歴史は好きだけど、性転する世界が嫌いだ   作:黒崎一黒

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前回の投稿までは随分日が経ちました。現実の件があって、最近はあまりハールメンを使う暇がなかった……。


第八話:嵐の前の時間

 「ひとまず、命の別状がありません。ご安心ください」

 

 「ありがとうございます。お医者さん。」

 

 

 すっかり元気になったおばあちゃんと隣に笑顔をする天海さん。

 

 僕と明命がおばあさんの家に着いた時、おばあちゃんは既にベッドから上半身だけを起き上がり、命の恩人にお礼をする。

 

 どうやらおばさんはもう無事みたいだ。良かった。

 

 

 「いえいえ、これは私の役目なんですから。それと、暫くこの半年はこの処方を飲まなくちゃならないのです。でないと、また症状が悪化してしまう恐れがあります。」

 

 「わかりました。本当にありがとうございます。」

 

 「私は大したことしてません。それに、先生と私も人を助けるのが大好きなんです。」

 

 「なるほど。にしても、あの凱先生はこんな良い美人を弟子入りなんて……。この前、先生に看病された時はいつも自分が未熟者で弟子なんてまだまだと言ってくれたのに」

 

 「それは……色々事情があって、今は先生の代わりに店の経営や家事などを担当しています。」

 

 「そうですか。でも、こんな美人がそばに居れば凱先生の生活も支障がないでしょう」

 

 「あはは……確かに先生の生活方面は少々問題があるように見えますね。」

 

 

 二人は初対面だと思えぬほど楽しく話しました。まあ、二人も同じ知り合いがあったし、お互い話せることもたくさんあるのでしょう。

 

 

 「……ん?あら?蓮さんと……こちらの方は……もしかして噂の周泰さんですね?おばあさんを心配しに来たのですか?」

 

 

 そんな時、天海さんはこっちのことを気付いたみたいで話をかけてきた。

 

 まぁ……元々隠す気がないけどね。

 

 

 「おばあさん、お元気そうで何よりです!」

 

 「あら!幼平ちゃん、身体はもう大丈夫なのかい?貴女が昨日ほとんど寝てないから、こっちもかなり心配なんですよ!」

 

 「見ての通り元気です!心配をかけさせてすみません……」

 

 「いいってことよ。それと、蓮もお帰りなさい」

 

 「ただいま、おばあちゃん。」

 

 

 僕たちが部屋に入ったら、おばあさんは大喜びそうな顔。この村でおばあさんと一番親しく住人と言ったら、それは僕と明命二人だ。

 

 多分、僕たちはおばあさんにとっては孫や孫娘という存在なのでしょう。

 

 

 「ふふっ、蓮も大きくなったわね〜。もう一人で町に行ってお医者さんを連れて戻すなんて……これも子供の成長と言うやつですかね?」

 

 「いや……そんなの、特に前からでもできることですよ〜。ただ明命はどうしても……」

 

 「だって、孫竹様は私の主君なんですよ!貴方様の腕前はもちろん信じてますけど、主君に戦わせる部下がいるのですか!」

 

 「いや……それはないけど」

 

 

 ほっぺを膨らんで僕の失言に少し怒っている明命。彼女は僕に対してはあまりにもの心配性だ。

 

 でも、まぁ…確かに歴史のどこでも主君一人を戦わせる部下が存在しない。彼女も僕一人を戦わせないのだろう。

 

 だが逆に考えると、自分より年下の女の子に戦わせるのも男としてはどうとか……やはりそう仕組んでいた世界は好きにならない。

 

 

 「事情はどうあれ、幼平ちゃんは蓮のことを一番思っている女の子です。ですから、あまり昨日みたいに心配させるような真似をしない。もうわかった?」

 

 「それは……はい。」

 

 「よろしい。これで、幼平ちゃんも安心できますね。」

 

 「はい!孫竹様の直々の約束とおばあさんの説教があれば、孫竹様も私のことを放置してまた危険ことに突っ込んだことがないでしょう!」

 

 「うふふ、本当に凄く愛されていますね。蓮さんは」

 

 「うっ……それを言わないでください」

 

 

 おばあさんと明命との会話から、僕が凄く大切されているのを知って小さく微笑む天海さん。彼女はいつもそういう甘味の笑顔をしている……イメージ通りの聖人だ。

 

 

 「それより、おばあさんの身体は本当に大丈夫?さっき話を盗み聞いたけど……病気はもう治った?」

 

 「ええ、お医者さんから頂いた処方を半年くらい飲み続けて、意外でなければ無事だそうです。」

 

 「それは良かったです!おばあさんはこれから先も長き生きられるんですね!」

 

 「ふふ、そうかもね。またまた貴女と蓮の成長を見守り続けるだね」

 

 

 互い笑い合える二人。隣で見るだけで、ホンモノのおばあさんと孫娘のような関係に見えます。

 

 ……まぁ、何年もおばあさんにお世話されたし。これほどの仲良い関係もおかしくない。

 

 

 「うふ。それじゃ、私はおばあさんの処方を先に用意しますので先に失礼します。」

 

 「あ、少し待ってください。天海さん」

 

 「はい。なんでしょうか、蓮さん。」

 

 「その、前から何度も言いましたけど……お礼を言わせていただきます。ありがとうございます!天海さんに借りたこの恩はいつか大金でお返します!」

 

 

 そろそろここから立ち去るつもりの天海さんを呼び止めて、僕は丁重に感謝の意を表する。

 

 僕は、受けた恩を何度も感謝する人だ。…今の身体はこの時代生まれだけど、中身はまた前世の親の教えを覚えている。

 

 

 「いえいえ、お気になさらず。……と言ってもあなた様の性格だと受け入れないのでしょう。なら、お金の代わりに私がこの村に滞在する間、この村のことを私に紹介してもらいますか?」

 

 「え……?」

 

 「せっかく、ここに訪ねてきたからもっとこの村のことを知りたいとこです。この提案はいかがでしょうか?」

 

 「それはいいけど……それでいいの?」

 

 「はい。それとも私だと……嫌ですか?」

 

 「いいえ!そんなことないです!ぜひやらせてください!」

  

 

 胸を張って、僕は天海さんに恩返すために彼女に村を案内することになりました。………にしても、彼女は人をからかうのが上手だね。

 

 なんか前世の一葉お姉さんみたいなからかうのが上手のお姉さんだ……。

 

 

 「おや?お医者さんは、この村に住み込むつもりですか?」

 

 「はい。私は少しおばさんの処方を用意すると同時にこの村のことを少し見て回したいと思います。」

 

 「なるほど。今村長さんがこの場にいないですが……どうぞ、このつまらない村を楽しんでください」

 

 「ふふ、楽しみしております。」

 

 「蓮もお医者さんのことをしっかり案じでくださいね。貴方が連れてきた大事な客なんですから、村の恥にならぬようにやってください」

 

 「せ、責任重大ッ!………うっ……頑張ります!」

 

 「私も孫竹様が恥にかけられないよう、サポート方面を回します!」

 

 「いや……明命は手伝わなくてもいいよ」

 

 

 その後、僕と明命は天海さんを村に連れて回しました。

 

 まぁ……その途中、僕に集まってきた視線はとても痛々しいけど……僕の紹介下で彼女はすっかりと村のみんなと楽しく打ち上げていた。

 

 

 

 ◇

 

 

 

 一方、その頃。

 

 

 

 「白湯ちゃん、焦らず焦らず。畑を作るには凄く時間がかかるだから、ひとつずつゆっくりとやっても責められることはないよ?ひとまず、土以外の余計なもの……つまり石とか木から落ちた太い枝とかを取り除くのが先です。」

 

 「う、うん!わかった。」

 

 

 風の丁寧な指示の下、白湯は農民から借りた鍬を下ろし、小さな手で畑の中にあった余計なものを取り除いていく。

 

 初めに、いよいよ農具や農地を揃ったところ。農作業を始めとする畑の知識不足の白湯は気が早く鍬で土に掘ると……地面に埋めた硬い石に弾かれて危うく怪我されるところだった。

 

 それで、白湯のことを心配する風は本が書いた通りにゆっくりと丁寧に白湯にその知識を注ぎ込んだ。

 

 

 「本当に手方を教えてますね。……しかし、あんな幼い女の子がこんな辛い作業を行うなんて……見るだけで心が辛いわね。」

 

 「風も同じ気持ちだよ。白湯ちゃんは風より幼いのに……もう世間の辛さを理解し、背負うとする。風より立派な子供です。」

 

 

 郭嘉と同じ、白湯を見守っている風。

 

 彼女は軽い口調でそう語っているのですが、実際白湯のことを本気でそう思ってる。少なくとも、ただ旅行したばかりの自分より立派なもんだ。

 

 因みに、郭嘉はさっき整地するための動物を連れて帰ってきた。江南だとすると水牛(スイギュウ)という動物を使って整地するらしい。

 

 

 「彼女を感服する場合か!あなたがもっとやる気を出してくれば、この旅はそんなに苦労しないはず!それに、昨日で蓮に手伝うこともできたはずです!」

 

 「そう言っても……あの時は私たちの出番じゃない気がする。禀はお兄さんみたいに戦える?」

 

 「いや……それは……」

 

 「戦いに苦手な私たちより戦いが上手のお兄さんに任せた方が効率が良い。私たちは策士です、後方で策を出す者。」

 

 「わかっているわよ!…それでも役に立ちたいよ!ずっとあの子に助けられたばかりだからさぁ。こっちは年上なのに」

 

 「禀は責任感が強いね〜。まぁ、風も多少お兄さんの役に立ちたいけど」

 

 

 そう思った二人は昨日で彼に真名を預けたとはいえ、心が騒ぐ原因はまだ解決していない。自分たちの才能はいかに彼の力になれるのか……。

 

 頭脳がいいのは良いことだけど、重要なのはその使う位置だ。いざ戦いになったら、頭脳担当の指揮者は安全な後方で指示を出して、より勝算が高い戦法を戦う役の者たちに果たさせることしかできない。

 

 策士ていうのは、大変重要な指揮役なんだけど……基本後方でサポートする役割だ。もし計算ハズレの悪いことでも起きたら、自分たちは一時に前線で戦う者に何の援護もできない。

 

 ただ後方で彼らを見殺すことしかできない。これが郭嘉たちのような策士にとっての残酷な現実問題だ。

 

 

 「どころで……白湯のことだけど。風、今となって、彼女の正体について何か分かることがありますか?私はあの子がどうして狙われているのかは全く思いつけない。」

 

 

 そんな時、郭嘉が話題を白湯に移した。あの子が隠していた秘密は確か気になります。

 

 

 「そうね……じゃ策士の勘ってやつから逆に聞くけど、白湯ちゃんのことをどう思っている?」

 

 「うんーー。単に感覚だけの話だとすると、彼女はただの貴族の娘ではないと思う。何より、朝廷所属の董卓軍の二人がわざわざ自分を囮にして、こっそりと彼女を逃がせた。多分白湯は董卓軍にとっては重要な大物だと思う。」

 

 「よほど観察してたじゃん。」

 

 「それでも主の原因が分からないのよ。なぜ彼女は西涼軍と関わっていたあげく護衛されたのか、この地に来る理由も彼女が狙われた理由も気になります。」

 

 「そうだね。白湯は思ったより謎が深い子。…それに彼女を狙う連中はどんな勢力なのかも分からないのです」

 

 

 白湯のことを観察し始めた二人は真剣な目で白湯のことを見つめている。小さい身体で真面目に石拾いをする彼女。

 

 どう見ても彼女はどこにもいる真面目でちょっと単純そうな可愛い女の子。

 

 そんな子を狙う悪い連中がいるなんて信じがたい。

 

 

 「恐らく蓮もこのことを気付いた上で彼女をここに連れてきたのでしょう。恐ろしい若者です。」

 

 「ふふ、さすがお兄さんですね。ますますお兄さんのことをただの平民だと見たくないです。どう考えても普通ではないよ、お兄さんは」

 

 「ええ、歳不相応の武芸と素早い判断能力と観察眼……一般の子供では想定できない出来事です。それに自分は蓮が何かを考えていたのか全く読み取れなくて…ちょっと恐いです。」

 

 「それでもお兄さんの本質はお人好しで優しい人だ。禀の心もそれがよく分かっていたからこそ彼に真名を託した。そうじゃない?」

 

 「うん。彼は悪い人ではないのが知ってる。あの子が助けを求めに来た時も勇敢で戦っていた。」

 

 

 郭嘉は昨日のことを思い返し、彼は人の心を持つ優しい人だと知っていた。

 

 今の時代は誰も利益そのものがなければ、知らぬの人のためにそこまで命を張るわけがない。特に官軍も秩序を維持する気も感じない。どこでも暴力と殺人事件が起きている。それを止めに行く者も立ち上げられなかった。彼以外は……。

 

 

 「そこで禀がお兄さんのことを惚れてしまった。めでたしめでたし。」

 

 「ちょっと!何勝手に話を改竄しているのよ!?私、惚れてませんよ!」

 

 「本当〜?じゃ、風はお兄さんをいただいてもいいってこと?」

 

 「待って、なんて急にそんな話になったの!?」

 

 「だって、禀は興味がないと言ってたし。それにお兄さんは色々と面白いから、風はそんなお兄さんが欲しい。」

 

 「ただそれだけの理由で……」

 

 

 やれやれの顔をする郭嘉。彼女は風の理由に少し呆れたと同時に納得する。

 

 彼女は昔から個性が捉えない人だから、彼女に付き纏うのは一苦労する。そのせいで彼女の友だと呼ばれる人間はほぼいない。

 

 今となって、彼女のそばにいるのは郭嘉という唯一の理解者であった。と言っても、風のことを完全に理解する人間はいない。

 

 例え郭嘉でも彼女の全てを理解できなかった。

 

 

 「でも、一つだけお兄さんのことを好きにならないところがあります。それは、お人好しすぎるところです。この件から手を抜くことができるのに、余計に巻き込んで行くなんて……お兄さんはバカの人ですね。」

 

 「そう言って、風は今も彼のことを放っておけなかった。自分の利益を最優先する貴女だと考えられない行動だ」

 

 「むっ…」

 

 「風は何かを考え込んでいるのかはお見通しよ。白湯のこともちゃんと見てくれたし、実はこれが君の優しさなんじゃないかな?」

 

 「………禀、今日はちょっとウザい」

 

 「あ……逃げた!」

 

 

 顔が赤め、風は珍しく郭嘉のそばから白湯のとこへと逃げた。よく見たら、白湯もそろそろ田んぼに散らかる石を全部取り除いたところ。

 

 

 「全く……。風は素直じゃないだから」

 

 

 風……程昱と出会った以来、彼女はずっといい子でした。

 

 事情の処理方と口が容赦しない、個性も充分問題がある問題児ですが……本質は悪い子ではないから、同質の自分もすっかり彼女と馴染んでいた。

 

 そして滅多に恥ずかしがっていた風を見て、郭嘉は暫く心に痛む悩みを地面に置いていた。

 

 いくらこの先のことを悩んでいても、自分たちはもうこの中に巻き込まれている。

 

 逃げる自体はできるが……それから逃げたくない自分がいる。数少ない心優しい友人を助けたい……それは郭嘉が今何より優先したいことだ。

 

 

 「仕方ない。もう関わってきたことだし、とごとん付き合おう」

 

 

 その後、白湯の農作業は二人の協力下で順調に進んでいた。

 

 

 

 

 ◇

 

 

 

 

 さらに数時間後。

 

 

 「うおおおおーーー。大部、形になってきたね。」

 

 「今のところは初期段階だけど、もう立派な耕作地に見えますね。」

 

 

 目の前に広がる畑を見て、郭嘉と程昱二人は驚く声を漏らした。

 

 ここは元々もう使われていない農耕地。

 

 所有者がいるけど、今の時代は村の青年がよく外へともっと金を稼ぐ仕事を探すため、大数が村から出ていてしまった。それで孫竹が作り上げた警備隊以外に取り残されたのはもう行動不便の老人たちや未成年の子供と婦人たちだ。

 

 故に身体が畑仕事に向いてない老人たちは……何年も畑を放置していた。

 

 その土地に白湯が郭嘉たちと一緒に借りて、ここを豊かな耕作地ヘと姿を変化させてしまった。

 

 

 「これで美味しいご飯をできるんだね!」

 

 

 そして郭嘉たちと同じ反応をする白湯も自分がしていたことに嬉しく思う。これは初めて自分自身で成し遂げたことだ。

 

 

 「いや、お米になるにはまたまた長い時間が必要ですよ、白湯ちゃん。」

 

 「そうなの?」

 

 「ええ、田植えはいくつの段階があるらしい。秋まではこの仕事が終わりません。とはいえ、始めから終わるまでの間はできることも限られている。」

 

 「うーん、なんか難しそう」

 

 「じゃ、やめる?」

 

 「ううん、やめない。もうやるに決まっているから!」

 

 

 意志を固くする目付き。彼女はどうやらまたこれをやり続けるつもりだ。とはいえ、彼女の今の境地はそれを許せない……彼女を追う人間もいつか彼女の前に現れる。

 

 そうなった時、今のように平穏で田植えをやれるのか……郭嘉たちもそのことを充分憂えている。

 

 

 「それじゃ、次は肥料の仕方ね。高品質の農作物を育つには定期に養分を与えなければならない。でも私と風もあくまで本の知識を借りたからその辺の加減はわからない。」

 

 「本だけの知識じゃ足りないの?」

 

 「本の知識はあくまで最底辺の仕方を教えただけ。例えば……私と風も軍略の本を読んでも経験上では賈駆さんに勝てない。恋という子も、天下無双の武術の本を読んでも彼女に1ミリも勝てない」

 

 「だから人は差をつけるだよ。地位が高いやつと低いやつ。まぁ……小細工で高い権利に登る小物もいるけど」

 

 「………なるほど。ずっと知らなかった」

 

 

 郭嘉と程昱二人にそう教われた白湯。彼女は改めて知識が全てではないと学んだ。

 

 

 「うふふ、とりあえず一歩ずつ覚えておきましょう。白湯はまたまた若いですから、学ぶこともまたまた多いです。焦ることはない」

 

 「は、はい!精一杯頑張ります!」

 

 「いい返答だ。風も休んでないでちゃんと手伝ってね。」

 

 「ええぇ〜……またやるの?風はもう疲れたのです〜」

 

 「文句を言わないの。白湯もこんなにやる気が出るし、年上の貴女はもう少し頑張ろ」

 

 「程昱、もう少し付き合って欲しい……だめ?」

 

 「うぅ…その目で風を見るんじゃない。風はもう一踏ん張り頑張らせるになるじゃない!」

 

 「ありがとう!程昱!」

 

 「やれやれ」

 

 

 こうして三人はまた畑仕事をやり続けた。

 

 

 

 

 

 

 

 しかし彼女たちがまだ気付かぬのはその裏で彼女たちを監視する者がいた。

 

 

 「あれが目標……あの方が予測していた通り、密かに近くの村に隠された。やはり、町に残った護衛はただの囮だ。」

 

 「ピー!」

 

 「ええ、このことを早く我が王に知らせよ。十常侍にもそのことを気付かれる前に早くあの小娘を手に入れなければ」

 

 「ピー!」

 

 「頼んだわよ。ビース」

 

 

 村の人気がない屋敷の裏で鷹という中原ではあまり見れない鳥を放って飛ばさせる男がいた。

 

 その服装からある北の民族の一員であることを判明ができる。そして彼もまたこの村の現場調査する斥候兵(せっこうヘイ)だ。

 

 現在彼はターゲットがここにいるのを確認、その情報を鷹に通じて仲間に知らせる。

 

 

 「多分今夜でこの村も終わりだな。我が王ならあの娘を手に入れる間にもこの村を容赦なく略奪するのだろう……悪く思うなよ、全てはお前たちを見捨てたこの国が悪い」

 

 

 そう言い、偵察任務を完了した男は笑った。

 

 かつて自分たちの先祖が侵入すらもできないこの大地は今の自分が立っている。そして叶わぬ略奪も今となって許される。

 

 かつて光武帝が作り上げた東最強の漢帝国は今、沼に墜ちた。まさにこの国を乗っ取る時だ。

 

 

 「さぁ、我が先祖たちが叶わぬ悲願は我が王に叶えよう!あの小娘(献帝)を手に入れた際、漢は我らの手に!」

 

 そう大笑いした男はその後、気持ちよくこの村から出ていた。そして次が起きかねないことを楽しみしていた。




そろそろ伏線回収でもしようか。

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