

二人の事など文字通り眼中に無いとばかりに反応を示さず、ヴォイドはロックだけを見据え口元に小さく笑みだけを作る。

仮面を付けている事もあり、唯一露わになっている口元以外で彼の感情を読み取るのは難しい。

「ヴォ・・・ヴォイド、丁度良かった。アンタが加勢してくれるならロックマンとフォルテも簡単に・・・」

自身の救援に来たと考えたのかヴォイドを背に笑みを浮かべるフィーネであったが。

 

ザンッッ!!

 

ロックとフォルテが見たのは一瞬の内に振り下ろされた光の刃がヴォイドの手元に戻る所であった。

勢いよく顔から地面に倒れ伏すフィーネの背に刃の痕がくっきりと残る。

「邪魔だ・・・小娘」

背を袈裟懸けに切られ己の身が噴き出すオイルで染まるのを感じながら、フィーネは愕然とした顔でヴォイドを見上げる。

驚愕する一同の思考など意に介さずヴォイドはただロックだけを見据えていた。




何時もの後書きです。
さらっと読み飛ばして頂いて結構です。

〇キングについて
作中で名言された様にロクフォル終盤にてワイリーがキングを洗脳した様に見えた流れは洗脳ではなく初期化と言う解釈。
ゲーム中ではワイリーの寝首を掻いたのは間違いないのだろうが、どこまでがワイリーの計画だったのか不明だったので作中では軍団乗っ取り及び人類抹殺計画はガチとした。
ワイリーがロックらと同時進行で元々自分の基地だったキングの本拠地に乗り込み、キングの注意が逸れた所を基地のコントロール権を掌握したと言う流れ。

オクターヴ自身、まだ本気を出していなかったらしい。
場合によってはワイリーらを見捨てて離脱するのも視野に入れていたようだ。

マジシャンウーマンに関しては元々師匠であるマジックマンが居た慰安部隊に所属していた事もあって、ウィルス対策は幹部に比べるとそこまで強いものが施されていなかった事もあり今回の暴走に繋がっている。
因みに慰安部隊に居た事で彼女個人はキング事件の際に破壊活動を行っていなかった事もあり、連邦政府には殆どマークされていなかったようだ。

〇フィーネ戦について
リブート前だとパンク、ラルゴの連戦から彼女との戦いであったが作中ではラルゴとのタッグでロックらに挑む事に。
何度も言われているが彼女の能力は闇を纏う事での隠密性及びそれによって行使出来る暗殺技術にこそ真価があり、真正面から戦うのに向いているとは言い難い。
目立ちたがり屋で承認欲求が強いのもあってか、能力と性格が見事に噛み合っていない。
ここで彼女が取るべきはファントムマンの仮面を被り、ラルゴを囮に使い徹底的に隠れつつ、ロックらの隙を狙う戦法だったと言える。
折角の学習進化プログラムも宝の持ち腐れとなりこの辺の欠点が解消するのは来世紀まで無理そうである。
彼女の扱いに関してはリブートによって一番変わった点と言えるかもしれない。

それに加え悪のエネルギーにフォルテ以上に依存している為、長時間の力の行使は動力炉に大きな負担がかかると言うデメリットも設定した。
この辺は悪のエネルギーも言う程、万能な力ではない事を示したかったのと彼女の本来のボディを考えれば、自明の理と言えようか。
ラストはリブート前と変わらない筈。
彼からすれば漸く己の存在意義と対面する事となった。


今回の後書きは以上です。
読んでくださってありがとうございます。
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