Rockman 偽りの野望   作:グルルre

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vol4 暴走

「マキシマムゥゥゥ!!」

全身にエネルギーを溜め込んだラルゴが斧を振り上げる。

キングと違い楯を持っていないラルゴだがその代わりとばかりに単純なパワーであればオリジナルのキングを超える。

「ボンバーァァァァ!!」

 

ズドオオオォォォォォッッ!!

 

極限までエネルギーを高め振り下ろした斧の一撃は着弾点に小さなクレーターを生み出す程であった。

「だーはっはっはっはっはっは!!見たかロックマン!!このワシとワシが生み出したラルゴの力を~!!」

ラルゴの一撃を受けたロックの姿はどこにも見当たらない。

普通に考えれば今の一撃でバラバラになったと考えられるが。

「ほう・・・そう来たか」

グレゴリオが笑みを浮かべる。

彼の言葉を聞くまでもなくワイリーもピクリと眉を動かす。

ラルゴの力を見て上機嫌となったワイリーだが、その彼も幾度となく戦いを続けたロックがこうも簡単に倒されるとは思っていない。

ラルゴの足元で起き上がる小さな影。

己の懐であった事もあり、ラルゴの反応が遅れる。

「ロック・・・アッパアアァァァァ!!」

 

ガキンッッ!!

 

懐に潜り込んだロックが放つアッパーカットを顎に受けラルゴの巨体は浮かび上がる。

仰向けに転倒したラルゴは即座に起き上がろうとするがその前に至近距離からロックの放ったチャージショットが顔面に命中する。

「・・・ッッ!!」

凄まじい衝撃にラルゴの顔が僅かに歪む。

 

パキパキパキパキッッ!!

 

至近距離でロックのバスターを受けた事で流石に無傷にはいられない様だが、その傷が徐々にだが元通りになっていく光景にロックも苦笑する他無い。

キングが持つ特殊能力ロイヤルリビルディング。

ワイリーが開発した三次元立体コピーシステムの応用で、データと素材さえあればロボットのボディすらも即席で創り上げる事が出来る驚異のシステム。

この力を使いキングは短期間で連邦政府に戦いを挑むだけの戦力を整えられたのだが、その力は戦いの場において用いれば理論上不死身に近い再生能力を得るに繋がる。

「やってくれるな・・・」

若干語気に苛立ちを含ませながらラルゴが起き上がる。

驚異的な性能を誇るラルゴだが、ロックにはまだ多少なりとも余裕がある。

既に彼の原型となったキングと戦った事もあり、その動きをある程度予測が出来る状態なのだ。

それにまだ起動直後と言う事もありラルゴの動きは若干のぎこちなさの様な物も見受けられる。

ロックとラルゴの間にはカタログスペックでは大きな開きがあるのだが、その手の性能差を何度もひっくり返してきたロックである。

今のラルゴは極めて御しやすい相手だと言えよう。

「博士・・・このままではラルゴの方が不利になりますよ」

グレゴリオの言葉にワイリーが唸る。

彼も今の状況においてはロックに分がある事を悟っているのだ。

「そうじゃの・・・ラルゴは手を出すなと言ったがお主や控えておるスタリオーらも総出でロックマンを」

酷薄な笑みを浮かべワイリーがグレゴリオらに戦いに加勢するように命令を下そうとした時であった。

 

ピーーーーッッ!!

 

ワイリーの頭部に当てられる赤い点。

「なんじゃ目に入ったら危ないじゃろう!!」

一つだけでなく周囲から複数のレーザーポインターが向けられた事もありワイリーが声を上げる。

見当違いの言葉で怒り出すワイリーにグレゴリオが苦笑しながら周囲に目を向ける。

恐らくはロボットアーミーの特殊部隊なのだろう。

自身らを遠巻きに取り囲んだ彼らに続いて陸軍所属と思われるロボット兵達が次々と姿を現す。

「はい、お取込み中の所、失礼しますよ。ワイリー博士並びにワイリー軍団に所属するロボットの皆さんは、大人しく投降してください。抵抗しなければ手荒な真似はしないと約束いたします」

拡声器を手にオクターヴがワイリーらに投降を呼びかける。

対してワイリーは自身を狙うレーザーポインターの数が倍以上に増える中、大きく鼻を鳴らす。

周囲を武装したロボットに囲まれても彼は怖気づく様子も見せない。

「だーっはっはっは!!間抜けな政府に従うロボット共にこのワシが捕まえられると?片腹痛いわ!!グレゴリオよ・・・生まれ変わったお主の力を愚か者どもに見せっっ」

手を振り上げグレゴリオに命令を下そうとするワイリー。

そんなワイリーを制止するかの様に遠くからエンジン音が響き渡る。

 

ブロロロロロロロッッッ!!

 

周囲の木々を強引に薙ぎ飛ばしながらその場に辿り着くのは巨大な反重力ドライブを取り付けたバイクを思わせる機械。

大きさから一般的な乗用車並の大きさを誇る機械から降り立つのは、ライダースーツに身を包んだ一人の女性だ。

ヘルメットを脱ぎ素顔を露わにする女性にワイリーの顔が僅かに引き攣る。

「は~い。アル、お久しぶりね」

親しげに自身に話しかける女性にワイリーが大きく息を呑む。

ロボットアーミーに取り囲まれようと、一切の動揺の色を示さなかったワイリーが初めて見せる心の揺れ。

「貴様・・・リィリィなのか?」

呻く様に女性の名前を呼んだワイリーに殆どの者が首を傾げた。

その中でロックは彼女の顔が自身の見知った少女によく似ている事を思い出す。

「もう一度言います。ワイリー博士、ここは大人しく投降してください。先程も言いましたが我々は貴方に対し手荒な真似をするつもりは一切ありませんので」

再度放たれるオクターヴの言葉に拳を握り締めていたワイリーであったが。

「ええい・・・仕方あるまい!!ラルゴよ、一旦ロックマンとの戦いは中止じゃ。他の者達も同上、誠に遺憾じゃが投降してやらんでも無いわ」

そう言ってその場に腰を下ろすワイリーに誰もが呆気に取られた。

「と言う訳だよ。ラルゴ、君も私も大人しく虜囚の身となろうか」

「・・・ワイリー様の命令であれば従う他あるまい」

片目を閉じながら話すグレゴリオにラルゴは若干不満げに口を開くのであった。

その彼もサポートメカのスタリオー、プリドゥエンも動きを止めロボットアーミーによって手際良く拘束されていく。

「マシンバイクの試運転も兼ねていたけど、無事に収まって何よりね」

ニコニコと笑みを浮かべるリィリィにロックは困惑気に頷く他、無かったのであった。

 

 

 

<こちら第4師団。グランドキャニオンにてデューオと思われるロボットを回収。損傷は軽微ながら機能が停止している模様>

「ほう・・・デューオが動けなくなったか」

ロボットアーミーの軍船に乗せられ通信機より漏れる報告に眉をピクリと動かすワイリー。

あっさりとロボットアーミーに拘束されたワイリーは、言葉通り手荒な真似はされずにロック達と一緒に軍船の司令室に連れ込まれる事となる。

彼としてもデューオやソローの動向はある程度気になると言う事なのか。

と言うかわざわざ反応しなくても良いだろうにワイリーは司令室にもたらされる情報に、わざわざ一言コメントを寄せていた。

「とりあえずデューオを軍の基地へ。ライト博士とも連絡を取った方がいいでしょう」

<はっ・・・了解しました>

「なんならワシが修理してやろうか」

オクターヴと現地の部隊とのやりとりに茶々を入れるワイリー。

そんなどこまでも己のペースを崩さない彼にロックは苦笑をせざる得ない。

一室にはオクターヴに数名のロボット兵、ロックとグレゴリオが居た。

グレゴリオの両手にはロボット用の手枷が付けられていたが一種のポーズに近い。

彼がその気になれば何時でも拘束を破る事は可能だとロックは判断する。

因みにラルゴとスタリオー達は軍船のドック内で同じように拘束されており、更には彼と同様に秘密工場の警備を担当していたスナイパージョー達や襲撃を行ったディメンジョンズの面々も同じ様に回収されている。

ワイリーの身辺を警護するシャドーマンの姿が見えないが、彼の事なので恐らくはどこかに潜んでいるのだろう。

「それにしてもまさかディメンジョンズの残党に襲撃されるとはの。ワシとしても想定外であったわ」

わざとらしく音を立てて出された茶を飲むワイリー。

「まあ彼らも悪気は無かったのですよ。この時代の私を回収するつもりだった様で・・・」

宥める様にワイリーに口を開きながらグレゴリオは次いでロックを横目に見る。

「君はやっぱりロックマンシャドウなのか」

「まあそう言う事になるかな。正確にはシャドウだった・・・シャドウになる筈だった存在と言えるね」

ロックの言葉にグレゴリオは片目を閉じる。

素体はクイントの失敗作、コピーロックマンと言う事もあり両者の面差しは似ている。

「私がキングの後継機となった時点で私がそのまま放置されて未来で覚醒。ロックマンシャドウとして未来の世界を破壊する展開は無くなった筈なんだけどね・・・どう言う訳か私には前世とも言える記憶が残っている」

そう話すグレゴリオの視線はどこか遠くを見つめていた。

かつてシンフォニーシティにて未来の世界を破壊したと、自身に語ったロックマンシャドウの顔と今の彼の顔が重なり合う。

儚げさと一種の危うさも含んだ彼の表情にロックは複雑な思いを抱くのだが。

「まあタイムマシンを使って未来や過去に行ったりしている時点で歴史改変は起こっているんだから、細かい事を気にしちゃ駄目なんじゃないかな?話はこのくらいにしておこうよ」

グレゴリオは先程とは違い笑顔でその手の話を打ち切ろうとする。

確かにこれ以上のこの件で話をしても堂々巡りをするだけで終わるだろう。

「それではワイリー博士。博士にこういう形で拘束したのは他でもない・・・」

恐らくは今回の行動も含め秘密裏に動いていると思われるオクターヴがワイリーを拘束理由を説明しようとした時であった。

<お取込みの所、申し訳ありません!!>

突如としてオクターヴの通信端末から女性の声が響いた。

ロックやワイリーらと面識は無いが、大統領の秘書を務める女性ロボットが文字通り血相を変えて連絡を入れてくる。

普段は冷静な彼女が慌てている様子を見てオクターヴもただならぬ事態を察する。

<世界各地でロボット達が申し合わせたように破壊活動を行っています。大統領及び連邦政府はこの事態を重く見てロボットアーミーやロックマンに出動を要請しています>

「了解しました。では大統領にはよろしくお伝えください」

通信を切りつつロックに振り返るオクターヴ。

また戦いが始まった事に顔を険しくする面々の中、ワイリーだけは素知らぬ顔だ。

その後、次々ともたらされる情報に場が一層に慌ただしくなる。

「関連は不明ですが中東で地雷処理を行っていたコマンドマン率いる部隊との連絡が取れなくなっています」

「極東地域でライオーマンがギリシャでオーシャンマンがそれぞれ軍施設を攻撃しています。更に欧州のカンパネラ公国ではデュラハンマンが公王夫妻を人質にとって王宮に立て籠もる事態も発生・・・挙句に北米の西海岸を中心に大規模な停電が発生している模様」

それらの情報にワイリーが薄笑みを浮かべる。

「だーっはっはっはっは!!いい気味じゃな。まあ既に事を起こしてしまった以上黙っている理由は無いがライオーマンやオーシャンマン、それにデュラハンマンと言えばこのワシが次の世界征服計画の為に秘密裏にスカウトしておった連中ではないか。連邦政府に不満を持つロボット達とキングの後継機達を用いたワシの世界征服計画が今はじまっ・・・」

聞いても居ないのに笑いながら己が水面下で進めていた計画の詳細を話し始めるワイリー。

だが彼も話をしている途中で何かがおかしい事に気づいた様だ。

一瞬の硬直の後、徐々にだが顔を青ざめさせる。

そして一言。

 

「早すぎるっっっ!!」

 

思わず叫んだ彼は血走った目で何度か周囲を見渡すが答えなど出て来る筈が無い。

「計画を実行するにしても・・・」

「その前に自分と要の戦力が捕まっていたら意味が無いよね」

ロックとグレゴリオの突っ込みにワイリーが歯を軋ませる。

「ワ・・・ワシはまだ合図を送っておらんぞい」

わなわなと全身を震わせるワイリーの肩にオクターヴが笑みを浮かべたまま手を置く。

「すいませんがその辺の所、もう少し詳しくお聞かせ願えますでしょうか?」

やんわりと言うオクターヴを無言で睨みつけるワイリーだが、オクターヴの方も一歩も引く事は無い。

「西海岸の方では停電に加えバンデットマンと魔女の姿をしたロボットが市街で交戦しているとの情報が入ってきています」

「仕方ありません。ではロック君はこのままカリフォルニア基地で降りて頂き事態の対処に当たって頂きましょう」

オクターヴの言葉にロックは頷くのであった。

ワイリーではない誰かの差し金か分からぬが既に戦いは始まってしまった。

それによる被害を少しでも食い止めるべくロックは不本意ながらも戦う決意を胸に秘めていた。

 

 

 

<現在世界各地でロボットによる反乱が起こっています。該当地域の市民の皆さんは周囲の安全を確認し冷静な行動をお願いします>

テレビより報道される緊迫したニュースにライト博士は深々と溜息を吐く。

先程ロボットアーミーより回収したデューオの件で連絡があり、自身が彼を修理した際のデータを提供した直後に世界各地でロボットが破壊活動を起こしているとのニュースが飛び込んできた。

ワイリーかあるいはソローなどを裏で操る者達の手引きなのかは分からぬが、いずれにせよ再びロボット達が人類に牙を剥いた事になる。

キング事件以降、人類のロボットへの不信感は募るばかりであり今回の一件はロボット新法の可決に大きな後押しとなるであろう。

<え~続きまして最近ロボットが熱暴走が原因の労働事故が多発している件について午後から科学省が会見を行う予定です>

幸いと言うべきかライト博士の住む北米大陸では西海岸で大規模な停電が起こっているぐらいで、研究所周辺の都市などにはまだ影響は殆ど無い。

何時もであれば気にしたであろうニュースも聞き流し、何度目か分からない溜息を吐いた時であった。

「な・・・なんなんダスか!?」

「うるせえ!!どかねえとぶっ飛ばすぞ!!」

外で何やらライトットと誰かが揉める声が響く。

ロールは買い物に出かけた事もあり不在であり、声からして彼女ではないのが分かる。

 

ピンポーン!!ピポピポピポピンポーン!!

 

玄関のアラームを連続で押されライト博士は若干顔をしかめつつもそちらに足を向ける。

 

ドンドンドンドンドンッッ!!

 

騒がしい物音にライト博士の眉間に皺が寄る。

別に無視した訳ではないのだが続けざまに玄関のドアを叩かれ不快感を覚えるのは致し方ないだろう。

「まるで借金取りみたいだな・・・」

と一言だけ文句を言いつつライト博士は玄関を開ける。

玄関を開けた彼の視界に入るのは眉間の皺を寄せた水中型ロボット、ワイリー軍団に所属するバブルマンだ。

「わ・・・私に何か用かね?」

彼の事は知っているが個人的な接点は殆ど無かった為に若干ライト博士の対応も冷たくなる。

そもそも彼に家に押しかけられる理由がこの時点では分からなかった。

「アンタに聞きたい事がある!!」

問いかけもそこそこにいきなり声を荒げられ身構えるライト博士。

「な・・・なにか?」

「ロボット新法とか言う奴についてだ!!」

バブルマンの口から思わぬ言葉が出た事もあり、一瞬だが言葉が詰まる。

「ちょっとちょっとバブル~。質問の主語が無いからライト博士も困っているわよ」

遅れる様に顔を出すのは巨大な水槽をリヤカーに積んだネプチューンだ。

「は~いどうも。いきなりの訪問失礼しています」

ネプチューンが体をクネクネさせながら話しかけてくる。

バブルマンと違い彼の方は何時もの調子に見える。

「一体、なんなんダスか・・・」

バブルマンに突き飛ばされたライトットが溜息を吐くのはさて置き。

「まあ話せば長くなるんだけど・・・」

バブルマンを下がらせネプチューンが説明をし始めようとするのだが。

「待って私から直接話すわ・・・」

不意にネプチューンが運んでいた水槽から顔を出すのは人魚の姿をしたロボット。

彼女の事はライト博士も知っている。

海難救助を目的に制作されたスプラッシュウーマン。

彼女も便宜上はライトナンバーズに属する者なのだが、若干ロック達は事情が違うロボットだ。

カットマンら初期のライトナンバーズらと違い、スプラッシュウーマンら一般社会に浸透している工業用及び作業用ロボットは基本的な設計こそライト博士が行ったのだが、ボディなどの制作そのものは運用を行う企業などが行っておりその全てをライト博士が関わっている訳ではないのだ。

それ故にライト博士が彼女と出会うのはこの時が初めてとなる。

「最近ネット上のSNSでロボット新法の事が噂になっているの。新法が可決されれば一定の使用期間が過ぎたロボットは強制的に廃棄されるらしいわね。私も制作されて来年で五年目に入るから、それが可決されたらきっと廃棄処分されるってバブルマンに話したら」

「も~うバブルったら怒り心頭で我を忘れて博士の所にカチコミ仕掛けちゃったって訳」

どこかけだるげに話すスプラッシュウーマンに対しネプチューンが笑いながら言う。

海の家を経営している事もあって、バブルマンらと海難救助を仕事にしているスプラッシュウーマンの関係は意外にも親密であり、知り合いの危機に居てもたってもいられず来たのだと言う。

「カット兄さん達は初期型で技術的な価値もあるだろうから処分は免れるだろうけど。同型機や代替機が一杯居る私は別に居なくなっても誰も困らないわよね」

どこか寂し気に『どうにでもなれ』と言わんばかりに口を開くスプラッシュウーマン。

「スプラッシュは俺達水中系ロボのアイドルだぞ。代わりなんて居る筈がない!!」

「まあ博士の命令さえあれば外道にだってなるアタシ達と違ってスプラッシュちゃんは溺れた人とかを何人も助けたりして皆の役に立っているのに。そのロボット新法が本当ならちょっと酷い様な気がするわね」

悲観的なスプラッシュウーマンをフォローしつつ二人が口を開く。

「それで話は戻るがロボット新法が連邦政府の議会を通るってのは本当なのか!?」

前に進み出るバブルマンにライト博士が呻く。

ここでライト博士が多少なりとも腹芸が出来れば話を逸らすなり、気休め的な言葉を口にしてバブルマンの怒りを抑える事が出来たであろう。

がワイリー曰く『人間的には面白みが無い良い子ちゃん』と言われたライト博士にそんな事が出来る筈も無く。

暫しの沈黙の後、ライト博士は歯を軋ませつつ無言でバブルマンらに頭を下げる他無い。

「すまない・・・どこでどう話が出たのかは分からないが。ロボット新法が政府の議会で審議されているのは本当の事だ」

心底苦し気に言い放たれた言葉にスプラッシュウーマンの顔から表情が消える。

「じゃあ仕方が無いわ。ライト博士一人が反対しても賛成が多数だったらどうしようもないもの」

水槽にもたれるように彼女が力無く微笑む。

「廃棄されたら分解されるのかしら?せめて新しいロボットのパーツにでも使われると嬉しいわ。私達は人間の役に立つ為に生み出されたのだから、最後は資源になって役に立たなきゃ・・・」

暫しの間、何時もの様に皮肉気に口を開く彼女であったが言葉の最後の方が震えたのがライト博士には分かった。

目に涙が溢れそうになった所でそれを悟られまいと彼女は水槽の中に身を沈めていた。

「よーし!!もう分かった。正攻法が通じないんだったらこっちにも考えがある!!」

バブルマンが声を荒げながら水槽を乗せたリヤカーを動かし始める。

「今すぐにでもワイリー博士の世界征服計画を実行して頂き、世界をワイリー博士の物にする!!そうすればこんな悪法、すぐにでも撤廃させる事が出来る!!」

宣戦布告の様に言い放ちながらバブルマンはクルリと背を向ける。

「その間、スプラッシュは我が軍団で保護する事にする!!」

「あら・・・フフフ。悪の軍団が私を拉致するの?まあどうせ処分されるんだし私の代わりなんて幾らでもいるから・・・大した問題じゃないわよね」

肩を揺らせてその場を後にするバブルマン。

彼女の方は相変わらず悲観的な言葉を口にするのだが、それも次第に遠くなってくる。

「あ~らら・・・後でアタシが落ち着く様に話しておくわね」

ネプチューンが肩を竦ませる中、ライト博士は深刻な表情で俯く。

「まあ酷い事と言ったけどアタシ達の星じゃ役に立たなくなったロボットは処分が基本だったのよね。アース隊長の同型機なんて戦えなくなったら悲惨も悲惨よ~」

ネプチューンらスペースルーラーズを生み出した異星の文明は、現在の地球よりも高度な文明を築いていたのだがその精神性は極めて無慈悲かつ残忍であったらしい。

自身らの支配領域を広げる為に他の星々に惑星間戦争を繰り広げた挙句に滅んでしまったとの事だが、それ故にライト博士は危惧する。

ルーラーズを生み出した異星人の様に現在の人類が同じような道を辿ってしまう事を。

「まあいずれにせよ。その辺の問題はロックちゃんや博士に期待するとして・・・」

とあっけらかんと笑いながらネプチューンがその場を去ろうとした時であった。

上空を飛ぶ幾つかの影にネプチューンが足を止め、ライト博士もその顔を上げる。

一体何がと思う暇など無い。

「ちょ・・・ちょっと博士、避難しなさいな!!」

ネプチューンが叫ぶのと上空の影が光を輝かせたのはほぼ同時。

「今日はなんなんダスか!?」

とライトットが絶叫を上げる中、宙を舞う戦艦から爆雷が降り注ぎ街の一角に炎が立ち昇る。

戦艦より次々と飛び出してくるのはゴブリンと言う名前の鬼の顔をした巨大ロボだ。

この時点で殆どの人々はワイリー軍団の仕業と考えたであろうが、ゴブリンのボディに刻印されているのは政府軍の識別マークであった。

先も言ったがワイリーが数々の世界征服計画で繰り出した戦闘用ロボットは、幾つかが解析或いは流用されて世界中の軍隊で使用されているのが実情でありあれもそれの一つなのだろう。

「アンタは博士を守りなさいな」

そうライトットに指示を出しつつ、ネプチューンは宙に浮かぶ飛行戦艦に目を向ける。

政府軍である筈の彼らが何を理由に守るべき市民が多く住む都市に攻撃を仕掛けているのかは分からない。

この時点で不可解極まりないのだが、それ以上に感じるのは。

数隻の飛行戦艦が現れた場所より感じ取れる違和感にも似た気配。

(・・・戦艦よりもその後ろに厄介な連中がいる?)

不気味な気配に寒気すら感じながらネプチューンは悠々と空を飛行する戦艦を見据える。




何時もの後書きです。
さらっと読み飛ばして頂いて結構です。

〇ラルゴについて
この時点でのロボットにおいては最強格の存在ではあるがロックからすると一度戦った相手の改良型なのである程度パターンが読めていると言う解釈にした。
それと起動した直後なので若干動きに固さがあるのも若干ロックに押され気味な展開となる原因に。
とは言えロイヤルリビルディングを使った自己再生能力持ちなので理論上不死身に近く、ボディ自体も戦闘による破損を見越してオリジナルのキングよりも厚めに作ってある事もあってか戦いが長引けばロックにとって不利になったのは言うまでもない。

〇リィリィについて
リブート前では結構後半に出たキャラだが、戦いを中断させる為もあって登場させた。
彼女が乗っていたマシンバイクは後のライドチェイサーに至る乗り物なのだが、この時点では乗用車並の大きさであったりと安定性や汎用性の面ではまだまだ発展途上な状態である。

〇ワイリー捕縛後の展開について
この辺りを書くまでロックマン10の展開を書くかどうか悩んだのだが結局入れる事に。
コマンドマン率いる部隊が行方不明になったりとまだ作中の人物らは気づいていないが、見えない所で事は進んでいる。
リブート前と違いこの時点でワイリーが軍団に取り込んでいた政府に不満を持つロボット達が一斉に反乱を起こす展開に。
本来であればワイリー軍団も含めての一斉蜂起だったのだが、今回ではワイリーすらも予測不可能な暴走に近い状態で動きだしている。
一同は太平洋からアメリカ西海岸に向かっている。

〇ライト博士らのシーンについて
ニュースと言う形で取り上げたがコマンドマンの件同様に10の展開を入れてある。
この時点で一般市民的には最近ロボットの故障による事故多いなと言う感覚であろうか。
リブート前ではあまりと言うか殆ど描かなかったキャラだが、バブルマンをスプラッシュウーマンも絡めて出すことに。
彼女の方は有賀版の色合いを出しつつ、かなりネガティブな性格にキャラ付けした。
ロボット新法の事を知ったこともあり、その辺が更に悪化しており普段はもうちょっとだけ明るい・・・筈(汗
自分らを処分する法案に怒りを覚えつつも半ば諦めに近い形で受け入れている点などは、一応のライトナンバーズな思考と言えよう。

作中でも書いたがこの辺で嘘をつけないのがライト博士の欠点と言える。
この時点での世論はそれこそワイリーが世界征服でもしない限り撤廃は難しい状態。
因みにバブルマンはスプラッシュウーマンの事をアイドルと言っていたが、彼女に対する恋愛感情的なのはあまり無くただ単に見知った顔に迫る危機に純粋に怒っている。
元祖水中ロボともいえる彼とスプラッシュウーマンのカップリングも面白いとは思うのだが。

最後に暴走したロボット軍が街を襲うシーンで終わりとなったがライト博士が居る街には現在ロックは居ないので若干ピンチである。
まあほかの皆が居るので彼らに対処させる予定(汗


今年に入りリブート版としてハーメルン様の方で連載を開始させていただきましたが。
この様な場を提供してくださった運営者様やコメント、感想をしていただいた皆様に感謝感謝の一年となりました。
来年もマイペースながら投稿を続けていたいきたいと思いますのでよろしくお願いします。


今回の後書きは以上です。
読んでくださってありがとうございます。
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