虹×夢カラフルデイズ   作: 龍也/星河琉

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第27話 準備は計画的に

 うだるような暑さの中、今日も今日とてスクールアイドルフェスティバルに向けて計画を進める。今日は最初にせつ菜さん達と同行し、東雲と藤黄の生徒と打ち合わせをする予定となっている。

 

「あっつ……そういえば歩夢、夏休みの宿題やってる?」

 

 手でパタパタと顔を扇ぎながら、隣で共にバスを待っている歩夢に話しかけた。

 

「うん。古典と数学はもう少しで終わるよ」

 

「さすが。俺は今年あんまりやれてないんだよねぇ……」

 

(つむ)ちゃん、いつも計画的に終わらせるのに珍しいね」

 

「家に持ち込んで色々やることがあったりもするからさ。最終日までには終わらせるようにするよ」

 

 家に申請書を持って帰って書き直しの作業だったり、あとはピアノの練習もしなきゃいけないしな。歩夢にはまだ内緒にしてるけど、だいぶ上手く弾けるようになってきたし、近々俺の『夢』のことを打ち明けよう。

 

「今度一緒に宿題やろう? 分からないところがあったら教えられるし、効率も良いと思うから」

 

「いつもすまねぇな歩夢……んじゃお言葉に甘えてそうさせてもらおっかな。あ、来た」

 

 歩夢と話しているうちにバスが来たのでパスケースを取り外した。このパスケース、買ってからずっと世話になってるな。ヘアピンと同じく、歩夢とお揃いの物だ。無くさないように基本はカバンに付けて持ち歩いてる。

 

「それじゃ打ち合わせ終わったら部室行くから、またあとでな!」

 

「うん。いってらっしゃい!」

 

 歩夢に手を振りながらバスへ乗り込み、席に座る。今日は生徒会室の時ほど堅苦しくする必要はないだろうけど、東雲と藤黄の人達にちゃんと説明して、参加してもらえるようにしなくちゃな。っしゃ。気合い入れるぜ。

 

 

 

 

 

 

 

「東雲と藤黄から良い返事は貰えた……がの話だな」

 

 打ち合わせが終わり、部室のテーブルに広げられた地図とにらめっこしながらそう呟いた。他校の生徒達は前向きに検討してくれるみたいだからとりあえず問題は1つクリア。

 

「スケジュールの方はどうなんですか?」

 

「せつ菜さんと相談中。着々と進んじゃいるけど、やっぱり……」

 

「1番の問題は会場かぁ〜」

 

 しずくと愛も地図を覗き込みながらそれを指摘した。そう簡単には決められないモンだとは思っちゃいたが、まさかここまで難儀するとは……ちと甘く見てたかも。

 

「どこの会場も良いんだよなぁ」

 

「1つに絞るって、難しいね……」

 

「歩夢はどこでやってみたい?」

 

「えっ? うーん……どこが良いかなぁ……?」

 

 歩夢に今一度どの会場が良いか聞いてみたが、歩夢も悩んでるみたいだ。どうするか……スケジュールもあるし、それに合わせて会場決めなきゃならんのに、ここで詰まってちゃ刻一刻と時間が過ぎてく一方だ。

 

「ふっふっふ……そこはかすみんにお任せくださいっ!」

 

 腕を組みながら唸ってるところに、妙にドヤ顔をしながらそう言うかすみ。もしかしてせつ菜さんの真似かその手。言っちゃ悪いけど普段がアレだからそんなに似合ってないがそれは言わないでおこう。かすみは謎の物体をテーブルの上に自信満々と言わんばかりに勢いよく置いた。

 

「はいっ! じゃじゃーん! どうですかっ!? 力作ですよぉ〜!」

 

「なんだこれ?」

 

「か、かわいいです!!」

 

「かわいいか……?」

 

「かすみちゃん、それ何?」

 

 かわいいかかわいくないかはさておいて、その謎の物体はダンボールのような箱に手と足が付いた見た目をしており、胴体にはよく見たら制服のリボンのようなデザインがある。じゃあこれもしかしてかすみを模した人形……? 

 

「名付けて! 『かすみんBOX』ですっ!!」

 

「なんとなく察しはついてたがセンスのカケラもねぇなま……ごめんなんでもない。続けて」

 

 かすみに一瞬睨まれたので即座に口を閉じ、続きを言うように促した。

 

「かすみんにぴったりの会場を募集してみました! 応援してくれる人の声にしっかりと耳を傾けていくっ! そんなアイドルにかすみんは……」

 

 そう言いながらかすみはBOX上部のフタを取る。要は目安箱みたいな感じか。他の人の意見を紙に書いてもらってそれを参考にする的な。その案は俺じゃ浮かばなかったからこれに関してはかすみが賢いな。名案だわ。でもあれ……? BOXを傾けても何も出てきてませんけど……? 

 

「はぇ……? うぇぇぇっ?」

 

「もしかして……何もナシ?」

 

「うぇぇぇぇぇん! なんで1枚も入ってないんですかぁぁぁぁっ!?」

 

「そりゃ夏休みだし、学校に来る人限られてるからな」

 

 学校に設置してたなら当然っちゃ当然と言える。部活とか用事がある人しか今時期来ないだろうしな。かと言って街中に置くとちっちゃい子供とかに壊されるのがオチだから安易に置けないし。さすがにしゃあないよこれは。

 

「うわぁぁぁぁんつむぎせんぱぁぁぁぁい! かすみん悲しいですぅぅぅっ……うっ……ううっ……」

 

「俺に泣きつかれてもどうにもならねぇよこればっかりは!?」

 

 俺に抱きつきながら泣き言を言うかすみ。誰かこいつを助けてやってくれ。お願いします。俺じゃ多分どうにもできないから……っつーかほんとに意見なんて来るか……? ちょっと怪しくなってきたぞ……? 

 

「でも、かすみんBOXってアイデアは面白いよねぇ〜」

 

「はいっ! とってもかわいいです!!」

 

「当然です! だってかすみんの『かすみんBOX』ですから!」

 

 さっきまでのしおらしい態度はどこに行ったんだよおい。BOX叩き割るぞこいつ。

 

「せっかくだし、もっと他のことも募集してみても良いかもね!」

 

 愛が紙にマジックペンでデカデカと文字を書き、それをBOXに貼り付けた。あー、その手があったか。何も貼らないよりもこうやってわかりやすく何を書いてほしいか掲示しておけば意見をくれる人が増えるかも。愛グッジョブ。愛ナイスアイデア! 

 

「わかりやすくて良いですね! では早速置いてきます!」

 

「ああっ! ちょっと待ってくださいぃぃぃっ! それじゃかすみんのかわいい顔が見えないじゃないですかぁ〜っ!!」

 

「耳元で叫ぶなかすみィ! ってかかすみ! そろそろ離れろお前! 邪魔なんだわ!」

 

「ええっ!? つむぎ先輩……もしかしてかすみんのこと嫌いになっちゃったんですか……?」

 

「いや、ただ単純に暑いから。それに、嫌いになんてなる訳ないだろ? 大切な仲間なんだから」

 

「先輩……! じゃあ好きってことですかっ!? それなら『Ilove♡ かすみん!』って言ってみてくださいっ! ねっ? せんぱ……」

 

「だーっもううるせぇ! さっさとBOX取り返しにいってこいお前はァ!!」

 

「はっ! そうでした! いってきまぁぁぁすっ!!」

 

 まったく。すーぐ調子乗るんだからあいつ。たしかに嘘は言っちゃいないが、ここで素直にそれ言ったら余計に調子乗りそうだから引きはがすついでにBOXを取り返しに行かせた。かすみのことも、皆のことも、嫌いになんてなれるはずがない。まだ皆の前では気恥ずかしくて言えないが、本当は皆が『大好き』だ。大好きなものがあるってすごく素敵なことだって(つなぎ)が言ってたが、その気持ちが最近わかった気がした。大好きだからこそ、役に立ちたいと思えるしな。

 

 同好会に入った時から俺の理念は変わっちゃいない。俺の為、皆の為に役に立つ。ここで俺がブレちゃいけない。俺がしっかりやるべきことをやらなくちゃいけないんだ。とりあえず今は、かすみのBOXが何かの役に立つことを祈ろう。あとでせつ菜さんともうちょっと詳しく話し合いもしないとな。締め切りまでもうあんまり時間がない。この数日で絶対、申請書を完成させてみせる。

 

 

 

 

 




チクリと刺さる胸の痛み




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