キシリア様の様子がおかしい   作:不二

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なんとか投稿出来ました。
いつかは投稿予約をしてみたいものです。

それでは本編をどうぞ。


第11話:緒戦

 時は少しさかのぼる。宣戦布告とタイミングを合わせるためにキシリア・ザビ少将率いる突撃機動軍は月を目指していた。

 

 月面都市グラナダ及びフォン・ブラウン。これらの都市、もっと言えば月は開戦前に策定された作戦要綱の中でジオン公国の重要拠点に指定されていた。

 ジオン公国が最も恐れたのは本国であるサイド3を直接強襲されることであった。それを防ぐために公国軍は資源採掘用の小惑星を利用した宇宙要塞ソロモン、ア・バオア・クーを建設し、これに月を加えた三つの拠点で防備を固めることを決定した。

 

 そして月の確保のために派遣されたのがキシリア旗下の突撃機動軍であった。

 チベ級重巡洋艦3隻、ムサイ級軽巡洋艦12隻、補助艦数隻から成る艦隊は一路月へと航海を続けていた。

 

『予定時刻となりました。モビルスーツパイロットは出撃準備を始めてください』

 

 母艦のオペレーターの声が聞こえ、ケレン・ジラーノフは長かった待機が終わったことを知った。

 左手でコンソールを操作し、ジェネレーターにアイドリング解除を指示する。必要最低限の明かりしかなかったコックピット内が明るくなり、前面のモニターに機体情報が表れる。出力は戦闘モードにまで上昇、安定し、自己診断プログラムが機体の状況を確認する。

 

 モニターに映った異常なしという表示を見て、ケレンは僚機に通信を入れる。

 

「こちらロメオ・ワン。各機、機体状況を教えてくれ」

 

『ロメオ・ツー。異常なーし』

 

『こちらロメオ・スリー。同じく異常無し』

 

 僚機からの返事を聞いて、俺はブリッジに報告する。

 

「こちらケレン少尉、モビルスーツ隊は出撃準備を完了しました。指示を請う」

 

『了解。作戦に変更なし。モビルスーツ隊は速やかに出撃し、以後大隊隊長機の指揮の元、予定通り作戦を遂行されたし。幸運を』

 

「了解。モビルスーツ隊出撃する」

 

 カタパルトに機体が接続されたことを確認し、緊張はいよいよ最高潮になった。

 訓練は死ぬほど積んできたが、これから行われるのは実戦だった。汗のにじむ手でレバーを握りこむ。

 

 カタパルトオフィサーの誘導灯が振り下ろされる。一瞬の間を置いて、機体が射出される。体に襲い掛かるGに耐えて母艦から出撃すると他の艦からも続々と味方のモビルスーツが射出されているのが分かった。

 

 「ロメオ・ワンから各機へ。大隊隊長機を中心に突撃隊形を組む。所定の位置へ移動せよ」

 

 了承の返事を聞いて、自分もバーニアを吹かし機体を移動させる。50数機のモビルスーツが一糸乱れず隊形を組んでいくのは壮観であった。

 

 これよりモビルスーツ大隊は艦隊を離れ、別行動に移る。作戦は目前に迫っていた。

 

 宇宙世紀0079年1月3日 07:20

 突如として地球圏全てにジオン公国からの通信が入った。

 

「地球連邦政府並びに地球に住む全ての者たちに告ぐ。私はジオン公国総帥、ギレン・ザビである。地球連邦政府は我々を宇宙へと追いやり、地上から宇宙を支配してきた。そして、一握りのエリートがその私利私欲を満たすだけのために我々スペースノイドは自由を奪われ続けてきたのである」

 

 画面に現れたギレン総帥の演説は地球圏に住む人々にとっては寝耳に水であった。

 

「だが、この屈辱の歴史も今ここで終わる。腐敗した連邦政府を砕き、スペースノイドの真の自立を勝ち取るため、我らジオン公国は地球連邦政府に対し宣戦を布告する!」

 

 後に「3秒の布告」と言われるジオン公国軍による奇襲を地球連邦政府並びに連邦軍は察知することが出来なかった。各サイドの駐留艦隊やパトロール艦隊はドズル中将率いる宇宙攻撃軍に各個撃破されることになった。

 

 そして月でも戦闘の火蓋が切られようとしていた。

 

 目的も告げずに月へと接近するキシリア艦隊を不審に思った地球連邦軍月駐留艦隊は臨検を決意、出撃した。自らの狙う影があるとも知らず。

 

「こちらアルファ・ワン。作戦予定時間となった。これより無線封鎖を解除。特別攻撃隊は攻撃を開始せよ」

 

 キシリア艦隊のモビルスーツ大隊隊長機から命令が下る。MS-06Cで構成されている隊が隊形を離れる。本機は核バズーカ、及び耐核処理を施した機体構造により他と比べると鈍重であったが、既存の兵器を凌駕する機動性を見せた。

 

 突然のギレン・ザビによる宣戦布告。出撃した連邦軍月駐留艦隊も事態の確認を行おうとしたが、通信が繋がらない。これは勿論公国軍がミノフスキー粒子を広範囲に散布したからであり、駐留艦隊は遠方に見えるキシリア艦隊を前にして何もすることが出来なかった。

 

 そこに襲い掛かるは特別攻撃隊。レーダーが効かないことにより索敵が難しい月駐留艦隊の下方から接近する。一度機体を制止させ、狙いを定め、核弾頭を発射する。

 

 艦隊が気づいた時には多数の艦が核の業火に包まれていた。核弾頭はその秘められた威力を遺憾なく発揮し、大損害を与えた。

 

「よし、核攻撃は成功だ。残りの部隊も突撃。食い破れ!」

 

 核バズーカを打ち切り、後方へと下がる特別攻撃隊と交代するように、待機していた部隊が一斉に突撃を開始する。

核弾頭を大量に用意することが難しく、またC型自体のコストの高騰もあり、公国軍がモビルスーツの主力をC型にするのを断念せざるを得なかった。よってC型から核兵器を運用するための装備を取り外したMS-06Fに通常兵器を持たせることを決定した。

余分な装備を取り除いたために機体自体の性能は上がり、通常兵器でも敵艦船に有効打を与えることが可能とされた。

 

しかし、そのようなことはケレンにとっては関係なかった。一刻も早く敵に近づいて攻撃しなくてはいけない。

 

 ペダルを最大限踏み込み、機体を加速させる。ザクはそれに応え、背中のスラスターが轟音を立てる。敵艦隊はまだ立ち直ることが出来ておらず、右往左往しているようだった。猟犬の如くザクが残った艦に襲い掛かる。

 

「ロメオ・ツー、スリー。遅れるなよ。三機で攻撃するんだ」

 

 目標は前方のサラミス級。直撃はしなかったようだが、核攻撃により装甲が所々融解しているのが見て取れた。

 サラミス級の斜め後方から侵入し、急制動をかける。体重の何倍ものGを体に力を込めて耐え、至近距離から右手に装備したザク・マシンガンを連射する。ドドドドッとマズルフラッシュが宇宙を照らす。それから再び加速し離脱する。ふと後ろを見ると僚機であるロメオ・ツー、スリーも攻撃に成功したらしく、サラミス級が火球になったところだった。

 

 今の攻撃で何人死んだのか、数十人、数百人?そのようなことが脳裏をかすめる。

 

(そんなこと考えている暇は無い。止まるな、動き続けろ!)

 

 一瞬でも気を取られたのが悪かったのだろう。コックピット内で鳴り響いた警告音。反射的にレバーを押し込んだおかげで放たれたミサイルは機体の横を通り過ぎていった。

 

「…邪魔をするな!」

 

 見ると艦隊の護衛なのだろう、セイバーフィッシュ2機が自分に狙いを定めていた。ミサイルが外れたことを気にすることもなく、セイバーフィッシュはこちらに突っ込んでくる。発射された25mm機関砲の弾をAMBACを利用して強引に避け、ザクを通り抜けるセイバーフィッシュの後方につける。

 

 照準を定め、ザク・マシンガンを斉射。程なくして2機は爆散する。

 

『大丈夫か、ロメオ・ワン?』

 

「ロメオ・ツー、大丈夫だ。機体に問題は…ちっ」

 

 一息つく暇を無くこちらに攻撃が加わる。残存していたマゼラン級、サラミス級が息を吹き返していた。各所に装備されたメガ粒子砲、機銃を辺り一面にまき散らしていた。

 

「次もサラミス級から仕留める。俺が前衛、ツーとスリーはバックアップだ。いくぞ!」

 

 もう一度敵への接近を試みる。今度は相手も対空砲火によって近づかせないようにしてくる。訓練でも経験しなかった濃密な対空砲火の中、一挙手一投足、死と隣り合わせの舞踏を踊る。

 

(大人しく沈んでくれればいいものを)

 

 ミノフスキー粒子のおかげで敵のレーダー射撃は無効化されたはず。だが有能なクルーでもいたのだろう、手動での射撃を行っているようだ。勿論正確さは格段下がっているが、砲塔の多さから生じる弾幕は油断できない。

 

 AMBACを利用し、時には各所のスラスターを利用することで機体を右に、左にと振って狙いをかわす。

 

「くぅっ」

 

 気づいた時には光の筋がザクの右腕を通り抜けていった。警告音。機体情報を示すサブモニターに目を向ければ、ザクの3Dモデル、その右腕が赤く光っていた。

 運悪くサラミス級のメガ粒子砲が直撃したようだ。装備されていたシールドも関係なく、右腕は蒸発してしまった。さらに機銃弾が機体を激しく揺らし、今度はザクの左膝から下が吹っ飛んだ。

 

「…まだまだ!このまま突っ込む!」

 

 今から退避しても遅い。それなら目前の脅威を排除したほうがいい。ケレンは温存していた各部スラスターを開放し、残された四肢を使いAMBACで暴れる機体をなんとか操作する。

 

 残った左手で腰側面のハードポイントに装備されたヒート・ホークを掴む。サラミス級の艦橋をすれ違いざまに切り裂く。ロメオ・ツーはマシンガンでミサイルランチャーを蜂の巣にし、ロメオ・スリーが放ったザク・バズーカの砲弾がメガ粒子砲塔を誘爆させ、それが止めとなった。

 

『ロメオ・ワン。その損傷では戦闘は無理だわ』

 

「誘爆の心配は無い、大丈夫だ。バズーカもあるしな」

 

 心配してくれたロメオ・スリーに返事をしながら、腰にある予備のザク・バズーカを装備する。射撃武器はもうこれしかないから大切にしなければ。

 

「それなら行くかい?まだ敵さんは残っているみたいだ」

 

 ロメオ・ツーの言うとおり、戦場は掃討戦の様相を見せ始めたが、敵はまだ抵抗している。モビルスーツ隊の仕事は残っている。

 

 所変わってキシリア艦隊旗艦、チベ級重巡洋艦パープルウィドウ。

 ブリッジでキシリアは戦闘の様子を見ていた。その力に期待してモビルスーツを増強してきた。しかし、これほどとは思っていなかった。モビルスーツだけで敵の駐留艦隊を壊滅させた。

 

「キシリア閣下。モビルスーツ大隊は敵艦隊の掃討戦に移行するとのこと。我々も前進してよろしいでしょうか?」

 

 パープルウィドウの艦長が告げる。一つ上の兄であるドズル兄さんなら自分で艦を指揮することも出来るだろうが、キシリアは分をわきまえていた。

 

「任せる。艦長の思う通りに行動しなさい」

 

「ありがとうございます。それでは艦隊を激励していただければと思います」

 

「うむ」

 

 艦長から差し出されたマイクを受け取り、キシリアは艦隊に呼びかける。

 

「キシリア・ザビである。緒戦、見事だ。これより艦隊はモビルスーツと協働して敵艦隊の撃滅、しかる後にグラナダを占領する。我らの拠点となるのだから民間施設はもちろん、軍事施設も可能な限り攻撃するな。しかし、抵抗する場合はこれを全て撃破せよ。我らの勝利は確実である!」

 

 戦争は始まったばかりであった。

 




私の世界では一週間戦争のザクはこのような形になりました。核弾頭一発でどれくらいのコストがかかるのでしょうか?決して安くはないと思います。
C型の設定を活かすため、そしてザク・マシンガンやザク・バズーカを持って突撃するザクを描くため、C型とF型は併用された、ということで一つよろしくお願いします。

覚悟はしていましたが、戦闘シーンで自分の文章に呆れています。二週目の時までには上達しているといいのですが。

それでは次の話までしばらくお待ちください。
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