虹×夢カラフルデイズ   作: 龍也/星河琉

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読んでいただき、ありがとうございます。感想、評価お待ちしています。今回は少し短めです。


第10話 雨降る夜に

 俺の今の心境に追い打ちをかけるように雨は降り続く。冷たい水が俺の髪を、制服を容赦なく濡らしていく。

 

 皆に「1人にしてくれ」と伝えると、全員気を遣って何も言わないでくれた。今誰かに何か言われてもまともに受け答えできる自信はなかったので、この時だけは放っておいてくれて助かった。きっと明日、質問責めされると思うけど。

 

 重い足取りで家に辿り着き、電気を付けずにリビングに入って床に蹲った。今日はもう何も考えたくない。何もする気が起きない。鞄の中で携帯が鳴っているのに気付いたが見て見ぬふりをした。この感じ、久しぶりだ。あの時は毎日こんな感じだったな。なんだか昔に戻ったみてぇだ。あの時のようになりたくないと誓ったはずなのに。結局、俺はあの日から何も進んじゃいなかった。それどころか、あの言葉達にすら克服できていないことを実の姉から分からされたし。時計の針の音だけが響くこの部屋で、どんどん自己嫌悪が加速していった。

 

 この状態で何分くらい経っただろうか。下を向いてるから今何時なのかもわからない。聞こえてくる時計の音の他に、玄関の方からも何か音が聞こえてくる。足音のようなものも聞こえ始め、数秒後にリビングのドアが開いた。電気が付いたので横を向くと、パジャマ姿で髪を下ろした歩夢が居た。

 

「お邪魔します……」

 

「歩夢……1人にしてくれって言ったのに……ってか鍵かけてたはずだけど……」

 

「何かあった時の為にって、合鍵渡してくれてたじゃない」

 

 そうだった……歩夢の手に握られていた鍵は、たしかに俺がそう言って手渡した物だ。けっこう前の話だから記憶の外だったわ……。まだ持ってたことに驚きだよ。とっくのとうに無くしたかと思ってたのに。

 

(つむ)ちゃん、帰ってきてからずっとそうしてたの……? 早くシャワー浴びないと風邪ひいちゃうよ!」

 

「……今は何もしたくないよ」

 

「ダメ! しっかりして! (つむ)ちゃんが体調崩したら、皆心配するんだから! ……紡ちゃん!!」

 

「わかった。わかったから……ちょっと待ってて」

 

 俺は渋々風呂場に向かってびしょ濡れの制服を乱暴に洗濯機に放り込み、シャワーを浴びて冷え切った身体を温めた。俺が体調崩したら心配するって言ってたけど、果たして本当にそうだろうか? やっべ、なんか後ろ向きの考え方しかできなくなってきてる。やめよう。

 

 部屋着に着替えてタオルで髪を拭きながらリビングに戻り、歩夢が座っているソファーに俺も腰掛けた。

 

「……さっきさ、カッとなって……俺、歩夢のこと突き飛ばしたよな。ホントごめん」

 

「大丈夫! 気にしないで! 私よりまず(つむ)ちゃんのことだよ。まさか、(つなぎ)さんが来るなんて……」

 

「皆に、話すべきなのかな。繋や、俺自身のこと。明日絶対聞かれるだろうし」

 

 目の前でアイツのことを姉だと悟られることを口走ってしまった以上、少なからず皆疑問を抱くはずだ。今まで同好会の皆には姉や母親、ましてや俺の話をまったくしてこなかった。する必要なんてなかったし、俺が話したくなかった。話してどうにかなる訳でもないし、お互い胸糞悪くなるだけだからな。

 

(つむ)ちゃんが考えてること、わかるよ。本当は話したくないんだよね?」

 

「……うん」

 

「でも、話さなくちゃいけないと思う。皆にわかってもらわないと。(つむ)ちゃんのことも、繋さんのことも……」

 

「やっぱ、そうなるよな」

 

 覚悟、決めるしかないのか。

 

「きっと皆となら、苦しみを乗り越えられるよ。だから、皆に話そう?」

 

「やるしかないか。でも俺、説明下手だからさ。もしアレだったらフォロー頼む」

 

「……もちろん! 私に任せて!」

 

 皆に自身のことを話すと決め、歩夢にフォローを頼むと、快く承諾してくれた。俺の心境を察したのか、それ以上は何も言わずに無言で俺の側にいてくれた。言葉を交わさないのに、なんとも言えない安心感がある。俺がそろそろ寝ると伝えると、歩夢は「おやすみ」と軽く手を振って家を出た。あぁ、歩夢は昔からそうだった。「1人にして」と言っても絶対俺を1人にしなかった。歩夢のそういうところに、俺は幾度となく救われていたことを改めて自覚した。痛いくらいに。

 

 

 

 

 

 

 

 

「……(つむ)ちゃん」

 

「……おう」

 

 翌日の放課後。歩夢と2人で部室のドアの前に立ち、俺は何度も深呼吸をした。今日、話さねばならない。これまでのことを。それだけのことなのに異様な緊張感があった。

 

 ドアノブに手を掛けようとした瞬間、唐突な腹痛と若干の目眩が襲ってくると同時に、どのようにして部室に入るかを考えていなかったことに今更気付いた。ヒュッ……と喉が鳴り、頭が真っ白になるような感覚に陥った。

 

「あ、ああ歩夢……ちょ、ちょっとトイレにい……いて……ンンッ! うぉっほん! 行ってくるっ!! 皆によろしくっ!!」

 

「あっ……わかった! 伝えておくから、すぐ戻ってきてね!」

 

「りょ……っ……りょーかいっ!!」

 

 どんな感じで部室に入るか考えなきゃいけないのと、あまりの緊張で呂律と滑舌が酷いことになってるのでトイレで作戦を立て直す!! 誰か! どなたか! 俺に勇気を分けてくれぇぇぇぇぇっ!! 

 

 

 

 




側にいると誓ったあの日から




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