キシリア様の様子がおかしい   作:不二

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第1話:遭遇

 人類が宇宙へ上がり、既に半世紀が過ぎようとしていた。フロンティアと思われていた宇宙は人類を決して暖かくは迎えなかった。宇宙に上がった人々は自らをスペースノイドと呼び、厳しい環境の中、必死に生きた。

 

 彼らはいつしか、空気を、水を当たり前の物と享受し、自分たちを搾取してくる未だ地球に住む者、アースノイドへの憎悪を抱くようになった。

 彼らの声にならない恨み、辛みは確実にここ、サイド3で確実に成長していた。

 彼らはその怨みを受け止め、代弁してくれる者を求めた。

 

 その一人に選ばれた彼女、キシリア・ザビは彼らの負の感情を知ってか知らずか受け入れていった。

 彼女がいるのは新たに建設された工場の前である。そこでは国営工場の完成式典が行われていた。地球環境に悪影響を与える重工業は優先に宇宙に移転されていた。そこでサイド3では製造業に注力し、それを地球に輸出していた。

 

 「ついに今日、国営工場がまた一つ完成した!これらは我々に更なる飛躍を約束するだろう。我々は団結をしなければならない!それこそがスペースノイドの進むべき道なのだ」

 

 弱冠18歳ながらその堂々とした立ち姿にその場にいた人々は圧倒されていた。身振り手振りには彼女の自信の強さが表れており、彼女の声は聴衆を捕らえて離さなかった。

 

「我々は立ち止まってはならない。絶えず進み続けるのだ!」

 

 そうだそうだ、ジオン公国万歳、ザビ家万歳!聴衆は熱狂して天まで届けと叫んだ。その様子を見たキシリアは満足したように一度頷き、檀上から降りていった。彼女が姿を消してもまだまだ民衆の熱は冷めなかった。

 

「それで、この後の予定はどうなっているか」

 

 檀上から降りてきたのを迎えた秘書に今後の予定を尋ねる。秘書は持っていた電子パッドに素早く目を通す。

 

「はい、この後は経済界との勉強会が一つ予定されています。それと公王陛下から後で顔を出すようにとの伝言です」

 

「分かった。勉強会が終わった後に向かうと公王陛下には伝えておきなさい」

 

 先ほどまで熱く檄を飛ばしていたキシリアはもういなく、後ろでまだ叫んでいる民衆に目もくれなかった。

 それがキシリア・ザビという女性であり、このまま成長すればまさに女傑と呼ばれるに相応しい存在へとなるだろう。しかし、宇宙はそれまでと違う様相を見せた。

 

(くそ、気に入らねえ)

 

 一人の男が熱狂している民衆の間から離れていくところだった。着ている服などは所々ほつれが見え、生活が安定しているようには思えなかった。

 

(スペースノイドの団結を唱えながら、やっていることはザビ家の独裁じゃないか。ホントに気に入らねえ)

 

 自分の考えに沈んだ彼はいつしかぶつぶつと口に出していた。

 

「…そうだ。あいつらが悪いんだ。あいつらがスペースノイドを騙しているんだ」

 

彼は仕事探し半分、興味半分で式典を見に来ていた。式典も終わり、後は帰るだけだったが、彼はいつしか家のある方向ではなく、公用車へと歩みを進めていた。

 

「彼らの言う通りだ。あの女だけでもここで止めなくては」

 

気持ちの高ぶりと共に彼の歩く速度も上がっていた。

目指していた公用車はすぐそこまで来ていた。傍から見ても彼の異常さが分かったのだろう。

 

「そこの男、止まるんだ」

 

 ボディーガードが彼を制止しようとする。しかし、彼は止まらない。

 

「死ねぇ、ザビ家の犬が!」

 

 突然彼は上着のポケットに入っていた拳銃を取り出し、彼女に向かって発砲する。銃声が響き、周りにいた人は悲鳴を上げる。慌てて身を盾にしたボディーガードによって弾丸は阻まれてしまった。ボディーガードの胸が赤く染まり、倒れ伏したが彼女はまだ生きている。

「死ねや、こらぁ」

 続けて撃とうと狙いを定めようとしたが、背中から衝撃を受け、狙いが外れてしまった。気にせず、もう一度狙おうとしたら、今度は銃を握っている右手を誰かが掴んでいる。

 見ると少年が銃をもぎ取ろうとしていた。

 

「邪魔するな、クソガキ!」

 

 男は強引に振り払い、少年目掛けて撃った。うっ、といううめき声を上げて少年は倒れた。

 こんなことをしている場合ではない。あの女が逃げてしまう。慌てて前を見ると、まだショックから立ち直っていないのか、女、キシリア・ザビは茫然と立っていた。

 

「おとなしくここで死ね」

 

 男は止めを刺そうと彼女に銃を向ける。しかし、指に力が入らない。指どころか体が言うことを聞かない。見ると腹から血がにじみ出てきていた。頭だけ後ろに向けるとさっき撃った少年がナイフで腹を刺していた。

 

「くそ、なんなんだよ」

 

 息も絶え絶えになりながら、振り返ろうとするが、彼が最後に見たのはナイフをこちらの喉に突き立てようとしている少年の姿だった。

 

 キシリアは未だ状況を把握出来ていなかった。式典への参加を終え、移動しようと車へと向かっていたら、突然見知らぬ男が発砲してきた。一発目はボディーガードが守ってくれたが、もう彼はやられてしまった。逃げなくてはいけなかったが、恐怖で足がすくんでしまった。

 自分に銃を構える男の姿がゆっくりと見えた。だが、どこからか現れた少年が後ろから男にとびかかった。それを振り払い、男はもう一度私に銃を向けたが、突然腹からナイフが飛び出た。さらに鮮やかに少年は近づき、男の喉を貫いた。そうだ、少年!

 

「おい、大丈夫か!?」

 

 キシリアは少年の元へと走り寄った。本当ならば今すぐにここを立ち去るのが一番だと思うのだが、動転した彼女は自分を助けてくれた少年の身を案じた。

 男を刺殺した少年はもはや立っていることが出来ず、道路へと崩れ落ちていた。キシリアが近づいた頃には服の上からでも出血が見えた。

 

「おい、しっかりしろ!」

 

 聞きかじった知識から傷口を手で押さえると、流れ出た血の感触を感じた。傷口を触れられ、痛みを感じたのか、少年は閉じていた目を開け、キシリアを見た。

 

「…これで、お母さんに。会わせて、もらえますか…?」

 

 少年は血の気の失った顔で弱々しく尋ねてきた。

 

「それはどういうことだ?」

 

 言葉の意味が分からないキシリアはそう聞くが、もう少年は限界のようで反応が鈍くなってきている。

 付近ではサイレンの音が聞こえてきて、ボディーガードがやっと彼女らの所へ到着した。

 

「ご無事ですか!?お怪我はありませんか?」

 

ボディーガードがそう確認してくるがキシリアにとってはどうでもよかった。

 

「早く、この少年を病院へ!」

 

「はっ?ですが、ここはあなた様の避難を先に…」

 

「私のことは良いから、早くしろ!」

 

「っ!了解しました。おい、救急車を呼べ、あと応援も必要だ」

 

 それから救急車が来るまでキシリアは少年の傍を離れようとせず、病院へと運ばれる姿を見てようやく自らもその場を後にした。

 




初投稿です。よろしくお願いいたします。

自分の文章の不出来さに凹みながら書いています。誤字や文章の稚拙さが多分にあると思いますが、ご了承ください。

ストックとか考えずに出来上がったものから投稿していこうと思っています。なので次回は未定です。

小説を書きたいと思いながら何もしてこなかった自分に発破をかけるために始めたものなのでのんびり、ですが完結まで頑張りたいと思っています。

評価、感想などしていただけたら嬉しいです。
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