特に先の展開は考えてない。
あと我の名をではありません(真顔)
――起きてください。
声が、聞こえた。
男性の声。知らない声だった。
ゆっくりと、銀髪の女性、オルガマリー・アニムスフィアは目を覚ました。
「……ここ、は……?」
彼女が目を開けた先には、暗闇が広がっていた。
見渡す限りに闇が広がっているが、不思議と恐怖を感じない。
宙には謎の三つの光がそれぞれ、赤、青、黄色と。まるでUFOの光のように揺らめいていた。
その異様な光景に戸惑いを見せるオルガマリーに、声を掛けた存在がいた。
『……起きましたか、所長』
「⁉ だ、誰⁉ れ、レフはどこよ⁉ い、いや、落ち着いて……わ、私はさっきまで、カルデアでファーストオーダーの最終確認をして……それで、いよいよミッション開始になって……そうだ。あの素人、藤丸立香が何故かマスターになってて、なんやかんやでアーサー王を倒すことになって、私はその聖剣の余波に巻き込まれて……」
『そして貴女は死にました』
「ハァ⁉」
素っ頓狂な声が、オルガマリーの口から出た。
「な、何言ってるのよ⁉ 私が死んだ⁉ そ、そんな訳ないでしょ⁉」
『残念ながらすべて真実です。というか、その前に元々死んで(ごにょごにょ)』
「そもそも! アンタは一体何者なのよ⁉ 姿を見せなさいよ‼」
『……それは、出来ない。事情があるんです。けど、俺は貴女を知っている』
「……どういうことよ……?」
男の言葉には不可解な点が多い。
オルガマリーが疑問符を浮かべ、ようやく落ち着いてきた思考を回す。
(こいつは一体何者……? 人理修復の妨害者? それとも……)
『……所長、貴女に、少し先の未来を見せましょう』
えっ、と呟く前に、オルガマリーの頭に激痛が走る。
思わず呻いて頭を抑えた彼女の脳裏には、彼女が知らないはずの記憶が次々と流れ込んでくる。
炎上汚染都市・冬木。
彼女が初めてレイシフトに成功し、死亡した場所だ。
カルデアが何者かに襲撃され、本部のメンバーは半壊。
生き残ったマスターも、自分がつい先ほど追い出した48人目のマスターだけとなる。
彼女自身のサポートと、現地で出会ったサーヴァントの手助けもあり、デミ・サーヴァントとなったマシュ・キリエライトは伝説のアーサー王相手に勝利した。
その後、事件の真犯人だというレフ・ライノールが現れ、残酷な真実とともに自身を抹殺した……その瞬間を。
「――嘘よ」
『……真実です』
「嘘に決まってるわ! レフが私を裏切るはずがない! そんなこと……絶対にぃ……‼」
『……貴女ほどの魔術師なら分かるはずです。俺が見せたのは偽の記憶じゃない、本物だってことが』
その言葉に、オルガマリーは無言を貫いた。
だが、それは認めていると言っているようなものだ。
『……一つだけ、貴女の運命を回避する方法があります』
「……もういいわよ。私は死んだの。……皮肉ね。散々部下たちに喚き散らして、それでも頑張ってきた結末が、自分の最も信頼していた男に裏切られるなんて……。結局、何もかも無駄だったのよ」
乾いた笑いが、オルガマリーの口から洩れる。
彼女は諦めていた。何もかもに絶望し、生きる気力を失っていた。
だが。
――無駄……そんな言葉……彼は許さない。
『生きろ‼』
「⁉」
『……貴女の頑張りは、決して無駄じゃない。だから生きろ! 貴女はよくやってきた! だから貴女には、その資格があるんです‼』
少女は、誰にも認められたことはなかった。
誰にも、褒められたことはなかった。
自分が死んだところで、悲しむ人間なんていないと思っていた。
なのに、声の主は、自分を認めた。
自分を褒めた。
声の主は……
何故そう思ったのか、それは分からない。だけど、なんとなく、そう思えた。
『……もう一度だけ言います。貴女の運命は、変えられます。俺の手を、取ってください』
「……、」
『貴女の為に……貴女が父の想いを繋いで頑張ってきた、カルデアの為に!』
「!」
気づけば、オルガマリーは駆け出していた。
何処に行けばいいかなんて分からない。でも、考えるより先に体が動いていた。
少女は、何もかも失ったわけじゃない。
彼女の手の中には、まだ残っている。
守るべき光、人理の輝きが――。
「……うっ、ここ、は……?」
気付けば、オルガマリーは今度はとても眩しい場所にいた。
辺りに光が満ち、暗闇なんて一つも見えない世界だった。
彼女が辺りを見渡すと、彼女の腰に入れ物のようなものが装着された。
さらに、彼女の手に、青いブレードにスリットのある、団扇のようなものが渡された。
「これは……?」
『それはカルデアZライザーです』
再び、あの声が聞こえたことに驚く。
だが、オルガマリーはそれ以上に驚いたことがあった。
「か、カルデア⁉ ど、どういうこと⁉」
『詳しい話はまだできませんが、これで俺のこと、少しは信じてもらえませんでしょうか?』
「……そうね。これがカルデア製だというなら、信じてみる価値はあるかもしれない……どうしたらいいの?」
『まずは、このカルデアアクセスカードを。そのカルデアZライザーは認証制のため、そのカードをスキャンしないと使用できません』
オルガマリーは謎の声の主によって渡されたカードを、それが装填できそうなか所に差し込む。
【Olga Marie Access Granted】
「うひゃぁ⁉」
なにやら機械的な音声がライザーから飛び出し、飛び上がるオルガマリー。
『……次に、ぶふっ……腰に装着したホルダーから、メダルを取り出して……くふっ、スリッドにセットしてください』
「なに笑ってんのよ⁉」
憤慨しつつも、オルガマリーは言われた通りの動きをするが、メダルを取り出し、その絵柄を見て硬直した。
その三枚のメダルには、見覚えがあったからだ。
「……これ、何なの? 冬木で会ったサーヴァントが……」
『それは英霊メダル。それを三枚、スリッドにセットすることで、貴女はこの俺、カルデアマンゼットとなり戦うことが出来るのです!』
「ちょっと待って何その頭の悪い名前?」
『気にしたら負けです』
そっかー、と。
遠い目をしてオルガマリーはメダルをセットした。
『はい、次はメダルのスキャンの為に、スリッドを動かしてください』
「えっと……こう?」
オルガマリーがゆっくりとスリッド部分をスライドさせると、
【Artoria.】【Emiya.】【Cu Chulainn.】
瞬間、イナズマのようなものが走り、彼女の周囲に三人の男女が現れた。
一人は青いドレスに白銀の甲冑を纏った、凛とした少女。その手には、黄金に輝く
次は、浅黒い肌をする白髪の男性。赤い外套を纏い、白黒の双剣を握り、鷹のように鋭い目をしていた。
最後に現れたのは、青い長髪を後ろで雑にまとめた、獣のような目をした赤い槍を持つ男性。
「あれ? 全員見た事あるような……?」
『気にしないでください』
「あっはい……っていうか! 急いでほしいんだけど! 確か今は、あのアーサー王とマシュたちが戦ってるはず……。マシュはまだ、サーヴァントとしての戦闘経験は浅い、素人なのよ⁉ キャスターだって、まだ来てないし! アイツだって……!」
『落ち着いてください。この空間はインナーマイルームと言い、現実とは時間の流れ方が違うんです』
「そうなの?」
『そうです。……さあ、工程はあと一つ、俺の名を呼んでください!』
ここまで長々とやってきたが、ようやくか、と。オルガマリーが気合を入れなおした。
「えっと、カルデアマンゼットだっけ……?」
『いや、もっと気合入れて言うんだよ(豹変)』
「あ、ごめん……あれ? なんで私怒られたの?」
『では、ごほん……ご唱和ください、俺の名を! カルデアマン、ゼェェ――ット‼』
何故か、男が大仰に手を広げる姿を幻視したオルガマリー。
「――カルデアマン……ゼェェェェェ―――ット‼‼‼」
羞恥心を押し殺し、力の限り叫ぶオルガマリー。
……だが。
「あれ? 何も起きない……? ちょっと! どうなってるのよ⁉」
『いや、トリガー! トリガー押してください所長!』
「えっ」
よく見てみれば、持ち手の部分に、ボタンのようなものが付いていた。
恐らく、これがトリガーだろう。
「いや、
ぐちぐち言いつつも、オルガマリーがライザーを再び突き上げて、トリガーを引く。
――すると。
『束ねるは星の息吹……輝ける命の奔流……!』
『I am tha born of my sword』
『その心臓、貰い受ける!』
全ての原典、始まりの夜。
聞こえたのは、やはり三人の戦士の口上。
【Chaldea Man Z】
【Stay Night】
「チィッ!」
「ぐっ、もう一度、宝具を……!」
「だ、ダメ、マシュ! それ以上はもう……!」
黒い柱とも呼ぶべき斬撃を、キャスターことクー・フーリンが呼び出した木の巨人が一身に受け止めている。
その背後では、盾を支えにしつつも力尽きて崩れ落ちるマシュ・キリエライトと、その肩を持つ朱色の髪をした少女、藤丸立香。
彼女たちは、最大級のピンチに陥っていた。
先程までは、セイバーことアーサー王の宝具、
だが、その余波でカルデア所長、オルガマリー・アニムスフィアが吹き飛んで消えてしまい、動揺して隙を見せたマシュが、一気に押し切られてしまった。
間一髪で駆け付けたキャスターが、宝具で防ぎ、今の状態となっている。
「クソッ、このままじゃ持たねぇぜ……!」
そう言うキャスターの額には、僅かに脂汗が流れている。
本気で焦っているのだ。このまま全滅してしまう可能性があるから。
だが、どうすることもできない。既にマシュは限界を迎え、唯一動けるのは何の力もないマスター一人。
キャスターは宝具を防ぐので手一杯で、一瞬でも気を抜けば押し切られるだろう。事実、マシュはやられそうになった。
万事休す、藤丸が思わず諦めかけた……その時だった。
「
女性の声が空洞に響き、謎の双剣がブーメランのように回転しながらセイバーの首筋を捉えようとした。
「くっ!」
セイバーは宝具の発動をやめ、咄嗟に身を捻って剣の投擲を回避する。
そして、忌々し気に剣を投げつけたものを睨む。
「よもや、貴様が邪魔立てしてくるとはなアーチャー……いや、アーチャーではない?」
「如何にも。……全く、何やってるのよアンタは。シャキッとしなさい、人類最後のマスターでしょう?」
「えっ、嘘……そんな――!」
あり得ない。だが、現実として起こっている。
藤丸は思わず口元を抑え、目尻に涙を浮かべた。
「……まあいいわ。素人だし、今回は見逃してあげる。だから、見てなさい」
藤丸の視線の先には、一人の少女がいた。
髪は銀と青。長い髪を後ろの方で雑に括り、赤い外套と銀と青のドレスを纏っている。
その手には、先ほどセイバーを狙った二本の双剣と同じ白と黒の夫婦剣。
鷹のように鋭い目を見せつつも、凛とした表情を崩さない美女。
オルガマリー・アニムスフィアが、そこにいた。
「――さあ、行くわよ!」
瞬間、彼女の持つ双剣が風に包まれ、虚空へと消えた。
そして、人の身を越える俊足で、一気にセイバーとの距離を詰めた。
オルガマリーが無手
だが、セイバーはそれを聖剣で難なく受け止め、逆に押し返した。
魔力放出によるブーストが、セイバーの有利を保ち続ける。
「厄介ね……
オルガマリーが投影したのは、弓と矢。
弓は特に魔術的な力のない、カーボン製の黒い弓。
それを右手に握り、もう片方の手には、螺旋状に渦巻く剣のような形をした矢。
投影宝具、『
「
瞬時に己の俊足を活かし、セイバーの頭上を取った。
限界まで弦を引き絞り、黒き騎士の頭蓋を寸分違わず狙い、矢を放った。
「チィ‼」
舌打ちしながら、セイバーは黒い瘴気を全身から発し、矢を押しとどめた。
だが、少しづつ、矢はセイバーを射抜くために迫っていく。
このままではジリ貧だ。
そう結論付けたセイバーは、さらに聖剣から魔力を放出し、矢を粉々に打ち砕く。
「凄い……!」
呆然と、マシュが呟く。
ただの人間であるはずの所長が、サーヴァントを越えた力で戦っている。
「……どうなってんだありゃぁ……俺の力も混じってる上に、あのいけ好かねぇ野郎の力……しかも、セイバーの力まで……」
その脇では、キャスターが真剣な表情でオルガマリーの戦闘、その力を分析していた。
一目見ただけでその力のもとを見破る観察眼は、流石はアイルランドの光の御子と言ったところか。
「……ん? 奴はどこに……――ッ⁉」
打ち合いの最中、オルガマリーが煙に紛れて姿を消した。
周囲を探すと……背後から気配を察知し、勢いよく振り返るセイバー。
彼女の視線の先には、オルガマリーが両手に魔力を溜め、その拳を胸の前で打ち合うように向け合っている。
その腕を、円を描くようにゆっくりと回し、十字の形にクロスさせる。
「カルディアス光線ッ‼」
叫びと同時に、オルガマリーの手より放たれる必殺の青い光線。
その一条の光は真っすぐセイバーの胴を狙い――。
「負けん!
黒き聖剣から放たれたのは、闇夜さえも呑み込む、漆黒の一閃。
光と闇の衝突……まるで神話のような戦いが、そこにあった。
互いに譲らない、均衡状態が続く。
(まずい……このままじゃ押し切られる……! ここで負けるわけにはいかないのに……!)
「
突如、セイバーの真横に、巨大な木の巨人が出現した。
それを見たセイバーが驚愕に目を見開く。
「バカな、貴様にもうそれだけの魔力は残っていないはず⁉」
「ああ、そうだな。だから、こいつはただ出てきただけさ。何の役割もねぇよ。木偶の棒さ。けど、テメェがこっちを見るだけで十分なんだよ」
直後だった。
意識の逸れたセイバーの一閃に隙を見つけ、オルガマリーの光線が押し返す。
「な、に――――ッ⁉」
セイバーが驚愕に目を見開く中、キャスターがカラカラと楽しそうに笑う。
「そういうこった。……おっと、最後を見れねぇのが口惜しいが、俺たちの勝ちみたいだぜセイバー。あばよ!」
魔力を使い果たした。
キャスターは己の現界に必要な魔力すらも使い、セイバーの気を引くことに注視した。
そのツケか、彼の体は淡い光の粒子となって消えてしまう。
「はぁぁぁぁぁぁああああああああああああーーッ‼」
彼の命がけの時間稼ぎを無駄にしない。
そんな思いを感じられる咆哮が、オルガマリーの口から発せられ、さらに威力が上乗せされた。
黒を押し切り、青い光が、セイバーの胸の中心に突き刺さる。
まるで、それが起爆剤であったかのように、セイバーの体が、文字通り爆発した。
「ぐっ……!」
だが、それでも彼女は立っていた。
「――いや、どうやらここまでのようだ。……見事だった、カルデアの者。……聖杯を守り通す気でいたが、己が執着に傾いたあげくの敗北。結局、どう運命が変わろうと、私ひとりでは、同じ末路を迎えるという事か。
不穏の言葉を残し、王は消える。
「……どうして、彼女が
オルガマリーの体を、四角い扉のような光が包む。
すると、彼女の変身が解除され、いつもの所長服姿となっていた。
「所長ぉぉぉぉおおおおおおッッ‼‼」
「わきゃあ⁉」
考え込んでいた思考が、強引に現実に引き戻された。
いつの間にか自分の近くにやってきていた藤丸が、彼女に泣きながら飛びついたのだ。
「心”配”し”ま”し”た”よ”所”長”ぉぉぉ! 本”当”に”し”ん”じ”ゃ”っ”た”ん”じ”ゃ”な”い”か”と”お”も”っ”で”ぇぇぇぇ‼‼」
「ちょ、待って! 分かったから! だから服に鼻水擦り付けないで!」
しかし、こうも心配に思ってくれていたと思うと、少々照れ臭くなるオルガマリーであった。
『心配しましたよ所長! 反応が消えたと思ったらなんか変身してるし! ……でも、本当に、無事でよかった。さっ、特異点の原因となる現象の。排除が終わったんだ。トップであるキミの口から、終わりを告げなきゃ、彼女だって休めないよ?』
「……そうね、よくやったわ藤丸立香。それにマシュ」
「そんな……私たちなんてとても……最後は所長の助けがあってのことですし」
マシュがおずおずとそう言う。
「そんなことないわ。ここまでこれたのも、私が来るまで耐えることが出来たのも、間違いなく貴方達の力。今はそれを、誇りに思っていなさい」
「! は、はい!」
『……マリー、どうかしたのかい? いつもと雰囲気が違うね……少し丸くなったよ』
「ふっ、いつも通りよ」
「全く、忌々しい奴らだ」
他愛のない言葉を交わし合う彼女たちに、冷や水を浴びせるような声が邪魔をする。
マシュと藤丸が声の主に視線を向けると――。
「れ、レフ教授⁉」
レフ・ライノール。
カルデアの職員の一人であり、オルガマリーのよく理解者として知られる男性が、そこにいた。
その右手には水晶のようなものが握られ、顔つきはとても不機嫌であるというのを隠しもしていなかった。
『レフ……レフ教授だって⁉ 彼がそこにいるのかい⁉』
「うん? その声はロマニ君かな? すぐに管制室に来て欲しいと言ったn――」
「カルディアス光線!」
「ギャァァァァアアアアアアーーッ⁉」
いつの間にか変身していたオルガマリーが、必殺光線をレフに叩き込んだ。
カルデアマンゼット:謎の存在。サーヴァントではない。
何故か未来を知っているが、詳細は不明。
変身フォームはあと3つある。
オルガマリー・アニムスフィア:ゼットに変身することになった。
実は自分を認めてくれるゼットの事が嫌いではない(重要)
レフ・ライノール:クズ。異論は認めない