虹×夢カラフルデイズ 作: 龍也/星河琉
「『鬼殺のツルギ』、予想はしてたがすっげぇ面白いな……」
優木さんから借りたDVDを観終わり、プレーヤーからディスクを取り出しながら俺はそう呟いた。
今日は日曜日。熱も完全に下がり、本調子に戻ったので繋に言われた通り、優木さんから借りた『鬼殺のツルギ』を一気見した。学校休んでたにも関わらずアニメを観るという若干の背徳感があったが、普通に作品そのものを楽しむことができた。
繋が『
『Link』の特集記事を見てるうちに、アイツは歌を通じて俺に色んなことを伝えようとしてたのだとわかった。前までは意図的に避けてたから全部わかった上でそれを知る形になった。アイツが姉として俺を気に掛けてくれていたのに……何もしない、何もしてこなかった自分自身をひたすらに悔やんだ。
繋の今までの歌手活動、モデル活動のことを調べる手が止まらず、次の検索ワードを指定しようとした瞬間に電話がかかってきて思わずスマホを落とした。すぐに拾って通話の主を確認すると、『天王寺璃奈』と画面に記されていた。今出ても何を言えばいいのかわからない為、通話には出ないことにした……のだが。
スマホをいじろうとしたら次から次へと電話がかかってくる。しつこいくらいかかってくるので画面を消灯し、無造作にソファに放り投げた。すると今度は連続で通知音。この間髪入れずに通知が止まない感じ、おそらくメッセージアプリのスタンプ連打だろう。
「今日は出ない……今日は出ないぞ……」
固くそう誓っても、無情に鳴り響く通知音。通知音を切ってもバイブレーションが止まらない。
「我慢だ我慢。うん。耐えろ俺」
何この鬼電耐久チャレンジ。何で鳴り止まないの? ねぇ? いじめですか? 一旦止まろ? ねぇ……。
「おォォォォい!! どういうつもりだ天王寺コラァ!!」
際限なく鳴り響く音に耐えられず勢いよくスマホを手に取り、耳に当てながら怒鳴った。いやこれは発叫すんだろ。立派な迷惑行為だからねこれ!?
『
「『やっと出てくれた』じゃねぇよ! スタンプ連打しすぎだろ携帯重くなるわ!! 勘弁しろくださいっ!!」
天王寺の淡々とした物言いに余計に腹を立てつつ声を荒げる。……たかが通話で画面の先の相手にキレるのすげぇ虚しいな。よし、一旦落ち着こう。
『ごめんね。どうしても伝えたかったから』
「な、何を……?」
『皆心配してる。紡さんのこと』
心配? 俺のことが? いやいや、意味がわからねぇよ。皆が、どうして俺を。俺なんかを……。
「俺、皆を傷付けたのに。何で心配なんかされてんだろうな……」
『たしかにショックだった。でも、それは紡さんを心配しない理由にはならない。放っておけない』
「天王寺……」
表情で感情を表すのが苦手な分、天王寺は思ったこと、感じたことをはっきりと口にする。そのストレートな言葉に、俺はなんて言葉を返したらいいかわからなかった。
『同好会に紡さんがいないと、寂しい。それに……紡さんの為に、泣いてくれる人がいる』
喋れないでいるところに天王寺がダメ押しした。泣いてくれる人……1人、心当たりがある。あの日、あの時俺が泣かしてしまったあいつだ。
「もしかして……中須、か?」
そう聞くと、天王寺は短く『うん』と相槌を打った。
『紡さんを追い出してからずっと泣きっぱなしだった。怒ってたし、悲しんでもいた』
「……そっか」
俺は後輩を泣かした。その事実が変わることはない。だけど……行動や接し方、考え方は変えられる。謝らないと。中須に謝って、ちゃんと伝えるんだ。
『かすみちゃんと仲直りしてほしい。かすみちゃんも、紡さんがいないとすごく寂しそうだから』
「……絶対、皆から嫌われるって思ってた。自分でさえわかってなかったんだ。皆を信じてないってこと」
『私は……紡さんの良いところをたくさん知ってる。誰かの役に立ちたいと思える紡さんを、嫌いになんてなれない。まだ間に合う。これから皆と心を繋げばいいんだよ』
皆と心を繋ぐ……そうか、そうだよな、天王寺。その為に今まで頑張ってきたんだもんな。俺も、勇気を出さねぇとな。
「仲直りしたいのは俺も一緒だ。皆にちゃんと本音を伝えるよ。さんきゅ、天王寺。決心ついた」
『私は紡さんを信じる。信じて、待ってる』
「心強ぇ。絶対、他の皆にも信じられるような俺になるから。見ててくれ」
『うん。これからも優しくて頼りになる、素敵な紡さんのままでいてね』
「……ああ!」
通話越しでも、ちゃんと伝わった。天王寺が俺をどう思ってくれてたのかが。勇気、もらえた。今度こそ期待に応えてみせる。天王寺、ありがとう。吹っ切れたわ。
また学校で会おうと天王寺に伝え、そっと通話を切るボタンを押した。通話画面から戻ると、さっきまで見ていた繋の記事が表示される。『鬼殺のツルギ』の主題歌を作るにあたってのインタビューだ。最後の文章にはこう書かれていた。
『家族や友人。それらの絆は誰であろうと大切なものの筈です。私にも大切な人がいて、いつかその人に届くようにという想いも込めてこの曲を作りました。『鬼殺のツルギ』という素晴らしい作品を通して私の大切な想いが伝わり、そして皆様の心を動かせるような、そんな1曲になっていれば心から嬉しく思います』
「伝わったよ。……
今度は俺の番だ。同好会の皆に、姉さんに。本当の気持ちを伝えよう。待っててくれ、皆。