虹×夢カラフルデイズ 作: 龍也/星河琉
「作曲を始めてみたんだけど、今の俺じゃここまでが限界。まだまだだわ」
歩夢と一緒に帰った夜。俺は歩夢を部屋に招き、今自分が作り始めた曲の1フレーズを奏でてみた。まだ全然形になってないし、作詞もしてはいるけど纏まってない段階だ。
「そんなことないよ、
「そ、そうか?」
頬を掻きながら歩夢に問うと、柔和な笑みを浮かべて頷いた。それを見て少し安心すると同時に、絶対に形にしなくちゃいけないという気持ちがより一層強くなった。
「やっぱり歩夢って、優しいよな」
「
今、改めて思ったことを正直に口にする。ずっと前からわかってた。歩夢が優しいことは。その優しさに、俺はずっと憧れてたんだ。
「正直に言う。もし歩夢が居なかったら……歩夢と出会ってなかったら、こうして此処にいることすら出来なかっただろうなって」
「もう、大袈裟だよ」
「大袈裟じゃないさ。母さんから貰えなかった優しさも、温もりも、言葉も。全部、歩夢から貰ったんだ。だから俺はこうして此処にいる。『大切な人の為に生きたい』って、歩夢が思わせてくれたんだぜ?」
いつだって歩夢は隣に居た。弱い俺の側にいて、手を引いてくれた。母親から『生まれてこなきゃよかったのに』って言われて生きる事を見失いそうになった俺に、歩夢は『生きてほしい』って、そう言った。だから踏み止まれた。たとえ親からそう言われようと、望んだ存在じゃなかろうと。自分を理解してくれる人、自分を望んでくれる人が1人でもいるなら、それで良いじゃないかって。ホント……歩夢が居なければ今頃どうなってたんだろうな、俺。
「
「俺、歩夢に何か出来たことあったか? ずっと俺ばっかり歩夢に頼りきりで……」
「ううん。……幼稚園の頃、
「ああ……出会って間もない時、園の皆で鬼ごっこしてた時だよな」
そん時のことはよーく覚えてる。皆が公園で鬼ごっこしてる中、歩夢が転んで怪我してた。そこに俺が駆け付けて、絆創膏を渡した。そっから急速に歩夢と仲良くなれた気がする。
「あの時、その場にいた
「泣いてる歩夢を放っておけなかったんだ。自分が行かなきゃって。助けなきゃって思ったら、体が動いてた」
「ふふっ。今も昔もそういうところ、変わってないよね」
今も昔も……って、今はたしかに人に優しくしたいって思うけど、昔は全然そんなんじゃなかったぞ……?
「いや、俺がそうなれたのは歩夢が居たからで……」
「違うよ。
「マジ……? 歩夢に、俺が……?」
全然自覚なかった。まさかよ。歩夢にたくさんのもの、あげれてたのか。
「形に残らない大切なもの。でもそれは全部、私の心の中に残ってる。
「道理で昔の事、よく覚えてる訳だ。恥ずかしいことまでぜーんぶ」
歩夢にとっても大切な物だったんだな、昔の思い出。些細なことも大きなことも、全部ひっくるめて記憶として頭の中にちゃんと残ってる。
「忘れられる訳ないよ。たとえ
「あははっ! バーカ、俺だって忘れるかよ。そう簡単に忘れられないよ、歩夢との思い出は」
俺も歩夢も同じことを考えてたのがなんだか可笑しくって、2人で笑い合った。そうだ。歩夢だって俺を大切に思ってる。側に居たいって真っ直ぐ向き合ってくれる。その存在が、どれだけ俺の助けになってるか。歩夢にとっても、俺が少しでも助けになれてるみたいで良かった。本当に……良かった。歩夢に言われて初めて自覚できた。幼馴染の為に、ちゃんと何か出来てるってことを。
俺達はしばらく昔の話をした。あんなことやこんなこと。楽しい事、辛い事。色々あった中で、当時互いに思ってたことを話したりして思い出に浸った。俺は昔の事はあんまり思い出したくない派だったんだけど、今はそうでもない。むしろ思い出して気付けることもあるんだって歩夢と話す中で分かった。そこから、また一歩前に進める感じがするしな。
ひとしきり話し終わったところで、歩夢が姿勢を正しながら俺と向かい合った。
「ねぇ、
「歩夢?」
「……ぎゅーって、していい?」
「いきなりだな……ってか、それはもう学園でしただろ?」
「昔みたいに、
昔。それは俺が1番辛かった時。毎日歩夢に縋りついたあの時。
「……良い、よ。歩夢がそうしたいなら、いくらでも」
照れ臭くてその一言が出るまで多少時間がかかったが、なんとか言葉にできた。それを聞いた歩夢はゆっくりと距離を詰めて密着し、俺の背中に手を回した。もう、こうして何度抱きしめ合っただろう。そうする度に不甲斐なさと申し訳なさが募っていった昔の俺。でももう、あの日の
「ありがとう」
色んな事を思い出しながら歩夢にそう伝えた瞬間、目から溢れ出た物が頬を伝う。瞳を閉じるともっとソイツが流れ出てくる。歩夢にそれを悟られないよう、俺も歩夢の背中に手を回した。
お互いの温もりを確かに感じながら、俺はより一層歩夢をぎゅっと強く抱きしめた。