虹×夢カラフルデイズ 作: 龍也/星河琉
浅い眠りから目覚めた俺は、すぐにベッドから出て1回深呼吸をした。ベランダに出て空を見上げると曇り空が広がっていて、梅雨特有のどんよりとした空気を感じる。もう少しで梅雨が明けて晴れ模様になるらしいけど、この空を見る限りしばらくは続きそうな気がする。
しばらく外の空気を吸った後に部屋に戻り、学校へ行く準備を進めた。時間割は歩夢に教えてもらったので良いとして、残るは心の準備だ。今日、なんとしても皆に伝えなきゃいけないことを伝える。その為に必要なのは勇気だ。あん時の緊張とはまた違った何かがあるが……それでもやる。やらなくちゃ。
「……行くか」
今1度気合いを入れて家を出て、俺はいつもの待ち合わせ場所へ向かった。そこにはやっぱり、待ってくれてる人がいた。
「おはよう
「うん。おはよう、歩夢」
歩夢が笑顔で挨拶してくれて少し心が安らいだ。もう何度も交わしている挨拶の筈なのに、なんか新鮮な気分だな。俺も歩夢に挨拶を返し、2人で虹ヶ咲へと向かった。
「ごめんな、心配かけて」
「大丈夫だよ。風邪、治って良かったね」
「ああ。まさかほんとに風邪ひくとは思わなかったわ」
「もう、次からはすぐシャワー浴びるんだよ?」
「りょーかい、善処するよ」
歩夢にかるーく釘を刺されながら歩を進める。俺が熱出て爆睡してた時何度もメッセージを送ってくれてたし、マジで心配してくれてたんだよな。これからはちゃんと気を付けねぇと……。
「
バスに揺られながらスマホをいじってると、歩夢に小声で話しかけられた。
「えっ、あー。一応聞くけど、何でそう思った?」
「なんか……いつもの
「いや、歩夢がそう見えたんなら気のせいじゃないだろ。ってか鋭いよ。察し良すぎだろ歩夢」
「やっぱり。何かあったんだ」
この幼馴染は……態度に出してないつもりだったのにすぐ何かあったと察する。長い付き合いだからわかるのか、それとも俺がわかりやすすぎるのか。まぁ、勘付かれたならしゃあない。話そう。
「俺が熱出してた時さ、
「ええっ!? 繋さんが!?」
「ばか! 声でけぇよ!」
そんなに驚きだったのか、歩夢が珍しくでかい声で聞き返したので俺は慌てて口に人差し指を当てて静かにするよう促す。バスの乗客の視線が俺達に集まってきていて頬が熱くなった。
「ご、ごめん……それで、繋さんが来たって……本当?」
「マジ。大マジ。んで、家に繋が来たから色々聞いたんだよ。今までの事とかさ。そしたら、俺の為に色々やってくれてたみたいなんだ」
「繋さんが……
「話聞いて、俺は今まで何も見れてなかったんだって気付いた。『嫌い』だって跳ね除けて、善意を蔑ろにしようとしてた。そんなのはもう、嫌なんだ」
繋は『仕方がない』、『つむぎは悪くない』とも言ってくれた。たとえ何も知らなかったとしても、それは目を背けてたことが許される言い訳には決してならない。
「これからは繋さんとも向き合うの?」
「うん。まずは同好会だ。そっから、また改めて繋と話してみる。……できっかなぁ、仲直り」
「できるよ。かすみちゃんや皆、それに繋さんとも。
そうか。歩夢がこうして言ってくれるのも『信じる』ってことだよな。明確な根拠は無いけど、信じたいから信じる。繋の言う通りかもしれない。だったら俺も同じことをすれば、もしかしたら……やっと気付いた。こんな身近に、『信じる』ことを体現してくれる人がいたんだ。距離が近すぎると見えないことも、あるんだな。
「歩夢、ありがとう。歩夢のおかげで気付けた」
「どうしたの?」
バスを降りて、俺は歩夢にあらためてお礼を言った。歩夢は不思議そうに首を傾げたが、続けて言葉を紡ぐ。
「わかったんだ。皆に伝えること。俺、歩夢を信じる。先のことはわからないけど、信じてみたい。だから歩夢も、俺を信じてくれ!」
俺と歩夢。付き合いは長いけど、俺から歩夢に信じると伝えたことはなかった。全部歩夢からの一方的なものだった。でも今度は俺から歩夢に。少し照れ臭いが、1番に伝えなくちゃいけない相手にそれを伝えたら、花が咲いたような笑顔を俺に向けた。
「信じてるよ、ずっと。言ったでしょ? 『側にいる』って」
「そう言ってくれると思ったけど、予想以上に即答だなぁ……」
「当たり前じゃん。だって私が、
「それは言えてる。こうなりゃ頑張らない訳にはいかねぇ。さァてと。行くか、歩夢!」
「うん! 行こっ!」
気合いは充分。よし、行ける気がする。今度こそ失敗しない。絶対、気持ちを伝えてみせる。できるできないじゃない。やる。行動に起こさねぇとな。真っ向から向き合ってみせる。
今日の授業が全て終わり、何事もなく放課後を迎えた。歩夢から先に部室に行くと言われたので了承し、俺はゆっくり席から立ち上がり、教室を出ようとした時、校内放送が流れた。
『普通科2年、
「……はい?」
この声、優木さんか? 優木さんだよな? 何で……。
『繰り返します。普通科2年、高階紡さん。校内にいましたら、至急屋上まで来てください!』
2度目のアナウンスが流れた時、俺はハッとした。これ、あの時と同じだ。俺が優木さんと話す為に屋上に呼び出した時。そこでスクールアイドルを続けてほしい旨を伝えた。まさか……優木さん、あの時みてぇに……綺麗に立場が逆転したな。驚きだよ。
「さ、行きますか」
そっちから呼び出してくれるなんて話が早くて助かる。行こう、優木さんが待ってる屋上まで。