Rockman 偽りの野望   作:グルルre

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vol3 もう一人のロボット王

連邦政府の依頼とは言えロックは少し憂いを覚えていた。

グランドキャニオンでデューオとソローが激突していると言うのにロボットアーミーの軍船に乗り込み、どことも分からぬ場所へと向かっている。

周囲にはロボットアーミーに所属するロボット兵達が佇んでいる。

彼らも軍人と言う事もあり無駄口は一切喋らず、ロックだけが場違いの印象すらある。

と言うか普通に気まずいと言うのがロック個人の感想だ。

時折足元の方でラッシュが尻尾を振るが、彼も彼で空気を読んだのか無言だ。

「いやはやロック君には詳しい説明が遅れた事を申し訳なく思います」

先程まで別の場所にいたオクターヴが何名かの者を伴い一室に入ってくる。

彼は入ってくるなりロックに頭を下げる。

「あ、いえ」

困惑するロックとは対照的に周囲のロボット兵が一斉に敬礼をする。

軽く手を上げ兵士らに休むように指示するオクターヴ。

ロックの方も一瞬兵士らと同じ様に敬礼をすべきか迷うのだが。

「あ、ロック君は別に軍属でも無いので結構ですよ」

この辺の空気を察知したのかオクターヴはやんわりとロックに言う。

ロボットだけで構成された軍隊、ロボットアーミーの司令官である彼とはキング事件などで面識はある。

軍の司令官には似合わない涼しい笑みと柔らかな物腰が特徴的な彼だが、ロック個人としてはその内面はやや掴み難いと言う印象を与える。

「さてわざわざロック君にも同行して頂いた理由を説明しましょう」

自身の前に立体映像を表示させながらオクターヴは傍らに居た将官風のロボットに目を合わせる。

それを受けロボットアーミー海軍を指揮するシェンドが咳払いをする。

当然の事だが、彼ともロックは面識はある。

「ソローなる異星のロボットが破壊活動を始めたのとほぼ同時刻に太平洋上で幾つかのエネルギー反応が計測された。それらは一直線にある地点に向かうやレーダーから反応が途絶えたのだが・・・」

当時の観測データを指差しながらシェンドが説明を続ける。

これだけならばただのレーダーの誤作動と考えられるのだが、それから十数分後にエネルギーが消えた地点に突如として島と思しき場所が姿を現す。

衛星軌道上からも観測されたその場所が何であるか、この時点で答えは出ているようなものだ。

「ワイリー軍団の秘密工場の一つですか?」

遠慮がちに問うロックにオクターヴが頷く。

「ええ・・・デューオとソローが地球に落下した時もその際のショックでカモフラージュ装置が損傷し秘密工場のある島の全容が露わとなりましたが、今回も似たような理由で姿を現したと連邦政府は判断しその地点の調査及び可能であれば拠点の破壊を命じています」

ワイリーは太平洋上を始め、世界中にこの手の秘密工場や研究施設を隠し持っており、これを叩くという事は後々の争いの芽を絶つ事にも繋がる。

その為、連邦政府は実質デューオに押さえつけられているソローを放置する形でロックをロボットアーミーに同行させたと言うのが事の真相である。

「我々ロボットアーミーも精鋭を揃えましたが相手はワイリー軍団の重要施設です。どれだけの防衛戦力があるのか分かりませんからね」

オクターヴに説明を受けたロックではあるが、その表情はやはりというか晴れない。

「既に周辺都市の住民の避難も完了していますし。何よりソローの目的は都市の破壊ではなくデューオを誘き寄せる事だったと私は見ています」

「オクターヴ閣下。現地の部隊の情報によるとソローがその場より離脱した様です」

街の中心部で暴れまわったソローではあるが、彼が暴れたにしては被害が最小に済んだ事からも、オクターヴは彼らにとっての障害となりうるデューオを陽動する為の行動と判断したのだがどうやらそれは正解であった様だ。

「読み通りですね。各部隊は被害の状況を確認するように伝えておいてください」

自身に報告をする兵士に満足げに頷くオクターヴ。

デューオの事は心配だが現場よりソローが去った事は幸いと言えよう。

これによってロック自身は目の前の事に集中できるのだから。

島より立ち昇る煙と閃光、遅れて爆発音が鳴り響く。

その光景にこの島の主であるワイリー軍団と何者かが戦闘を行っているのが分かった。

ワイリー軍団に戦いを挑む勢力など殆ど限られているが、ソローが所属する謎の組織なのか。

いずれにせよ島のカモフラージュが解除されたのも戦闘による被害で装置が破壊されたからなのだろう。

「僕がラッシュと一緒に先行します。ロボットアーミーの皆は後に続いてください」

そう言いつつラッシュと共にロックが走り出す。

「お言葉に甘え、ロック君を先頭に我が軍も追従するとしましょう」

オクターヴがロボット兵達に命令を下した時であった。

「オクターヴ司令。彼は先に行ったの?」

彼に話しかけてくるのは作業着を着た人間の女性だ。

基本的にロボットだけで構成されるロボットアーミーの中で人間がいるのは珍しい。

普段の事であればともかく作戦活動中であれば尚の事だ。

「彼に挨拶をしようと思ったのだけど作業をしていたら時間が無かったみたいね」

出撃していく兵士らを見送りながら女性が残念そうな顔となる。

「それで例の兵器は・・・?」

「準備OKよ~。なんならテストがてらそれで彼を追いかけてみるのもアリかもね」

オクターヴの問いに女性は屈託なく笑いながら冗談とも本気とも取れる言葉を口にする。

それを否定も肯定もせずにオクターヴはただ笑みを浮かべるのであった。

 

 

 

「ワイリー軍団を襲った敵は・・・誰なんだ?」

鉄球を手にするジョーに類似するロボットをバスターで倒しながらロックは進む。

類似すると言ったがその姿はハンマージョーのそれとは全く違う。

一見すると珍妙な姿をしたロボットだが、ワイリー軍団の施設を攻撃しているだけあってその性能はかなり高い。

「・・・!!」

それ以上に相手方が言葉も喋らずに淡々とこちらを攻撃してくる事にロックは違和感を覚える。

言葉は喋らねど相手方から感じ取れるのは明確な殺意だ。

「ななな・・・訳の分からん連中に加えロックマンにロボットアーミーまで来たのか?」

ロックの姿を見るなり浮足立つのは施設の警備を担当しているスナイパージョー達だ。

「ぬぬぬ・・・例え相手が何者であろうともワイリー博士は何として守るぞ!!」

「「おおっっ!!」」

ロックや謎のロボット達を前に手にした盾を構えるジョー達。

主を守らんと奮闘する彼らにロックは彼らと戦う事に躊躇いを覚える。

ロボットアーミーの依頼を受けて彼らの任務に同行してはいるが、問答無用で同じロボットである彼らを傷つけられる程、ロック個人も非情ではない。

 

ザンッッ!!

 

どうすべきか悩んだロックだったが不意に真横から手裏剣が飛んできた事もあってその場より飛び退く。

地面に突き刺さった手裏剣が飛んできた方向に目を向けると忍者の姿をしたロボットが音も無く地面に降り立つが、ロックの方には目を向けない。

彼がワイリーの護衛を務めるシャドーマンであるのは、いちいち言うまでもないが問題はそれに対峙するように降り立った虚無僧を思わせる姿のロボットである。

「き・・・君はコムソウマン?」

姿通りの名前を持つロボットはチラリとロックの方に目を向ける。

彼の瞳に宿るは自身への明らかな憎しみの念。

「我が主の仇が来たか・・・」

ロックを見据えるなり恨みの籠った言葉を投げかけるコムソウマン。

今までシャドーマンと戦っていた彼だったがロックを見るなり標的をそちらへと変える。

「ドップラーアタック!!」

コムソウマンが手にした尺八を吹くなり複数の分身が彼の周囲に現れる。

 

ズドドドドドドドドッッ!!

 

無数の散弾を分身と共に放つコムソウマン。

続けざまに尺八を吹かし巨大な火炎を操るのだが、それを妨害するのはシャドーマンが放ったシャドーブレードである。

分身の中より本物を目聡く見分けたシャドーマンの攻撃に回避に転じたコムソウマンの分身が消え失せる。

「ディメンジョンズの生き残りよ・・・お主の相手は手前でござるよ」

ほくそ笑むシャドーマンにコムソウマンが低く唸る。

「ロボットアーミーの依頼を受けて一緒に来たのか?」

シャドーマンの指摘にロックは躊躇いながら頷く。

「目的はワイリー博士の捕縛と見たが如何?」

「そう言う事に・・・なるかな」

問いかけにロックは歯切れ悪く答える。

「手前らに戦力があれば双方共に返り討ちにしている所だが今は必要最小限の戦力しか引き連れていない。ロボットアーミーの者共がどうかは分からぬが今、この場において相手に明確な殺意を見せるディメンジョンズへの対処が先決と見た」

「シャドーマン様・・・どう言う」

「ロックマン及びロボットアーミーへの対処は後回しでござるよ。少なくとも博士の捕縛を目標にしているロボットアーミーよりもディメンジョンズの方が博士に対し危害が及ぶ可能性が多いと見た」

困惑するジョー達を他所にシャドーマンが淡々と己の判断を説明する。

ロックやロボットアーミーは連邦政府に属する存在である。

シンフォニーシティーで破壊活動を行ったディメンジョンズと違い彼らはロボット三原則に縛られており、如何に世界的な犯罪者とは言え人間であるワイリーに直接的な危害を加える可能性は低いとシャドーマンは判断していた。

一見すると珍妙な姿をしたディメンジョンズに属するロボット達だが、その戦闘能力は高く強襲を仕掛けてきた事もあって秘密工場の内部への侵入を許す事態となっている。

工場の中枢部にはダークマン達を残してきたので暫くは持ち堪えられるだろうが、ディメンジョンズに加えロックやロボットアーミーと戦うだけの余力を現在のワイリー軍団は持ち合わせていない。

<現在コンロマンとエアコンマン、ダンガンマンが中枢部に接近中。防衛用のヤドカルゴを起動させましたが持って数分かと>

ダークマンⅡの通信にシャドーマンが小さく唸る。

シャドーマン自身が前線に出ている時点でそうなのだが、思った以上に状況は芳しくない。

「ロックマン・・・ここは拙者に任せお前は工場に侵入した敵への対処に回れ。工場の中と外から挟撃するでござるよ」

『お主の後ろから来るロボットアーミーとも話をつけねばならん』と言いつつシャドーマンはロックに先を進むように促す。

「わ・・・分かったよ。オクターヴ司令にも僕から伝えておくよ」

シャドーマンの言葉を受けロックはラッシュと共にその場を駆け出す。

それを阻まんとコムソウマンが動くが、それよりも前にシャドーマンが立ち塞がる。

ロックはラッシュバイクで疾走しながらオクターヴに先程のシャドーマンとのやり取りを簡潔に報告する。

<一時休戦の件は了解しました・・・しかしディメンジョンズですか>

通信の向こう側でオクターヴが意外そうな声を上げたのが分かった。

ロックとしても彼らの存在は想定外であった。

ディメンジョンズ・・・キング事件より半年後に起こったシンフォニーシティ占拠事件を引き起こしたロボット軍団。

彼らを率いたのはロックマンシャドウ。

未来の自身が拉致されクイントへと改造された際に生み出された失敗作だと言う彼は、未来において世界を破壊尽くした末に過去へと飛び現代において壮絶な死を迎えている。

もう一人の自身とも言うべき彼の死は今もなお、ロック個人の心に暗い影を落としているのは言うまでもない。

「彼が死んだ事で僕は彼の部下達に恨まれているのか・・・ある意味で当然か」

先程のコムソウマンの目を思い出しながらロックが呻いた時であった。

「お前はロックマンか!?」

工場の敷地へと飛び込んだロックの姿を見るなり驚きの声を上げるのは文房具が集合したかの様なボディを持つロボット、コンパスマンである。

彼の左右を守る様に時計の姿をした二体のクロックマンが身構える。

彼ら三人もまたロックへの鋭い視線を向ける。

「これ以上の破壊活動を止めるんだ!!」

「嫌だね。友達のロックマンシャドウを助ける為なら何だってしてやるさ」

「シャドウを助ける為・・・?」

己を制止しようとするロックの言葉に反論するコンパスマン。

彼の言葉にロックが首を傾げた時であった。

 

ズドオオォォォォォォンッッ!!

 

突如として工場内部から爆発音と共に粉塵が巻き起こる。

「ゴワー!!」

内部から吹き飛んでくるのはエアコンマン。

続けてコンロマンにダンガンマンも退く形で姿を見せる。

 

キュラキュラキュラキュラッッ!!

 

内部より響くのは不気味な車両の駆動音である。

「何があった!?」

驚くコンパスマンを他所に粉塵の向こうより巨大な物体の影が浮かび上がる。

真っ先に見えたのは巨大な馬型ロボットの姿。

そしてそれが牽引するのは漆黒のカラーリングを持つ巨大な戦車であった。

<だーっはっはっはっは!!突然の強襲に少々手古摺ったが貴様ら如きにやられるワシでは無いわ!!>

基地内部よりスピーカー越しに響き渡るのは言わずと知れたワイリーの声である。

<ディメンジョンズに加え忌々しいロックマンにロボットアーミーと来たか。まあこのキングの後継機の性能を試す上でこの上ない相手じゃな>

上機嫌なワイリーはさて置き、戦車に備え付けられた玉座に腰掛けたロボットの姿が次第に露わになる。

「あれは・・・キング?」

驚くロックの言葉通り戦車の上に鎮座するのはキングと瓜二つのロボット。

カラーリングこそ漆黒の物となってはいるが、その姿はロックが記憶する人物と殆ど変わりない。

<そうじゃこやつこそがキングの後継機にしてWKN(ワイリーキングナンバーズ).002『キング』ラルゴじゃあ!!>

「・・・・・・」

高らかにワイリーが自らの名前を口にするがラルゴと呼ばれたロボットは反応を示さない。

<ブルースの奴にキング二号機の設計図を破壊されたせいで一から作り直す事になったが・・・ムムムムムッッ!!ともあれ完成したんじゃからヨシとするぞい。キングタンクを改良した万能戦車プリドゥエンとそれを牽引するスタリオーも含めたその性能を目に焼き付けるが良い!!>

主の声が響く中、ラルゴは先程から微動だにしない。

<行けっっラルゴよ。まずはディメンジョンズから叩き潰すのじゃ>

ワイリーの言葉を受け始めてラルゴの瞳に光が灯る。

「御意のままに・・・」

抑揚の無い声でラルゴが返事するや彼が搭乗するプリドゥエンの車体がゆっくりと動き出す。

「ワイリー様に仇名す者に死を・・・」

キングと同じ巨大な斧を手にラルゴが玉座よりゆっくりと立ち上がる。

ディメンジョンズ達もロック達を無視する形でラルゴと相対する。

 

シュンッッ!!

 

真っ先に動いたのはラルゴの方であった。

玉座より飛び上がったラルゴは見た目とは裏腹の敏捷性でディメンジョンズ達に肉薄する。

「・・・・・・」

無言のまま斧を振り下ろすラルゴの一撃に反応できずにコンロマンが真っ二つとなり地面に倒れ伏す。

 

ピキィィィィィンッッ!!

 

一瞬の違和感の後、ラルゴの全身を電撃が包み込む。

クロックマンが時間を止めたうえで彼に電撃を放ったのだろう。

だが本来であればキングの弱点であった攻撃もラルゴには一切通用しない。

(当たり前だけど欠点を克服している)

元より高圧電流は機械であるロボットにとって天敵と言うべき物で、ロボット王を名乗ったキングもまた精密な内部機構を持つが故にダイナモマンのライトニングボルトが弱点となっていた。

クロックマンが二人掛かりで放った電撃はそのライトニングボルトにも匹敵するであろうが、その一撃を受けてもラルゴは揺るがない。

「ブースターナックル!!」

 

ドゴォォォッッ!!

 

ラルゴが突き出した拳が勢いよく射出される。

文字通りのロケットパンチに不意を突かれエアコンマンが拳に貫かれる。

「ゴワー!!」

悲鳴を上げるエアコンマンに声を上げる間も無くプリドゥエンから無数の爆弾が放たれる。

「・・・破壊する」

降り注ぐ爆弾を回避すべく逃げ惑うディメンジョンズ達を慈悲無く追い詰めていくラルゴ。

エアコンマンに続きダンガンマンも斧の一撃で大破し二人のクロックマンもプリドゥエンの銃弾に吹き飛ばされてしまう。

「お・・・おのれ!!」

コンパスマンが一矢報いようとするが彼の上半身はあっさりと叩き潰されてしまう。

ここで幸いであったのはコンパスマンの本体が人の姿をした上半身ではなく、下半身の方であったと言う所か。

一瞬でスクラップとなる上半身を横目に下半身が退避しようとするのだが、無機質にラルゴが斧を振り上げる。

次の瞬間にはコンパスマンがやられると思われた時、ラルゴのボディに一発の光弾が命中する。

「もう彼らは戦えない。それ以上の戦いは無意味だよ」

光弾を受け一瞬だが動きが止まった事もあり、コンパスマンはラルゴの手から逃れる事が出来た。

対してラルゴもコンパスマンには興味を失ったかのように視線を己に一撃を放ったロックへと向けていた。

「ロックマン・・・何故我を止める?・・・奴らは貴様にとっても敵の筈だ」

ラルゴの問いにロックは大きく首を振った。

「確かに敵かもしれない。彼らにとって僕はロックマンシャドウの仇なんだろうけど、同じロボットである彼らが死ぬ姿を見るのは嫌だ」

キングの後継機という事もあり圧倒的な性能差でディメンジョンズを圧倒したラルゴ。

無慈悲なまでに淡々と敵を屠る彼に内心で驚愕したロックだったが、戦闘能力を喪失したコンパスマンに止めを刺そうとした姿を見るや体が勝手に動いていた。

「ロックマン・・・貴様を倒すために我は生み出された」

「ヒヒーンッッ!!」

ラルゴの言葉に続くようにスタリオーが鳴き声を上げる。

「スタリオー・・・手出しは無用。これは我とロックマンとの戦いだ」

自身のサポートメカを手で制しながらラルゴは手にした斧を手に身構える。

スタリオーが制御しているのかプリドゥエンもその動きを止める。

一対一での戦いと言うのかロックも片腕のバスターにエネルギーを集束させつつ腰を落とす。

 

ズンッッ!!

 

一瞬の内に間合いを詰めるラルゴ。

手にした斧の一撃をまともに受ければそれだけで終わりだ。

振り下ろされた斧の一撃を掻い潜りロックが放ったハイパーロックバスターがラルゴの胸部に命中する。

当然その一撃だけで倒せるなど思っていない事もあって、ロックはすぐさにラルゴから距離を取り態勢を整える。

(ぬう・・・キングの後継機の実力を見誤った)

下半身だけとなったコンパスマンが一進一退の戦いを繰り広げるロックとラルゴを見据えつつ、己達の甘さに歯噛みした時であった。

「だーっはっはっはっは!!どうじゃディメンジョンズの者共よ。全くお主らのせいで予定が大きく狂ってしまったぞい。ともあれラルゴがロックマンを倒せばそれでヨシとするかの」

コンパスマンを嘲笑いながら単身、その場に顔を出すのはワイリー本人だ。

未だに戦闘が続いている中、生身で出てくるなど正気の沙汰ではない。

「確かにラルゴの性能は高い。ですがまだ生まれたての赤ん坊の様な物です。そんなラルゴが果たしてあのロックマンを倒せますかね」

そんなワイリーの傍らに歩み出るのは法衣を身にまとった少年型ロボット。

彼の姿にコンパスマンは言葉を失う。

僧正を思わせる姿となってはいるが彼の面差しは、ラルゴと戦っているロックに似通っていた。

「そう思ってお主を今の姿にしたんじゃがのう。いやはやワシもフォルテに言われるまですっかりお主の事を忘れておったわ。今の内に謝っておこうかの」

謝るにしてはどこか白々しく頭を下げるワイリーに少年は苦笑を浮かべる。

「まあ私もコピーロックマン・・・クイントの失敗作としてではなく新たにキングの後継機の一人として再設計してもらって寧ろ有難く思っています。これで彼にリベンジをする機会に恵まれた訳だし」

ワイリーにそう笑った少年は思い出した様にコンパスマンに視線を向ける。

「やあ久しぶりだねコンパスマン。例え生まれ変わっても君達とは友達だと思っているんだけど・・・」

「やはり貴方様は・・・」

一瞬だが寂しげな顔となる少年にコンパスマンは下半身だけの状態で膝をつく。

「今はWKN.003『ビショップ』グレゴリオと言う名前が与えられているけどね。かつて私は自らをロックマンシャドウと名乗っていた」

どこか遠くを見据えながらグレゴリオと名乗った少年はロックへと視線を向ける。

「いずれにせよまずは彼を倒すところから始めるとしよう。彼を倒す事が我々の存在意義なのだから」

笑みを浮かべるグレゴリオの胸に去来する物が何であるのか。

コンパスマンは困惑気に生まれ変わった彼を見つめていた。




何時もの後書きです。
さらっと読み飛ばして頂いて結構です。

〇ロボットアーミーについて
以前にも説明しているが政府軍とは別に設立されたロボットだけで構成されている軍隊。
キング事件の際に活躍したこともあって連邦政府内で現在勢力を伸ばしつつあるが、この時点ではまだまだ小規模である。
シンフォニーシティーやランファント遺跡群の監視など、連邦政府が懸念する事態に対処している特殊部隊と考えた方が正確か。
ロックを伴ってワイリー軍団に対応するのも彼らの仕事の内である。
ロボット兵と作中で書かれている兵士らの性能はスナイパージョーに匹敵しているのであしからず。まともに戦えば強いのだ。
海軍を指揮するシェンドなる指揮官も登場したが、この頃から陸海空それぞれの運用戦力を持っており、後のレプリフォースでも踏襲される事となる。

〇秘密工場について
ワイリーは世界中にこの手の施設を築いており、海底や砂漠など人が足を踏み入れない場所にあるのが基本。
都市郊外にあるのも普段はまず入れない様に偽装されているのであしからず。
と言うかそれだけあるのにどうしてロックマンに・・・となるとワイリーも頭を抱えるので許してあげて欲しい。
デューオの時もそうだが、普段は外からは分からない様に色々とカモフラージュしているので姿が露わになるのは余程の事と言える。

〇ディメンジョンズについて
珍妙な見た目と描写したが彼らの性能は決して低くなく、寧ろどこか和気藹々としているワイリー軍団よりも敵に慈悲は無く容赦がない。
この辺はキング軍団やルーラーズと同じくと言える。

まあ元のWS版のゲームで色々とネタにされやすいがコムソウマンらも同様の扱いとした。
寧ろ間抜けそうな姿と名前で相手の油断も誘えると思われる。
じゃないとなんか張り合いが無いのでと言うのは作者の都合である。

〇キング二号機について
ロクフォルのフォルテEDにてキング二世と言われ設計図ごとブルースに破壊されたのをオリジナル要素も加えて出したのがラルゴとなる。
リブート前はアーサー王などをモチーフにしており『ナイトロード』のコードネームがあったが、今回のではチェスにちなんでそのまんまキングに。
チェスにおけるもう一体のキングの駒、ワイリーが改めて開発設計したキングと言うのが正確な所か。
設計図が吹き飛んだ事で一から作り直しとなった為にレントやパッショナーよりもロールアウトが遅れたらしい。
起動直後にいきなり実戦に出たがディメンジョンズを圧倒するなど、この時代において最高クラスのスペックを持っていると言える。
キングの様に楯は持っておらず手にした斧で敵をねじ伏せる脳筋戦法がモットー。

そんな彼のサポートメカはスタリオー(パッショナーのダルセニョーの試作機でこっちはかなりの大型)とそれが牽引するプリドゥエン。
プリドゥエンの元ネタはアーサー王の持つ船にもなる楯からだが、スタリオンの名前共々この辺はリブート前の名残として出してみた。
サポートメカとは言うがキングタンクから合体機能を廃し、そのまま殴り込み用のマシンに改造したのがプリドゥエンであり、ゲームであればワイリーステージに出てくる存在である。

〇グレゴリオについて
コードネームはビショップ。彼の登場を以て主要なチェスの駒は揃った事になる。まだ戦っていないが後方管制を主眼に設計されている。
その正体は本来であればロックマンシャドウとなる筈であったクイントの失敗作(コピーロックマン)であり、それを素体に別のロボットの再設計したのがグレゴリオと言えるのだが、どういう訳か彼にはロックマンシャドウとしての記憶を宿していた。
この辺はリブート前との違いなのだが、彼にしろクイントにしろ歴史改変が起こっている以上、一種の特異点となってしまっている解釈で記憶を宿している事にした。
因みにリブート前はオーソと言う名前でエンペラーのコードネームだった。
ディメンジョンズがワイリーの秘密工場を襲ったのは彼の身柄を取り戻す為だったのだが、彼自身は生みの親であるワイリーにそこまで恨みは抱いていないようだ。



今回の後書きは以上です。
読んでくださってありがとうございます。
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