Rockman 偽りの野望   作:グルルre

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のんびりしていたら前回の投稿からかなりの間が開いてしまいました。
うん、なんだかんだで書いてますよ。
怒られない程度にが・・・頑張ります。



vol5 ホットスポット(前編)

事が起こる数時間前。

「あれ~?師匠にも連絡がつかないな~」

ブルースとキングに合流したマジシャンウーマンは端末を操作し、マジックマン達に連絡を取ろうとするのだが。

「マジシャンか・・・貴様が彼らと行動を共にしているのは有り難いが」

キング軍団壊滅後に行方を眩ませたキングは歯切れ悪く口を開くのだが、彼女の方は端末の操作に夢中となっており話を聞く様子ではない。

何度目かの声掛けの後、漸くキョトンとした顔で振り返ってくる始末だ。

マイペースな彼女に調子を狂わされキングが頭の裏を掻いた時だった。

 

ピピピピピピッッ!!

 

端末より鳴り響くアラーム音。

「あれ?メールだ・・・ワイリー軍団からだね~」

一旦マジックマンとの通信を諦めた彼女が端末に届いたメールを開こうとする。

「ええ~?もう作戦行動するの~?とりあえず合流地点の座標を確認しておかないと・・・」

ワイリー軍団による世界征服計画にキング軍団の残党であるグランドマンが参加を表明していたのと同様に、マジシャンウーマンも師であるマジックマンらと共に計画に参加する腹積もりであった。

彼女はメールに示されたアドレスにアクセスしようと端末の画面をタッチする。

 

ヴンッッ!!

 

「・・・?」

端末に表示された画面を見た瞬間、瞬きをした様に視界が一瞬暗転した。

と彼女が感じた時にはもう既に手遅れであった。

「キャハハハハ・・・」

手にした端末を地面に落としながらキングらに振り向くマジシャンウーマン。

何があったのか問う時間など無い。

「王様・・・ドッカーン!!」

突然自身目掛けて爆弾を投げつけてくる彼女に、キングは身構える事も出来ず吹き飛ばされる。

「・・・キング!!」

声を上げるブルースだがその彼にも爆弾が放たれる。

反射的に楯を出した事もあり、手傷を負う事は無かったがブルースは大きくその場より後退する。

二度の爆発もあり、辺りが停電している中で当然の事ながら騒ぎとなる。

「キャハハハ・・・皆、吹き飛んじゃえ~!!」

「貴様・・・何を考えている?」

突然の凶行を前にブルースも困惑する他無い。

ブルースの問いかけに屈託ない笑みを浮かべる彼女の頬は、僅かに朱に染まっていた。

黒く濁ったその瞳を見据えブルースは説得は困難と悟るのであった。

 

 

 

「ディメンジョンズがこの段階で動くとはな・・・」

各地から寄せられる騒動にほくそ笑みながら一人のロボットは目の前の端末のキーボードをテンポ良く叩く。

上機嫌な彼と違いもう一人の黒衣のロボットは特に反応を示さない。

まるで最初から分かって居たと言わんばかりだ。

「ARプログラムを用いた一斉扇動。ワイリーが事前に用意していた次なる世界征服計画も大幅な変更を強いられる事となった」

「ああ・・・私としては小気味よい話だ。挙句に政府軍に身柄を拘束されるとは・・・お陰でこちらも動きやすくなった」

淡々と口を開くヴォイドに対しロボットの方はキーボードを弾く様に叩くと端末から離れる。

「ヴォイド。既に聞いているだろうが、ボーンダインは先日の出撃もあって現在は調整用カプセルに入っているし。ソローもアポロもデューオと交戦したばかりですぐには動けない。ラ・ムーンからアルゴスの代わりの従者が送られてきたがそれもどれ程の実力があるかは分からない。そう言う訳で頼りになるのは君だけだ。ここで我々が起こしている事が分かれば非常に拙い」

「・・・分かっている」

ロボットの言葉にヴォイドは機械的に返事を返す。

「世界中で破壊活動をしている連中への対処に政府軍やロボットアーミーは手一杯だ。そもそも奴らは我々の存在には気づいていないし、仮に動かれても私が何とかする。それで良いだろう?」

「ああ・・・十分だ。信用しているよ」

他者を圧倒する実力を持つ者を使っているとは言え、その運用能力には限りがあるのが彼らにとっても手痛い所だ。

ロボットの言葉通り、ボーンダインを始めとした戦力は現在使用不可能な状態に追い込まれている。

「しかしデューオを潰しておいて良かった。お陰で私も目の前の事に集中出来る」

メモリーディスクを周囲の機器に挿入しながらロボットは笑う。

「後はここの設定を弄れば・・・」

再びキーボードにプログラムを打ち込み始めるロボット。

対して反応を殆ど示さないヴォイドの間で重苦しい沈黙が場に満ちていくのだが。

「・・・・・・」

そんな両者のやり取りをローブのフードから垣間見える大きな目を揺らし見つめるのは、ファントムマンことフィーネである。

彼女は先程から二人の会話に入ろうとするのだが、その機会は訪れずに今の今まで無言を通す事となる。

「あの・・・私は何をすれば?」

恐る恐る主に問いかけるフィーネ。

彼がこちらを振り返るのに数秒ほどの時間が掛かった。

「ああ・・・君はヴォイドの指示に従いたまえ」

どこか素っ気無い言葉を投げかけられフィーネは低く唸る他無い。

本来であればワイリー軍団内に潜り込んだまま、彼らの情報を主らに提供するのが主任務であったフィーネだが手違いもありその正体がばれてしまっている。

役目を果たせなくなった彼女に他の面々の対応は、若干の冷たさを感じさせる物となったのは言うまでもない。

「勝手な事はするなよ・・・小娘」

感情の伴わない声でそう言い放つヴォイドにフィーネは歯を軋ませる。

他者に見下される屈辱に身を震わせる少女を一顧だにせずヴォイドはマントを翻し、その場を後にする。

フィーネの方も先程から作業に移っている主を邪魔する事は出来ず、ヴォイドに続く様に退く他無かったのであった。

 

 

 

「都市郊外で二人のロボットが暴走か・・・成程ね」

バイク形態に変形したラッシュの隣を並走するようにマシンバイクを走らせるのはグレゴリオ。

どこか含む所がある彼の面差しはロックに似ている。

軍基地でオクターヴらと別れ現場へと急ぐロックだったが、そんな彼を後ろからグレゴリオが追いかけてきたのだ。

「一応オクターヴには許可をもらっているよ。リィリィ・・・彼女からこれを貸してもらってね。流石に徒歩でこの距離を行くのは難しいよね。着いた頃には終わっている所だった」

皮肉気に肩を竦ませながらグレゴリオは言う。

本人にどう言う意図があるかは不明だが、キングの後継機として生まれ変わった彼が協力してくれるなら有難い。

「シャドウ・・・いやグレゴリオ」

「・・・なんだい?」

話しかけてくるロックに片目を閉じるグレゴリオ。

「君とは一度戦ったけど。こうして一緒に戦えて僕は嬉しく思うよ」

満面の笑みを向けられ一瞬、動揺したように目を見開くグレゴリオ。

「フッ・・・あまり信用されても困るなぁ。何せ私はロックマンシャドウとして未来の世界を破壊した様な・・・」

グレゴリオは苦笑いを浮かべながら、ロックに前世で行った所業を口にするのだが。

「でもまだ今回は何もやっていないよね?」

微笑みと共にその事実を指摘されグレゴリオは唸りながら視線を逸らす。

どこか負けず嫌いなその姿にロックはフォルテの事を思い出してしまう。

同じワイリー製のロボットであり、開発目的も似通っているのだから似ているのも無理は無いのかも知れない。

と考えた所でロックの耳が爆発音を捉える。

見れば幾つかの煙と炎が立ち昇っているのが分かった。

「報告だとバンデットマンがもう一体のロボットと交戦中だと聞いたけど」

「二人のロボットが暴れているにしてはやけに騒ぎが大きいじゃないか」

ロックの言葉にグレゴリオが肩を竦めた時だった。

 

ザッザッザッザッザッッ!!

 

ロック達の前を慌ただしく駆けるのは、見るからにガラの悪そうなロボット達である。

彼らは鋭い目でロックを一瞥するも、それどころではないとばかりに思い思いの武器を手に戦いの中心部へと向かっていく。

その対応を見るに彼らは、無差別に暴れまわっている訳ではないようだが。

「一体何が・・・」

とロックが困惑したのと同時に都市郊外の住宅街の一画が爆発で吹き飛ぶ。

勢い良く宙を舞うのは先程駆け出して行ったロボット達だ。

この場で何が起こっているのかも分からず、不用意に飛び出してしまえば自分達も先のロボットの二の舞だ。

辺りの様子を窺うように慎重に動く二人。

「ワンワンッッ!!」

不意にラッシュが吠え出した事もあって、ビクリと身を震わせるロックなのだがその先に見知った顔があった。

「ん・・・お前達は」

西部劇に出てくるガンマンを思わせる風貌のロボット、コルトン達を引き連れ現場に駆け付けていたのはこれまたネイティブアメリカンの戦士の姿をしたロボット。

かつて世界ロボット選手権でアメリカ代表として出場したトマホークマンだ。

大会の主催者にしてWRUの会長であったMr.エックスことDr.ワイリーの手で洗脳され彼の世界征服計画に利用されたトマホークマンであるが、事件の後には修理され政府軍に所属している。

直近ではキング事件の際に共に戦った仲間である。

「えと・・・状況は?」

「我々が知りえているのは・・・数少ない」

問いかけるロックにトマホークマンは言葉少ない。

「当初はバンデットマンと少女の姿をしたロボット、その二人が暴れているとトマホークマンは聞いた。だが我々が駆け付けた時には」

「女の子の方はともかく、バンデットマンに懸けられた賞金に目が眩んだならず者ロボットが現場に殺到してるんですよ。あいつの懸賞金が手に入れば数年は遊んで暮らせますからね」

トマホークマンの隣でコルトンの一人が呆れた様に口を開く。

つまりはである。

理由はさて置き普段は滅多な事では表に顔を出さないバンデットマンが出て来た事で、彼を付け狙う者達までこの場に集まってしまったと言うのである。

 

ドガアアァァァァァンッッ!!

 

再度生じる爆発。

埃や何かの破片が周囲に降り注ぐ中、ロックが拳を握り締める。

理由はともあれこれ以上の破壊活動を看過する訳にはいかない。

「と・・・とにかく戦いを止めなきゃ」

「そうだな。ロックマンの言うとおりだ」

ロックの言葉を聞きトマホークマンも同意とばかりに頷く。

「コルトン達はトマホークマンやロックマンの後に続け。もう一人のお前は・・・」

「グレゴリオだ。言っておくけど私はワイリーロボだけどこの件には無関係だ」

簡潔にトマホークマンらに己の事を説明しグレゴリオも腰を落とす。

互いに目配せをしたのと同時に三人は戦場と化した住宅街の中心部へと踏み込むのだが。

「キャハハハハハハ!!」

真っ先に目に入ったのは狂ったような笑い声を響かせる魔女の様な姿をした少女型ロボット。

そしてそれに対峙するのはテンガロンハットを被ったロボット、バンデットマンだ。

「トマホークの糞野郎か。今はお前を相手にしている時間はねえぞ」

宿敵であるトマホークマンを見るなり、悪態をつくバンデットマン。

両手に拳銃を握り締めた彼は、箒に跨り宙を舞う少女を睨み据える。

「キャハハハハハ!!皆・・・来た~」

怪しげに瞳を輝かせながら手にした爆弾を放り投げる少女。

挨拶代わりと言える爆風に後方に居たコルトン達が纏めて蹴散らされる。

「私の名前はマジシャンウーマン。キング軍団幹部の一人、マジックマン師匠の一番弟子だよ~」

屈託のない笑みと共に宙を舞う少女。

「き・・・君。これ以上の破壊活動は止めるんだ!!」

「や~だ~よ~」

ロックの言葉に舌を出しながら続けざまに爆弾を放り投げるマジシャンウーマン。

慌てて爆弾の爆風から逃れたロックは、倒壊した建物の瓦礫に隠れながら様子を窺う。

「何が起こっている?バンデット」

「知らねえよ。ワイリー軍団からメールが来たんだが、それよりも場所を変えて一杯と思っていたらこいつが暴れてやがったんだ」

トマホークマンの問いかけにバンデットマンが苛立ち交じりに返す。

「部下達とも連絡がつかねえ。しかもこの停電だ・・・何がどうなってやがる?」

「それを聞きたいのはトマホークマンの方だ」

互いに険悪さを隠そうとせずに睨み合う両者。

そんな二人を割り込むように爆弾が飛来する。

「ええい・・・話は後だ!!」

「分かっている」

爆風から身を隠しながら両者がマジシャンウーマンを止めるべく飛び出した時であった。

遠くから無数の蹄の音が聞こえたのは。

「お前ら・・・?」

真っ先に声を上げたのはバンデットマン。

自身が率いる強盗団ワイルドバンチの面々が馬型メカに乗ってその場に駆け付けたのだが。

無言のまま、一斉に手にした銃をバンデットマンやトマホークマンへと向けるワイルドバンチの構成員。

 

ズドドドドドドドドッッッ!!

 

部下達が自身に銃弾を撃ち放って来た事に驚きを隠せないバンデットマン。

もしもトマホークマンが後ろに自身を引っ張らねば、今頃蜂の巣になっていただろう。

「てめえら何を・・・」

「・・・フー!!」

問いかける彼に構成員達から返答はない。

その代わりとばかり興奮した獣の様な息が吐かれる。

よくよく見れば彼らの全身より蒸気の様な物を噴き出しているのが見て取れる。

理由は分からぬが彼らが何らかの理由で暴走しているのは、間違いないと言えよう。

突然のワイルドバンチの乱入もあって、トマホークマンらはマジシャンウーマンと対峙するロックと分断されてしまう格好となってしまった。

「キャハハハ!!死ね死ね死ね~人間もロボットも皆吹き飛んじゃえ!!」

ロックとグレゴリオを相手取るマジシャンウーマンだが、己の攻撃で瓦礫の影に隠れた二人を見失ってしまう。

「どこ・・・どこに逃げちゃったの?もしかしてかくれんぼ?私が鬼なのかな~?」

苛立った様に唇を噛んだかと思えば、すぐにその顔に笑みを張り付ける彼女は大きく息を吐く。

次いで額を拭うのだが、それと同時に彼女の頭部から蒸気が溢れ出る。

「ハァハァ・・・邪魔な障害物はぁ・・・消し飛ばしちゃうよ~!!」

手にしたマジカルボムを所構わず投げ放つ彼女。

全く以って見当違いの場所に爆弾を投げる少女にロックは同じように隠れるグレゴリオと顔を見合わせる。

「どう見ても・・・」

「何らかの理由で暴走しているね」

ロックの言葉を受けグレゴリオは苦笑を浮かべる。

爆発物にしては少々派手な爆発が特徴的なマジカルボムであるが、その威力は周囲の建物が倒壊している事からもまともに受ければ一撃で致命傷になりかねない恐るべき武器だ。

その威力を前にロックらは慎重に動く他無く、結果として消極的な動きとなるのだが。

「遊ぼうよ~ロック。あの時みたいにさ~」

先程から若干上ずった声となったマジシャンウーマンが被っていた帽子を脱ぎながら、両手で額を拭うがそこより蒸気と共に汗が多量に溢れ出る。

人間のそれとは違うが、一部のロボットにも熱暴走を防ぐ為に汗や涙を流す機能が備わっている。

それ故に彼女が汗を出す事は珍しい事ではないのだが、問題はその量だ。

先程から溢れ出る液体の量は異常なまでに多く、人間であれば今頃脱水症状を引き起こしていただろう。

 

バシュウウッッ!!

 

不意にマジシャンウーマンの足元に巨大な光弾が着弾する。

「・・・キャッッ!!」

瓦礫を巻き上げた一撃に彼女は盛大に転倒する。

見れば見知ったロボットであるブルースがボロボロになった楯を手にバスターを構えていた。

「今だ・・・ロックマン!!」

ブルースの声に瓦礫から飛び出る様に駆け出すロックだが、それよりも前にマジシャンウーマンが起き上がる。

「キャハハハハ!!み~つけた!!」

自身を取り押さえんとしたロックの腕をマジックカードで切りつけながら、彼女の方は箒を手に宙に浮かび上がる。

「キャハ・・・遊ぼうよ。皆で遊んで・・・楽しんであの時みたいに」

 

ドガアアァァァァァァンッッ!!

 

焦点の合わない目を向けつつ放たれたマジカルボムがロックとブルースを吹き飛ばす。

「くっ・・・」

一瞬だが意識を失いかけながらもロックは何とか立ち上がる。

反射的に飛び退かねば今頃、バラバラになっていただろう。

ブルースの方も完全に壊れた楯を捨てるのが目に見える。

「どっかーん!!」

続けざまに彼女が爆弾を投げ放たんとする。

彼女の追撃から逃れんとロックが腰を落とした時だった。

 

「動かないで・・・!!」

 

とグレゴリオの声が響いた瞬間、ロックの眼前が大きく歪む。

 

ビュオオオオオォォォォォッッ!!

 

突如として発生した空間の歪みはマジシャンウーマンのマジカルボムを一瞬の内に消滅させてしまう。

「これ以上は好きにさせないよ」

ニヤリと笑みを浮かべながら手にした杖を振るうグレゴリオ。

自身の攻撃を無力化したグレゴリオに鋭い視線を向けるマジシャンウーマンだが、その上体が大きく前後に揺れる。

「あれ・・・ロックがもう一人居る?」

面差しが良く似ている事もあり二人を見間違えるマジシャンウーマン。

「まあ二人ともドッカーン・・・」

「吹き飛ぶのは君の方だ」

笑みを浮かべながら爆弾を手にする彼女にグレゴリオは冷酷に微笑んだものであった。

手にした杖から火炎弾を撃ち放つグレゴリオ。

火炎弾が向かって行くのは彼女ではなくその手に持つ爆弾であり、火薬と炎が合わされば何が起こるのか説明するまでも無いだろう。

 

ズドオオォォォォォンッッ!!

 

「・・・!?」

悲鳴すら爆音にかき消され箒ごと地面に叩きつけられる。

「キャハハハ・・・私が吹き飛んじゃった」

地面に叩きつけられた所で思わず呻いた彼女は、すぐさに立とうとするのだが既に全身の感覚が無い。

己が起き上がれない事を確認し慎重な足取りでロックが近づいてくるのが見える。

(熱っぽくて体が動かないや・・・もっと遊ばないといけないのに。折角ロックが来てくれたのに・・・もっと遊ばなきゃ)

朦朧とする意識の中で彼女は両手にありたっけの力を入れると強引に上体を起こす。

「・・・!?」

「ロック~遊ぼ!!」

驚くロックに満面の笑みを浮かべながら抱き着く彼女。

抱き着いた所で殆どの力を使い果たしたのか、彼を押し倒す形で倒れこんでしまう二人。

「ええ・・・ちょっと!?」

突然の行動に不意を衝かれたロックが、顔を真っ赤にするがそれ以上に彼女の方が顔は赤い。

「あれ・・・でもなんで遊ばなきゃいけないんだっけ?」

己が何をしていたのか今更の様に思い返す彼女だが、それよりも前にその意識は失われていた。

慌てて彼女を起こす様に起き上がるロックであったが。

「熱っ・・・やっぱりと言うか彼女のボディ、すごく熱いよ」

思わずその熱量に声を上げるロック。

例えるなら炎天下における乗用車のボンネットと言うべきか。

額で卵焼きが出来そうなぐらいに彼女の全身の温度は上昇していた。

「と・・・とりあえず一件落着なのかな?」

彼女を抱きかかえたまま首を傾げるロック。

暴走する彼女の攻撃が苛烈だった事もあるが、今回の戦いにおいてロックは殆ど避けに徹してしまっており、彼女自身が謎の熱暴走で自滅する形で戦いは終わる事になる。

 

パシャッッ!!

 

手にした端末でマジシャンウーマンを抱きかかえるロックの写真を撮るのはグレゴリオ。

『一体何を・・・』と聞く前に怪しげな笑みを浮かべる彼に嫌な予感だけがした。

「この写真・・・後でロールに送ろうかな?」

「ちょ・・・ちょっと!!」

弱味を握るべく写真を撮ったグレゴリオに慌てふためくロック。

「冗談だよ・・・冗談」

と笑みを浮かべて言う彼ではあるが、果たしてそれを信じていいのやら」

「・・・ロックマン」

気の緩んだ両者に静かに話しかけるのはブルースだ。

「原因は分からないが。どうやら世界中でロボット達が似たような暴走を引き起こしているそうだ」

ブルースの言葉にロックは気を引き締める。

「しかも暴走しているのは、以前からワイリー軍団が引き抜いていた政府に不満を持つロボット達ばかりだ。何か裏があると見て間違いないだろう」

「生憎だけど暴走そのものは博士の手引きじゃないけどね」

言葉を受けグレゴリオが肩を竦ませる。

「とにかく彼女を回収して、彼女の身に何があったのか確認してみるのが先決かな」

意識を失ったマジシャンウーマンを見つめながらロックが言う。

暴走にしては明らかに異常な様子であった彼女。

詳しい解析にかければその原因も分かるであろう。

「ふぃ~」

手にした銃を指先で回しながらバンデットマンは、マジシャンウーマン同様に熱暴走の末に動けなくなった部下達を見下ろす。

当初こそ組織的に自身らを攻撃してきた彼らであったが、徐々に動きの精彩を欠いていき挙句が今に至っている。

「全く何だってんだ・・・」

と言いつつ部下のボディを調べようとするバンデットマンだが、彼に対し武器を向けるのは自身を狙うために集まっていた荒くれ達である。

「てめえらとやりあってる暇は・・・」

溜息を吐きつつ銃に弾を込める彼の予想に反し、荒くれ達は大きく息を吐く。

それと同時に蒸気が吐き出されるのを見てバンデットマンは口にしていた葉巻を地面に落としてしまう。

「フ~・・・これでワイルドバンチは壊滅状態」

ぼそりと荒くれの一人が口を開く。

「であれば・・・あそこは手薄だ」

誰かの言葉を合図に一斉にその場を去ろうとする面々。

「お前ら・・・まさかっっ!!」

彼らの言葉に事態を察したバンデットマンが銃を向けようとするが、それはトマホークマンらによって遮られる。

「バンデットマン・・・理由はともあれお前を捕縛する」

「い・・・今はその暇はねえ!!」

振り返りつつその場から飛び退くバンデットマン。

当然その動きを見越していたのかトマホークマンもシルバートマホークを振るうが、それは彼の背を切り裂くに留まる。

 

ポンッッ!!

 

無造作に宙に放り投げられるのは一つのダイナマイト。

今の時代では旧式と言われる爆弾だが、まともに食らえばただでは済まない代物だ。

 

ドガアアアァァァァァアンッッ!!

 

宙で爆発したダイナマイトの爆風を隠れ蓑にバンデットマンは馬型メカに飛び乗るや、一目散に荒くれ達を追って走り出していく。

「待て・・・逃げるなっっ!!」

背に放たれるトマホークマンの言葉など聞いていない彼の姿は、見る間に小さくなっていく。

滅多とない宿敵を捕縛するチャンスであったが、周囲の破壊された街や気を失ったマジシャンウーマンらを抱えるロックの姿を見つめトマホークマンは己を落ち着かせる様に息を吐く。

「コルトン達はワイルドバンチを捕縛しろ。ここでの負傷者が居ないかどうかを確認しつつ、そこの少女の身柄を政府軍に引き渡す。バンデットマンを追うのはそれからだ」

トマホークマンの言葉にコルトン達も大きく頷きながら、それぞれの作業を開始するのであった。




何時もの後書きです。
さらっと読み飛ばして頂いて結構です。

〇マジシャンウーマンに関して
前作のプロトジョー編からの登場となったがリブート前だと中盤に差し掛かったあたりでロックと対決だったのが、色々と変わった結果オリ8ボスの一番手となった。
最初から暴走状態でロックとグレゴリオは殆ど避けと防御に徹した事もあって、実質彼女の自滅に近い形での決着となった。
笑い声はリブート前から変わらないのだが、書いてて鬼滅の刃の朱砂丸に似ていると思った。あっちは毬玉だが。

常時箒で空を飛んでおり、爆弾連打に近づけば師匠譲りのマジックカードと意外に隙が無いのも、ロックらが消極的に動かざる得ない理由となった。
あと作者個人がロックが女子に銃を向ける図が思いつかなかったのも理由と言えるかもしれない。

彼女が暴走したのは冒頭で端末越しにARプログラムを植え付けられたから。
何時もの暴走プログラム&例のロボット風邪の合わせ技なのだが、この時点でロック達には何が原因でロボット達が暴走しているのか分からない状態となっている。
現状、暴走しているのは次回の世界征服計画の為に以前から声を掛けていたロボット達となっている。

彼女の過去やら何故ロックの事を知っているのか等々は次回以降で。
少なくともリブート前に比べれば大破していないのでまだ救われている方である。

〇フィーネについて
主達に塩対応となっているのは彼女が本来果たすべきワイリー軍団内に入り込んで、彼らの状況を伝えると言う地味ながらもかなり重要な本来の役目を果たせなくなったため。
態度には出していないが主はこの件に関してかなり失望している。
リブート前だと正体を現すのがかなり遅かったのだが、今回では早期に身バレしてしまっておりその点では使えなくなってる。
彼女には悪いが黒幕の皆さんの中では一番の格下であり、主からするとラ・ムーンがよこした新しい従者の方が使えると評価されている。
ヴォイドに勝手な事はと言われたが、そういわれても勝手な事をするのが彼女である。
詳細は次回以降となるがこの辺は見かけ通りの考えの浅い子供と言えよう。

〇トマホークマンについて
ご存じロックマン6のボスの一人であるが、一連の事件の後は政府軍に所属しておりキング事件の際にはロック達とも共闘している。
コルトン達を率いてバンデットマンと戦っているのだが、ほとんど西部劇のノリである。
好戦的ではあるがそれでもフォルテとかに比べると状況の判断ができるぐらいには冷静な性格。
元々ロボット選手権に選出された扱いもあるが、ロックマン6のボスは全般的に戦闘能力は高い設定となっている。

〇バンデットマンについて
本人は端末にメールが届いたのだが、すぐには開かず適当な場末のバーで開くつもりだった事もあって暴走の難を逃れる事に。
周囲を破壊し始めたマジシャンウーマンを止めるべく戦いを挑んのだが、堂々と表に姿を現す事となり自身の首を狙う荒くれ達まで乱入する事態となってしまった。
冒頭でキングがマジシャンウーマンに吹き飛ばされたまま登場しなかったのは、この手の騒動を避ける為にその場をブルースに任せた為。
彼自身は早々に現場から立ち去っている。

部下達が暴走してしまったことで己の組織が自滅する事となったのだが、それ以上に彼にとっての危機が訪れるのだがその辺は次回となる。
因みに余談だが、バンデットマンの名前に関して何を勘違いしていたのか今までバンデッドと表記していた。
リブート版もそうなっており、結構長い間の勘違いであった様だ。
作者本人の色んな意味での部分が疑われそうで凹む次第である。



今回の後書きは以上です。
読んでくださってありがとうございます。
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