虹×夢カラフルデイズ 作: 龍也/星河琉
満点の青空、眩しい陽射しの下。ついにこの日がやってきた。スクールアイドルフェスティバル当日。今日この日を迎える為に俺達はめちゃくちゃ頑張った。色々問題抱えることもあったけど、無事に開催することができた。
こないだ歩夢にも伝えた通り、今日はやることがたくさんありすぎるから皆のステージはゆっくり見ていられない。会場の見回り、トラブルの解決やビラ配りとか、主催側の人間として仕事しなくてはならない。皆の晴れ舞台を見られないのは少し残念だけど、俺は皆を信じてる。きっと良いライブをしてくれるはずだ。
フェスの事前打ち合わせを終えて、俺はダッシュで部室へと向かう。ドアを開けると、部室にはライブ衣装に着替えた皆がそこに居た。
「おーっす。準備終わったかー?」
「はい! バッチリです!」
「よし。衣装、やっぱよく似合ってるよ。せつ菜さん」
「ありがとうございます! つむぎさんのフェスTシャツもよくお似合いです!」
「そりゃどうも。って、誰が着ても同じだと思うけどな……」
赤と紺のライブ衣装に身を包んだせつ菜さんと話しつつ、Tシャツの裾を引っ張りながら苦笑いした。俺が着てるのはスクールアイドルフェスティバル用に作ってもらった黒いTシャツ。実行委員である俺や生徒会の人が着るのはもちろん、同好会の皆も持ってるしなんなら一般のお客さん用に物販コーナーでも売られてる。通気性抜群だから普段俺が着てる制服のポロシャツより何倍も涼しい。といっても今日は夏の最高気温更新した猛暑日だから暑いことに変わりないんだけどな!! 晴れて嬉しいんだけどまだライブ始まってもないのに若干背中に汗が滲んでる。ぶっ倒れねぇように暑さ対策しないとな。
「東雲も藤黄も、もうステージに向かうってさ」
「よーっし! じゃあ行きますか!」
「あっ。愛さん、その前に……」
「大事なことを忘れていますよ!」
「あははっ! ごめんごめん!」
大事なこと……あーあれか。せつ菜さんが当日にずっとやりたいやりたい言ってたあれ。
部室の真ん中に集まって皆で手を重ねる。9人全員の手が重なったその上に、俺の右手をポンと乗せた。皆それぞれ場所は違えど、想いは、心は1つ。『一致団結』といこうじゃねぇか。
「それじゃつむぎ先輩、お願いします!」
「へっ!? 何で!? 俺こういうのやったことないんだけど!?」
いきなりかすみに円陣の音頭をとるようお願いされて面食らう。もっと良いこと言える人を選んでくんない!? 歩夢とかせつ菜さんとかさぁ!!
「
「つむつむ早くー!」
「
「モタモタしてる暇はねぇな……かすみ、俺の後にお前にも何か言ってもらうからな?」
「えっ、かすみんもですか?」
「あたりめーだろ! 俺1人じゃ荷が重いからお前も巻き込んでやるわ!」
「ふっふっふ! そういうことなら……おまかせください!」
何故か自信満々なかすみを横目に俺は短く咳払いをして呼吸を整え、言いたいことを頭の中でまとめた。
「皆のおかげで、ここまで来れた。ありがとう。皆それぞれの舞台で悔いのないよう、たくさん思い出作って……またこの部室に戻ってこよう。……気張っていこうぜ!!」
部室内に声を響かせて皆と決意を共にする。歩夢達は力強く頷いて、決意に満ちた表情でお互いに顔を見合わせた。
「……かすみ!」
「お願い、かすみちゃん!」
「はい! 任せてくださいっ! それじゃ、行きましょう!!」
皆に合言葉を共有し、準備は万端。気合い、やる気、勇気。全部充分。さぁ、行こうぜ!
「「「私(俺)達の虹を咲かせに!!」」」
皆で手を上に掲げ、スクールアイドルフェスティバル開催を今ここに宣言した。俺、今すげぇワクワクしてる。こんな気持ち、初めてだ。これが円陣か……そりゃせつ菜さんもやりたいって思うわな。仕事の前に同好会でこれをできて良かった。
皆颯爽と部室を出る中、それにあおられたのか、1枚の紙が宙を舞った。ジャンプしてそれをキャッチすると、その紙は俺が直近で探していたものだった。
「あーっ! 歌詞書いたルーズリーフの切れっ端! 何で今になって出てきた!?」
……マジで何で? こないだこの紙に俺が思いついた中で1番好きなフレーズを書き出して、それをもとにして考えてみようと思った矢先に失くしてガン萎えしていた。部室中どこ探しても見つからなくて諦めかけてた時に急に見つかったよ。部室のどこにあったんだ……? それに何かこのルーズリーフ……仄かに良い匂いがする。
「つむぎ先輩? どうしたんですかっ!?」
「あーいや、ここ最近ずっと探してたコイツが今やっと見つかってさ。部室のどこに紛れてたのか気になってたとこ」
「……み、見つかって良かったですね! そんなにこれを見つけたかったんですか?」
「まあな。俺が1番大切にしたい言葉とかフレーズを書き並べたモンだから」
「やっぱり……そうだったんだ……」
かすみが珍しく神妙な面持ちでボソッと何か呟いた。
「ん、かすみ?」
「い、いえ! なんでもないですっ! さ、つむぎ先輩! 行きますよ!」
「お、おう? 俺も行くけど……あっ、かすみ!」
何故か急いで部室を出ようとするかすみを呼び止め、俺はあることを伝えようと今ふとそう思った。言うべきか言わないべきか迷ったが……本番の前に言っておきたい。かすみ以外の皆が出て行った今だったら、なんとか伝えられそうな気もするし。
「先輩?」
「ずっと、素直にお前に伝えるのが照れ臭くて言えなかったけど……今言うことにした。……1回しか言わねぇぞ」
「な、なんですか……?」
不思議そうな顔でそう問いかけるかすみの前に立ち、どんどん上がっていく頬の熱さに耐えながら、俺は息を吸った。
「……かすみは
「えっ……つむぎ先輩今、かすみんのこと……!」
「可愛いって言ったんだ! はっずいから何度も言わせんな! ホラ、早く行くんだろ? 急ごうぜ、かすみ!」
恥ずかしさを誤魔化すように早口で捲し立てながらかすみにそう言った。なんかさっきから、かすみの様子がいつもと違うように感じてた。緊張してるような、それでいて若干怖がってるような。本番でかすみらしさを最大限出せるように送る言葉はただ1つ。『自分に自信を持たせる言葉』だ。かすみが1番に喜ぶ一言を俺は知ってる。普段から聞き慣れた、耳たこなあの言葉。俺からの一言を聞いたかすみは、目に涙を溜めながら微笑んだ。
「はい! 先輩がかわいいかすみんにメロメロになっちゃうような、そんなライブをしてきます!!」
「ははっ! その意気だ! やってやれ!」
いつものかすみだ。どうやら緊張は解れたみてぇだな。コイツに『可愛い』はマジで効果抜群だな。人1人に面と向かって可愛いって言うのこんなに恥ずかしいならもうしばらく言える気しないけど。まぁでも、たまには悪くない、かも。
かすみと共に部室を出て、俺達はそれぞれの方向に分かれて移動した。俺は俺のできることを全力でやり抜く。その為に、今日があるんだからな。
時計の針が12時を指した瞬間、花火の音が会場に響き渡った。ここから始まるんだ。俺の、俺達の夢が。『皆の夢を叶える場所』が、此処にある。さぁ、スクールアイドルフェスティバルの始まりだ!!