虹×夢カラフルデイズ   作: 龍也/星河琉

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お久しぶりです。だいぶ期間が空いてしまい申し訳ございません。2章残りわずかです。最後までよろしくお願いします。


第39話 まだ終わりじゃない

 スクールアイドルフェスティバルの盛り上がりは最高潮を迎え、たくさんの人がフェスを見に来てくれていた。俺のすぐ近くでお客さんの歓声が聞こえて、より一層気張っていこうと思ったその瞬間、冷たい水が頭上に落ちてくる。

 

「……は? 雨っ!?」

 

 雨が降り出した。さっきまでの晴れ空が鳴りを潜め、どんよりした雲が空を覆い隠し、それに比例するかのように雨が徐々に強まっていく。

 

「嘘だろ……? 天気予報晴れだったはずなのに!」

 

 急いでポケットから携帯を取り出し、天気を確認してみると、夕方までの時間帯が全て雨予報に変わっていた。19時以降は曇りの予報になってるが、それじゃダメだ。ライブのステージが使えるのは19時まで。決められたスケジュールでライブをするって決まりになってるから、たとえ悪天候でも延長は認められない。

 

「何で……こんな時にっ……」

 

「つむぎ先輩!」

 

 雨に打たれながら唇を噛むと同時に、後ろからかすみの声が聞こえてきた。

 

「……かすみ」

 

「早くテントの中へ! 風邪ひいちゃいますよっ!」

 

「……ああ。今、行く」

 

 雨水で濡れた髪を揺らしながら、かすみと共に備え付けのテントへ向かった。テントの中へ入ると、既に複数の生徒が雨宿りをしていて、同好会のメンツもいた。入ってすぐに彼方さんからタオルが差し出された。

 

「雨、いつ止むんでしょう……」

 

「さっき確認したんだけど、止むのは7時だ。もしかしたら早めに止むかもしれんけど、この雨じゃあな……正直厳しいと思う」

 

「そんな……ステージが使えるのは7時までなのにっ……」

 

 かすみが悲しげな表情で俺を見る。そんな顔しないでくれよ……俺だってホントは叫びてぇよ。せっかくの皆のステージなのに。皆楽しみにしてたのに。それがいきなりの大雨で全部台無しだ。

 

「……とりあえず、雨が止むまで待とう。俺達にできるのはそれだけだ」

 

 もらったタオルを頭に被せ、俺はパイプ椅子に腰掛けた。どうしよう……この状況。何とかするにしても、雨が止まなきゃ始まらない。ステージはそのほとんどが屋外に設営してあるし、雨で機材がお釈迦になっちまう可能性もあるから無理やり決行することは不可能だ。雨水で滑ってステージ上のスクールアイドルがケガするかもしれねぇし。こればっかりはどうしても天候に左右されるから俺達がいくら考えようと、打開策が見つかるはずは無い。ただ、待つことしかできない。悔しいけど……一筋の希望に賭けて待ってよう。

 

 

 

 

 

 

 

 あれから数時間。予報通り雨は止んだが、もう時刻は7時を過ぎていた。さっきまでいてくれたお客さんの声がまったく聞こえないし、もう皆帰っちゃったんだろう。雨が止むのを待つ間に、予定してたができなかったライブに黒い線を引いて中止とした。マジで辛かった。皆がやりたかったはずのステージなのに。東雲や藤黄の生徒達の悔しそうな顔を見る度に、罪悪感が増してく一方だった。

 

 一旦近くにいた人達全員で集まり、雨が止んだ空を見上げた。

 

「これで……終わりなんですか!?」

 

 この空気に耐えられなかったのか、彼方さんの妹の遥さんが、静寂を破った。もう分かりきってることではあるが、口に出さずにはいられなかったんだろう。俺だって信じたくねぇよ。けど、今この場にある事実は変わらない。正直に言うしかないか。

 

「そうだな。もうステージは使えねぇし、集まってくれた人達も……帰っちまっただろうし」

 

 ここまで来るのに多くの時間を費やして、かなり無理もして。それで作り上げた皆の為のステージなのに。予定してたライブの半分くらいしかやれずにフェスティバルが終わってしまった。不完全燃焼にも程があるだろマジで。

 

「こんな……」

 

 皆の悲しそうな顔を思い浮かべて、俺は強く拳を握る。爪が食い込んで掌に鋭い痛みが走る。でもこんな痛み、スクールアイドルの皆が感じた痛みに比べりゃ全然マシなはずだ。

 

「こんな終わり方があるかよっ!!」

 

 やるせない気持ち、悔しさを吐き出すように俺は声を荒げて叫んだ。立場的に俺がこんなことしちゃいけないのは分かってる。でも叫ばずにはいられなかった。悔しいし、辛ぇよ。胸のあたりがズキズキ痛むんだよ。どんだけ悔しがろうと、終わりなことに変わりはない。下を向いたまま歯を食いしばっていたら、両肩に優しい感触が走る。

 

「顔を上げて、(つむ)ちゃん」

 

 そう言われて顔を上げると、目の前に俺の肩を掴んだ歩夢がそこに居た。悔しそうな顔も悲しそうな顔もしておらず、まだ希望を捨てていない。そんな表情の歩夢だった。

 

「歩夢?」

 

「終わりじゃないよ。(つむ)ちゃんが繋いでくれたステージを、これで終わりになんてできない。……まだ、伝えたいことがあるから!」

 

「いや、でもっ……」

 

 歩夢に言葉を返そうとした瞬間に着信音が鳴る。開くと、今日幾度となく電話が来た実行委員からだった。多分、フェス終了のお知らせだろう。そう思いながら、応答してスマホを耳に当てた。

 

(つむぎ)先輩! 雨、止みましたね!』

 

「へ?」

 

『皆待ってますよ!』

 

「皆って……?」

 

『皆は皆です! ほら!』

 

 電話の声と同時に通知が来たので開いてみると、1枚の写真が送られてきた。そこに写っていたのはライブ会場と、もう帰ったと思っていたはずのお客さん達で埋め尽くされた様子だった。

 

「ちょ、ちょっと待って! これ、どういうことだ!?」

 

『副会長が、あと1ステージだけやれるように、学校に掛け合ってくれたんです! それぞれのステージにも、まだ人が残ってます! だからまだ、終わりじゃないです!!』

 

「……マジか」

 

 副会長が……そんなことを。フェスティバル開催を了承してくれたものの、ちゃんとした規律に従う、且つ決められたルールの上でライブをするようにと1番徹底して言ってたあの副会長が……? あの人がこんな無茶を……ってことは副会長も、納得いってなかったんだな。このままフェスティバルが終わっちまうことに。実行委員から『急ぐように!』とだけ言われてプツリと電話が切れ、いきなりの出来事すぎて頭の理解が追いついていない中、この場にいる人達がダッシュで会場に向かい始めた。

 

「つむぎ先輩! 私達も!」

 

「急ぎましょう、つむぎさん!」

 

「あっ、おい!」

 

 かすみとしずくがそう言って走り去り、彼方さんと果林さんもそれに続く。

 

「ふふっ。泣くのはまだ早いわよ? (つむぎ)

 

「べっ、別に泣いてねぇし! ……って行っちゃったよ。はぁ……? 何がどうなって……」

 

「ほら、(つむ)ちゃん! 行こっ!」

 

「ちょっ、歩夢!」

 

 いきなりの事でしどろもどろしてる中、歩夢が俺の手を握り、あのライブ会場がある方角へ手を引っ張って走った。ええい、こうなったら俺も全力だ! あの場所に向かってみよう。ホント、副会長に感謝だな。ありがとう、俺達の夢を終わらせないでくれて!! 感謝感激雨あられってやつだ。もう雨は止んでるけど。とりあえず急ごう、俺達の見たい景色ってやつが、そこにあるんだろうしな! 

 

 

 

 

 

 

「はっ……はっ……着いた……」

 

 歩夢と共に全力ダッシュでライブ会場に向かい、無事到着。写真に写ってた通り、たくさんの人がこの会場に来てくれていた。辺りはもうすっかり暗くなっていて、時間的にもう夜になっていた。

 

 歩夢が俺の手をそっと離し、ゆっくりと歩き出す。その視線の先には、俺達……虹ヶ咲学園スクールアイドル同好会の皆が立っていた。『俺を待っていた』と言わんばかりに。それに皆、さっきまでの表情とは違う、希望に満ちた顔だった。せつ菜さんが俺を見て嬉しそうに笑い、愛が笑顔で俺に手を振った。

 

「皆……」

 

(つむ)ちゃん」

 

 今まで何度も呼ばれた俺の名前。その名を呼ぶ歩夢の声音は今までにないくらい、決意に満ちたものだった。

 

「このステージは、客席から見ててほしいの!」

 

「え?」

 

 俺が客席で? 俺、フェスティバルの実行委員だし、機材の調整とか俺の役目のはずなのに。歩夢の後ろにいる皆も、どうやら歩夢と同意見のようだった。せつ菜さんとかすみが頷いてる。

 

「……わかった。客席で、皆を見てるから」

 

 皆が望むなら俺はそうしよう。今日はずっと動き回ってたからライブもロクに見れてないし。……よっしゃ。皆の晴れ姿を、この目で見届けることにしよう。

 

 

 

 




夢を追いかける者達




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