百足神   作:岩床体

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婿入りです

こんな嫁がほちい




ろ(くでなしと贄と祇)

どうやら監禁されているようだ

 

目に布を巻き付けられていて見えないが、恐らく蔵の座敷牢だろう

古い家だから座敷牢もあった

 

 

手足には枷が嵌められている。どこでこんなもの手にいれたのだ

 

 

 

 

 

 

 

 

何故だ

 

 

彼女の事を話した後で徐に立ち上がった叔父に後頭部を殴られ意識が暗転した

 

婆様の驚く顔が残っている

 

 

 

 

 

巫山戯るな

 

昔から想っていた人に娶られる事を言って何が悪い

 

 

 

物音がする

誰かきたようだ

 

 

 

 

 

「お前が出て行っては困るんだよ。宗染(ソウゼン)

 

叔父だ

 

「何故出て行くと困るのだ。お前には不義の子が居るだろう。クソ親父の妻との間の子が!知らんとでも思うたか男の風上にも置けない屑野郎め!口封じの為に山を売った金を渡し『黙れッ!』」

 

 

 

ガンッと殴られる。殴られた感じからして木の棒だろう

 

鼻の奥がツーンとする

 

殴られた衝撃で倒れそうになる体を全力で立て直す

 

痛みが頭部を襲い続ける

しかし口は動き続ける

 

 

「正論を言われて逆上か!親に捨てられた様な状態の私を育てる事で自分に酔っていただけだろう?婆様と爺様とはちごうてな。貴様は自分のために私を育てたんだろう?な『黙れェェッ!!!』」

 

再び殴られる。側頭部から生暖かい液体が流れる感じがする

 

 

意識がぼんやりとしていく

 

身体が倒れた

 

 

 

 

 

 

 

 

床がひんやりしてここちよい

 

 

 


 

-Side:百足神-

 

青年の生気が希薄になっている

 

昨日久しぶりに会った時にマーキングしておいたから解る

 

 

 

 

分霊を作り出し、疲れた身体を休めている時に気付いた

 

「飯食うたら迎えに行かねば…。心配じゃ、早く縁で縛って(※1)しまおう。」

 

 

 

 

希薄になっている彼の生気が更に薄くなっている

 

分霊を祠へ据え、彼の家への山道を走り行く

 

村が近付いた故に人の身体へとカタチを変える

 

人の姿はかなり力を使うがあの子を娶って交合えばどうとでもなる

 

 

 

何が起きている。

 

不安で何時もは特に頭に浮かばないような事が次々と浮かぶ

 

「急ぐから、死ぬなよ...!」

 

走る

 

 

なれない人間の足で山を下る

 

彼の家へは何度かこっそり行っているので道は知っている

 

 

 

服の乱れを直し、荒れた息を整えてインターホンを押す

 

暫くして

「はい」

あの子の祖母か

 

懐かしい声だ

 

「宗染を婿に貰いに来た。あの子に会わせて貰おうか。あの子が何処に居るかは分かっている。」

 


 

蔵へ急ぐ

 

下半身の人化を解いて急ぐ

 

 

 

座敷牢には血を流し倒れている宗染と見知った男が居た

 

面白半分で私を燃やそうとした奴だ

 

下半身の節をを鉈で斬られ、ガソリンを掛けられた時の痛みと冷たさが今も思い浮かぶ

 

 

憎しみが溢れる

あの時のガソリンの臭気も思い出してしまう

 

その上私の婿を奪うのか

 

 

「お前は何がしたい。お前、死にたいのか?」

 

「俺がお前に殺されたらお前は猟友会とかに殺されるだろうな。ヒヒヒッ」

 

「私がお前を殺すのでは無い。」

 

狙うは、心臓の真上

 

下半身をしならせ、地面に付いている足に力を込める

 

「シィアッ」

 

奴の心臓の真上に拳をぶつける

 

同時に呪詛を刻みつける

 

吹き飛び、座敷牢の木格子に頭をぶつけて気絶したようだ

 

「宗染っ!生きてるかっ!宗染っ!」

 

 

息はしている、心臓も動いている

 

 

どうにか無事なようだ

 

彼奴も気絶しているだけで生きている


 

 

ーSide:宗染ー

 

目覚めた場所は中心部のそこそこ大きな病院で、婆様と彼女からだいたいの事を聞いた

 

叔父は私と祖母への家庭内暴力、そして詐欺をしていた事がバレて逮捕された事

 

祖母はその日のうちに叔父との縁を切る事を決意した事

 

また、1年に最低でも1回、1週間ほど滞在する事を伝えてくれた事

 

実家は祖母と、私の遠縁の小母様家族と一緒に暮らすという事

 

 

 

遠縁とは言っても、私の家の秘密に関わっている家で、祖母との仲も非常に良好だったはずだ。というより小母様の家は近所だ

 

頭部を殴られたが、外傷のみで特に問題は無かったが、事後経過を確認するために通院することになった

 

 

そんな事より彼女に伝えないといけないことがあった

 

 

「ねぇ、名前、なんだったっけ…。思い出せないんだ。何故かさ…」

 

彼女に勇気をだして伝えた自分の過失

 

「そうか...。私の名は香夜(カヨ)。昔、お前が付けてくれた名だ。お前が忘れたとて私は憶えている。お前の事も、お前と出逢うた夜の事も。全て、総て憶えている。」

 

昔の記憶は朧気で、殆ど思い出せないが、彼女と初めて出逢った夜の事は私も憶えている。

「香夜...私の、妻になってくれないか。約束を果たす時は今だと思うんだ」

 

伝えてしまった。頬が朱に染まる事を実感している

 

心臓も早鐘を打っている

 

「うむ。分った。お前は私の夫だ。私はお前の妻だ。…なんだ?接吻でもすれば良いのか?ふふふっ」

 

そう微笑む彼女は1枚の名画の様に美しかった

 

 

 

「不束者ですが、これから、よろしく。香夜」

 

「任されよ。暇つぶしに主婦業はお前の祖母に習っていたのだよ。現代の家電も使えるからの。これからお前が家に帰って来て『ただいま』と言えば『おかえり』と返って来るのを楽しみにしておけよ?」

 

それは、とても嬉しい

 

「あ、行ってらっしゃいのキスとお帰りなさいのフレンチキスはきちんとやってもらうからな?変な虫がつかぬ様に項とか見える所とかに所有印刻まなきゃ学校には行かせないから、良い?」

 

 

そう言うと彼女は少し強引に唇を合わせ、舌を入れてきた

 

何も答えられない

へんひは(返事は)?」

 

唇を合わせたまま聞いてきた

 

「ひゃい」としか言えなかったがなんだか幸福感と安心感に包まれて気持ちが良かった

 




※1
縁で縛る

神に近い存在の者が気に入った者の同意を得て繋がる事で自分と似たような存在に不完全ながら変化させる行為。


という事で軽率に結婚させました

まだまだ続けるつもりです
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