カルデアマンZ   作:山羊次郎

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シグマブレスターの枠は暇があったら考えます


マスターの心得

 

「えっ、ちょ、所長⁉」

 

 数秒経ち、激動の展開に呆然としていた藤丸は、漸く再起動し、ギョッとして所長を見る。

 何故か怒りのオーラを発するオルガマリーは、今度はアーサー王が持っていた聖剣の色違いのようなものを取り出し、全力で振りかぶって――

 

約束された(エクス)……!」

「ちょちょちょ! ほんとに待って所長⁉ 何が起きてるか全然わかんないですよ!」

 

 流石に理解が追い付かないのか、藤丸が説明を求めるようオルガマリーに縋り付く。

 だが。

 

「あれは敵よ。あれが全ての元凶よ。大人しくこの聖剣によってレ/フされるがいい! 約束された勝利の剣(エクスカリバー)―――ッッッ‼ ついでに、ダメ押しのカルディアス光線!」

「ギャアアアアアアアア‼‼‼」

 

 全力で放たれた光の斬撃と光線が、レフ・ライノールを粉微塵にした。

 ついでに水晶体のようなものも消えていた。原因は不明。

 

『……えっと、どういうことか説明してくれるかな、マリー?』

「分かってるわ。でも、まずは――」

 

 オルガマリーが二の句を告げようとすると、凄まじい揺れが地下空洞で発生した。

 

「ロマニ! 今すぐマシュと藤丸のレイシフトを開始して!」

『えっ、いや、所長は⁉』

「そうです! 所長も一緒に……!」

「無理よ」

「えっ……?」

 

 藤丸のどうして、と言う視線に、心を痛めながらオルガマリーが言う。

 

「私にはレイシフト適性はない。知ってるでしょ?」

「そんな! 所長はここに居るじゃないですか⁉ それはつまり、レイシフトに成功したということ! なら――」

 

 オルガマリーの言葉を否定したのは、意外にもマシュだった。

 言葉に焦りが見え、本気でオルガマリーを心配していた。

 それを理解し、オルガマリーは穏やかな笑みを浮かべて言葉を返す。

 

「私がレイシフトできたのは、カルデアで起きた爆発に巻き込まれて、死んだからよ」

「……えっ」

 

 呆然と、マシュは言葉を失った。

 いや、マシュだけではない。

 隣で聞いていた藤丸も、モニター越しに聞いていたドクターロマンも、絶句していた。

 

「トリスメギストスは死んで残留思念になった私を転移させたの」

『そうか……! レイシフト適性の無い肉体は、レイシフトに耐えられない!

 けど、肉体を失った、言わば魂だけの状態なら、そもそも負荷が発生しない! けど、その状態でレイシフトしても、魂だけの君は――』

「そんな……! 何か方法は――!」

『いや、ちょっと待ってくれ! 今の君には、()()()()()()()()()()!』

 

 ロマニの声で、藤丸の瞳に光が灯る。

 肉体がないから、レイシフトしても死ぬだけ。けど、理由は分からないが、今の彼女には肉体がある。

 それなら、オルガマリーはレイシフトが出来る――。

 

「出来ないわ」

 

 そこまで考えた藤丸の思考を読んでいたのか、オルガマリーが藤丸の考えを否定した。

 

「言ったでしょ? 私の肉体にはレイシフト適性がない、って。だから、今の状態でレイシフトしても、私は死ぬ」

「……そんな」

 

 八方塞がり。

 もはや手立てはなかった。

 

「……ロマニ。二人のレイシフトの準備は?」

『……完了、しています。いつでもいけます』

「! だ、ダメ! 何か方法はある! 所長も必ず、私たちと一緒にレイシフトする方法が!」

 

 最後まで、諦めずに抗おうとする藤丸。

 その姿勢を嬉しく思いつつも、オルガマリーは現実を突きつける、

 

「ないわ。でも……そうやって、最後まで諦めない心って言うのは……きっと、大事なものよ。忘れないで」

「!……、」

 

 ぐらぐらと。空洞の崩壊が、いよいよラストスパートをかけてきた。

 もうこれ以上は持たない。急いでレイシフトを実行しなければ、みんな死んでしまう。

 いや、一人は確実に死ぬだろう。レイシフトが出来ないのだから。

 なのに。

 その一人は、笑っていた。己に迫る死を恐れず、受け入れているかのように。

 

「……もう時間がないから、ここでは多くのことは言えない……だから、今言えることを言うわ。貴方たちはこれから、誰も経験したことがない、危険な……人理を背負った、遥かに長い旅路をする。そこでは出会いと、沢山の別れがあるでしょう。でも、負けないで。生きて。……それだけの為に、立ち上がって」

「………………はい」

「――ッ!」

 

 涙を流し、嗚咽を漏らす藤丸が小さく答え、マシュは唇を噛み、ただ堪えていた。

 そんな二人を、光が包む。

 オルガマリーが思わず目を覆い、再び開くと、二人の少女は消えていた。

 

「……これで、よかったのかしら……うひゃぁ⁉」

 

 すると、何故か自身の右脇から途轍もない四角い光の扉のようなものが発生し―――。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「う、う~ん……?」

 

 痛む頭を抑え、藤丸立香は目を覚ました。

 まるで二日酔いの様にふらつく体を、棚に手を置くことで姿勢を保つ。

 周りを見渡すと、自分に割り振られたマイルームだった。

 

「! う、うぅぅ……所長……!」

 

 何があったかを思い出し、涙を流す。

 死んだ。手が届く届かない以前の問題だった。

 何も出来ず、無力だった。

 理不尽に抗う術もなく、ただ子供の様に我が儘を言って、時間を先延ばしにすることしかできなかった。

 

「……泣くな。泣いたら駄目……そうだ、マシュは……」

 

 自身を後輩と慕う少女。

 彼女の安否を知りたくて、藤丸は部屋を出て管制室へと向かう。

 

「フォーウ!」

「……ん? あ、フォウ君。……うん、大丈夫」

 

 自身の方に登り、その頬を擦り付け、まるで慰めるようなその小動物に、藤丸は思わず笑みを零す。

 そして、覚えている範囲で道を進んでいき、

 

「……ここだ」

 

 前に来たときは、燃え盛る炎の部屋だった。

 あの炎はどうなったのだろうか? しっかり掃除できているのだろうか?

 そんなズレた疑問を浮かべながら、彼女が扉を開くと、

 

「一体どうなっているんだこの装置は⁉ ぱっと見では素材も技術も使用される魔術も不明! 明らかにオーバーテクノロジーなのに、あくまでも人間が辿り着ける段階の技術なのは間違いない! この矛盾、実に興味深い! なあ()()()()()()! これちょっと貸してくれないか? 大丈夫、ちょっとバラすだけだから!」

「いや、それ戻せるんでしょうね? 直せないとか言ったら強制退去させるわよ?」

「……、」

「所長、ダヴィンチちゃんが目を逸らしました。考えていないようです」

「マシュ、殴って」

「待て分かった。私が悪かった。確かに、理論も構造も把握できないアイテムを好き勝手に弄るのは、いくら私が天才でも少々まずい。今回は大人しく引いてあげるから、マシュもその手に持つ盾を仕舞ってくれ。……あっ、ほら! 君のマスターもお目覚めみたいだぜ!」

「えっ⁉」

 

 謎の美女が指をさした方向を、マシュが勢いよく振り返って見る。

 そこには、朱色の髪とカルデアの制服。

 48人目の最後のマスター、藤丸立香がいた。

 

「あっ、おはようございます先輩!」

「……………………………………」

「? ……あっ」

 

 挨拶を返さない藤丸に首を傾げたマシュだが、その視線の先にいる物を見て、藤丸の心境を察し引き下がる。

 最後のマスターの視線の先には、銀色になびく髪、黒とオレンジの奇妙な服装。

 ヒステリーな雰囲気なんて微塵も感じない、落ち着いた物腰の女性がいた。

 

「な、んで……」

 

 戻れないと、言われたはずだ。

 もう会えない……そう思っていた。

 なのに……なのに!

 

「所、長……!」

「……えっと、その……おはよう、藤丸」

 

 呆然とする藤丸に、照れくさそうに頬を掻いたオルガマリーが、目を泳がせながら挨拶をした。

 カルデア全員にとっても、彼女自身にとっても、想定外の出来事だった。

 あの時、レイシフトによって藤丸たちが帰還した、すぐ後のことだ。

 藤丸は、疲れからかすぐ眠ってしまったが、それを支えていたマシュとドクターロマン。悲痛な面むちのカルデアの人員たちの前に、光が現れた。

 四角い、扉のような雰囲気を持った扉だ。

 

『……えっと、ただいま?』

 

 何故かおずおずと言った調子のオルガマリーが、怒られるのを怖がる子供のように振るえて出てきた。

 そこから、もう大騒ぎであった。藤丸が起きないのが不思議なくらい騒いでいた。

 まだ戦いは始まってもいないのに、打ち上げであるかのようなテンションだったほどには。

 

「その、ね? よく分からないんだけど、インナーマイルームって言う空間を通って、時空間を……というか、予め設定したポイントを移動できるみたいなの。その、何ていうか――」

 

 言い訳のように言葉を並べるオルガマリーに、藤丸は無言で抱き着いた。

 

「あ、あぁぁぁ……‼」

「……ただいま」

「所長ぉぉぉぉぉぉぉぉーーーっ!」

 

 そして、まるで迷子になった子供が、親のもとで泣きつくように、藤丸はオルガマリーに縋り付いて泣いた。

 

「もう、ほら……これで涙拭いて」

「うぅぅ……面目ないですぅ……」

 

 結構の間、泣いていた。

 しかし、それを止める者などいない。彼らとて、彼女と同じ気持ちだったのだから。

 彼女のヒステリーで迷惑を被った人もいただろう。けど、彼女が重圧に苦しんでいたことも、己のレイシフト適性がないことで蔑まれながらも、常に前を向いていたことを。

 みんな知っていた。

 なにより、女の子が一人で、強大な存在へと立ち向って、消えてしまった。それでも、戻ってきたのだ。運命を乗り越えて。

 喜ばない、はずがない。

 

「落ち着きましたか先輩?」

「……うん、うん……」

「……時間が惜しいわ。これからのことを説明するわよ。……藤丸、覚悟はいい?」

 

 彼女がいなかったら、ここで立ち上がれただろうか? この言葉を発していたのが、彼女ではなくマシュ、或いはドクターであった場合、自分はどうしていただろうか?

 そんな疑問が、藤丸の胸中を占めるが、すぐにそれを払拭した。

 考えても仕方のない事は考えるな。意味がない。

 彼女は言っていたではないか。これから自分たちは、人理を修復する旅に出る、と。

 それがどれ程のものなのか、彼女にはまだ想像もつかない。

 けど、きっと大丈夫だ。

 藤丸は、そんな根拠の無い自信を抱いて、確信していた。

 彼女が率いるカルデアなら、どんな困難にも立ち向かえる。

 

「はい!」

「いい返事ね。それでこそ、人類最後のマスターとしてふさわしいわ」

 

 不敵な笑みを浮かべ、オルガマリーは自身の身に起こったこと。

 それによって知った、これより先に起こる……いや、起こってしまった未来を語る。

 これは、人理を守る戦い。

 火蓋は切られた。

 始まる……未来を取り戻す戦いが――――!

 




多分これで終わり。
もうこれ以上は思いつかない。
けどもし思いついたら書く
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