第3話にもなってMSどころかジオン公国も現れないガンダム二次創作があるらしいんですよ、「キシリア様の様子がおかしい」っていうんですけどね
…それでは本編をどうぞ
「それで、私に話したい事とは?」
自宅に戻ったキシリアは応接室に男を案内した。男に席を勧めた後に自分も席に座る。目の前に座る男にキシリアは面識が無かった。だが、ケレンの事を知っていると言うからには話を聞かなくてはならない。
「まずは話を聞いていただきありがとうございます。最初に知っていただきたいのはキシリア様に忠誠を誓う者は私含めて多くいるということです」
話がいきなりあらぬ方向に進んだのを聞いてキシリアは少なからず困惑した。
「それはいったいどういうことか?」
「キシリア様は近年精力的に活動なさっています。それは自らの派閥を作るためだと我々は推察しました」
その言葉を聞いてキシリアは合点がいった。この男-彼の言葉を信じるなら彼らだが-は自分に取り入ろうとしているのだ。確かに自分は父が回してくる公務以外も積極的に行ってきた。まずは顔を広く売るのが目的だったが、それが向こうから接触してきたのだ。
「我々は経済界に政界、報道と多くにパイプを持っています。我々は多くの面でキシリア様を支援する用意があります」
目の前の男は淡々と話を進める。セールスマンもかくやと思わせる話し振りだった。
「では、何故私なのだ?私はまだ18歳、諸君らからすれば小娘だろう。ザビ家の実権も未だ父上が握っており、諸君らが望む見返りを私が提供出来るとは思わないが?」
「我々はこの先、サイド3、強いてはスペースノイドを束ねるのはザビ家と考えています。キシリア様もご存知でしょう?対抗馬とされるダイクン派は内部分裂を起こし、武力闘争にまで発展する兆しを見せています」
知っているも何もキシリアはその事を身をもって経験した。自分の命が狙われた事件は記憶に新しい。
「…ここだけの話ですが、不遜にもキシリア様を狙ったあの事件、背後にダイクン派がいるようなのです」
この言葉にはキシリアも目を鋭くした。18歳ながらその身体から発せられる迫力に圧倒されながら、男は続ける。
「対してザビ家は盤石な構えを見せ、国内の混乱を抑え込もうとしています。これではどちらが優れているかなど、一目瞭然です」
「しかし、それだけでは父上ではなく私に従う意味が無いではないか」
キシリアの詰問にも怯まず男は出された紅茶で一度唇を湿らす。
「ですが、そのデギン様にも後継者は必要です。既に長男であるギレン様は動き出されているご様子。それでキシリア様も独自に動かれたのでしょう?」
これにはキシリアも黙ってしまった。
「この度直接お会いして私は確信いたしました。キシリア様は指導者たる器であります。他の兄弟たちにも決して劣りません」
「そして今から兄上たちに取り入っても、もう席は埋まっているというわけか。担ぐ神輿は軽いほうが良いということだな」
キシリアの言葉には何も言わず、男は紅茶をすする。
「まあ、良い。私を支援してくれるというなら文句は言うまい。それならばケレンについてはどう説明する?彼はいったい何者なのだ?」
「あれこそ我々が用意したキシリア様への忠誠の証です」
ここでキシリアは違和感を覚えた。あれ、あれと言ったのか、この男は。
「あれには小さい時から特別な処置と訓練を施し、完成した戦力です。近頃ダイクン派の動きが怪しいので、キシリア様にお見せする前に実戦投入をいたしました」
男は席に座ったまま慇懃に頭を下げた。
「発砲を許してしまったこと、あれに代わって謝罪いたします。ですが、キシリア様を守る力は十分示せたと思っています」
「彼は私の護衛と言うことか。随分若いようだな」
「ですが、性能は折り紙つきです。あれよりも前にキシリア様の敵を既に2、3人排除しております。数の少なさを心配していらっしゃるなら追加で発注いたしましょうか?」
ここまできてキシリアは確信した。彼らはケレンを人間としてではなくモノとして扱っているのだ、と。
「そういえばケレンは病弱な母親がいると言っていたな。彼女も諸君らが保護しているのか」
「保護と言いますか、身柄は我々が確保しています。あれを管理するうえで彼女の存在は必須です。マインドコントロールのキーが彼女なのです」
男は目を怪しく光らせながらキシリアを見つめる。なにか値踏みするような目つきだった。
「キシリア様は随分とあれにご執心のご様子ですな」
「…あれほど衝撃的な出会いをすれば不思議ではあるまい。彼をどこから見つけてきたのか?」
「ご存知のように宇宙移民が始まってから半世紀が過ぎました。様々な人が宇宙へ上がりました。その中には着の身着のままで上がったモノも多くいました。その中から素体を選ぶのは至極簡単でしたよ」
男は腕を広げ、大衆に語りかけるように語りかける。
「我々持てるものはその富を同胞たるスペースノイドのために使ってきました。ならば持たざる彼らにはせめてその肉体だけでも捧げてもらわなくては」
キシリアは自らの顔に仮面を張り付ける。
「なるほど、道理だな。ところでケレンに褒美として母親に会わせてやると約束したのだ。居場所を教えてくれるな?」
「褒美、ですか。そのようなことなどせずともあれはキシリア様に従いましょう。ですが、キシリア様のご要望とあればすぐにお教えしましょう。…それで我々の援助、受けていただけますか?」
「もちろんだ。このキシリア、援助には必ず報いると誓おう」
そう言ってキシリアは立ち上がり、男に手を差し伸べる。男はそれに応え、握手をする。
それから数日後、キシリアはケレンを連れてある住居を訪れていた。
「ここにお母さんがいるのですね!?」
「ああ、もうすぐ会えるのだ。だから少しは落ち着いたらどうだ」
キシリアは苦笑して、子犬のようにはしゃぎまわるケレンをなだめる。
あの男からケレンの母親の居場所を聞き出したキシリアは退院したケレンを連れて、彼女を訪ねていた。
「お待ちしておりました、キシリア様」
出迎えの者がお辞儀をして、キシリア達を迎える。キシリアは軽く頷き、母親のいる部屋へと案内させる。
「ここが、目的の部屋でございます」
「うむ。少し話す故、ここまでで良い」
キシリアの言葉に頷いた案内の者はお辞儀をして、部屋から離れる。
キシリアが中に入ると既視感を覚える光景が残っていた。部屋の中にはベッドで身体を起こしている幸薄そうな女性がいた。
「お母さん!」
ケレンは我慢できず、母に向かって飛び込んだ。母は突然向かってきた息子に驚いたが、優しく抱き留めた。
「あら、ケレン。久しぶりね、よく来ることが出来たわね」
「うん。この人が連れてきてくれたんだ」
ケレンの言葉を聞いて、母は遅れて部屋に入ってきたキシリアへと目線を向けた。ベッドの上で母は姿勢を整え、キシリアへと挨拶をした。
「ベッドの上から申し訳ありません。私はマリヤ・ジラーノフと言います。お目にかかったことは無いと思うのですが、この度は何の御用でしょうか?」
「挨拶痛み入る。ここに来た一番の理由は母親に会いたいというご子息との約束を果たすためだ。私の命を助けてくれた者の願いは叶えてやらなくてはな。それにあなたと話してみたいというのも事実だ」
ここにきてキシリアは少し戸惑いを感じた。息子が人殺しをしている事を彼女は知っているのか、知らないならばそれをこの場で伝えて良いものか、と。
逡巡している様子のキシリアに合点がいったのか、マリヤは息子に語りかける。
「ケレン、お母さんはキシリア様とお話があるから、少し外で遊んでいなさい」
「えー。お母さんと久しぶりに会えたんだから、もっとお話ししたいよ」
「キシリア様とのお話が終われば話せますよ。それぐらいの時間はありますでしょう?」
「ああ、少し話すだけだ。その後は思う存分、水入らずで話すと良い」
キシリアは頷き、マリヤの言葉に同意する。それを聞いたケレンは少し不満げではあったがすぐに部屋を出て行く。
「申し訳ありません。私が病弱だったばかりにあの子にあまり構ってやれなかったのです。だから少し甘えん坊に育ったみたいで」
「親子の仲が良いのは素晴らしいと思うぞ」
マリヤはキシリアにお礼を言い、本題を尋ねる。
「それで私と話したい事、というより聞きたい事というのはケレンについてでしょう?」
いきなり核心をついてきたマリヤに踏ん切りがついたキシリア。
「私が気になっているのはケレンの生い立ちだ。ケレンは銃を持った男から私を救ってもらったのだが、その手段というのがナイフで男を、その、一突き、さらには裂いたのだ」
キシリアには珍しく、歯切れの悪い喋りとなった。
「あの年頃の少年では、まず不可能なことだ。あなたが教育なされたのか?」
マリヤは顔を曇らせて、キシリアを見つめる。
「私が気づいた時にはもう遅かったのです。私の夫、ケレンにとっての父はケレンが小さい頃に亡くなりました。生活に困っていた時にここに拾われたのです。息子の面倒も見てもらえるというのは、今から見れば怪しいのですが、当時の私はそれさえ考えられませんでした」
ここでマリヤは両手で顔を抑える。何かに耐えるようにマリヤは震えていた。
「ここで暮らすようになってからケレンとは離れ離れになり、ケレンは訓練に駆り出されるようになりました。最初は身体づくりからだったのですが、段々エスカレートしていき、投薬などもされているようなのです」
ここに来てからキシリアは衝撃を受けっぱなしだった。スペースノイドが同じスペースノイドを駒として使っている。それも少年に投薬までして!
「あなたがケレンの新しい主人になるのですか?」
「主人⁈」
「ここの者がそう言っていたのを聞きました。ならば私から一つだけお願いがあります」
キシリアを見つめるマリヤは先ほどまでの虚弱さが消えており、強い母の顔になっていた。
「私はこの先長くはないでしょう。そうなると心配なのはあの子のことです。私が死ぬとなるとあの子の依存の対象はキシリア様になるでしょう。その時あの子の事をお願いします。人並みの幸せをあの子に与えてあげてください」
マリヤからお願いされた事は18歳のキシリアに重く伸し掛かった。しかし、これは自らが原因でもあった。歪んだ国家体制、その中で権力を握った一族の長女であり、好むと好まざるとにかかわらず、すり寄る者は多くいる。それが今回表面化しただけだ。
キシリアは居ずまいを正し、マリヤに向き合う。
「今すぐ、というわけにはいかないが必ず私がケレンを幸せにしよう!」
その返事を聞いたマリヤは嬉しそうに笑った。
「気づいてらっしゃいますか?今の言葉だとキシリア様がケレンを貰ってくれることになりますよ」
その瞬間、キシリアは顔を真っ赤にして慌てた。
「いや、今のはケレンが現状の状態なのは私の責任でもあるから、私が責任を持ってケレンを支えてやるというだけで、別にそれ以外の意味があるわけではないからな」
聞いてもいないのに弁解を始めるキシリア。それを見るマリヤの顔は優しかった。
すると部屋の外まで声が聞こえてきたのか、ケレンが中に入ってきた。
「どうしたの?何か良いことでもあったの?」
ケレンがベッドにまで近づき、母に尋ねる。
「ええ、とても良いことを聞かせていただいたの」
朗らかな顔のマリヤとは対照的に、キシリアは苦虫を嚙み潰したような顔をしていた。
「ケレン、今度からはこのキシリア様を姉のように慕い、何でも言うことを聞くのよ」
「お母さんがそう言うなら従うけど、何でそんなこと言うの?」
「キシリア様は優しいから、あなたに良くしてくれるわ。頼れる人はいくらいても足りることはないのよ」
ケレンは何か考えるように俯くが、次の瞬間にはマリヤに抱き着く。
「分かった。キシリア様の言うことをちゃんと聞くからお母さんも長生きしてね」
母の考えていることなどお見通しである、とさえ聞こえるその言葉にマリヤは涙ぐみ、強く抱きしめる。
「ええ、約束するわ」
そんな二人をキシリアが少し離れたところから静かに見守っていた。
というわけで第3話をお届けすることが出来ました。やっぱり週一とはいきませんでした。
ケレンは強化人間の走りのような存在です。後のサイコミュを重視したものではなく、身体能力向上を目的にしたものです。
会話の場面と心理描写は書いていて難しいですね。二週目書くときにはもう少し手を加えていきたいと思っています。
キシリア様といったら、ジョニー・ライデンとマ・クベだと思うのですが、キシリア様との出会いはどんな感じだったんですかね?ジョニー・ライデンは謎の多いキャラなので仕方がないのですが、マ・クベも中々謎ですよね。
そこら辺詳しい方がいらっしゃったら、教えていただけると嬉しいです。そのままの設定にするかは分かりませんが、参考にはします。
それでは次の話でお会いしましょう。