独り身で寒い夜を過ごしている男が故郷で飼ってた犬を思い出してペットを飼おうとするけど、何かの間違いで獣耳幼女奴隷を飼うことになったお話 作:語部創太
「足元、ご注意ください」
燭台を手に持って注意を促してくる小太りの男性に導かれて、薄暗い中で階段を下る。
……おかしい。どうしてこうなった。
この町に5年も住んでいる身で恥ずかしながら、俺は町のどこにペットショップがあるのか分からなかった。
そりゃこの町で行くところと言えばクエストを受注するための冒険者ギルド、武具屋、あとは日用品を買い揃えるために市場へ行くくらいだ。宝石やペットといった一部富裕層に馴染みのある品々を取り扱ってる場所なんか縁がなかったし、知ろうとも思わなかった。
とりあえず町を散策してみることにしよう。思えば明日の日銭を稼ぐことに必死で、自分が住んでいる町をろくに知らなかった。
ということで、町に出てプラプラと歩き回ることしばらく。
もうすぐ昼時だという時、見ず知らずの人から声をかけられた。
「おや珍しい。この場所にいらっしゃるということは、何かお求めですかな?」
誰だこの小太り。
指輪や首飾りといった装飾品を身に纏い、高級そうな布地を使い金糸の刺繍が施された服を着ている。見るからに裕福そうな身なりをした小太りの男性に話しかけられるような覚えはない。
「以前、商隊の護衛を依頼させていただいた者ですよ」
……………………どの護衛依頼だ?
不審そうな顔をしていたからか教えてくれたのだが、如何せん色々な依頼を受けてきたこともあって、まったく思い出せない。
「……すいません。物覚えが悪いもので」
「ああ、別に構いませんよ! 日々お忙しいでしょうしね」
俺の失礼を笑って許してくれる小太り。さすがに小太りは失礼か。裕福さんと呼ぼう。
それで何だったっけ。そうだ「何かお求めですか?」と訊かれたんだっけ。
「ペットを飼おうかと思っていまして」
「ほう! ペットですか!」
何だろう。急に声のトーンが上がった。
そういえばこの人は商隊の護衛依頼を出したって言ってたな。つまり裕福さんは商人、それも身なりから見るに相当儲かってるっぽいし、ペットショップの場所も知ってるのかな?
「実は私、そういった商品を取り扱っておりましてね?」
「そうなんですか!」
ビンゴ! これは良い出会いに恵まれた。ペットショップを経営している人だったとは。これは是非とも案内してもらわなくては。
「ちなみに、ペットはどのような種類・用途をお考えですかな?」
「そうですね……」
漠然とペットが欲しいという思いで外出したけど、具体的にどういうペットが欲しいかは考えていなかったな。
まず、種類は『犬』だ。ここは譲れない。最近は猫が人気らしいけど、俺は昔から犬派なんだ。
次に、用途。これはつまり愛玩犬か、狩りや戦闘に連れていく猟犬かってことだろう。普通のペットショップなら愛玩犬しか取り扱っていないんだろうけど、猟犬に躾けられる犬種も取り揃えているのはさすが裕福さんだ。
……そうだな。一緒に戦うことができるシルヴァのような相棒にできる犬、それもいいと思う。けど、やっぱり俺にとってシルヴァは唯一無二の相棒的存在で、新しい相棒を飼ってもシルヴァと同等以上の実力・連携を求めてしまう気がする。
加えて、ペット持ちの冒険者っていうのはソロを貫くなら強力だけどパーティーを組む上では逆効果になりやすい。
戦闘も出来るペットの市場価値は高いらしくて、隙あらば奪って売り払おうって輩が近付いてくる。シルヴァも何度か盗賊に攫われそうになったことがある。また、動物嫌いの冒険者からは当然のように敬遠される。戦闘でも、組んで日が浅いパーティーだと射手(アーチャー)や魔法使いからの誤射が怖かったり、連係ミスが起こりやすい。
ソロを貫けるくらい収入が安定しているわけじゃないし、近いうちにどこかしらのパーティーに加入させてもらう必要はある。猟犬用の品種とはいえ、訓練や調教には時間がかかるだろうし飼うには難しいだろう。
何より俺がペットを飼いたいと思ったのは、帰ってきた時に1人で寂しかったからだ。恋人や結婚相手がいれば話は別だけど、あいにくそんな出会いは一切ない。だからペットを飼おうと思ったんだ。
愛玩犬にしよう。添い寝してくれるといいな。宿屋のベッドはシングルでそんなに大きくないし、出来れば小さい犬種の方が嬉しい。
そういった要望を伝えると、裕福さんは何やら「フムフム」と腕組みして少し考えると、こう言った。
「ちょうど私どもが営んでいる店舗で気に入りそうな『モノ』がいくつかおります。良ければご案内いたしましょうか?」
「ぜひ! よろしくお願いします!」
そうやって喜んで案内された先が、奴隷商店でしたと。
…………いやいやいやいや。
ペットってそういうことだったの!? いやそんな趣味ないんですけど!? ヒト1人養えるような余裕ないんだけど!
「いやしかし、意外でしたよ。貴方にこんな趣味があったなんて」
ねえよ。そんな趣味ねえよ。お前だけだよ裕福さん。
やっぱり裕福さんはやめよう。やっぱ小太りだコイツ。こんな下衆、小太りで十分だ。
いや、貴族や富裕層の間で奴隷売買が当たり前になってるのは知ってるよ? でも俺はそんな裕福の生まれじゃないし、故郷の村では冬が越せないからって家族の末っ子が奴隷商に売られていく光景も少なくなかった。
だからまさか自分が奴隷を買う側になるなんて想像もしてなかったし、というか買う気ないし。
だからといって「やっぱり帰ります」って言うのはなぁ……。
せっかく善意で案内してくれてるんだし、無下に断るのも心苦しいし。
……よし。ザッと見て回って「気に入った子がいなかったので帰ります」って言って帰ることにしよう。
そうと決まれば話は早い。さっさと見て、さっさと外に出て、今度はちゃんとしたペットショップまで行って犬を買いに行こう。
「ほら、例えばこの娘なんかどうです? まあここにいるのは安価な奴隷なので、お気に召さないとは思いますが――」
「買います」
「ですよね。ここからしばらく奥に行けば高級奴隷たちが待っておりますので、今しばらく…………はい?」
「この子を買います」
冒険者マット、23歳。人生の初恋は、奴隷の少女でした。
※ 豆知識
3.「マット」って名前の意味は?
本当はマッチョにしたかった。さすがにギャグ小説にするわけにもいかないからマットにしました。
ちなみに後から意味を調べたら「神からの贈り物」って意味らしいですね。両親や祖父母から愛されて育ったんでしょう。
R18シーンも書いていいですか?
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いい
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ダメ