虹×夢カラフルデイズ   作: 龍也/星河琉

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第19話 語り合う2人

 2時間目の授業が終わった休憩時間の最中、俺は屋上のベンチに座り、晴れ渡る青空を眺めていた。最近は良い天気が続いており、気温もだいぶ高くなって夏の訪れを感じる。程良い陽気に若干の眠気を感じ、あくびをしたところに、1人の男子生徒が現れた。

 

「やっ。奇遇だね。(つむぎ)君」

 

「……創一(そういち)

 

 軽く手を振りながら俺の方に近付いてくる男子生徒。そいつの名前は『萬代(まんだい)創一(そういち)』。俺と同じ普通科のクラスメイトで、最近できた友達だ。サラサラの金髪、俺より高い身長。完璧なルックスをお持ちのニクい奴でもあるが……。

 

「隣いい?」

 

「おう。ってか何が奇遇だよ。お前普段屋上来ないだろ」

 

「アハハッ。バレてた? 紡君と話したくてさ」

 

「ま、いいけど」

 

 わざわざ俺がいる屋上まで来て話しにきてくれるあたり、そこそこ信頼されてるんじゃないかとは思う。こいつの今までを考えるとそうなるのも無理はないし、創一の気持ちも、俺はある程度わかってるつもり。こいつも昔の俺と同じで、友達作りがあんまりできてなかったタイプっぽいし。

 

 ふと気になることがあったので、俺の左隣で空を見上げてる創一に聞いてみることにした。

 

「なぁ、ちょっと聞いていいか?」

 

「何だい?」

 

「創一にはさ、何かやりたいこととか、夢とかあんの?」

 

「夢、ね……」

 

 いつものようなキザで少々ナルシストな態度が鳴りを潜め、創一の表情が暗くなった。どうしてそうなったのかは、質問から数秒経った後に気が付いた。

 

「……そっか、家業継ぐんだっけか」

 

「予定ではね。『マンダイ』でおもちゃを作って、それを世に出す。夢のある仕事だよ。けど、ボクは……」

 

 創一は『マンダイ』という大手おもちゃメーカーの御曹司で、将来は家業を継ぐことになっているとこの前ちらっと聞いた。家がそうだからか、趣味も特撮やアニメ等で、俺がせつ菜さんからもらった『レイワン』のマスコットをペンケースに付けていたら創一が反応を示し、それがきっかけで友達になった。

 

 実家の話をする時の創一は、このように態度が暗くなる。親や企業を嫌ってるって訳ではなさそうだけど、何か思うことはある様子。今もお茶濁してたし、いい加減気になるな。

 

「なんだよ。言ってみ」

 

「……夢があるんだ。やりたいことも。でも、その夢は茨の道だし、誰かに言ったら笑われる。そんな夢さ」

 

 あー、道理で。夢はあるけど、家業とどっちを優先しようか迷ってる、みたいな感じか。ちゃんと将来のこと考えててすげぇよ。『笑われる』。その一言で、俺は以前(つなぎ)が話していた事を思い出した。

 

「良いじゃねぇか。笑われる夢」

 

「えっ?」

 

「前に姉貴が言ってたんだ。『笑われる夢の方が叶える価値がある』って。人に笑われるってことは、それだけ前例がなくて大きな夢だからってな」

 

 元々、繋の将来の夢は歌手になることで、モデル業はそれに付随した感じなんだよな。繋はその夢を実現させた。でも俺の知らないところできっと笑われもしたし、『お前じゃ無理だ』なんて言われてたんじゃないかと思う。『いくら才能があっても、実際に成功している人は少ない』とも言ってたから、並々ならぬ努力故の現在(いま)って感じ、なんだろうな。あいつ。

 

「いいこと言うね、紡君のお姉さん」

 

「だからさ、創一がやりたいことをやればいいんじゃねぇか? どんな夢でも、俺は笑わねぇよ」

 

「紡君……」

 

 創一は今まで散々人に笑われてきた。第一印象でモテても趣味や本心を言えば皆離れていったって聞いた。好きなことを語るだけで笑われて、馬鹿にされるってあんまりじゃねぇかよ。俺はそんな奴らみたいになりたくねぇ。誰も人の夢を笑っていい権利なんて無い。夢があるんだったら、俺はそれを応援したいし、背中を押したい。同好会の皆と同じく、創一も俺にとってはせっかくできた大切な繋がりだ。応援しねぇでどうする。

 

 暫しの沈黙の後、創一がようやく口を開いた。

 

「ボク、特撮俳優になりたいんだ。動画配信者にも。特撮ヒーローになって、子ども達に夢を与えたい。それで、人々が趣味を堂々と言えるような……そんな社会を、ボクは作りたい」

 

 俺の予想に違わず、創一らしい大きな夢だった。そうだよな、やっぱお前はそういう社会を作りてぇって思うよなぁ。

 

「すっげぇ夢じゃん。良いね」

 

「さっきも言った通り、茨の道だけどね……安定しない職業だし、様々なものが求められる。実家を継げば、安全な道を保証されるって理由で色んな人から止められたし、笑われもしたよ。『そんなことできる訳ないじゃないか』って」

 

「ふぅん。歩こうとすらしてない奴らが偉っそうにな」

 

 思わず毒づいてしまった。夢を見るだけでンなこと言ってくる奴、俺とは絶対相容れないな。少しは創一の気持ちを考えようって思えないモンかねぇ。

 

「お前が本当にやりたいことなら、俺はそれを応援するよ。周りなんか気にすんな。やりたいなら全力でやればいいんじゃねぇかな、とは思う。まぁ、夢が無い俺が言っても説得力ないだろうが」

 

 わーわー言ってはみたが……俺が言えることでは決してないかもしれないよなぁ……夢もやりたいこともまだ見つかってないし。あんま偉そうなことは言えないけど、身近な人の背中くらい、押させてくれや。

 

「ううん。そんなことないよ。ありがとう紡君。元気出た。やっぱり……キミは良い人だ」

 

 創一は嬉しそうにそう言った。ンな真っ直ぐな眼で『良い人』って言わないでくれ。恥ずい……。

 

「そ、そうか? 当たり前のことだろ」

 

「その『当たり前』ができない人、ボクはたくさん見てきてるから」

 

「話聞いてるとお前ホント人間関係ズタボロだったんだなって思うよ……よく心折れなかったよな」

 

 こいつのメンタルの強さには本当に驚かされてる。普通ならとっくのとうに折れててもおかしくない。顔良くて勉強も運動もできる奴なのに、趣味でそんなマイナスになるもんなんすかね……一部では『残念イケメン』というけっこう不名誉なあだ名で呼ばれてることもあるし、苦労人であることに間違いはない。けどそれを気にしてるふうには見えんし、なんか最近は前よりも元気になってる気がする。

 

「まあね……でも今はキミがいる。ボクはそれだけで満足だよ。1人でも理解者がいてくれるなら、まっすぐに進める気がする」

 

「そうかい。力になれたなら良かった」

 

 そう言ってくれるのが俺にとって救いだわ。できる限りこいつの力になりたい。『仮面リーダー』の話には乗れるしな。理解者がいてくれるだけで、どれだけ心が楽になって、どれだけ心が救われるか。俺は知ってる。俺もあんなふうに、誰かの心に寄り添える……そんな人間になりたい。

 

 

 

「いつか……紡君の夢も見つかると良いね」

 

「俺の、夢?」

 

 創一の話から発展し、他愛ない談笑をしていたら急に俺の夢の話にシフトした。

 

「うん。でも焦る必要はないと思う。ゆっくり見つけていくといいよ。自分がやりたいことと照らし合わせたりしてさ」

 

「俺のやりたいこと、か。うーん……」

 

 創一にそう言われ、俺は顎に手を当てながら考える。やりたいことと照らし合わせる。夢を見つけるにあたって、俺はその方法思いついてなかったな。盲点だった。俺の生きる意味はもう見つかっちゃいるが、夢ってなったらまた話は違ってくる。

 

 やりたいこと……1つ思い浮かぶものがあった。それは1度俺が希望を見出したもの。そして……絶望して見切りをつけたものでもある。どうするべきか考え込んでいたら、隣の創一から肩を叩かれた。

 

「ね、もうすぐ授業始まっちゃうよ。行こう、紡君!」

 

「はいよ。行くかぁ」

 

 俺達は小走りで屋上を出て教室へ向かう。その間、先程創一から言われた俺の夢云々の話が、しばらく脳内で反芻されていた。

 

 

 

 

 

 

 授業と同好会を終えて家に帰るなり、俺は自室のクローゼットの前に立った。クローゼットを開け、中に入ってる物をどかして『ある物』を探す。思いの外、それはいとも簡単に見つかった。ゆっくりと動かし、部屋に配置する。もう何年も表に出してないから埃を被ってはいるが、おそらくまだ動くはず。

 

「……もう、使わないって思ってたんだけどな」

 

 電子ピアノ。俺が音楽の習い事をしていた時に、父さんが買ってくれた物。ピアノと一緒に楽譜や音楽関係の本も見つかった。当時のこと、母親のことを色々思い出す。その記憶に負けそうになるが……俺はもう、逃げない。1度は目を背けて逃げたが、今の俺だったら……。

 

「俺は……変わる」

 

 制服のネクタイをぎゅっと握り締め、目の前にあるピアノを見据えながらそう呟いた。

 

 

 




未来は創るもの




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