虹×夢カラフルデイズ   作: 龍也/星河琉

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読んでいただきありがとうございます。今回は紡くんがメインです。


第4話 俺が恋したヒーロー

 

 

 

 

 今日の同好会の活動内容は、基礎体力作りの為に走ったり柔軟をしたり。体を動かすことに慣れることでライブの時の怪我のリスクを下げたり、体力が付くので長時間のライブも行えるようになったりするので良い事尽くしだ。俺も体育の授業で使うTシャツを着てジャージを羽織り、運動スタイルで外に出ている。外に出て俺は何をしているのかというと……。

 

「……でさ、あの時『ハルト社長』が決意して敵と戦う覚悟を決めるシーンがかっこよくてさぁ! マジで震えたよ!」

 

「わかります! その覚悟が先の話にもすごく影響を与えていて……戦う原動力になっているんですよ!!」

 

 優木さんと『仮面リーダーレイワン』語りを繰り広げている。いや、面白すぎでしょあれ。幼い時はただリーダーのかっこよさ目当てで見てたんだけど、この歳で見たら主人公が戦う理由とかに共感できるし、敵側にも正義があるってのに気付けてより深く楽しめるようになってる。

 

(つむ)ちゃん、案の定ハマってるね」

 

「歩夢先輩、昔からつむぎ先輩ってああなんですか?」

 

「うん。隠してはいるけど、『仮面リーダー』とかロボットとか、かっこいいものが好きだからね。昔から趣味や好みが幼稚園で止まっちゃってるから」

 

「歩夢、今ちょっとひどいこと言わなかった?」

 

「つむぎ先輩、声と見た目が幼ければ趣味も幼いんですねぇ〜! かわいいですぅ!」

 

「幼稚なのは否定できねぇけど中須に言われるとなんか腹立つな。あとかわいいはやめろ」

 

「えぇ!? 何でですかぁ!?」

 

 でも中須の言うことは最もだ。俺と同い年の虹ヶ咲男子生徒と比べると、明らかに成長が遅れてるように感じる。趣味や内面もそうだけど、身長もどちらかと言うと低い部類に入る。何より1番のコンプレックスは、高校生になっても変声期が来てないってことにある。他の人は低音でかっこいい声してるけど、俺はただただ声が甲高くて中学生と間違われる始末。身長高くなりてぇ……声低くなりてぇ……そうすりゃ映画館とかで中学生料金で通されるなんてことなくなるし。あ、思い出したらなんか悲しくなってきたぞ。やめよう。

 

「何が1番嫌かって言うと、中須と俺の身長がそんなに変わらないってことなんだよな。お前俺より背高くなったら絶対マウント取るだろ」 

 

「ま、まさかぁ〜! そんなことする訳ないじゃないですか! まったくもうっ! 先輩はかすみんのことどんな人だと思ってるんですかぁ!」

 

「どうやら俺に対してやってきた愚行の数々を覚えていないようだなァ……」

 

「覚えてますよ! ごめんなさいってばぁ! もう辛いコッペパン食べさせたりしませんから!!」

 

「まぁ、過ぎたことだし良いんだけどさ……」

 

 俺が歩夢と中須と話していたら、優木さんが俺の隣に立ち、ある提案をしてきた。

 

「つむぎさん、『レイワン』を見たなら、決め台詞と決めポーズ、できますよね!?」

 

「勿論。もちのろん。1発かましとく?」

 

「ええ、やりましょう! せーのっ!!」

 

「「お前を阻止できるのは(ただ)1人……オレだっ!」」

 

 ……キマった。手を顔の横に持ってきて、そこから手を前の方に移動させて敵を指差す。シンプルな動作なんだけど、それがまたかっこいいんだよな……。初めてやったのにびっくりするくらい優木さんと息ぴったりにできた。優木さんは見慣れてるからだろうか、隣の俺よりずっと完璧にできていた。

 

「……意外と楽しいなこれ」

 

「ですよね!! 私、これをずっと誰かとやってみたかったんです!! つむぎさんに勧めて本当に良かった……!」

 

「俺の方こそ! 勧めてくれてありが……と」

 

 優木さんにお礼を言いつつ、決めポーズをした方向を見ると、中須の手にはスマホが握られていた。その横で何故か笑いを堪えてる歩夢。これ、まさかあいつ……やりやがったな? 

 

「ふふっ……良いもの撮れちゃいました……にひひっ……同好会のグループチャットに送ろうーっと!」

 

「そういうのが愚行だって言ってんだよばかすかすがコラァ!! 待てェェェェ!!」

 

 スマホ片手に逃げる中須をダッシュで追いかける。何回追いかけられりゃ気が済むんだあの野郎……。

 

「かっこよかったですよぉ!! 『オレだ!』にすごく力が込められてて……」

 

「よォし泣かす! もれなく泣かす!! 今すぐ消したら許してやるけどどうする? この追いかけっこもすぐやめられる。悪い話じゃないだろ? な? どうするよ中須!」

 

「嫌です……先輩のかっこいい動画を消すなんて嫌ですぅぅぅぅぅぅ!!」

 

「交渉決裂だな中須ァァァァ!! スマホから動画消した後に存分に泣かしてやっから覚悟しろテメェ!! ハァ……ハァ……動け俺の体! 中須を捕らえろッ! 頑張れ俺ェェェェ!!」

 

 中須をとっ捕まえるのは確定として、おそらく歩夢が容認してしかも笑い堪えてたから歩夢も同罪だな。あとでちょろっとお説教しておこう。今はただアイツを捕まえることに全力を出そう。

 

 

 

 

 

 

 

「はっ……はっ……ようやく捕まえたぞ……スマホ貸せ中須……」

 

「はぁっ……はぁっ……無駄ですよ先輩……もうとっくのとうに送っちゃいました……」

 

「あぁそうかよ……やべ、バテた……中須を泣かす気力が……」

 

 体力作りのランニング以上に疲弊しきって、俺と中須は芝生に倒れ込んでいた。中須のスマホを見ると、たしかにチャット欄に優木さんと決めポーズをやった動画が貼られていた。しかも既読8て……部室にスマホ置きっぱの俺以外全員見てるじゃねぇか……。あと地味にスタンプで反応してる宮下、朝香さん、天王寺。恥っず……。

 

「ここにいましたか、2人とも!」

 

 優木さんをはじめ、俺たちを除く同好会メンバー達が歩み寄ってきた。

 

「たくさん走ったし、ここで私達も休憩しよっか! かすみんはまだ練習メニューやってないから休憩おあずけねー!」

 

「そんなぁ……! 愛せんぱぁい! かすみんもう走れないですよぉ……」

 

「アハハっ! 冗談冗談! つむつむと鬼ごっこしてたの愛さん知ってるから! 私はそんなに鬼じゃないよ! 鬼だけに!」

 

「うぅっ……良かったですぅ……」

 

 宮下、上手いこと言ったみたいな感じで俺を見下ろしてドヤ顔すんのやめて。あと何そのサムズアップ。動画のアレか? もしかして。

 

「随分お疲れみたいね、紡」

 

「朝香さァん……ノリノリでスタンプ押してたよねぇ……? だいぶ恥ずかったよ……」

 

「あら、かっこよかったわよ? まさにヒーローって感じで」

 

「ヒーローねぇ……俺もそんなようになりたかったなぁ……『仮面リーダー』みてぇになれねぇからなぁ俺……」

 

「そう? 少なくとも私達は紡に救われてる部分はある。せつ菜やかすみちゃん、もちろん歩夢も。もっと自信持ちなさいよ」

 

「紡さん、元気出して。璃奈ちゃんボード『よしよし』」

 

「朝香さん……天王寺……」

 

 頬に流れる汗を拭いながら、俺はゆっくりと体を起こす。そうだ、思い出した。昔、歩夢に『仮面リーダー』の真似をよく見せてたのは、歩夢にとってのヒーローになりたかったからだ。当時俺の目に映る『仮面リーダー』は強くて、かっこよくて、敵から人々を守れる凄いヒーローだった。無意識のうちに、そうなりたいって思ってたんだな、俺。でも実際は歩夢に助けられてばかりで、ちっとも強くなんてなかった。

 

「私は……つむぎさんに救われました。あの時の言葉が無ければ、私は今頃スクールアイドルを続けていなかったでしょうし」

 

「あの時の言葉って?」

 

「『好きならやれ、我慢することなんかない。大好きなものがあるなら、たとえ嫌われてでもそれを貫けばいい』って」

 

「……本心を言っただけだ。優木さんのあのライブ、俺にはすっげぇ輝いて見えたんだ。辛そうなツラしてスクールアイドル辞めようとする優木さんを見たくなかった。ただそれだけだよ」

 

 だってそうだろ。あんなに人の心を動かせるライブができるのに、何で辞めちまうんだよって。絶対に嫌だった。優木さんが自分を隠して生きていくことが。俺にとっては、どうしてもな。

 

「その真っ直ぐな言葉に救われたんです。つむぎさんの言葉には、人を動かす力がある。強くなくたって良いんです。『優しさ』や『真面目さ』も、立派な強さなんですから! 誰がなんと言おうと、つむぎさんは私達のヒーローなんです!!」

 

「紡ちゃんは……みんなのヒーローなんだよぉ……すやぁ……」

 

「つむぎさんの言葉にいつも励まされています! 実は台本を考える際に参考にしていたり……」

 

「いつもありがとうねぇ、紡ちゃん。これからも紡ちゃんは、紡ちゃんのままでいてね」

 

 皆していきなり……新手のドッキリかなこれ。嬉しいけど、なんだか背中がムズムズする。

 

「……さんきゅー。おかげで、忘れちまってた憧れを思い出したわ」

 

(つむ)ちゃん、その『憧れ』って……」

 

「歩夢なら分かるだろ? 『仮面リーダー』みてぇに、誰かを救えるような強いヒーローって憧れだよ」

 

「もう、叶ってるよ。(つむ)ちゃん」

 

 見渡すと、皆が俺を見ていた。でも嫌な視線じゃない。「頼りにしてるよ」と言わんばかりの、優しい視線。1人は寝てるし、中須はこっちを見ながらにっこり笑った後、バツが悪そうにすぐ視線逸らしたけど。その笑顔で気が抜けて、泣かす気力が完全に無くなってしまった。なんやかんや言っても、皆良い奴だ。良い奴らなんだ。だから頑張れる。やっぱ……力になるのが皆で良かったわ。

 

 

 

 

 

 

 

 日が沈み始めた空を見上げながら、俺はふと考えた。いつか、『アイツ』とケジメをつけなきゃならない日が来るのかなって。身内なのにここまで会いたくないって感情が湧き出る相手と、俺は果たしてまともに会話ができるだろうか。

 

(つむ)ちゃん、帰ろうー!」

 

「おう、今行くー!」

 

 まぁでも、今は歩夢達の方がよっぽど大事だな。いつかはいつかだ。目の前のことに集中しよう。

 

 

「あのさ、紡ちゃん……」

 

「ん、どした歩夢」

 

(つむ)ちゃんが決めポーズとった動画……保存しても良い?」

 

「はぁ……お前もかぁぁぁぁっ!!」

 

 毎日毎日叫ぶ日々はしばらく、ってか数年続きそうですねこれ。ボイトレより喉の負担がやべぇ。こんなんが毎日なら俺もスクールアイドル並に……やべぇなちょっと自重しよ。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 




皆の日常を守れる強さを




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