虹×夢カラフルデイズ 作: 龍也/星河琉
1学期の終業式が終わった放課後、俺達は同好会の部室に集まっていた。かすみはカバンから取り出したテストの答案用紙を見ながら悶々としている。
「うううう……こんな点数なんて……」
「22点でにゃんにゃん♪ 可愛いじゃん!」
「全然可愛くないよぉ!」
かすみの答案を覗き見してみると、しずくの言う通り本当に22点と書かれていた。まじかかすみ……22点ってどうやったらとれんだよ……ガチガチに赤点じゃねぇか。たしかに日頃から勉強してるふうには見えんかったけども。まさかそんなに勉強苦手だったとは。しずくは一応フォローしてたが、あんまりフォローになってねぇ気がするのは俺だけだろうか……。
「まぁ、勉強は追々かすみに教えるとして、何はともあれ……これで1学期も終わりだな」
「明日からいよいよ、待ちに待った夏休み!」
かすみの勉強なら後でいくらでも見れるだろうし、テストの点数は今は置いとくとしよう。
4月から始まった新学年での学校生活も今日で1学期が終了。ほんとに色々あったなぁ……俺と歩夢がスクールアイドルに出会い、一緒に夢を追いかけるようになって。そこでたくさんの信じられる仲間もできた。喧嘩もして、繋と仲直りして。皆のおかげであっという間の数ヶ月だった。夏休みに入っても活動は変わらずあるだろうし、休みの時も皆と会えると思うと嬉しくなる。
「今からスクールアイドル同好会、夏合宿出発です!」
せつ菜さんが張り切った口調で『合宿』という俺が聞き覚えのない単語を発した。え、初耳……いや、なんか1週間前にそんな話を小耳に挟んだような気が……関係ないと思ってスルーしてたけど。
「合宿?」
「はい! 皆さんでお泊まりしながら、日頃足りていない練習をしたりするんです!」
せつ菜さんに改めて聞くと、俺が予想してた通りの答えが返ってきた。やっぱりな。お泊まりですよね。じゃあ関係ないな。あとはせつ菜さん達に任せれば大丈夫だろう。今日のところはこれで退散しよ。
「……ほーん。良いじゃん。帰ってきたら話たくさん聞かせておくれ。じゃあな皆。おつかれー」
「待ってくださいつむぎさん! 帰っちゃダメです!」
「えっ?」
カバンを持って部室から出ようとしたら腕を掴まれて止められた。せつ菜さん握力強くない……? けっこうな力で腕握ってくるんだけど。
「合宿には、つむぎさんも一緒に行くんですよ?」
「は!?」
帰るのを止められたから何事かと思いきや、想定外のことを言われて勢いよく聞き返してしまった。何で? 何で俺も? こればかりは皆だけで行けば良くない!?
「当たり前じゃない。紡も同好会のメンバーなんだから」
「ちょっ、ちょちょちょちょっと待って!! 落ち着け!? 落ち着こう!? ねぇ!?」
「まず紡が落ち着きなさいよ」
果林さんから冷静にツッコまれるが、落ち着いてられっか! しずくとか璃奈が不思議そうな顔をしてるのを見て、事の重大さをわかっていないのではないかと思い始めてきた。あんまし自分の口から言いたくなかったが、わかってもらう為にもここはちゃんと指摘しとくべきだな。
「合宿、皆で泊まるって言ったよな? そこに異性の俺が入るのはまずくねぇか!?」
このスクールアイドル同好会は女性が9人で男性は俺1人のみ。この比率は、普通に同好会で活動する上でそこまで問題にはなってない。皆俺を受け入れてくれたし、男の俺にも対等に接してくれるから。でも『お泊まり』となれば話は違ってくる。思春期の男女が寝泊まりを共にするなんて普通に考えればヤバいだろ。ってか何故それを誰も指摘しない。もしや皆俺が普通に何も言わずに着いてくと思ってたの? そんな訳にいかねぇよさすがに!! 俺がやべーやつどころか犯罪者になっちまうだろ!!
「そんなの気にしなくて良いんです! 私は、つむぎさんに来てほしいから言っているんですよ?」
うわぁぁぁぁ……そうくるかぁ……せつ菜さんなら薄々そう言うんじゃないかと予想はしてたけどさ。さっきから悪い予感ばっかり当たるのなんなんだよ。どうしよう……あっ。名案が浮かんできたぞ。
「わかった! じゃあ多数決にしよう! 1人でも反対の人がいたら俺行かないからね! うん! そうしよう!」
「わかりました。その案、乗りましょう!」
ナイス。こういう場において多数決は非常に役に立つ。しかも全員一致じゃないとダメというルールまで付けた。これは勝ったね。勝ったでしょ。誰か1人でも反対の方に手を挙げたら俺が合宿に行くことはなくなる。9人いるんだ、さすがに1人か2人は反対する人が出てくるはずだ! それに賭けよう。ってか賭けるまでもねぇわ。申し訳ないが、今回ばかりは俺抜きで合宿に行ってもらうぞ皆!
「んじゃ、『男子の俺が合宿に混ざることに反対の人』手ぇーあーげてっ!」
自信と確信を持って元気よく反対意見に手を挙げるよう促したら、部室がしん、と静まり返った。誰1人として手を挙げない。何かの間違いだと思って数十秒待っても誰も手を挙げてくれない。
「……嘘でしょ」
季節は夏。暑いはずなのに背筋がひんやりしてきて、俺の頬に冷や汗が流れる。これさぁ……全員一致にして一方の意見に全員手を挙げなかったとしたら、残る意見の方に皆……はぁぁぁぁまじかぁ……結果はもう分かったようなモンだが、一応言っとくか。
「じゃ、じゃあ……『男子の俺が混ざることに賛成の人』手ぇあーげて……」
「「「はーい!」」」
「うそぉぉぉぉぉぉぉぉん!! どうしてだぁぁぁぁぁぁぁぁっ!!」
まじで言ってんの!? 9人全員賛成の方に手ぇ挙げたよ!! おかしくない!?
「満場一致で賛成ですね! それでは、つむぎさんも一緒に来てもらいます!」
「ちょっと待てェ! 良いんですか皆さん! 知ってると思うけど俺男だからな!? もしかしたら皆にその……なんつーかあの……と、とにかく! 倫理的によろしくないんじゃありませんか!?」
本当に言いたくなくて一部お茶濁したけども! 皆嫌な顔1つしないのなんなの!? びっくりだよ!!
「つむつむいた方が絶対楽しいし! 全然気にしないよ! ねっ皆!」
「そうですよ! かすみんはつむぎ先輩と一緒が良いですっ!」
「だって
「え、えぇ……」
愛やかすみがそう言ってくれんのはまぁありがたいんだけど、エマさんまでそう言うの……? いや、変なコトするつもりは微塵もないけども! それでもナチュラルに受け入れられすぎてさすがに困惑するわ!
「つむぎさんが来ないんでしたら、この合宿は無しということにしますが……」
「そうね。紡が来ないんなら仕方ないわよね」
「そうだね〜。
「
「わかった! わかりました! 俺1人の為にそんなんなるなら行った方がいいじゃん! 行きます! でもどうなっても知らねぇからな!」
それは本当にズルい。誰か1人でも来ないならやることそのものをナシにしてくるやつ。そんなん言われたら俺が折れるしかないじゃん。今何気にダジャレだったな……ってどうでも良いそんなもん! ……誤解されないように色々策を練っておくか。
「決まりですね! では改めて! スクールアイドル同好会夏合宿、スタートですっ!!」
「「「おーっ!!」」」
「お、おー……」
皆元気よく腕を振り上げる中、俺は控えめに腕を上げた。不安だ……不安しかねぇ……けど行くって言ったからには、皆にできることを見つけて、役に立てるように頑張ろう。