…一話の適量が分かりません。
時は宇宙世紀0068年となっていた。近年はスペースノイド、特にサイド3にとっては激動の時代であった。
0058年にはジオン・ズム・ダイクンが独立宣言をし、ジオン共和国が誕生していた。その後もジオン共和国は地球連邦政府から度重なる圧力を受けながらも発展を続けていた。
しかし、今年ジオン共和国を揺るがす大事件が起こる。
首相、ジオン・ズム・ダイクン急死。その急すぎる死には陰謀説も囁かれたが、ジオン共和国が政治的、思想的指導者を失ったことは確かだった。議会はジオン亡き後の権力闘争の場へと成り下がった。
ジオン・ズム・ダイクンは死に際に次期首相としてデギン・ソド・ザビを指名するが、これを不服とするダイクン派はこれを認めようとせず内乱の気配さえ見せていた。
先日のキシリア暗殺未遂事件もその一環といえる。スペースノイドの希望であったはずのジオン共和国は崩壊の危機にあった。
事件から二日後、標的となったキシリアは自室で優雅に紅茶を飲んでいた。命を狙われたというのに堂々とした姿である。しかし、よく見るとどこか気をもんでいた。
そこに入室を求めるノックの音がした。キシリアは逸る気を抑えて、入室を許可する。入ってきた秘書は一礼し、上がってきた情報を主に伝える。
「失礼します。昨日の少年が目を覚ましたという報告が…」
「本当か!」
その報を聞いた途端、キシリアは勢い余って立ち上がった。普段は年齢に見合わない落ち着きを見せる彼女の珍しい姿に秘書は驚く。だが、そんな秘書に構うことなくキシリアはもう出かける用意を済ませていた。
「車を回してくれ、すぐに行くぞ」
「あっ、それと至急キシリア様のお目にかかりたいと申している者が…」
「その者には後で時間を割く」
問答している暇もないとばかりに部屋を出て行くキシリア。慌てて秘書もその後ろ姿を追いかけた。
キシリア・ザビ暗殺未遂事件はジオン共和国首脳部、特にザビ家に衝撃を与えた。ついに内戦かと一部(ザビ家三男であるドズル・ザビはその筆頭であった)は熱り立った。その後の捜査では犯行は場当たり的であり、組織的な犯行ではないと結論付けられた。しかし、凶器である拳銃は未登録のものであったため銃の入手ルートを始めとした謎は残ったままであった。
そこで犯人を刺殺した少年は重要参考人として、国立病院に運ばれた。少年も身分を示す物を何一つ持っていなかったため、厳重な監視下で治療が行われた。
キシリアが病室の前に到着した時もザビ家から派遣された男が二人、ドアの前で待機していた。証人を消されることを防ぐためにデギンが用意した者たちだ。
男たちは油断なく辺りに目を光らせていたが、キシリアは怯む事無くドアの前まで進む。
男たちは突然現れたキシリアに少し驚くが、一礼する。キシリアを目礼は返すが、そのまま病室のドアノブに手を掛ける。
それに慌てた男たちは制止しようと手をドアの前に差し込む。
「キシリア様、それはご勘弁ください」
「何故だ。面会謝絶の札が掛かっているわけでもないし、意識も戻ったのだろう?」
「札については我々がその代わりでありますし、そもそも中にいる男が何者なのかもまだ…」
「ええぃ、くどい!それを私が確かめてやろうというのだ。通してもらうぞ!」
それでも制止してくる男たちを押しのけ、ドアを開ける。キシリアは秘書に誰も入れるなと言い、病室の中に入る。
病室は個室となっており、ベッドが一つ置かれていた。そしてあの少年は体を起こして窓から外を見ていた。
あまりにも衝撃的な出会いをしたのでキシリアは何て声をかけていいか分からず、ドアから少し進んだ所でじっと少年を眺めていた。
すると人の気配に気づいたのか、少年がこちらに目を向ける。立っているのがキシリアだと分かると少年はすぐに顔を輝かせた。
「あの時のお嬢様だ!約束はいつ叶いますか?ここは何処なんでしょう。いつもの男の人は来ないのですか?」
矢継ぎ早に話してくる少年にキシリアは一瞬たじろぐ。
「そんなに一遍に言われたら分からないぞ。こちらは君が何者なのかも分からないというのに」
そう返事を返されると、少年はきょとんとした顔をするが、すぐに改まって自己紹介をする。
「僕の名前はケレン・ジラーノフです!」
あまりに短すぎる自己紹介にキシリアは頭を抱えたくなる。
「…名前を教えてくれてどうもありがとう。身の上やなんであの場にいたのかも教えてくれるとありがたいのだがな」
「えっと、歳は11歳で家族はお母さんだけです。最近はあなたを守るために張り込んでいました。あの場にいたのもそれが理由です」
そこまで話すと少年はシュンとなった。
「ごめんなさい。発砲を許してしまいました。撃たれる前に殺さないといけなかったのに」
11歳だというのに男が犯行を犯す前に殺せなかったのを悔やむその姿にキシリアは薄ら寒さを感じた。子供によくある明るさをケレンからは感じられるが、どこか狂気さえ内包しているように見える。
「…もしかしてそれでいつもの人じゃなくてあなたが来たのですか?ごめんなさい、今度は上手くやります!だから一度で良いからお母さんに会わせてください。体調が心配なんです」
今度は焦ったようにベッドの上のケレンはキシリアににじり寄る。
「だから待てと言うのだ。私は君の母上のことなど知らないし、その男というのも覚えがない。それに君は私が誰なのか分かっているのか?」
「それは、ごめんなさい。あなたが誰なのかは分かりません。言われたのはあなたに危害を加える者は全て排除しろということだけです」
キシリアはさらにこのケレンのことが分からなくなった。自分で言うのもなんだがキシリア・ザビという名前は知れ渡っていると思っている。その自分のことを知らないのに、その安全を守るために我が身を危険に晒すケレンのアンバランスさが際立って見えた。
「私はキシリア・ザビという者だ。まだ感謝の言葉を言ってなかったな。感謝する、君は命の恩人だ」
そう言ってキシリアは頭を下げる。まだ正体が良く分かっていないのだが、自分の命を救ってくれたと思うと自然と頭を下げる気になった。
「頭を上げてください。こっちもお母さんのためにしたことですから。でもお母さんのことを知らないなら、僕は誰に言えばお母さんに会わせてくれるのでしょうか?」
「先ほども言ったが私は君の母上を知らない。だが命の恩人の願いは叶えてやりたい。出来るだけのことはしよう。母上はどこか悪いのか?」
「はい、体が弱いのでベッドにいることが多いです。お互いが唯一の肉親なので、顔を見せないと心配すると思うんです」
そう言うケレンは母を心配するどこにでもいる子供に見えた。
「ではこちらでも調べるとしよう。君に命令した男というのも気になる。とりあえずは体を休めたまえ」
最初はキシリアの言葉の意味が分からなかったケレンだったが、意識を体に向けると疲労が自分の身体に襲い掛かってきたのが分かった。犯人の銃弾はケレンの腹部を貫通しており、決して傷は小さくなかった。キシリアも話していて気づいたが、ケレンはまだ回復しきっていなかった。
ゼンマイが切れたようにケレンはベッドに倒れこんだ。
「そうします。でもお母さんに会えるようになったら何時でも起こしてくださいね」
そう言ってケレンは目を閉じた。するとすぐに規則正しく寝息が聞こえた。
それを確認したキシリアは病室を出た。やるべきことができたので休んでいる暇は無い。そう思っていたが、病室を出たキシリアを待っていたのは見知らぬ男性だった。
最初にキシリアに声を掛けたのは病室の外で待機していた秘書だった。
「キシリア様。彼はついさっき来られて、ぜひキシリア様にお話したいことがあると…」
それを聞いたキシリアは失礼にならないように断りの言葉を言おうとした。
「申し訳ないが、私はこの後も予定があるのだ。必ず時間を作るので今日のところは…」
しかし、男はそれを遮る
「そこをどうかお願いします。中にいる彼について至急お耳に入れたいことがあるのです」
予想外の言葉に目をすこし大きくするキシリアだったが、それでも動揺を消してその男に向き合う。
「いいでしょう。ここでは何ですから私の邸宅に移動しましょう」
そう言ってキシリアは男を伴って病院の正面玄関に向かう。彼の真意を探らなくてはと決意を新たにしながら。
というわけで第2話です。失踪は回避しました。早く投稿しなくては!、と思い投稿したので相変わらずストックは0です( ̄▽ ̄;)
ガンダムという作品の凄さを実感しております。こんな駄文の小説もどきをお気に入り登録してくださったり、さらには感想を送ってくださったりしていただきました。どう対応すればいいのか分からなかったのでこの場を借りてお礼申し上げます。
キシリア様は宇宙世紀0068年で18歳ということになりましたので開戦時は29歳ということになりました。独自設定タグが効果を発揮してきましたね。今回のキシリア様は紫〇バァではなく、美しい大人な女性になる予定なのでお楽しみに!(誰得)(少なくとも俺得)
それでは第三話までもうしばらくお待ちください