虹×夢カラフルデイズ 作: 龍也/星河琉
第43話 いつも通りのその影に
「おーっす」
いつものように歩夢と一緒に部室に行くと、既に愛やかすみが中に入っていて、俺達の姿に気付くと嬉しそうに笑顔を見せた。
「やっほー! 歩夢、つむつむ!
「は?」
何か知らんけど愛が訳の分からんこと言い始めたぞ。意味わからんすぎて『は?』って言っちゃったよ。おつむつむって何ぞや。
「だから、おつむつむ!」
「うん。それは分かった。分かったから。で、何だその訳わかんねぇ造語は」
「お疲れ様を何か別の言い方にできないかなって思って、頭にパッと浮かんだのがつむつむだったから、合わせておつむつむ! どう? めっちゃ良くない!?」
「まず何でそこに俺がパッと頭に浮かぶんだよ。どんな思考回路してんだお前は」
「良いですねぇ! おつむつむ! つむぎ先輩、おつむつむですっ!」
「うわ」
かすみが妙に可愛こぶりながら言ってきたので若干引いてしまった。やめてくれマジで。ムズムズする。
「な、何ですかその反応は!」
「いや、ぞわっとしたからつい」
「何でですかぁ! おつむつむ!」
「おいこらやめろ」
「おつむつむ!」
「シバかれてぇか?」
「おつむつむ!!」
「あ、そんなに俺にシバかれたいんですか?」
「おつむつむっ!」
「よぉしシバく! ちょーっと下手に出てりゃ調子乗りやがってこのばかすかすがァ! 待ちやがれコラぁぁぁぁ!!」
「ひぃぃぃぁぁぁぁっ! ごめんなさぁぁぁぁい!」
こうしていつもの如く鬼ごっこを始める俺とかすみ。もう何回もやってることだけど、気付けば同好会に入ってから半年とちょっと経つんだもんなぁ。夏が来たと思ったらもう秋になりそうな気温だし。フェスティバルが終わってもうけっこうな時間が過ぎた中、俺達はこうして同好会の活動を続けている。いつも通りってヤツだ。皆変わらず元気にやれてるから安心できるってもんよ。
無論、俺も色々できること増えたし、俺なりに皆をもっと手助けできるように頑張ってる。曲作りはまだまだ誰かの力を借りなきゃ出来ないけど、ゆっくりでも前に進めりゃそれで良い。隣で支えてくれる人が、ちゃーんといるからな。
俺とかすみが鬼ごっこを終えたタイミングでメンバー全員が集合。かすみの髪をわしゃった後に櫛で整えてやってたらせつ菜さんや3年生ズがやってきた。今日も1人も欠けることなく集まれたな。当たり前のことかもだけど、その当たり前がとにかく嬉しい。1人として欠けちゃいけないのが、本当の部というか、繋がりだと思うから。
「よぉ皆。おつむ……あっ」
「ああっ! つむぎ先輩今自分で言おうとしましたね!?」
「誰のせいで釣られたと思ってんだ!!」
「えっ、愛さんかなぁ?」
「事の発端はお前だけど1番はテメェだかすみィ! テメェが逃げてる間も連呼するせいで移っちまっただろがぁ!!」
「あらあら、まーたやってるのね。どっちも懲りないわねぇ」
溜息混じりに呆れた様子の果林さんが肩をすくめる。
「ねぇ! ここまで来たら同好会皆に流行らせようよ! 『おつむつむ』!」
「おいバカやめろ!」
「あははっ! 良いねぇ、おつむつむ! とっても可愛いよ?」
「エマさぁぁぁぁぁぁぁぁぁん!!」
「何だかよく分かりませんが……おつむつむです! つむぎさん!」
「マジでやめて!?」
「おつむつむも良いけど、『おつむちゃん』も良いんじゃないかな? ふふっ。可愛い」
「歩夢も何でノリノリな訳!? 可愛いとかそういう問題じゃないんだってぇぇぇぇぇぇっ!!」
今日もまた、俺の叫びが部室内に響く。皆からバチクソに弄られて悶え死にそうになってる中、部室の入り口に誰か居るのが見えた。俺と目が合った瞬間にその人はどこかへ行ってしまった。でもあの髪の色……見覚えあるような……? あっ。
「あの子……何でここに?」
1度見れば忘れないあの特徴的な翠色の髪。間違いねぇ。あん時ボランティアのポスターを貼ってた女の子だ。何で部室の前に立ってこっちを覗いてたんだ……? 気付いたのはおそらく俺だけだろうけど。こっちを覗いてたらすぐいなくなっちまったし。何なんだマジであの子。
いつもの同好会の空気の中に、妙な胸騒ぎが俺の中で起こった。理由は分からんけど、何でかほっとけないような、そんな感じ。……よからぬこととか何も起こんなきゃ良いけど。