夢女子が性転換して推しを救う話   作:ギャングスタ

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お願いしますね。


転生

 

 

 皆さんネット小説についてどう考えているだろうか。

 サイトに載せていた小説が書籍化、はたまたアニメ化や実写化などしてブームになり、様々なネット小説が盛んになった昨今。

 私もそんなネット小説を好んで読んでいた。

 スマホがあれば簡単に読めるし、玉石混交と言われる中でも面白い小説は転がっているものだ。

 ランキングから見付けたり、レビューを読んだり。はたまたたまたま更新されているタイトルやあらすじに惹かれたり。

 

 私は数あるネット小説サイトの中でも「小説家になろ○」を好んで利用していた。大手ということもあり作者・作品数も数知れず。分母が大きければ「良い作品」も多いだろうとそこへ手を伸ばした。

 私は長すぎるタイトルは敬遠する。だってそこに作品の全てが書かれているようなものだから。四行もあるタイトルはそれだけで目が滑ってしまう。

 だから私が選ぶ小説は大抵が短いタイトルで、あらすじも簡略化されたもの。その方が本文を楽しめるからだ。

 物語は、先が読めないからこそ、面白い。

 そんな考えの元、私は運命的な出会いをした。

 

 

 「陰陽師の当主になってモフモフします(願望)」という一つの小説に。

 

 

 元々のタイトルは(願望)じゃなくて(仮)だったみたいだけど、そんな変遷を気にしないくらいに熱中した。

 陰陽師が現代にも残って、公務員となるローファンタジー。

 一千年前からの圧倒的な乖離による、現代への侵食。

 学校を舞台に、起こる様々な事件。

 よく負けちゃうけどカッコイイ主人公。可愛いヒロイン。

 

 

 そして、主人公の悪友、住吉祐介(すみよしゆうすけ)

 

 

 私はこの住吉君が推しになった。中学時代から主人公と一緒に学校をサボったり、陰陽師として活動したり、実力があったり、ムードメーカーだったり。

 彼が主人公の隣にいるからこそ、学園ものとして成立しているんだというくらいに、良い友人関係だった。

 そして隠せない、恋心も。

 そんなもどかしさも好きだったけど、一番心に来たのは、祐介の本性。

 とある儀式をするために主人公の元に潜り込んだ、主人公と対立する人物のスパイだったのだ。

 

 それがわかった瞬間「ウソでしょ!?」って叫んでしまったし、読み返してみると主人公と祐介の怪しい行動がいくつかあったり、距離感が絶妙だったり。

 伏線はいくつもあったのに、その場面になるまで気付かなかった私は推し失格だし、物語をしっかり読めていなかったんだなと猛省した。

 それからもう一度最初から読み直して、更新されるたびに祐介の心情を知って。祐介の立場を知って、背負ってきたものを知って。

 不器用な友情を知って。

 

 仕事の帰り、電車の中で泣き出した時には近くの人に「大丈夫ですか」って心配されるほどボロボロと泣いてしまったほど、私は祐介に感情移入していた。

 そんな恥ずかしいことがあったために、たとえ更新されていても帰り道で読むことはせず、自宅に帰ってから読むことにした。まあそれでも、ご飯を食べながら泣いてしまって夕飯の味がわからなかったことが数回。

 私が思うことは一つ。

 

「ハァ〜。祐介救いてぇ〜」

 

 めんどくさいオタクのようだろうけど、本心だ。ここまで心揺さぶられたキャラクターは久しぶりだった。

 これまでも様々な娯楽作品に手を出してきたけど、ここまで入れ込んだのは初めてだ。ネット小説という「更新」があるライブ感も関係しているかもしれない。

 しかし、作者様凄いと思う。こうも感動できる物語を、一話3000字程とはいえ三日に一回は確実に更新してくれるんだから。ちょっと仕事を頑張れば最新話が更新されているという嬉しさ。日々の癒しになっていた。

 ただ。最近の更新は辛い。泣くほど辛い。

 

 祐介が、辛すぎる立ち位置なのが悪い。

 悲惨な登場キャラは他にも結構いた。それでも、救いのある終わりを迎えた者もいた。だから祐介も大丈夫なんじゃないかなと思ってたけど。

 祐介の辿っている道が、完全に救われなかったキャラと同じ感じなのだ。

 しかも地の文で散々入る怖い、容赦ない言葉の数々。

 

 先生、祐介は主人公の(あきら)君の唯一の友達ですよ……?そんな祐介を、本当に……?

 この前の更新。八章のエピローグ。祐介の独白と一緒に送られた、彼の母親に対する「遺書」。

 それがまた辛かった。また家で泣いた。

 冷遇されていた母親に愛を捧ぐって、ユウズゲェ……!しかも母親も祐介を守るために冷遇するとか……!母親だって辛かっただろうに……!

 もうほんと、そういう悲しみの諸々から救いたい。祐介は母親と一緒に静かに暮らして、恋をして過ごして欲しいなあ。

 

 今日の仕事はもう終わって、しかも今日は通称「オンモフ」の更新日。作者様が活動報告でこう略しているんだから、おそらく正規の略称のはず。

 電車から降りて、商店街を抜けて一人暮らしのアパートへ。

 今日で八章が終わるみたいなんだよね。祐介のやったことを明君が止めてくれたみたいだし、もう一話祐介に使ってくれるかな?

 そんなことを思いながら商店街を歩いていると、ミシミシと音がする。

 その音と同時に、地面が揺れる感覚が。

 

「地震だ!」

 

 さすが自然災害大国日本。でも人間慣れてしまうもので。窓ガラスとかから避けておけば大丈夫だろうと楽観視していた。さすがに震度7の地震じゃないだろうからと。

 それでも大きかったけど。

 

「危ない!」

 

 何が?と思った時には遅かった。

 立て付けが悪かったのか、地震が大きかったのか。私の上にあった大きな看板が、落ちてくる。

 あ、死んだなと思った。

 そんなあっけなさと同時に、現実逃避気味にこんなことも思った。

 祐介のこと、助けてあげたいなと。

 そうして私は、目の前が真っ暗になった。

 

 

 目が醒めるとそこは、真っ暗闇があるだけの空間。あれ?私死んだんじゃなかったっけ?

 

「そうじゃよ。お主は死んだ」

 

 おじいさんの声。どこだろうと意識すると、目の前にいかにもファンタジーな神様っぽいおじいさんが立っていた。

 

「お主の願い、聞き遂げた。是非その人物を救ってみるといい」

「もしかしてここって、神の御座ですか!?」

 

 私は反射的に聞いていた。神の御座。「オンモフ」の世界にある、神の居城。神が現存する世界観だからこそだ。

 神の御座は神ごとに景観が違うとか。だからこんな真っ暗な場所もあるのだろうと思っていた。

 

「説明が面倒じゃからそれでいい。陰陽師としての才能はくれてやろう。それと、お主の心からの願望を叶えるために不要なもの(・・・・・)を排除しておこう。では、新しい生を好き勝手に過ごすといい。儂はそれを見守るだけじゃ」

「ありがとうございます!祐介は絶対に救ってみます!」

 

 話のわかる神様だ!私の最後の願いを叶えてくれるなんて!

 祐介、しがらみのないまま明君と友達にしてやるからなあ!

 

 

 そんなやり取りをして、気が付くと。

 ベビーベッドのようなところで寝かされているような私。

 赤ちゃんに戻ってるね。これで祐介より上の年代なら祐介を助けられるんだけど。見た感じ年代は現代に近いけど、詳しい年代はわからない。そこまで年代はずれていないと思う。テレビの画質からそう判断した。

 私の目線の先には、ニュースでもやっているのかスーツの人ばかりが映っていた。文字を見てみると、呪術大臣就任。

 

 呪術大臣?

 呪術省という陰陽師を纏める省庁。これを率いているのは陰陽師大家の土御門か賀茂のどちらかの当主。ちなみに非道なことをやりまくっている、物語の中ボス的な存在だった。

 いや、通過地点?弱すぎて中ボスとも言えないくらい雑魚だった気がする。

 そんなテレビを見ていると、ある一人の人物がアップで映る。ふうん、そこそこイケメンじゃん。それに若い。三十代くらい。

 

「呪術大臣に就任した土御門晴通(つちみかどはれみち)です。先代の呪術大臣である賀茂家からの引き継ぎが済みました。これからは私が日本のために邁進してまいります」

「あうああうあうううううううう!!!!!(てめえこの!祐介が苦しんだ元凶じゃねえか!!!!!)」

「な、どうした!?(みちる)、お腹空いたか!?それとも漏らした!?」

 

 父親の制止も聞かず、私はベビーベッドで暴れまくった。

 この土御門晴道がいなければ祐介とそのお母さんは苦しまなかったのだ。

 こいつは絶対ぶっ飛ばす!覚悟しておけよ!

 そんな、0歳の時の決意。

 




多分十話くらいの短編予定。

ちなみに彼女はほぼ私の実話。マジでネット小説読んでて、電車で泣くとは思わないじゃんかよ……。
その時親切にも優しく声をかけてくれたお兄ちゃん、ホントありがとね。救われたわ。
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